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In Partnership

Style of the Kings: 長山 一樹

約60年の時を経て復活したキングセイコーと、さまざまな業界で新しい時代をリードする人物との共鳴を演出していく本連載。
第一回は、ファッションフォトグラフィーをメインにYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』の撮影などさまざまな領域で活躍する写真家だ。

好きをアウトプットすることがモチベーションを保つ

既存のギャラリーの枠を超えた、

体験の価値を高める場を作りたい

 1961年にグランドセイコーに次ぐ高級時計として誕生したキングセイコーが今年、ついにレギュラーコレクションに返り咲いた。モチーフとしたのは、高精度であることを秒針規制(停止)装置で際立たせた1965年誕生の2代目、通称“KSK”。当時のキングセイコーのオプション用に展開された7連ブレスレットとの組み合わせで、5つのカラーバリエーションで登場した。

 フォトグラファーとして自身のスタイルを貫きながら挑戦を続ける長山氏。東京生まれの端正なモダンスタイルを持って誕生したキングセイコーは、枠にとらわれないクリエイターの発信の場を作ろうとする同氏の目にどう映るのだろうか。

腕時計に求めるもの

 「もともと時計には興味があったんですよ。いわゆる“いい時計”を初めて買ったのは、フォトグラファーとして独立したあと、ちょうど30歳になるころでしたね。憧れのスクエアケースの時計があって、でもシンプルなものが欲しかった。いろいろ探すうちに文字盤に日付表示もアラビア数字もない薄型の反転ケースを備えた時計を見つけて、手にとったときに一瞬でピンときました」

 「ただ当時はまだスーツを着ていなかったので、カジュアルな装いのときにレザーストラップは少し合わせにくいなと。それでスティールのブレスレットがついたラウンドケースの時計を見ていたのですが、人とは違ったものを手にしたいという気持ちがあって(笑)ミリタリー仕様のパイロットウォッチを手に入れました。スーツを本格的に着るようになった2018年くらいからは、クラシックになりすぎない、ちょっとヴィンテージ感のあるものを選ぶようになって、最近はスーツにあわせやすい小ぶりなゴールドの時計を身につけることが多いんです」

 長山氏いわく「僕が時計に求めるのは、小ぶり、薄め、極力機能がないこと」。新生キングセイコー「SDKS」シリーズのケースは面構成による直線的なフォルムをベースとし、オリジナルとほぼ同じ37mm。機構的にも日付表示も持たない中3針とシンプルに徹していて、長山氏の好みに合いそうだ。

型破りと型無し

 キングセイコーを初めて目にする長山氏は「正直どれも“いいな”って感じました。でも一番はこれかな」と言ってまず手にとったのは、シルバーダイヤルのSDKS003。縦に筋目を入れたマットなダイヤル仕上げは、オリジナルにはなかった現代的なアレンジである。一方で12時のインデックスは、“KSK”を特徴付けていた斜めの溝を交錯させるライターカットが受け継がれている。

キングセイコー SDKS003

 「デザインもシンプルで、60年代のアメリカのオッサン(笑)がつけていたような雰囲気があってそれもよかった。そういうのが好みなので。最初は暗めのダイヤルがいいなと思ったけど、今乗っている車がシルバーだし、それにグレーのスーツにシルバーの時計を合わせたシルバー尽くしというのもお洒落だなと感じ、これに決めました。シルバーダイヤルの時計は今まで持っていなかったし、ブレスレットも初めて」

  「僕は時計に限らず直線的でエッジが効いたプロダクトは、陰影ができてコントラストが育まれるから好きなんです。最近はそうしたプロダクトは少なくなっている。カメラや車であっても昔のものほど直線的なデザインが多いじゃないですか。その点、このキングセイコーのデザインには、粋な潔さを感じますね」。「また洗練されたものほど機能が少ないのは、カメラも時計も同じ。文字盤は情報量が多いと時間を確認するために見たときに書体やその大きさまで気になってしまうので、これくらいシンプルなのがいい。このKING SEIKOのロゴも、好きですね」

 長山氏が好印象を抱いたキングセイコーのシンプルなデザインは、規範とするオリジナルモデルの誕生当時、東京で作られていたことに由来する。当時、生産を担当した「第二精工舎 亀戸工場」はレディスウォッチを得意としていた。そのためケースは薄く繊細にまとめられ、ダイヤルや針がフラットに仕上げられたことで、端正でモダンな雰囲気が作り出された。この潔い直線的なフォルムは、当時の東京人の感性にフィットしたのだった。

 「特にデジタルの時代になってから、いきなり型破りなことをしようとする人が増えたように感じます。それがたまたま上手くいったとしても長続きせず最後には潰れてしまう。若い世代は個性を出さなきゃと考えすぎていると感じることがありますね」。テーブルに並べられたSDKS003とオリジナルのKSKを眺めながら長山氏はこう続ける「型がある人が破るから型破りなのであって、そうでなければ型無しになってしまいます。アナログの時代から移り変わっても結局のところ本質的な部分は変わっていないように思うんです」

 新生キングセイコーは、元のデザインという型を守りつつも現代的なアップデートとアレンジが与えられている。

今っぽさをプラスする

 前述したように7連ブレスレットとの組み合わせになっているSDKSシリーズには、5種類のオプションストラップが別売で用意されている。長山氏がもうひとつ“いいな”と感じたチャコールグレーダイヤルのSDKS005をブラックカーフストラップに付け替えてみると、オリジナルのKSKにより酷似する。

チャコールグレーダイヤルのSDKS005にブラックのカーフストラップを装着。

 「完コピしなかったのがかえってよかったですね。やはり2022年に出すのであれば、どこかに今っぽさがあった方がいいですから。アップデートってすごく大切で、どうやって今っぽい匂いにするか……そのエッセンスを入れ過ぎてもダメだし、入れないと単なるオリジナルの真似になってしまいます。では今っぽさを何で入れるのか? 写真でいえばライティングなのか、モデルのチョイスなのか、いろんな選択肢・パターンがある。それはデザインにも言えるわけで、このキングセイコーにもいろいろなことが試されたのだと思います」

 事実、新生キングセイコーにはオリジナルとは異なるさまざまなアップデートが加えられている。ラグは長めに、時分針は5面カットから山型に改められた。ブレスレット仕様としたのも、今っぽさを感じさせるアレンジのひとつだろう。当時はなかった豊富なダイヤルカラーとストラップのバリエーションが多様化する現代のライフスタイルにフィットする。

 「長く続くプロダクトだったり、普遍的なものはただ同じことをやり続ければいいということではないと思うんです。新しい要素を入れたり、挑戦し続けることって重要なんですよね」長山氏が身を置くファッションフォトグラフィの世界は、日々絶え間なく変化する。そこで第一線を走り続ける長山氏だからこそ見える景色なのだろう。

 常にハットを被りスーツを着こなしているように、明確なスタイルを持つ長山氏は、自分の“好き”を常に言葉として発し、それが仕事につながってきたという。「自分が好きなことを突き詰めて、それを発信していく。デジタルの時代、とりわけSNSが登場してからは、アウトプットしていると勝手につながっていく。本当にいろんな機会に巡り合うようになりましたね」

 LA発のデニムブランド“YANUK”とのコラボも「撮影しているとき、向こうの担当者に“デニムは履かないけど、シャンブレーシャツは好きなので、もし商品として出たら買います”と言ったら、翌日に“一緒に作りましょう”と連絡が来た」ことでスタートした。

 「好きをアウトプットすることは、モチベーションを保つことにもつながるんです。ですから今、新たにアウトプットする場としてギャラリーを開こうと計画しています。名前は“写場”。場所は神楽坂で、年内には動き出す予定です。これまでのアートギャラリーは、コマーシャルの仕事をしているクリエイターをあまりよしとしない。だから自分で作ろうと思ったんですよ。思いもよらないアーティストとのトークイベントを開いたり、クリエイターが学べる場所を提供したい。またここでしか買えない本や写真集、画集を作り、ここでしか観られない展示をする。体験の価値を高める場、オンラインでは見つからない話を発信する場にしていきたいと考えています」

長山 一樹: 1982年神奈川県生まれ。2001年に麻布スタジオに入社し、2004年より守本勝英氏に師事する。2007年に独立し「S-14」に所属。さまざまなファッション誌や広告などの撮影を手掛け、数々の女優やモデルから指名が絶えない実力派フォトグラファーとして知られる。

長山 一樹が選んだキングセイコー

SDKS003

19万8000円 (税込)

SDKS005

19万8000円 (税込)
オプションストラップ XSL00319: 1万7600円(税込)

そのほかのキングセイコー・ラインナップ

SDKS001

19万8000円 (税込)

SDKS005

19万8000円 (税込)

SDKS007

19万8000円 (税込)

SDKS009

19万8000円 (税込)

直径37mm、厚さ12.1mm、ステンレススティール製。
Cal.6R31。自動巻き、パワーリザーブ 最大巻上時約70時間。
日常生活用強化防水(10気圧)。

 

Photos:Yoshinori Eto Words:Norio Takagi