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Hands-On オメガ スピードマスター “シルバー スヌーピー アワード” 50周年記念モデルを実機レビュー

コミックから飛び出したスヌーピーが、時計好きもそうでない人たちも存分に楽しませる、サプライズの詰まった最新モデル。

今年は本当に奇妙な1年でした。世界的なパンデミックの影響は大きく、大規模展示会の延期、オンライン開催へのシフト、スイス生産拠点の一時閉鎖など少し振り返るだけでもいくつも挙げられます。それでも2020年も数多くの新作がリリースされ、中でも時計愛好家たちの間で最も話題になった時計の一つといえば、このオメガ スピードマスター “シルバー スヌーピー アワード” 50周年記念モデル。過去作が愛好家たちから高い評価を得ていること、そして2020年はアポロ13号のミッションから50周年を迎えた年であり、多くの人が発表を予想していたことが要因だったかと思いますが、10月5日に登場してから数日間、愛好家の間ではこの時計についての話題でもちきりでした。

 そもそもなぜスヌーピーがスピードマスターに採用されることになったのかについては、ジャックが以前に執筆した記事「オメガ スピードマスターにスヌーピーが現れた理由とは? アポロ13号事故から50年を経て」に任せることにして、今回は時計そのものにフォーカスしたいと思います。

2003年に登場した初代モデル。

 オメガとスヌーピーによるコラボレーションは今回が3作目となるわけですが、過去2作について簡単におさらいしておきましょう。一番最初のモデルは、2003年に登場。9時位置とケースバックにスヌーピーアワードのデザインが施されている以外は、ほとんど通常のスピードマスタープロフェッショナルと変わりません。本作は、アポロ13号の活動時間である142時間54分41秒にちなみ、5441本限定で発売されました。

2015年に登場した2代目。

 それに続く2代目は、2015年に登場。先代同様にプロフェッショナルモデルをベースとしていますが、ホワイトダイヤルを備え、先代とは大幅に異なる外観をもちます。ダイヤル上の9時位置に寝そべったスヌーピーが、1995年に公開された映画『アポロ 13』の中で飛行管制主任のジーン・クランツが発した“Failure is not an option”(失敗という選択肢はない)という有名なセリフを思い浮かべています。ミニッツトラックの0秒から14秒位置には、“What Could You Do In 14 Seconds?”(14秒で何ができた?)と書かれており、さらに魅力的な夜光も備えているのが特徴です。先代がブレスレット仕様だったのに対して、白のステッチが施されたナイロン製のファブリックストラップを採用。ケースバックにはブルーエナメルを背景に、シルバースヌーピーのピンのデザインがついています。販売本数は、アポロ13号計画が行われた1970年にちなんで1970本限定でした。

 簡単に振り返ったところで、それではいよいよ最新作の実機を見ていきましょう。

 過去2作と同様に最新のスヌーピーモデルも直径42mmのプロフェッショナルのケースを採用して、スヌーピーが文字盤上に登場するだろうということまでは想像していましたが、この鮮やかなブルーはサプライズでした。実際に手にとってみるとシルバーダイヤルとの組み合わせが、非常に美しい仕上がりです。

 シルバーダイヤルは、ソリッドシルバー(Ag925)製で、レーザーエングレービングが施されています。マットで光の反射を抑えるような質感となっており、12時位置には、アプライドのオメガロゴ、“OMEGA”、 “Speedmaster”、そして “PROFESSIONAL” の印字があります。さらにその下にはごく控えめに“Ag925”と刻印されています。

 サブダイヤルはブルーで、いわゆるパンダダイヤルのルック。オメガロゴ、インデックス、時・分・クロノグラフ秒針は、全てPVDコーティングが施されており、深みのある色合いが全体に統一感を与えます。9時位置のサブダイヤルには、スヌーピーをかたどったエンボス加工のシルバー製メダリオンと“50th Anniversary”(50周年記念)の文字があり、このスピードマスターが特別なモデルであることを誇らしげに示しています。

 このブルーは、実機で見ると、光の当たる角度によって鮮やかなブルーからブラックに近いネイビーのようにも見え、プレスリリースの画像からイメージしていたものとは違う印象。また、本当にわずかな違いですが、3時、6時位置のサブダイヤルは同心円状に溝があるのに対して、9時位置のスヌーピーが配されたサブダイヤルにはそれがないため、やや薄い色になっているように見えます。

ドット・オーバー90(DON)。

 ベゼルはステンレススティール製で、ブルーのセラミック[ZrO2]製インサートを採用。細いベゼルですが、タキメータースケールの白い目盛りは、ホワイトエナメルのためとても読み取りやすいです。スピードマスターは、1957年に世界で初めてタキメーターがベゼルに刻印された時計として有名ですが、その初代モデルにみられた“dot over 90”(ドット・オーバー90)、通称DONが継承されています。非常に小さなディテールですが、時計愛好家たち、とりわけスピードマスターファンたちにとっては重要な意匠です。

 夜光は、2代目のようなゴージャスな仕様ではなく、インデックス、時・分・クロノグラフ秒針のみに留められていますが、視認性はしっかりと保たれています。

夜光は2代目のような形ではない。

 本モデルの風防は、ヘサライトではなくサファイアクリスタル製。サファイア風防は、現在多くのブランドが採用する素材であり、傷が付きにくく、また透明度が高いという特徴をもっています。一方ヘサライトは、特徴的なドーム型の外観をもち、温かみのある色合い。確かに傷は付きやすいですが、軽い引っかき傷程度であれば自分で取り除くことは可能です。ここは完全に好みが分かれる部分でしょう(記事「ムーンウォッチ徹底比較:ヘサライト対サファイアクリスタル」もご参考ください)。

 個人的にはヘサライト風防が好みです。風合いもそうですが、50年前アポロ13号の乗組員たちを救ったムーンウォッチもヘサライト風防を備えていたため、そのストーリーに繋がっているようで好きなのです。ちなみに完全に余談ですが、ボックス型のサファイア風防はガラスへの映り込みが少ないです。つまりサファイア風防の方が、皆さんがリストショットを撮るときにも格好いい写真が撮りやすいという副次的なメリットもあります。

 さて、新作のスピードマスター シルバースヌーピー50周年記念モデルが、カラーリングやスヌーピーのピンといった特別な部分はあれど、リューズガードを備えたアシンメトリーな直径42mmケースなど基本的には、スピードマスタープロフェッショナルと同様であることがお分かりいただけたかと思います。しかし、この時計の最大の魅力は文字盤側ではなく、ケースを裏返したときに現れます。

 ケースバックには、まさに時計の中に宇宙が広がっているかのようです。サファイア風防には、“Eyes on the Stars”の印字があります。ケースの半分ほどを覆うようにリアルな質感の月が描かれており、その先に60秒に1度回転している地球が目にとまります。これは文字盤側のスモールセコンドと連動することで実現しています。しかし一番面白いのは、クロノグラフをスタートさせて14秒ほど経過した後に起こります。

スヌーピーが宇宙旅行を行う。

角度によって見えるマジックハンド。

 司令船に乗り込んだスヌーピーが、目の前に現れるのです。これはクロノグラフ秒針に連動しているのですが、スヌーピーの乗った船は、オメガがマジックハンドと呼ぶ透明な板につながっています。角度によってこの透明な板が見えるのですが、これが何の素材であるのかについては、オメガに確認してみたいと思います。月の裏側から現れたスヌーピーは、回転する地球の上を通過し、また月の裏側へと消えていきます。直径42mmの時計の中に収まった広大な宇宙空間をスヌーピーが旅をする様子は、時計愛好家も、時計の知識がない人であっても笑顔にするパワーをもっていると思います。

 オメガがこういったからくりを採用することは滅多になく(少なくとも僕はすぐに例をあげられません)、これは本リリース最大の驚き、そして喜びとなりました。この全てを実現しているムーブメントは、METAS認定をうけたCal.3861。

 時計好きの皆さんが一番気になる部分は、この魅力的なスヌーピーのモジュールを組み込んだことで、ケースの厚みに影響があったのかどうかではないでしょうか? 実際に計測してみました(0.0Xmmまで精密に測れなかったことをご了承ください)。通常のスピードマスターは約14.3mm、新型のスピードマスター スヌーピー50周年記念モデルの厚さは、約14.5mm。わずか数mmの違いしか見られませんでした。僕はオメガ スピードマスター ウルトラマンの復刻モデル(約14.3mm)を所有してるので並べて見てみましたが、ほとんど気づきませんでしたし、実際に手首に巻いてみても、装着感の違いは感じられませんでした。

 ケース径42mmと聞くと大きな時計のように感じるかもしれませんが、実際は数値よりも小さく感じます。ラグからラグの全長が47mm程度のため、15.5cmと細腕の僕でも違和感なく着けられます。ストラップ仕様であることもそれを助けているかもしれません。

 本機をテストするためにオメガから長い期間お借りすることはできませんでしたが、手首に巻いて試している間、ふと時計に視線を落とすのは楽しいものでした。A.ランゲ&ゾーネのダトグラフなど、ケースバックから見えるムーブメントのあまりの美しさに裏表を逆にして着けたいというコメントをよく見かけますが、この時計の場合はケースバックのギミックの楽しさからそうしたくなるものでした。

 最後に本作は、限定モデルではない点は特筆すべきでしょう。過去2作は、それぞれ5441本、そして1970本の限定でしたが、今作は限定のシリアルナンバーもありません。限定の有無については、メリット・デメリットがありますが、こういった楽しい時計を誰もが手にすることのチャンスが与えられているということは、歓迎すべきなのではないかと思います。

 最初のデリバリーが11月という話を聞いていましたが、どうやらSNS上でもまだあまり購入報告がないように思います。2020年というクレイジーな年を笑顔で締めくくるにも、2021年という新たな年を笑顔でスタートするのにも最適なピース...いや、いつ手にとっても文字通り人を笑顔にするモデル。それが新作のスピードマスター “シルバー スヌーピー アワード” 50周年記念モデルなのです。

 価格は、103万円(税抜)。スペックなどの詳細は、「オメガ スピードマスター “シルバー スヌーピー アワード” 50周年記念紹介記事」へ。さらに詳しく知りたい方は、オメガ公式サイトへ。