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In-Depth パテック フィリップが左利き仕様のシングルプッシュボタン・スプリット秒針クロノグラフ・永久カレンダーを発表したって本当!? それもファイヤーエンジンレッドの針だって?

すべての左利きに告ぐ。これは訓練ではない。パテックは、まったく予想外の複雑なカレンダーをドロップした。

パテック フィリップは今朝早く、数多くの新作を発表し、時計界に祝福を送った。トニーとダニーは、Ref.5711の後継モデルである新型Ref.5811/1Gの発表を筆頭に、ノーチラスの新作群の記事にすでに取り組んでいる。

 多くのファンにとって、これらの新作は注目の的となるものだろう。私自身の反応はこうだ。パテックも最近の記憶では、最も奇妙で最も魅力的なハイコンプリケーションのひとつをリリースしたばかりなのに、なぜこうも矢継ぎ早にリリースするのだろうか?

 発表されたばかりのRef.5373P-001は、シングルプッシュボタン・スプリット秒針クロノグラフ・永久カレンダー機構を、重量感のあるプラチナ950製の38.3mm×12.93mmラウンドケースに搭載し、ダイヤルはチャコールとレッドの縦に筋目の入ったサテン仕上げのダイナミックなカラーリングを採用している。この強力なメカニカルなコンビネーションは、パンチの効いたダイヤルデザインによってさらに強調され、パテックが過去に重要な顧客のために製作した少数のユニークピース(参照:こちらこちらこちら)に、ともすれば似ていると私の目に映った。

Patek Philippe 5373P-001 S Split-Seconds Monopusher Chronograph with perpetual calendar

発表されたばかりのパテック フィリップ Ref.5373P-001 S シングルプッシュボタン・スプリット秒針クロノグラフ・永久カレンダー。

 しかし、まったく新しいRef.5373P-001の最も奇妙な部分はそこではない。そう、違う。ここで最も意外な要素は、Ref.5373P-001が実は左利きの時計コレクターに最適な、いわゆる“デストロ”仕様だということだ。言い換えれば、リューズとクロノグラフのプッシャーが現在主流の右側3時位置ではなく、ケースの左側9時位置に配置されるようムーブメントも逆向きに収められている。

Patek Philippe 5373P-001 S Split-Seconds Monopusher Chronograph with perpetual calendar

新しいRef.5373Pは、意外なカラーリングと珍しいデストロ仕様を特徴とする、非常に複雑なパテック フィリップの腕時計なのだ。大騒ぎするほどのことではない。

 ここまで読んで既視感を覚えたのなら、それは無理からぬことである。今年のWatches & Wondersをご覧になった読者の皆さんは、新しいイタリア語の単語を覚えたことだろう。イタリア語で“”を意味する“destro”は、ロレックスが左利き仕様の新作GMTマスターマスターII Ref.126720VTNRを発表したことで、今年の時計見本市の予想外の流行語となったほどだ。

Patek Philippe 5373P-001 S Split-Seconds Monopusher Chronograph with perpetual calendar

オモシロ情報:パテック フィリップはプラチナケースの時計にブリリアントカットのダイヤモンドを1石使用する習わしがある。Ref.5373P-001では、12時位置の上にセットされている。Ref.5373は、ポリッシュ仕上げの凹型ベゼル、ねじ込み式のバネ棒、凹型でサテン仕上げのケース側面などを特徴とする38.3mm×12.93mmのラウンドケースで、先代Ref.5372Pと(反転式でないことを除けば)ほぼ同じケースデザインである。

 それではパテック フィリップはロレックスの宿題を丸写ししたのだろうか(もしそうなら、彼らは少なくとも、ネットのミームを参考にして、あからさまなコピーにならないよう工夫したはずだ)? パテック フィリップのビジネスに模倣という概念はないということを証明するために、彼らは1920年代に左利きの顧客の要求に応じて、ピッツバーグの旧グローガン・ジュエリーカンパニーで販売された “デストロ”仕様の18KYGのクッションケースのスプリット秒針・クロノグラフのレシートをわざわざ公開する用意周到さをもって発表に臨んだのだ。

 確かにその時計は、2006年11月にクリスティーズ・ジュネーブで行われたオークションに出品され、総額237万2000スイスフラン(当時のレートで約2億2524万円)という信じられないような価格で落札された。この金額は、出品当時オークションにおいて過去7番目に高額な時計となった。左利き用のスプリット秒針・クロノグラフが多くの時計コレクターに支持されるという概念をパテックが証明する必要があるとすれば、それはまさにこの時計ということになるだろう。

A 1920s 18k yellow gold Patek Philippe split-seconds chronograph in a cushion case with a "destro" orientation that was built on the request of a left-handed client and sold through Pittsburgh's former Grogan Jewelry Company.

1920年代の18KYG製パテック フィリップ スプリット秒針・クロノグラフ、クッションケース、“デストロ”仕様。2006年11月12日にクリスティーズ・ジュネーブにて237万2000スイスフラン(当時のレートで約2億2524万円)で落札された。Image: Courtesy of Christie's

 1920年代の時計と今回発表された時計のケース形状を比較すると、クロノグラフのプッシャーが3時ではなく9時位置、スプリット秒針のプッシャーが2時ではなく8時位置にレイアウトされた点が共通していることに気づくだろう。しかし、この変則的な、そして私の目(利き目が右で不快だが)には違和感のあるレイアウトが、両者の共通点のすべてである。ケース素材やダイヤルカラー、針や数字インデックスの形状、そして永久カレンダーの追加など、あらゆる点で完全に進化した。

 パテック フィリップは、この新作の発表資料のなかで、新作Ref.5373P-001をコンテンポラリークラシックなシングルプッシュボタン式のスプリット秒針・クロノグラフ(永久カレンダー付き)、Ref.5372Pの系譜にあると表現している。そして、ある意味そのとおりである。このふたつの時計は、同じ機能を共有し、さらにムーブメント Cal.CHR 27-525 PS Qを採用している点も同じだ。

Patek Philippe 5373P-001 S Split-Seconds Monopusher Chronograph with perpetual calendar

新作Ref.5373P-001に搭載されるCal.CHR 27-525 PS Q。

 これは21世紀の時計メーカーとしてのパテック フィリップの真骨頂ともいえる手巻き式クロノグラフムーブメントである。その構造は、パテック フィリップが初めて自社製クロノグラフムーブメントを発表した2005年に遡り、コラムホイール制御のスプリット秒針・クロノグラフムーブメントとして世界最薄の記録を打ち立てたCHR 27-525 PSを搭載している。このキャリバーは、次の5年間で少量生産され、幻想的で予想外に小さなRef.5959のケースに収まっている。

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 2010年、Ref.5951にアップグレードされたCHR 27-525 PS Qキャリバーが導入されたが、これはスプリット秒針・クロノグラフと永久カレンダー機構を備えた、パテック フィリップがこれまで製造したなかで最も薄いムーブメントとなった。クッション型のRef.5951はやがてカタログから消え、2017年に正式にRef.5372Pに置き換わり、今日の朝までそのリファレンスが存在していたのだった。

Patek Philippe caliber CHR 27-525 PS Q

このムーブメントには見どころがたくさん詰まっている。しかし、パテック フィリップは、Ref.5373Pで標準的なサファイアクリスタルのケースバックに加え、プラチナ無垢製のクローズドケースバックを提供するという。

 実用面では、ケース、ムーブメント、ダイヤルのレイアウト(クロノグラフカウンターがRef.5372Pの3・6・9からRef.5373Pの3・9・12に変更されている)を180度回転させるだけで-アブラカタブラ、反転したRef.5372Pが完成するのである。

 面取りされた受けに全面に施されたコート・ド・ジュネーブ、内部はどんな角度から見ても人だかりができそうなほど美しく、2対のコラムホイールがポリッシュされたキャップに覆われたCHR 27-525 PS Qは相変わらず素晴らしい完成度であるという事実にかかわらず、パテック フィリップの装飾の選択としてはありきたりではある。

Patek Philippe 5372P blue dial

パテック フィリップ Ref.5372P-001 シングルプッシュボタン・スプリット秒針クロノグラフ・永久カレンダー、サンバーストブルーダイヤルは、2017年に発売されたモデルだ。Image: Courtesy of Phillips

Patek Philippe 5373P destro

パテックフィリップの新作5373P-001 S シングルプッシュボタン・スプリット秒針クロノグラフ・永久カレンダー 左利き用。

 だが、そう、Ref.5373P-001の外観は、私がこれまで手にしたRef.5372Pの個体とはまったく異なるものだ。ブルーサンバーストやローズギルト(別名サーモン)のダイヤルカラーオプションを持つRef.5372Pは、美しくバランスのとれた、しかし典型的で保守的な腕時計であった。それは、パテック フィリップのどの時代にあっても不思議ではないように感じられた。Ref.5373P-001は、見方によっては同じ獣でも、まったく別の動物でもあり、スイスの伝統というよりは、ゲームやF1レーストラックに適したデザインコードを利用しているように見える。Ref.5373Pは、鮮やかなレッドのコントラストステッチでエンボス加工された模様を特徴とするブラックカーフスキンストラップと組み合わされている(ただし、プラチナ製の大きなフォールディングクラスプは残されている)。

Patek Philippe 5373P-001 S Split-Seconds Monopusher Chronograph with perpetual calendar

パテック フィリップのRef.5373Pは、明るい光沢感のある赤いアクセントと縦の筋目の入ったサテン仕上げの18Kゴールド無垢製のチャコールカラーダイヤルを備えている。アプライドアラビア数字とファセット加工されたドーフィン時針と分針は、どちらも18KWG製だ。

 このように考えると、パテックが人気シリーズのニューフェイスを発表する前に、古参モデルを一掃することを決めたのも不思議ではないだろう。

 Ref.5373P-001の発表の最後に隠されているのは、比較的最近のパテックの2モデルのための静かな追悼文である。「この時計は、かつてRef.5372P-001と5372P-001に搭載されていたCal.CHR 27-525 PS Qムーブメントを搭載した唯一のモデルとして今後残されることになります。両モデルともコレクションから引退しました」。

 王であるRef.5372は死んだ、しかしRef.5373として生き続けるのだ。

パテック フィリップ  Ref.5373P-001 S シングルプッシュボタン・スプリット秒針クロノグラフ・永久カレンダー、価格は応相談。ケース径38.3mm、ケース厚12.93mm。プラチナ950製ケース。プラチナ製裏蓋と交換可能なサファイアクリスタル製ディスプレイバック付き。30m防水。Cal.CHR 27-525 PS Q、手巻き機械式ムーブメント、コラムホイール、クロノグラフとスプリット秒針(セコンド)、60分積算計、スモールセコンドを備えたスプリット秒針クロノグラフを搭載している。パーペチュアルカレンダー(曜日、月、閏年周期、昼夜を小窓で表示)、アナログ式日付表示、ムーンフェイズ。パワーリザーブは最小38時間、最大48時間(クロノグラフ非連動時)。ジャイロマックス製ヒゲゼンマイ、ブレゲ巻き上げヒゲゼンマイ、2万1600振動/時(3Hz)。9時位置のリューズにより、クロノグラフのスタート/ストップ、リセットを行う。8時位置のプッシャーでスプリット秒針をスタート/ストップ。黒檀と18KWGの修正用スタイラス、レッドステッチ入りブラックカーフストラップ、プラチナ製フォールディングクラスプ付き。

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パテック フィリップの詳細については、公式サイトでご覧ください。