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The G-SHOCK

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MRG-B5000R

MRG-B5000R

Evolving based on the ORIGIN

Evolving based on the ORIGIN

フルメタルORIGINの最高峰に位置づけられるMRG-B5000は、間違いなくG-SHOCK40年の歴史においてターニングポイントのひとつに挙げられるモデルだろう。その最新作となるMRG-B5000Rは、初期の“黒金”モデルであるDW-5000C-1Bをデザインのインスピレーションソースとしながら、バンドにはデュラソフトを採用したニューバージョンだ。ルックスはあくまでG-SHOCKの最高峰ラインらしい上質さを意識しており、あえてコバリオン製のベゼルには金色を差さないことでカジュアルな雰囲気を抑えている。だが、その根幹には1983年の初代G-SHOCKから続くショックレジストの哲学があり、MRG-B5000シリーズに共通する耐衝撃構造をうちに秘めている。

今回は新作MRG-B5000Rについて、ユナイテッドアローズの創業メンバーであり、現在は同社の上級顧問 クリエイティブディレクション担当である栗野宏文氏にHODINKEE Japan編集長の関口 優が話を訊いた。日本でG-SHOCKが盛り上がりを見せていた1990年代当時よりブランドを知る氏の口から、象徴的な造形に先進性を盛り込んだ本作へのインプレッション、そしてG-SHOCKというブランドそのものに対して抱いている思いが語られた。

 数ある日本のセレクトショップのなかでも、G-SHOCKとユナイテッドアローズとのつながりは長い。1990年に第1号店を出店したユナイテッドアローズは、その6年後には早くもG-SHOCKとセレクトショップでは初となるコラボレーションモデルを展開している。当時は、日本における第一次G-SHOCKブームの真っただなかであった。

(関口)「ユナイテッドアローズでは今でもG-SHOCKとのコラボレーションが盛んですが、そもそも栗野さんがG-SHOCKと出合ったきっかけは何だったのでしょう?」

(栗野氏)「スタッフが“これ、おもしろいですよ”と紹介してくれたのが最初だったように思います。90年代前半はすでにG-SHOCKが人気だったので、その存在は知っていました。ただ、当時は“激レア”のような流行りのキャッチコピーとともに紹介されていて──もちろん、売れること自体は悪いことではないのですが、入手すること自体にヒートアップする風潮を残念に思っていたんです。そんな状況でユナイテッドアローズとしてG-SHOCKを扱わせてもらうことになり、それならばと当時のG-SHOCKの代名詞的存在だったスクエアケースとは真逆の、時分針の付いた丸型のモデルを(コラボレーションに)選んだんです」

ユナイテッドアローズ 上級顧問 クリエイティブディレクション担当 栗野宏文(くりのひろふみ)氏

 スクエアのG-SHOCKが人気の時代にあえて丸型のアナログタイプを選んだのには、ユナイテッドアローズのファッションに対するフィロソフィーも大きく影響しているようだ。

(関口)「G-SHOCKはデジタル表示かつ普通の時計とは違う造形をとることでブームを巻き起こしたと思いますが、丸型を選んだことにはその風潮へのアンチテーゼがあったということですか?」

(栗野氏)「そうです。ユナイテッドアローズは1999年に上場もしたので、現在では世間から見ればアンチテーゼな(ことをする企業という)感じはしないと思います。でも1990年に1号店を立ち上げたとき、一番プッシュしていたのがクラシコイタリアと呼ばれるスタイル。当時の日本ではまだまだ知られていませんでしたが、私たちはこの年のピッティ・ウオモでイザイアやベルベストといったブランドに出合って衝撃を受けたんです。英国のクラシックな服の形をしているのに、軽くやわらかく仕立てられている。非常にコンテンポラリーなのに、きちんと見える。これこそ、自分たちが推していく服なんじゃないかと思いました」

初代ユナイテッドアローズコラボレーションモデルのカラーをオマージュした、2021年のAWG-M520UA。

同じく1996年のコラボレーションモデルのデザインをベースに、メタルで仕上げたAWM-500UA。

(栗野氏)「もはや死語になっていますが、この時代はソフトスーツ(肩幅や袖ぐりが大きく取られたロング丈のジャケットに、タックが入ったハイウエストなパンツを合わせた、ゆったりと全身を包み込むソフトなシルエットのスーツ)が全盛で、大企業のビジネスパーソンや堅い職業の方まで多くの人が着ていました。でも私をはじめ、ユナイテッドアローズの初期メンバーはモード服としては認めていたものの、それはビジネススタイルではないと感じていた。そんななかでクラシコイタリアという、自分たちが提案するべきスタイルに出合ったという出自があるんです。常にちゃんとしたものは提供したいけれど、流行っているとか話題になっているから展開するわけではない──そんな考えでやっていたら35年が経ったという感じです」

(関口)「そうした源流が、現在日本で働いている方のスタイルの主流になりましたよね。一方のG-SHOCKも元々はビジネスパーソンが選ぶ時計ではありませんでしたが、今では樹脂製のモデルを身につける人も増え、ひとつのカルチャーになってきたと思います」

 そんなG-SHOCKの源流である時計事業をカシオがスタートさせたのは、遡ること1974年のことになる。

(関口)「2024年はカシオが時計事業を始めてから50年の節目になりますが、計算機のメーカーらしく、1秒1秒を“足して”いくというそもそもの経時へのアプローチがほかの時計メーカーとは違いました。そしてG-SHOCKも、本来は落としたら壊れてしまう腕時計に耐衝撃性能を与えたのがスタートです。最初は本当に異端的でしたが、次第に存在が大きくなり、スタンダードになっていった。そうした点は、ユナイテッドアローズともシンクロしていますね」

 MRG-B5000Rは、カシオが2024年に迎えた時計製造50周年のアニバーサリーイヤーにリリースされたMR-Gの最新モデルである。

(関口)「MR-GはG-SHOCKの最高峰にあたるシリーズで、近年は日本の伝統技術やカルチャーに焦点を当てたものづくりをしています。このMRG-B5000Rは、トップベゼルに日本で開発したコバリオンという素材(ステンレスの約3倍の硬度とプラチナと同等の輝きを有した、コバルトにニッケルとモリブデンを配合した合金)が使われるなど、一見すると80年代と変わらない見た目なのにアウトプットがまったく違う。こうしたクリエイティビティこそが、G-SHOCKがユニークさを保っている点だと考えています」

(栗野氏)「樹脂のモデルとは重さが全然違う──いい意味で時代に逆行していますよね。今は軽いことがいいとされているのに、かつて軽くて人気だった時計が重くなっている。でも決して嫌な重さではない。存在感があるし、簡単には消費されない、長く使い続けられるプロダクトになっていると思います」

(栗野氏)「それに鈍く輝く金属の質感も、兜や日本の機関車、刃物みたいなものを思い起こさせますね。以前、日産のシーマが京都のお寺をデザインのモチーフにしたという記事を読んだことがありますが、この時計も日本の伝統を意識したというのは非常におもしろい。価格は40万円近くになっていますが、買われる方が納得できるような理由があれば、それは新しいラグジュアリーのカテゴリに入るのではないかと思います。それに、頑なに80年代の自分たちのオリジンを守って、むしろそれを今一番大事にしているように見えるのはとてもうれしいですね」

 一方で、かつて“激レア”という言葉ばかりが先行してプロダクトの本質が蔑ろにされていたように、今はまたファッションシーンを中心に話題性ばかりを追求している傾向が見られると栗野氏は指摘する。

(栗野氏)「でも、すでに若い子たちはソーシャルメディアに頼った発信に反発していますからね。時代の転換点なのだと思います。どんなプロダクトもカルチャーがあるかないかが最終的にそのプロダクトの価値を決めるでしょうし、これからのお客様はカルチャーのないものは欲しいと思わないのではないでしょうか。MR-Gには新潟の燕三条(高度な金属加工技術が伝わる刃物、金物の街)のような技術的ニュアンスが感じられますが、それはG-SHOCKにそうしたものづくりのDNAがあったからだと思います。G-SHOCKはブランド規模が大きくなった印象はありますが、変わってしまったとは感じない。むしろ、いい意味で変えないようにしているのではないでしょうか」

 このMRG-B5000Rからも、カルチャーはもちろんのこと、ものづくりのDNAを感じ取れる。基本的な構造は従来のMRG-B5000を踏襲しつつ、本作では肌あたりがよく汚れや経年劣化にも強いデュラソフト(フッ素ラバー)製のバンドを新たに採用した。カシオの担当者いわく、ラバーバンドをMRG-B5000に採用するという構想は2022年の初代モデル発表時から持っていたものだったという。そして、MR-Gにラバーバンドを合わせるにあたっては、素材の上質さや長期間の使用を前提としていたことからデュラソフト製のものが初めから想定されていた。その表面には文字盤にもレイアウトされている五角形のショックレジストマーク、裏面にはレンガパターンをそれぞれ刻み、G-SHOCK初号機のデザインモチーフを継承するのみならずバンドの表情にもニュアンスを持たせている。バンドには着脱が行いやすいワンプッシュ三つ折れ式のバックルを備えつつ、ケースとの接続部には強度を高めるチタンパーツをインサートするなど、実用面も抜かりがない。

 オリジンを大切にしながらも、新しいラグジュアリーを感じさせると栗野氏が語るMRG-B5000R。自身とG-SHOCKとの関わりを振り返りつつ、この最新MR-Gを手にした氏は最後にこう締め括った。

(栗野氏)「私はものづくりという言葉が好きなのですが、大量生産品でも限定商品でも、日本では単にものを作ることを指さない──つまり魂が込められている。これは私が日本のとても好きな部分で、カシオさんにはそれを感じるんです。新作における金属の色や硬さなども、意識してこの形になったことを知ると、いい意味で頑固な人たちが作っているのだと思います。頑固なものづくりが根底にありつつもそれを売りにはしない──そういうところに、 好感が持てますね」