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The G-SHOCK

MUDMAN GW-9500

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MUDMAN GW-9500

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 マッドマンが誕生したのは1995年のこと。G-SHOCKならではの耐衝撃性に加えて、砂漠での使用を想定し、大きなボタンをすべてウレタン素材で覆うことで高い防塵・防泥性能を獲得したMASTER OF GのLANDカテゴリにラインナップされるモデルだ。その強靭さからラリーの現場でも重宝されており、2006年に発売されたG-9000などは世界でもっとも過酷なレースのひとつであるパリ・ダカール・ラリーで使用された実績を持つ。そんなマッドマンの新モデルがリリースされるのは、2011年のGW-9300以来。このあいだにも同じくLANDカテゴリに並ぶマッドマスターはコンスタントに新作を発表しており、機能や性能面の進化をアピールしてきた。なかでも2021年にリリースされたGWG-2000で、特徴的な防塵・防泥性能はそのままに新たにフォージドカーボンベゼルとカーボンコアガード構造を取り入れ、小型・軽量化を推し進めたことは記憶に新しいだろう。このマッドマスターを含め、近年のG-SHOCKはアナログ×デジタルのコンビネーション表示モデルに注力しているが、一方でカシオはG-SHOCKの原点であるデジタル表示のモデルも進化させる必要があると考えた。このことが、12年ぶりとなる新しいマッドマンの開発、その起点となった。

 マッドマンは、GW-9300の時点でも太陽光さえあれば止まらず稼働し続けるタフソーラーや、目標物のない環境でも方角を確認できるコンパスの搭載など、砂漠を数日にわたって駆け抜けるダカールラリーなどにも適したスペックを追求していた。今回の進化にあたっては、基本性能である防塵・防泥性を強化しつつ、同時に操作性も高めるマッドレジスト構造のアップデートが重要視された。はね上げられた泥水や土埃がケースとボタンとの隙間から内部に侵入した際、そのままボタン操作を続けてしまうと泥水や土埃がそこで圧縮され、操作に支障をきたしてしまう。こうした事態を回避するため、GW-9500ではフロントボタンとダイレクトセンサーボタンの形状変更に加え、マッドマスター GWG-2000で採用されていた構造を応用。内部に軟らかいドーナツ状のパーツを用いることでボタンに付随するシャフトの摺動性を高めた。これによりボタン操作を行っても泥水や砂埃が内部で循環、排出しやすくなる仕組みを作り上げている。

 また、GW-9500では二層液晶(デュプレックスLCD)を取り入れることで、コンパス機能の視認性を高めていることも特筆すべきポイントだ。二層液晶の技術自体は2001年にG-SHOCKで初採用されたものだが、当時はディスプレイに色を施す──いわば、デザインアクセントとしての活用が目的だった。だが、ここに機能を付与しようとするとディスプレイを大型化する必要があり、耐衝撃性が確保できないことが判明。そのため、二層液晶の開発は長らく休止していたのだが、裏蓋とケースを一体化させて耐衝撃性を高めるカーボンコアガード構造が開発されたことで、いよいよG-SHOCKにも採用できるようになったのだ。GW-9300では11時位置の小さなサークルに収まっていたコンパスが全面に表示されるようになり、新マッドマンは方位を速やかに確認できる高い視認性を獲得した。また、GW-9500では大型化したディスプレイ上に高度、気圧/温度を表示することができ、ここに方位を含めたトリプルセンサーも同機の見どころとなっている。この進化について、世界最高峰のオフロードレースBaja1000やDAKAR-RALLY、ASIA CROSCOUNTRY RALLYなど、世界中の大自然を相手に走り続けている塙郁夫選手は、マシントラブルによるレース中の立ち往生など少しでも多くの情報が求められる場では特に重宝するだろうと語ってくれた。

 こうしたマッドレジスト構造のアップデートや二層液晶を採用しながら実現したのが、新マッドマンのハイライトとなるケースの薄型化だ。その要となったのが、ガラスの固定方法。これまではボックス型ガラスの上にベゼルを乗せ、ガラスをベゼルで押さえるような手法をとっていた。だが、GW-9500ではガラス上面の周囲を縁に向けて斜めにカットし、ベゼルの裏側もその形状に合わせることで、ベゼルとガラスの表面が高低差なくフラットになる──結果として本体の厚みが抑えられる構造を、MASTER OF Gとして初めて採用した。厚さ18.2mmであったGW-9300と比較すると、3.4mmの薄型化である。塙選手のインプレッションとしては、狭いエンジンルームの奥に手を差し入れて作業を行うようなときにははずした方がいい厚さであるようだが、より軽量でコンパクトになった分、かつてレース参戦時に着用していたカシオの製品と比較しても着用感の点で大きな改善が感じられたという。

 このように本体の薄型化を図りつつも、一方でカシオはG-SHOCKらしい複雑でマッシブなフォルムを諦めなかった。薄型にしながらも量感を持たせるという相反する要素を両立させるべく、GW-9500では薄い本体に数々のパーツを組み合わせて立体感を持たせる手法が用いられた。こうして完成したのがG-SHOCKらしいバルキーなデザインであり、今作は過酷な状況下で着用するMASTER OF Gのなかでも飛び抜けて屈強な印象を与える外観に仕上がっている。近年、カシオはこのマッドマンに限らず技術革新によるコンパクト化を推し進めている。だが一方で、一本軸の通ったタフネスあふれる意匠をひたむきに追求する姿勢には、G-SHOCKのルックスを愛するユーザーに応えようとするブランドの誠実さが感じられるようでもある。

 自然との共生を謳うMASTER OF Gシリーズにラインナップされていることもあり、ケースとベゼル、バンドには再生可能な有機資源を使用したバイオマスプラスチックを採用しているのも新しいマッドマンにふさわしいアップデートだ。そして、もうひとつ見逃せないのが、ケースバックに描かれるモグラのイラスト。コンパスを手にしたモグラが大型ディスプレイから出てくるようなビジュアルとなっており、今回のマッドマンの進化と巧妙にリンクしている。加えて、暗所での視認性を高めるスーパーイルミネーターも、実用的なディテールだ。

 12年ぶりに登場したマッドマンは、バルキーなルックスに反して高い装着感を実現している点にとにかく驚かされる。その要因としては、手首の太さを問わず誰の腕にも馴染むように角度を設定されたケースとバンドに加え、時計本体の薄型・軽量化が図られたことが大きいだろう。さらに大型化した二層液晶によって、時刻や気圧、高度、方位情報を読み取りやすくし、こうした情報を得るためのボタン操作もスムーズになっている。1995年の登場以来、リアルなラリーの現場でも愛されてきたマッドマンの卓越した性能は、新作GW-9500で再び注目を浴びることになりそうだ。