今年の旅のトレンドはマイクロツーリズムなのだとか。長時間の移動に時間をかけるのではなく、近場でのんびり旅気分を味わうスタイルは、気負って海外に出るよりもリラックスした時間を過ごせるだろう。そんな旅に連れ立ちたいのがブレゲのマリーンだ。19世紀フランス海軍のマリンクロノメーターを手がけた偉業にオマージュを捧げ、1990年に誕生した。一昨年、力強いラグや存在感あるインデックスを採用し、より現代的にモデルチェンジ。とはいえダイバーズウォッチのようなハードなマリンアクティビティではなく、シーサイドで過ごすエレガントなひと時に似合う。そしてマイクロツーリズムのように自分らしい時間の過ごし方を教えてくれるのだ。
自分だけの時間を意のままに - マリーン クロノグラフ 5527
時を自分の意のままにしたい。その欲望は多忙な日々を重ねるほど高まる。だからこそ週末は自由に自分だけの時間を過ごす。時計でいえば、進んでいた針を止め、任意の時を計測できるクロノグラフも、そんな気持ちのささやかな解消なのかもしれない。マリーン クロノグラフ 5527は、従来のセンター同軸の分と秒積算針から、30分と12時間計を備えた新たなスタイルに一新。精悍さを増したフェイスに、波模様のエングレービングをセンターサークルに施したホワイトゴールドケースのブルーが似合う。さらにシリーズ初採用のチタンなら軽快な着け心地も魅力だ。多針が織りなす精緻な針の動きや、その位置によって変わる表情を見る度、新たな発見がある。まるで旅のように。
羅針盤となる存在 - マリーン 5517
普段よりも早起きをして、人気のない朝の砂浜を散歩する。潮風にさらされ、洗いざらしの麻シャツにカーキのショーツが心地良い。そんな飾り気のないスタイルにマリーン5517が似合う。中3針のシンプルなフェイスに繊細なギヨシェ仕上げが映え、ゴールドのブレスレットがラグジュアリーな存在感をひと際漂わせる。だがその組み合わせほど、この時計の本質を表現するスタイルはないかもしれない。大自然と向き合いながらも気高さは忘れない。かつてフランス王国海軍の航海を支えた品格がそこにはある。そうして使い続け、ついていった小傷がやがて風格漂う勲章となるだろう。そんな冒険心に満ちた時間をこれから先もずっと一緒に過ごしたい。
水平線の先に想いを馳せる - マリーン アラーム ミュージカル 5547
昼下がり、聞こえてくるのは潮騒だけだ。全てが止まってしまったような世界で、唯一時を刻み続けているのがマリーン アラーム ミュージカル 5547。その静けさの中、独自のアラーム機構が美しい音色で再び時を動かし始めた。アラーム設定時間は3時位置に備えたインダイヤルに表示し、ケース右下のリュウズで操作する。そしてオン/オフは左下のプッシュで切り替え、12時位置の小窓で表示する。簡単な操作なので、つい時間を忘れがちな週末の有能なタイムキーパーとなるだろう。さらに9時位置には24時間の第2時間帯表示を設け、この水平線のはるか先にある世界へと思いを馳せるのだ。マリーンが告げてくれたのはアペリティフ。さらに豊かな時間が広がっていく。
大海原に対峙する真のラグジュアリー - マリーン トゥールビヨン エクアシオン マルシャント 5887
現代のラグジュアリーは、ファッションやクルマしかり、インフォーマルに向かっている。背景には世代交代とともに多様化するライフスタイルがある。そして何よりも従来の概念にとらわれず、気負うことなく自分らしくありたいと願う気持ちだろう。そんな時代の息吹を注ぎ、マリーンは躍動感あるスタイルを具現化する。その一方で、5887のようなブレゲらしい複雑機構の伝統も忘れない。搭載するトゥールビヨンや永久カレンダーに紐付いた均時差表示は、一般の時刻と実際の太陽の位置に対応する真太陽時との差を示す。かつての航海術に欠かせない機能であり、独自の世界観を象徴するのだ。マリーンの名にふさわしい、大海原に対峙する真のラグジュアリーである。
ブレゲ マリーン コレクション
Photos: Yuji Kawata Words: Mitsuru Shibata Styling: Eiji Ishikawa(TRS) Hair&Make:Ryohei Katsuma