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シチズン 先進素材チタニウムに挑んだ開発者たちの50年。辿り着いた新たな地平

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時計界で最も長くチタニウム技術を培ってきたのは、シチズンである。それは精密な加工技術の研鑽だけに留まらず、独自の表面硬化技術を確立し、素材自体も進化させてきた。チタニウムウォッチの先駆者は、時代をリードする表現をかなえるため、革新の歩みを止めない。


来たるべき新時代を見据え幕を開けた シチズンのチタニウム技術開発

1961年、アメリカ初の有人宇宙飛行に成功したマーキュリー3号の宇宙船は、チタニウム製の外殻で覆われていた。そして、工業界の多くの企業が、この金属素材に注目した。シチズンも、その中の1社だ。

月周回軌道上にあるアポロ10号のコマンド&サービスモジュール。宇宙船の外殻にも採用されたチタニウムは、当時、まさに時代の最先端を行く革新的な金属素材であった。

チタニウムの原料となる白の未加工イルメナイト(チタン鉱石)石。チタニウムの名称は、ギリシア神話における地球最初の子、ティーターン(タイタン)にちなんで付けられた。

 1791年に発見されたチタニウムは、1910年に精錬技術が、1950年頃に量産技術が確立された20世紀の新素材だった。 この新素材に真っ先に目を付けたのは、航空業界、宇宙開発事業だった。1958年にNASAがアメリカ初の宇宙船X-15の外装にチタニウムを採用したのは、金属素材としての優れた特性にある。比重はステンレススティールの約60%と軽い。また、弾性と靭性(粘り強さ)に優れ、鉄の2倍以上の破壊強度をもつ。表面に生じる酸化被膜は極めて安定しており、プラチナに匹敵するほどの耐食性も備えている。軽くて強く、そして錆びないチタニウムは、アメリカとソ連が繰り広げていた宇宙開発競争で一躍脚光を浴びることになった。それと同時にこうしたチタニウムの特性は、時計の外装素材としても、理想的なものだった。 

 1960年代当時、腕時計に新たな価値をもたらす新素材を模索していたシチズンは、いち早くチタニウム加工技術に取り組んだ。しかし、その完成までの道のりは、困難を極めた。当時も今も、チタニウムは難加工材に分類され、プレス・切削・研磨のいずれの加工も難しい。チタニウムは高温になると化学的に不安定となり、酸素や窒素と結びつきやすくなるため、熱を帯びるプレス加工を繰り返し行うことはできない。熱を帯びると化学反応を起こして金型とくっついてしまうからだ。そのため、少ないプレス回数で形成する技術が必要とされた。そして切削加工においても、熱を帯びた削りくずは化学的に活性化し、刃先に付着して工具の破損や摩耗を起こす。さらにこの削りくずは着火しやすいため、その扱いは困難を極めたという。また、チタニウムは結晶粒が均一になりづらく、研磨すると凹凸が生じやすい。

 優れた特性をもつ素材であったものの、チタニウムの加工にはコストがかかるため、航空・宇宙産業のような膨大な予算が付く事業でしか使われていなかった。シチズンは、それを腕時計という量産品で用いるという、無謀とも呼べるプロジェクトに挑んだのである。


1970年 - 世界初のチタニウムウォッチが誕生

1970年「X-8 コスモトロン・クロノメーター」。

X-8 コスモトロン・クロノメーターのケースは純度99.6%のチタニウム製で、ベゼル一体型の2ピース構造。当時の技術では、エッジにシャープさが出せず、表面仕上げも荒々しい。量産も難しく、数量を限定しての発売だった。

 新たな工業技術は、トライ&エラーの繰り返しで確立されるのが常である。シチズンの開発者は、チタニウム加工の問題点を1つ1つ、地道に解決していった。プレス加工の最適な圧力やケース形状を探り、切削加工におけるツールの回転速度と送り速度のベストな組み合わせを何度も試した。また、 加工の際に使用する油に関してもいくつも試され、最適なものが選出された。こうして1970年、シチズンは世界で初めてケースにチタニウムを用いた腕時計「X-8 コスモトロン・クロノメーター」を世に送り出すことに成功をしたのである。ポルシェデザインがIWCと共同で開発したヨーロッパ製初のチタニウムウォッチが誕生したのは、1980年のこと。シチズンのチタニウム加工技術は、それより10年も先んじていたのである。

 SF映画に登場する宇宙船にも似たX-8 コスモトロン・クロノメーターの流線型フォルムは、宇宙開発競争で注目を集めたチタニウムに、まさにふさわしいが、これはプレス加工に適した形状を模索した結果、生まれたものだった。表面はチタニウムならではの銀灰色のマットな質感を浮かべている。そして当時、社内では、このくすんだ色みや表面の仕上げに改良の余地ありとの声が上がった。こうしてシチズンの開発陣は、チタニウムの加工技術に加え、審美性を向上させるという課題にも取り組むこととなる。 

左から、 1987年に登場したアテッサ 初代モデル、2000年登場のアスペック、2006年にデビューしたプロマスター エコ・ドライブ電波時計。 

2018年に登場した「エコ・ドライブ ワン」スーパーチタニウム™モデル。優れた成型・加工技術で、1mm厚のムーブメントを収められる精密な極薄ケースが実現された。ケースの稜線は滑らかで、エッジもシャープ。鏡面、サテンと丁寧に仕上げ分けられ、薄くとも、その表情は豊かだ。表面にデュラテクトが施され、キズにも強い。

 1980年代には、チタニウムに耐アレルギーという新たな価値が加わった。1987年に発表された初代「アテッサ」は、低メタルアレルギーを謳ったチタニウムウォッチだった。ブレスレットにも、シチズンとしては初めてチタニウムを使用。そのブレスレットとケースは、特殊なバフや砥石、研磨剤を開発したことで、ソフトな鏡面仕上げがかなえられている。 

 さらにシチズンは、キズ付きやすいというチタニウムの欠点を補う技術の研究・開発も推進してきた。2000年に誕生した「アスペック」は、チタニウムに独自の表面硬化技術「デュラテクト」を初めて施したモデルである。 この後、独自のチタニウム加工技術とこのデュラテクトを施したチタニウムを、シチズンでは「スーパーチタニウム™」と名付け、チタニウムウォッチのパイオニアとして、腕時計のさらなる価値を創出した。 さらに2006年には、新たなデュラテクトMRKとデュラテクトDLCをダブルで用いた「プロマスター エコ・ドライブ電波時計」を発表。硬くキズ付かない黒いチタニウムウォッチという、新境地を開いた。

 そして、2018年。長く研鑽してきたチタニウムの加工・成型技術は、ケース厚わずか3.53mmという極薄の「エコ・ドライブ ワン」スーパーチタニウム™モデルとして結実する。

2018年「エコ・ドライブ ワン」スーパーチタニウム™モデル。


チタニウムの可能性を広げた独自の表面硬化技術 “デュラテクト”

主要なスーパーチタニウム™。左からデュラテクトピンク、デュラテクトサクラ、デュラテクトMRKゴールド、デュラテクトゴールド、デュラテクトDLC、デュラテクトプラチナ。色だけでなく、硬度や特性も異なる。 

写真は、左がSS、右がデュラテクトDLCを施したプレートで、シチズンの試験機によって同じ力を加え、プレートに擦りキズを付けたものである。左のSSと比較すると、擦りキズが付きにくいことがよく分かる。 ※試験は、擦りキズを付けることを目的に実施したもの。

 チタニウムウォッチ開発において、世界で最も長い経験をもつシチズンは、その表現力でも群を抜いている。それをかなえるのが、独自の表面硬化技術「デュラテクト」である。前述の通り、キズが付きやすいチタニウムの欠点を補うために開発された表面硬化技術であり、最初に製品に応用されたのは、イオン化した金属でコーティングするIP(イオンプレーティング)技術によるデュラテクトチタンカーバイト。これによりチタニウムは硬さと同時に、白銀に似た色味を得ることとなった。以降、シチズンはチタニウムをキズ付きにくくするだけに留まらず、同じIP技術を応用してゴールドカラーやプラチナカラーをかなえてきた。いずれも硬度は、1000Hv(ビッカース硬さ)以上。一般的なSSの硬度が185Hv前後なので、はるかに耐傷性に優れるわけだ。

 また、チタニウムにガスを浸透させ、表面に硬化層を形成するデュラテクトMRK技術も確立。これはチタニウムの各結晶の間にガスの分子が入り込むことで密度が高まり、硬くなるという仕組みで、チタニウム本来の耐メタルアレルギー性も保持される。この技術を応用したデュラテクトMRKゴールドは、ゴールドカラーでありながら耐メタルアレルギーを実現した画期的な技術だ。

 炭素原子による硬化被膜をチタニウムの表面に形成するDLC(Diamond-like Carbon)は、他社においても多く用いられている。しかし、 デュラテクトDLCはチタンと炭素膜の密着層にアレルギー性が問われる物質を使用していないがゆえに肌に優しいというチタンの特長を活かしながら、 はがれにくく耐久性により秀でる加工技術。また、表面が極めて滑らかで、肌触りがいいのも魅力だ。

 「素材をコーティングする技術」「素材自体を硬くする技術」そして「両方を複合的に組み合わせる技術」。

 これらは全てチタニウムのもつアレルギーが起きにくいという特性、そして同時に、審美性とデザイン性を追求し、腕時計の素材として用いるべく開発が進められた結果、生み出されたものである。“今よりも一歩先へ”、“もっと良いものができるはず”。シチズンの技術開発の根幹には、常に多くの人に愛されるものを届けたいという思いがあった。それは、 100年以上前にシチズンが時計作りを始めた時に込められた想いでもある。

 結果、シチズンのスーパーチタニウム™は、素材として優れているだけでなく、他社にはないカラーバリエーションをも得た。それらを使い分け、また組み合わせることで、表現の幅は広がり、様々なジャンルの腕時計で、チタニウムならではの軽い着け心地が享受できるようになったのだ。しかも、どれもキズに強く、硬いため、平滑で完璧な鏡面仕上げも可能となった。デュラテクトは、チタニウムに新たな美をもたらし、その美しさを長く留めることにも寄与した。


チタニウム技術50周年記念フラッグシップモデル サテライト ウエーブ GPS F950

シチズン

チタニウム技術50周年記念フラッグシップモデル サテライト ウエーブ GPS F950 

Ref.CC4025-82E。デュラテクトDLC、デュラテクトサクラピンクのスーパーチタニウム™ケース。47.5mm径(14.7mm厚)。10気圧防水。光発電エコ・ドライブGPS衛星電波 Cal.F950。世界限定550本。50万円(税抜)。2021年1月2日発売。

 シチズンは2019年、民間による月面探査プロジェクトに参画することを発表した。提供するのは、スーパーチタニウム™である。1960年代の宇宙開発競争に触発されてスタートしたシチズンのチタニウム技術は、ついに自ら宇宙に挑むまでに至ったのだ。これはスーパーチタニウム™が、金属業界全体でも群を抜いて優れていることの証しだと言えよう。

 「チタニウム技術50周年記念フラッグシップモデル サテライト ウエーブ GPS F950 」は、シチズンのチタニウム技術50周年を記念して開発された限定モデルであり、そこには、1960年代から磨き続けてきたチタニウムの加工技術と表面硬化技術の粋が注がれている。

 ケースは、デュラテクトサクラピンクとデュラテクトDLCの2層構造。こんなバイカラーウォッチをフルチタニウムで作れるのは、シチズンだけであろう。2つのピースは精密に加工され、まるで1つの金属ブロックから成形されたかのような完璧な一体感を成している。3方向にファセットカットされたラグは、エッジがシャープで立体感が際だち、かつ力強い。その形状を受け継ぐブレスレットのリンクは、スタッズにも似てスタイリッシュ。これらラグとブレスレットには繊細なサテン仕上げが施されているが、面ごとにわざわざヘアライン仕上げの方向を変え、パーツ形状がより立体的に美しく見えるように配慮されている。この美しく上質なサテン仕上げは、前述のシチズン独自の技術と、自社開発による特別な加工材なくしては、かなえられないものだ。

 50年に渡るチタニウム技術を結集して生まれた限定モデルのデザインは、宇宙や人工衛星をイメージしている。これは宇宙開発での活用を目指すスーパーチタニウム™のさらなる進化への期待が込められており、次なる革新へスタートするとの決意表明でもある。シチズンのチタニウム技術は、この先も、時代の最先端を行くに違いない。


チタニウム技術50周年記念 コズミックブルー コレクション

 なお、シチズンのチタニウム技術50周年を祝す限定モデルは、1つだけではない。「アテッサ」、「エクシード」、「クロスシー」の3ブランドからも「コズミックブルー コレクション」と名付けられた計4つの記念モデルが登場する。このコレクションでは、いずれもケースとブレスレットにはブラックカラーのデュラテクトDLCを施す。そしてダイヤルは深いブルーをベースに、宇宙空間をイメージしたデザインが採用されている。 

Photos:Jun Udagawa  Styled:Eiji Ishikawa(TRS) Words:Norio Takagi