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グラハム クロノファイター 25th アワー  変えずに変わる25年めの進化

1995年、トリガー式クロノグラフという絶大なインパクトをもって姿を現した、グラハムのクロノファイター。ブランド創立25周年を記念して、その忠実な復刻モデル、25th アワーが登場した。


“Not Everybody’s Watch”という哲学

 18世紀当時、時計の先進国はスイスではなく、イギリスだったことをご存じの方は少なくないだろう。国威発揚のため、大英帝国が航海による海外進出を推進する中、海洋上で正確な時刻を知ることは、現在位置を把握するために不可欠だった。そのため、イギリスの時計師たちは、高精度なマリンクロノメーターの開発で凌ぎを削ったのである。
 同時代を生きた時計師にジョージ・グラハムがいる。彼はイギリス時計産業の父とうたわれたトーマス・トンピオンに師事し、直進式アンクル脱進機(デッドビート脱進機)やシリンダー脱進機などを開発。また、1720年頃には、クロノグラフ(厳密にはストップウォッチ)の原型となる時間計測機構を考案したといわれており、“クロノグラフの父”として、歴史に名を残した。

 そんなジョージ・グラハムのDNAを、現代に甦らせようとした人物がいた。エリック・ロト氏である。彼はイギリス時計の歴史にリスペクトを抱き、1995年に時計ブランド、グラハムを立ち上げた。ジョージ・グラハムが残した数々の発明に対する情熱に共感する一方で、イギリス時計にインスピレーションを得ながら、独創的なスタイルを具現化。万人受けはしないが、一部のツウに強烈に響く時計、即ち“Not Everybody’s Watch”を目指すことになる。

 そして、2020年。グラハムはブランド創立25周年を迎えた。そんな記念すべきという節目に、彼はこうコメントしている。  

 「独立性を保ち続けていることのへの誇り、世界中にいる少数派ながら熱狂的なファンのために、いかなる状況でも特別な時計をつくり続ける勇敢さ、そして、自らの破壊的な才能を表現するために新しい方法を探り続ける好奇心こそが、グラハムを特徴づけているのです」 

 そんなグラハムのCEOであり、クリエイターでもあるエリック・ロト氏。彼が生み出す独自性あふれる時計や、その豊かな発想力には目を見張るものがある。
 “イギリス”という一定の枠を守りながら、海軍や空軍から着想を得たコレクションや、イギリスを代表するサーキット、シルバーストーンの名を冠したスポーティなクロノグラフ、また、ブリティッシュロックをオマージュしたコレクションを発表するなど、非凡な力量を見せてきた。

 その原点というべきモデルが、1995年のデビュー作、クロノファイターである。“クロノグラフの父”といわれるジョージ・グラハムを称えたクロノグラフウォッチであるが、ひと目でこの時計が、特別な存在であると分かる特徴を備えていた。それが、ケース左サイドに設けられた、大型トリガーでクロノグラフを操作する“トリガーシステム”である。
 これは第2次大戦中、イギリス空軍のパイロットが、分厚いグローブを着けたままでも右手の親指だけでクロノグラフを操作できるように開発された機構に範を取ったものだった。インパクトのある外観でありながら、そこに歴史的なストーリー性を忍ばせる。エリック・ロトならではの、一流の演出だった。


クロノファイター ヴィンテージ リミテッド アニバーサリー リ・イシュード “25th アワー”

1995年のブランド創設時に製作されていた、オリジナルのクロノファイター 。

25年の時を経て製作された、オリジナルモデルの特徴をトレースした復刻版。

 グラハム創設から四半世紀というアニバーサリーを迎えた今、1995年のファーストモデルが25th アワーとして復刻を果たした。エリック・ロト自身も、いたく気に入っていた時計の復活を、自らこう説明する。

 「25周年というこの節目を記念して、25本限定の極めてクラシックな特別エディションを製作することにしました。このクロノファイターの復刻モデルは、グラハム創設初期に使用していた改良型バルジュームーブメントを搭載していますが、そのムーブメントはさらにブラッシュアップされ、新たにCOSC認定を受けたものとなっています。そして、ダイヤルは初代クロノファイターをフィーチャーしていますが、ケースは、25年の間により良いものへと進化を遂げた最新のものです。25年という年月は世代の飛躍を意味します。それはグラハムにとって、新たな世界の始まりと言えるでしょう」 

ボックス型に加工された、両面無反射コーティングのサファイアクリスタル風防を採用。このほか、ファーストモデルのテイストを残しながら、実用性や耐久性に配慮したアップデートが施されている。 

バルジュー7750がベースの自動巻きムーブメント、Cal.G1722を搭載。2万8800振動/時、48時間パワーリザーブとスペックは当時と大きく変わらないが、COSC認定クロノメーターの高精度仕様となっている。 


25年を経ても変わらない、圧倒的な存在感

 1995年当時、大型トリガーをもったクロノグラフの衝撃は絶大だったに違いない。なぜなら、 そのようなインパクトをもった時計は、当時、クロノファイターをおいて見られなかったのだから。そこには、創業者エリック・ロト氏の野心や、時計づくりへの情熱が宿っていた。

 四半世紀の間に、時計業界はかつてない活況や熱狂を経験し、その中で“独創的”をうたうド派手なモデルが多数登場した。ユーザーも、ちょっとやそっとのことでは驚かなくなってしまったのではないだろうか。

 しかし、かつてとほぼ同じ姿で登場した25th アワーは、現代においても変わらない圧倒的な存在感を醸し出している。その一方で、時代の波を乗り越えてきた“現代のクラシック”と呼びたくなるような風格を纏っているのは、ただ単に奇をてらったのではなく、そこに歴史的背景や技術的裏付けがあったからこそ、トリガー式クロノグラフという個性が、時間と共に熟成されたからではないか。

 何も変えずに変わる――その進化を歓迎したい。そして、そこに息づいている、創業当時と変わらないエリック・ロト氏の情熱にもリスペクトを。 

クロノファイター ヴィンテージ リミテッド アニバーサリー リ・イシュード “25th アワー”。SSケース、カーフレザーストラップ。ケース径44mm。10気圧防水。世界限定25本。75万円(税抜)

Photos:Tetsuya Niikura(SIGNO) Styling: Hidetoshi Nakato(TRS) Text:Yasushi Matsuami