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ロンジン スピリットコレクション モダンなハイパフォーマンスウォッチに宿る開拓者としての歴史と矜持

ロンジンは、190年を超える歴史のなかで名だたる飛行家や冒険家たちをハイパフォーマンスウォッチでサポートしてきた。ロンジン スピリットコレクションは、彼らのパイオニア精神を今に受け継ぐ。ロンジンが先駆となった機構であるフライバッククロノグラフをよみがえらせ、ブランドのヘリテージを継承する。

「翼よ! あれがパリの灯だ」──1927年5月21日、パリのル・ブルジェ空港に到達したチャールズ・リンドバーグは、世界で初めて大西洋単独無着陸飛行に成功した。出発地であるニューヨーク・ルーズベルト飛行場からの飛行時間は33時間30分。これを計時したのは、ロンジンのクロノメーターであった。

 1919年に国際航空連盟(FAI)の公式サプライヤーに認定されたロンジンは、航空史にも輝くパイロットウォッチやコックピット計器の数々をアーカイブに持つ。1929年には、アメリカ海軍フィリップ・ヴァン・ホーン・ウィームス大佐が1927年に考案した、秒インデックスを刻んだダイヤル中央の回転ディスクで秒針を0位置に合わせられるセコンドセッティング ウォッチを製作。1931年には世界初の回転ベゼルを考案した。

 ウィームス大佐に航法を学んだチャールズ・リンドバーグは、回転ベゼルとダイヤルの目盛りで経度と緯度が計算できる機構を考案。これをロンジンは、1930年に回転ディスク式のセコンドセッティング ウォッチをベースに実現してみせた。今も傑作パイロットウォッチとの誉れ高きアワーアングル ウォッチである。

飛行服に身を包んだ南極探検家リチャード・バード(1928年)。

スピリット・オブ・セントルイス号の前に立つチャールズ・リンドバーグ(1927年)。

写真右はクライド・パングボーン、左はヒュー・ハーンドン(1931年)。

Photo credit/チャールズ・リンドバーグ:Bettmann/Getty Images クライド・パングボーンとヒュー・ハーンドン:Austrian Archives/Imagno/Getty Images リチャード・バード/Photo by © CORBIS/Corbis via Getty Images

 また、1931年に太平洋無着陸横断飛行に世界で初めて成功したクライド・パングボーンとヒュー・ハーンドンの愛機ミス・ビードル号には、ロンジンが彼らのために製作した2本の時針を備えたダブルタイムゾーン付きコックピット クロックが取り付けられていた。これに代表されるように、ロンジンのクロノメーター コックピット クロックは、実に多くの冒険飛行を正確な計時で支えてきた。

 航空史におけるパイオニアたちがロンジンを愛用したのは、彼らが求める精度や機能に応えられるだけの優れた技術力を有していたからにほかならない。数々の航空史における偉業を支えた発明を叶えたチャレンジ精神は、現在のロンジンにも受け継がれている。


コレクションに息づくロンジンのアーカイブ

ロンジン スピリット  Zulu Time

Ref.L3.812.4.63.6 45万3200円(税込)

1925年に誕生した角型ズールータイムの機構と名を今に継承する。その外装はヘアラインをメインとし、エッジにポリッシュを効かせた仕上げが美しい。両方向回転ベゼルは正確に1時間刻みで回せる24ノッチ仕様である。

針と植字インデックスはゴールドカラーとし、ベージュのスーパールミノバを配したレトロな装いである。GMT針は根元をダイヤルと同色に染め、4本の針による煩雑さを解消。

裏蓋はビス留めながら、10気圧防水を確保。その内に潜むCal.L844.4は、クロノメーター取得の高精度と72時間駆動を誇る。ヒゲゼンマイはシリコン製で、耐磁性にも優れる。

 前述したセコンドセッティング ウォッチとアワーアングル ウォッチは、それぞれ考案者の名を冠し、現在のヘリテージコレクションにもラインナップされているが、今年2月には、風防内のアワーマーカーを回転ベゼルで操作する1935年誕生のマジェテックをロンジン パイロット マジェテックとしてよみがえらせている。
 以前、ロンジンにインタビューした際、同ブランドは「ロンジンのアーカイブは、宝の山だ」と語った。それは単に復刻するに値するモデルが数多いというだけに留まらず、新たなコレクションを創出する際のインスピレーションの源が豊富であることも意味する。

 2022年に誕生したロンジン スピリットは、航空史のパイオニアたちを支えた歴代パイロットウォッチからエッセンスを抽出し、生まれたコレクションだ。見やすいダイヤル、針やアラビア数字の植字インデックスのデザインなど、パイロットウォッチのヘリテージを受け継ぐ。
 また「ロンジンは、クロノグラフやハイビートなどさまざまなメカニズムでもパイオニアでした。そうしたブランドを象徴する機構を、インハウスムーブメントでラインナップしていきたい」とも同ブランドは語っていた。その言葉は、昨年のロンジン スピリット Zulu Timeで具現化された。

モントレ テュルク(1908年)

ロンジン ズールータイム(1925年)

ロンジン コックピットクロック(1931年)

ロンジン パイロットウォッチ(1935年)

ロンジン コックピットクロック(1937年)

 ズールー(ZULU)とは、協定世界時(UTC)やグリニッジ標準時(GMT)と同じ意味の航空用語である。すなわちズールータイムとは、コレクション初のGMTウォッチだ。1908年にオスマン帝国向けに世界初のデュアルタイムゾーン懐中時計を製作したロンジンは、GMT機構のパイオニアであったのだ。この機構は、1925年に角型腕時計に受け継がれ、そのモデル名こそがズールータイムだった。また同じGMT機構は、前述したダブルタイムゾーン付きコックピット クロックをはじめ、多くの航空計器にも転用されてきた。

 ブランドの重要なヘリテージであるメカニズムを、ロンジンは現代に再現してみせたのである。リューズで前後に操作できる主時針にカレンダーも連動し、24時間GMT針はホームタイムを示す設計。さらにセラミック製インレイに24時間インデックスを刻んだベゼルは両方向回転式で、時差分だけ回せば第3のタイムゾーンを知ることができる。実に使い勝手がいいGMTウォッチは世界的に大ヒットとなり、コレクションを代表するモデルとなった。

ロンジン スピリット 37mm

Ref.L3.410.4.63.6 35万7500円(税込)

サンレイ仕上げのシャンパンカラーダイヤルは37mmモデル専用。秒針も既存にあった先端の赤染をやめ、よりエレガントな印象を高めた。秒針のダイヤモンドシェイプが、文字盤上の小さな菱形を正確に指し示す。

写真左は2020年からある既存の40mm、SSモデル。ダイヤルをコーポレートカラーのブルーに染める。右は昨年追加されたチタンケース仕様で、デイト表示もなく、よりレトロな雰囲気である。

 ロンジン スピリット Zulu Timeに限らず、ロンジン スピリットはクロノメーター取得と10気圧の高防水、シリコン製ヒゲゼンマイによる高耐磁を共通仕様としている。デイリーウォッチとして極めて優秀なスペックを兼ね備えるコレクションは、ベーシックな3針モデルの造作にも、細かな気配りが行き届いている。

 過去のパイロットウォッチに倣い、時針と分針は長さが大きく変えられていて優れた視認性をもたらす。それぞれの針の長さは、時針はアラビア数字の植字インデックスの、分針はフランジに刻んだバーインデックスの、内側をちょうど指すように整えられているのが、見ていて実に心地いい。秒針の先端に取り付けられたダイヤモンドシェイプのマーカーは、植字インデックスの外側に置いた同じダイヤモンドシェイプの目盛りとピッタリと重なり合う形状になっているのも見事だ。

左が37mm、右が40mm。デイト表示の位置や、ダイヤル仕上げは明らかに異なるが、ケース表面を同心円状のヘアライン仕上げとしているのはコレクション共通のドレスコード。ケース側面とブレスレットには縦にヘアラインが入れられている。

 さらに昨年投入された小振りな37mmケースでは、デイト窓が既存の3時位置から6時位置に移され、シンメトリーな美が創出された。その窓も単に四角く打ち抜くだけに留まらず、斜めに面取りされている。ダイヤルには、サンレイ加工を施して光の具合で色味が変化するニュアンスを付けた。これらの上品な仕立ては、サイズ感と相まって男女でシェアできるジェンダーレスウォッチとして実に優秀である。

 また既存の40mmケースには、昨年チタンケースモデルも登場した。ファブリックストラップと組み合わされたことでも、一層軽快なつけ心地がもたらされた。先人のパイオニア精神を受け継ぐロンジン スピリットコレクションは、機構と大きさ、素材でバリエーションを増やし、新たなファンを開拓する。


ロンジンを象徴するフライバッククロノグラフがついに復活

ロンジン スピリット フライバック

Ref.L3.821.4.53.2 64万1300円(税込)

ロンジンに久しぶりに帰還したフライバッククロノグラフは、ブラックセラミック製両方向回転ベゼルにより、勇壮なたたずまいを呈する。時・分とアラビア数字のデザインは、1935年に生まれた13ZNにも見られるものである。

コレクション初のシースルーバックからはCal.791.4の雄姿を見ることができる。コラムホイールとネジはPVD仕上げではなく、本物のブルースティール製。ローターのグローブマークには華やかにゴールドカラーをあしらう。

マットブラックのダイヤルに、ゴールドカラーがあしらわれたインダイヤルのメタルリングやクロノグラフ秒針が華やかに煌めく。フランジのギリギリまで伸ばしたクロノグラフ秒針の造作は、既存のクロノグラフと同じだ。

 そんなロンジン スピリット コレクションに今年、ブランドを象徴するヘリテージな機構が帰ってきた。1925年に最初の搭載モデルの記録が残り、1936年には特許を取得したフライバッククロノグラフである。当時使われたCal.13ZNは、今もヴィンテージウォッチの愛好家が探し求める名機として名高い。またロンジンは、クロノグラフの防水化にも取り組み、プッシュボタンを押している時にも水が侵入しない構造を考案し、1938年に特許を取得している。

 クロノグラフを止めることなくリセットでき、新たな計時が始まるフライバック機構は、飛行ステージのタイミングが連続的に計れるため、パイロットには実に有益なメカニズムだ。高い防水性は、雨天でも飛ぶ飛行士のためには重要な機構である。これらが備わるロンジンのクロノグラフは、世界で初めて南極上空を飛行したリチャード・バードをはじめ、多くのパイロットがこぞって愛用していた。

1937年に誕生した最初の防水時計クロノグラフが掲載されたロンジンの広告。描かれているのは、Ref.4720である。防水プッシュボタンの独特の形状はキノコ型と称される。

 新作のロンジン スピリット フライバックは、このフライバック機構と優れた防水性というヘリテージを受け継ぐモデルである。搭載するCal.L791.4は、コレクションのスタートアップ時からあるロンジン スピリット クロノグラフで使われるコラムホイール式のCal.L688.4がベース。クロノメーター認定の高精度とシリコン製ヒゲゼンマイによる耐磁性を継承する。コレクションとして初めてシースルーバック化された裏蓋から見えるCal.L791.4は、コラムホイールの右上にフライバック機構用のハンマーが確認できる。コラムホイールとすべてのネジはブルースティール製だ。既存モデルが裏蓋に刻むグローブマークとブランドロゴである両翼の砂時計をリデザインしてローターに掲げるなど、裏蓋から見せるにふさわしい審美性も与えられている。

 セラミック製の両方向回転ベゼルは、30秒ピッチ仕様。レーザーで彫った目盛りに入れるスーパールミノバは5分単位に留め、スッキリと整理しているのが、好印象である。同時に1分単位の目盛りも彫りが深く、視認性は十分に確保されている。

 2カウンターのブラックダイヤルは、ロンジン最初の防水性クロノグラフであるRef.4270に似ている。植字の5つ星の上に印字されたFLYBACKの文字が、誇らしげである。これまたデイト表示が外されているのも、多くの時計愛好家に歓迎されるディテールに違いない。マットなブラックダイヤルに、ポリッシュ仕上げを施したゴールドカラーの時・分針とクロノグラフ秒針がクッキリと浮き立つ。インダイヤルにはゴールドのメタルリングを取り付け、内側を同心円状のスネイル装飾を施す。さらに針をブラッシュ仕上げとすることで、視覚的に明確に切り分けている配慮の細かさだ。クロノグラフ秒針の先端は、秒インデックスの外側を取り囲む円上をキッチリと指すよう長さが整えられている。ダイヤルと秒針先端のダイヤモンドシェイプが、きれいに重なる造作は、3針モデルと同じ。ロンジンは、久しぶりの登場となるフライバッククロノグラフのディテールを実に丁寧に作り込んだ。結果、元来はミリタリーなツールウォッチであったパイロットクロノグラフにもかかわらず、本機は上品な雰囲気をまとうに至った。近年、質感を格段に向上させてきたロンジンの外装技術が、ロンジン スプリット フライバックにおいても存分に発揮されている。

Cal.13.33Zベース/2プッシャー フライバッククロノグラフ(1928年)

Cal.13.33Zベース/2プッシャー フライバッククロノグラフ クッションケース(1929年)

Cal.13ZN/最初の量産型フライバッククロノグラフ(1936年)

Cal.12.68Zベース/フライバック機付きのストップセコンドパイロットウォッチ(1946年)

Cal.30CH/フライバッククロノグラフ(1948年)

Cal.30CHベース/超防水ダイバーフライバッククロノグラフ(1968年)

 ロンジンは1987年、アワーアングルウォッチをオリジナルの5分の4サイズで限定復刻した。これが大ヒットしたことが、ヘリテージコレクションを生むきっかけとなり、また現代に続く復刻時計ブームの嚆矢となった。こうしてヘリテージコレクションは、今やロンジンの屋台骨のひとつとなった。

 一方、ロンジン スピリットは復刻に頼ることなく、飛行家や冒険をサポートしてきた当時のパイオニア精神を巧みに取り込みながら、現代的に再解釈してみせた新たな主力コレクションである。その成功の裏には、190年を超える歴史のなかで積み重ねてきた優れたアーカイブの存在があり、本社のデザイナーはそこからディテールを厳選し、慎重に組み合わせることで適度なレトロ感を伴うスタイリッシュなモダンウォッチに仕立て上げてみせた。前述したとおり、高精度・高防水・高耐磁であるのも、普段使いには実に心強い。ロンジン スピリットコレクションに見られるデザインとスペックは、現代のライフスタイルにマッチし、日々の暮らしのなかでその魅力を存分に発揮してくれることだろう。


ロンジン スピリットコレクション ギャラリー
 

Photos:Tetsuya Niikura(SIGNO) Styled:Eiji Ishikawa(TRS) Words:Norio Takagi