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In Partnership

Racing Machines on the Wrist リシャール・ミル RM 65-01 オートマティック スプリットセコンド クロノグラフ マクラーレン W1 時計エンジニアリングの結晶

リシャール・ミルとマクラーレンとのコラボレーションモデル第4弾が、ついに誕生。そのベースとなったのは今夏、新装がリリースされたばかりのRM 65-01。メゾンで最も複雑なクロノグラフムーブメントが、ニューボディに搭載された。

2016年にマクラーレンとの長期的なパートナーシップを締結したリシャール・ミルは、これまで3つのコラボレーションモデルをリリースしてきた。4作目となる今回は、2017年登場の初作以来となるスプリットセコンド クロノグラフが装備された。RM 65-01 オートマティック スプリットセコンド クロノグラフ マクラーレン W1が搭載するCal.RMAC4は、10振動/秒のハイビート機であり、垂直クラッチ+6歯のコラムホイールを採用。そしてリシャール・ミルではお馴染みであるリューズのファンクションセレクターが備わり、さらにケースサイド8時位置のボタンを押すと香箱を短時間で巻き上げられる独自の高速巻き上げ機構を備えている。エクストリームマシンにふさわしい、高性能エンジンが用意された。


インスピレーションソース:マクラーレン W1

 コラボ最新作は、歴代のマクラーレンモデルにも使用されたことがあるリシャール・ミル独自の、カーボンTPT®を受け継ぐ。木目にも似たテクスチャー浮かべるベゼルは、グレード5チタンのクレネレーション(壁)で縁取られ、2つの“くびれ”を持つ官能的ともいえるプロポーションに整えられている。モチーフとしたのは、モデル名にあるように新型スーパーカー、マクラーレン W1。なるほど、その最新のエアロダイナミクスに基づいたボディを真上から見ると、コンパクトで力強い形状やハイウエストラインを、くぼんだ“ダブル”ベゼルが写し取っていると分かる。このデザインをかなえるため、リシャール・ミルのクリエイティブチームは、W1の最初のクレイモデルにアクセスすることを許可されたという。


 またスケルトンのグレード5チタン製ダイヤルは、マクラーレンのホイールに軽さと強さをもたらすフレーム状のリムパターンから着想を得て、デザインされた。そして各ディテールにマクラーレンを象徴するカラーを散りばめた様子は、W1のダッシュボードを彷彿とさせる。と同時に、色分けによって、時計自体の視認性も向上している。


 マクラーレンとのコラボによって、リシャール・ミルは新たな表現を生み出し続けている。


課題となったダブルベゼル

 しかし新たな表現の実現には、生みの苦しみが伴った。くぼんだ“ダブル”ベゼルは、ポリッシュ仕上げのグレード5チタン製ベゼルの上に、カーボンTPT®製のセカンドベゼルが重なる構造。2つのくびれがある複雑なフォルムは、6~12時方向に強くカーブしている。ベゼル上部の厚さは最薄部でわずか0.5mmしかない。


 チタンの場合、加工は難しいが、切削で生じた内部応力を焼きなまして除去すれば完成後に形が歪むことはない。対してカーボンTPT®は、焼きなましによる応力除去ができない。弾性も高い上に、これほど薄いと、往々にして歪みが生じることは想像に難くない。2つのパーツがピッタリと重なるようになるまで、8つのプロトタイプを作成し、加工方法を改良し続けたという。色と質感とで明確なコントラストを成す鏡面状のグレード5チタン製のクレネレーションにより、ベゼルのプロポーションはより際立った。さらに2つのくびれからはカーボンTPT®製ミドルケースの上面が見え、立体感を際立たせている。


 官能的な造形美を引き立てるダブルベゼルは、リシャール・ミルのケース部門、プロアート・プロトタシプスの優れた切削加工技術の賜物。カーボンTPT®製のミドルケースとケースバックも含め、数百カ所に及ぶ接触センサーによる1000分の1ミリ単位の検査を経て、完璧なプロポーションがかなえられる。


新たなダイヤルデザインはホイールリムパターンがモチーフ

 上部がY字状になった二股のフレームがホイールの中心部で交差するようにつながる。マクラーレン W1のホイールリムパターンをモチーフとしたスケルトンダイヤルにも、リシャール・ミルは難加工材であるグレード5チタンを用いた。むろん、軽量化が目的である。そしてホイールリムを模したフレーム構造は、より軽く仕立てること可能とした。


 叩く・切る・磨くのいずれも手を焼くチタンの各フレームの内側に傾斜した面を造作。これにより十分な強度を得ると同時に、手作業による研磨加工で仕上げることにより豊かな立体感が創出された。こうしたシャープで立体感を伴うフレーム構造をダイヤルに見せる手法を、リシャール・ミルは長く得意としてきた。ダイヤルを無くし、トラス構造のムーブメントを露にすることで、また近年はさまざまな付加機能にもフレーム状のカラフルなインジケーターを与えることで、独自の造形をかなえている。


 質感の違いによるモノトーンのダイヤルフレームに、インデックスやチャプターリングなどに用いたブルー、イエロー、そしてマクラーレン パパイヤオレンジが映え、優れた視認性も実現された。メゾンのクリエイティブチームはダイヤルのデザインと仕上げ、色を十分に練り上げ、優れた加工技術により、それらは実現された。


Performance Everywhere

 マクラーレン W1の圧倒的なパフォーマンスは、ダブルベゼルとダイヤルデザインで表現されただけに留まらない。例えば、リューズ形状は928PSもの最高出力をタイヤへと伝えるドライブシャフトのスプラインをモチーフとする。これもグレード5チタン製とすることで軽量化。さらにマクラーレン パパイアオレンジのラバーコーティングにより操作性を高め、先端にはマクラーレンのスピードマークを掲げることでW1のわずか2.7秒という0→100km/h加速の優れたパフォーマンスを伝えている。


 クロノグラフと高速巻き上げのプッシュボタンのフレーム形状も、ホイールリムがモチーフ。そしてボタン本体のデザインは、マクラーレンのスーパーカーの軽量シートに見られるカットアウトを基にしている。ラバーストラップの切れ込みは、W1のエンジンカバーやグランドエフェクト・スポイラーのフォイルやダクトから着想を得た。


 そして何より10振動/秒のハイビートであることが、最高速350km/hものW1のパフォーマンスをまさに現す。高速振動により、クロノグラフ秒針の動きは実に滑らか。これもまた、W1の優れた安定性能を想起させる。


最も複雑なクロノグラフキャリバー RMAC4

 前述したように、RM 65-01 オートマティック スプリットセコンド クロノグラフ マクラーレン W1が搭載するCal.RMAC4は、リシャール・ミルの現行機の中でもっとも複雑なクロノグラフムーブメントである。同キャリバーは、ヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエ(以下、ヴォーシェ)との共同開発により、2020年に誕生。10振動/秒+自動巻きのスプリットセコンド クロノグラフは当時、唯一無二の存在であった。

 ヴォーシェ製の手巻きスプリットセコンドのエボーシュを用い、自社でトノー形に整え直し、オフセンタークラッチの構造を生かして自動巻き化。さらファンクションセレクターとプッシュボタンによる高速巻き上げ機構を追加した。スプリットセコンドを含む秒・分・時の各積算計が横一列に並ぶ設計はヴォーシェによるもので、頑強なストレートハンマーとダイレクトリセットによるカッチリとした操作感がかなえられている。


 リシャール・ミルは、2001年のファーストモデルのリリースからわずか3年後の04年に、メゾン初のスプリットセコンドモデルRM 004 スプリットセコンド クロノグラフをAPルノー・エ・パピ(現オーデマ ピゲ ル・ロックル)と共同開発している。すなわちスプリットセコンドは、時計界のF1を標榜するリシャール・ミルにとって極めて重要なエンジンであると、早い段階から位置付けられていたのである。


 10振動/秒+垂直クラッチという極めて素性の良いヴォーシェのエボーシュを独自にチューンナップしたCal.RMAC4(RM 65-01)は、現行のスプリットセコンド クロノグラフの中でも、トップレベルの高性能機。マクラーレンに、最高のエンジンが捧げられた。


過去のマクラーレンコラボモデルたち

Words:Norio Takagi