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セイコー 金春色があしらわれたデイリーウォッチを手に思い巡らす銀座歴史トリップ

セイコー創業140周年の最終章を飾る、銀座をイメージしたカラーとパターンに創業地へのオマージュを込めたアニバーサリーモデル。個性的だが、洗練された雰囲気を纏う時計を手に時代の変革を受け入れ、そして新時代に輝く新しい自分を目指して。

 1881年、服部金太郎が銀座に設立した服部時計店。これこそがセイコーウオッチの原点ということは、時計好きなら多くの方がご存じだろう。そして時計店の創業から140周年を迎えた2021年。セイコーはこのアニバーサリーを記念するさまざまな限定モデルを発表しているが、その第3弾として、始まりの地である銀座をイメージしたデザインとカラーを取り入れた4つのモデルが登場した。


銀座で、そして日本で時を刻んできたセイコー

銀座・和光の時計塔(初代)。1894年(明治27年)竣工。画像:セイコーウオッチ

 “銀座”の名の由来は、1612年(慶長17年)に幕府によって銀貨の鋳造と管理を行う銀座役所がこの地に作られたことに始まる。セイコーの創業者である服部金太郎は、現在の銀座5丁目界隈の京橋采女町に生まれた。そして時計技術を学び、実家の近くに服部時計店を開業。彼は優れた時計技術者であると同時に、優れたビジネスマンでもあった。1892年に時計製造工場の精工舎を設立し、1895年には懐中時計「タイムキーパー」の製造も開始した。一方、遡ること1年前。1894年(明治27年)には現在の銀座4丁目の角にあった新聞社の社屋を買い取って時計店(現在の和光)として改装し、さらに増改築して屋上に美しい時計塔を作っている。これこそ、かの有名な銀座・和光の時計塔(初代)である。30分ごとに時刻を打つ時計塔は、銀座だけでなく東京のシンボルとなり、当時の教科書でも紹介されたという。

 1923年の関東大震災では工場や時計店などが甚大な被害を受けた(なお、初代時計塔は改築のため震災前に解体を終え難を逃れたが、震災の影響で建設計画は中止に。1929年に時計塔の建設が再開された)。そこで、服部時計店では火事によって溶けてしまった修理預かりの時計たちを、すべて同等の新品に交換することを発表し、その誠実な企業理念でも多くの人を感心させた。大きな被害を受けたが、それでも翌年には初めて「SEIKO」銘を冠した腕時計を発売。そこには「精巧な時計を作る」という精工舎創業時の原点に立ち返ろうという想いが込められていた。セイコーは再び、銀座から日本へと時を発信し始めたのだ。

 現在の時計塔は2代目である。その完成は1932年(昭和7年)。上野の東京国立博物館の設計でも知られる渡辺 仁が手掛けた。交差点に対して緩やかに弧を描くネオ・ルネッサンス様式の建物の上には、初代よりもさらに優雅な時計塔が作られた。毎正時にウェストミンスター式のチャイムが流れるこの時計塔は、銀座を行き交う人々に時を告げるだけでなく、昨年は新型コロナ禍の中で活動する医療従事者への感謝を込めて、午後7時に時計台の鐘を鳴らす「命の鐘」というプロジェクトを行った。今では日本のシンボルの一つといっても過言ではないだろう。

 時を経て、現在の銀座は多くの時計ブランドのブティックが集まる世界屈指の“時計の街”となった。その中心には今もセイコーと時計塔がある。ここから日本の時計文化が世界へと発信されるのだ。

現在の2代目時計塔。


伝統と革新を両輪とする銀座という文化

セイコー プロスペックス 1959 アルピニスト 現代デザイン Ref.SBDC151

1959年に発売されたスポーツウォッチ「ローレル アルピニスト」のデザインをベースにしつつ、モダンな魅力を加えた。ケース径は38mmと腕への収まりがよく、シースルーバックからは約70時間のパワーリザーブを誇る自社製ムーブメント Cal.6R35を鑑賞できる。

 

 そもそも銀座は、日本橋のような老舗が集まるエリアではなかった。現在のような街になったきっかけは、1872年(明治5年)に大火事が発生して街の再建が必要だったことと、隣の新橋に鉄道が開業したことにある。明治政府は銀座を新しい商業地にすることを決め、火事に強いレンガを使った“モダンでハイカラ”な街作りが進められた。こうして銀座は、文明開化を象徴する世界の最先端が集まる街として始まったのだ。

 第3弾となるセイコー創業140周年記念限定モデルは、こうした銀座の個性を時計のデザインに取り入れている。例えばダイヤルのパターンは、南北を貫く銀座のメイン通りである銀座通りの歩道に施された石畳をイメージしたものだ。ダイヤルの色調はブルーグレーだが、これは銀座に数多く並び立つガラス張りの建物をイメージしている。かつてはレンガ作りの街だった銀座だが、関東大震災や東京大空襲によって壊滅的な被害を受けるたびに、新陳代謝が行われ進化してきた。伝統が息づく街でありながら、世界的な建築家が手掛けたビルも多く、常に新しさを探求する刺激に満ちた街でもある。それもまた銀座らしさなのだ。

 そんな銀座の進取な気質を表すのが“金春色(こんぱるいろ)”である。これはいわゆるターコイズブルーに近い色味だが、明治時代に化学染料として輸入された当時のトレンドカラーだった。古来の藍染にはない明るい色味は新鮮だったようで、これを好んで着物などに取り入れたのが新進気鋭の新橋芸者たちだったことから“新橋色”と呼ばれ、さらに本拠地であった金春新道からとって“金春色”とも呼ばれるようになったという。本作では、各モデルの秒針にこの金春色がさりげなくあしらわれた。

 歴史を大切にしながらも、進化をいとわない。それこそが銀座の文化の本質なのである。

 銀座の文化的な深みを取り入れたセイコー創業140周年記念限定モデル 第3弾の子細についてさらに深く見ていこう。

 例えば石畳をイメージしたダイヤルは、放射状に広がるように線を入れている。石と石がぶつかる場所は斜線で表現しているが、こういった作りは実際の石畳でも見ることができる。さらに実際の石畳は色が統一されていないのだが、そういったモザイク的な美しい表現も、ダイヤル装飾で巧みに表現している。

放射状に広がる石畳模様のダイヤルと、アルピニストの特徴的な三角インデックスが、美しい調和を見せる。

 ダイヤルはいずれもブルーグレーだが、実はモデルによってダイヤル素材が異なるため雰囲気にも違いがある。例えばセイコー プロスペックスは金属ダイヤルであるため発色が美しい。セイコー プレザージュは小窓を設けたレイヤーダイヤルのため、奥行き感のある表現を楽しめる。セイコー アストロンはソーラーモデルであるため、プラスティック製ダイヤルを使用しており、マットな風合いに。そしてセイコー ルキアは華やかさを演出するように白蝶貝を使い、裏側からの塗装で色調を加えている。
 そしてダイヤルのブルーグレーに映えるよう、美しいアクセントとして取り入れられているのが秒針の金春色である。これが本コレクションに、ほかにはない個性を与えているのだ。

セイコー プレザージュ Style 60’s Ref.SARY207

1964年に発売された「クラウン クロノグラフ」をデザインソースにしつつ、9時位置の小窓からは、時計の鼓動がよく見える。11時位置のインダイヤルは24時間表示。立体的なダイヤル表現からも、セイコーの技術力が垣間見える。

 

 アニバーサリーを記念した限定モデルは、定番品とは違ったユニークな表現が取り入れられるのが常だ。例えばブルー系ダイヤルは時計業界における人気のカラーだが、本コレクションのそれは単調ではない“銀座的”なブルーグレーであり、特徴的なカラーで主張を楽しめる。また、石畳をイメージした細やかなダイヤル表現は、鑑賞するだけでも心が湧きたつディテールだ。そして金春色の秒針は、個性的なダイヤルデザインにも埋没しない際立つ個性を時計に付け加える。

 カラーリング、そしてダイヤル装飾と、本コレクションのディテールはそれ単体で見ると主張が強いが、時計全体としてはバランスよくまとまっている。個性的ではあるが、その主張にはどこか優雅で洗練された雰囲気があり、つけるとどんなスタイルにも違和感なく馴染み、そして日常のワンシーンに自然と溶け込む。
 個性的な一つ一つが全体として共存し、調和する。それはまさに歴史を今に伝える伝統的な建物や風景、そして近代的で機能的な建築が共存を果たす銀座のイメージそのものだ。

セイコー アストロン ソーラー電波モデル Ref.SBXY023

1969年にデビューした「クオーツ アストロン」を想起させるボリューム感のあるケースデザインが特徴。世界5ヵ国6局(日本、中国、アメリカ、ドイツ、イギリス)の標準電波に対応しており、受信範囲内ではいつでも正確な時刻を示す。ケースは10.6mmと薄型で着用感に優れる。

 

 トレンドを意識しながらも、自分らしい個性を楽しむ…。大きく変化する時代のなかで、誰もが意識すべきことだが、それは同時に常に進化する街、“銀座”の特徴でもある。
 身につける時計は、自分を表現する名刺のようなものだ。セイコー創業140周年記念限定モデルは、新しい時代、新しい自分を楽しむことができる大人たちの時計なのだ。

セイコー ルキア I Collection ワールドタイム機能つきソーラー電波モデル Ref.SSQV098

28㎜という小ぶりサイズのレディスウォッチで、白蝶貝ダイヤルには8石のダイヤモンドインデックスをあしらう。こちらにも電波修正機能が搭載されており、世界5ヵ国6局に対応。さらにソーラー発電によって時計を動かしているので、電池交換や針修正の面倒もない。

 

銀座発、世界行き。

 日本の時計文化を牽引し、銀座の時計塔に代表されるように、正確な時間で市民生活を支えてきたセイコー。その140年の歩みは銀座から始まり、さまざまな時計となって人々の生活に深く浸透してきた。
 思えば江戸時代の日本では不定時法を用いており、時間に対する考え方は欧米とまったく違っていた。そんな日本人の生活様式が明治維新によって近代化され、時間も定時法へと変化。そういった時代の変革期に生まれた服部金太郎は、時計や正確な時刻を通じて、日本が近代化し、世界的な経済大国になる礎を作ってきたともいえる。

 銀座と結びついたセイコー創業140周年記念限定モデルは、こうした街が持つ文化的側面に触れることでより魅力的なものに感じられるだろう。


セイコー創業140周年記念限定モデル 第3弾
 

〇撮影協力
銀座・和光/麻布テーラー銀座7th店

Photos:Yoshinori Eto Photo of aerial view by flashfilm/Getty Images Styled:Eiji Ishikawa(TRS) Words:Tetsuo Shinoda