国産初となるダイバーズウォッチを生みだし、以来次々と傑作モデルを打ち出してきたセイコー。その長きに渡る発展の歴史を受け継ぐシリーズとして、セイコー プロスペックスは高い評価を受けている。特に今年はセイコー ダイバーズが産声を上げて55年目を迎える節目の年。多彩なアニバーサリーモデルがリリースされ世界的にも話題となっている。
そのフィナーレを飾り11月に発売されるのが「1970 メカニカルダイバーズ 現代デザイン(SBDC123)」と「1965 メカニカルダイバーズ 復刻デザイン(SBDX039)」の2モデルである。堅牢な作り込みに加え精度を追求したセイコー プロスペックスは、スポーティでありながら知的な印象も兼備しており、現代社会をアクティブに生きる男子にうってつけの一本。ブレスレットモデルならば特にビジネスシーンに、シリコンモデルは休日のアウトドアシーンなどによりマッチするだろう。単にエレガントなだけの時計とは異なる、リアルな価値をもつ本格機械式時計として、実に見逃せない存在といえる。
今回取り上げる2つの限定ダイバーズには、モデルとなったアーカイブピースがある。「1970 メカニカルダイバーズ 現代デザイン」は、いわゆる“植村ダイバーズ”(写真右)をベースとしたもの。“植村ダイバーズ”とは冒険家の植村直己氏が1974~76年にかけて行った、北極圏1万2000km犬ぞりの旅に携行したセイコー製のダイバーズのこと。セイコーにおける自動巻きダイバーズの初期3大ヘリテージモデルの1つであり、近未来的な流線形のフォルムと4時位置のリューズもデザインのポイントである。
対して「1965 メカニカルダイバーズ 復刻デザイン」は、国産初の本格ダイバーズウォッチ(写真左)にオマージュを捧げたもの。オリジナルモデルは、信頼性、安全性を第一に追求し設計され、1960年代に南極の過酷な環境下で使用されることで、その信頼性を実証した。当時としては驚異的な150m防水機能を備えていた伝説的な傑作だ。
1965 メカニカルダイバーズ 復刻デザイン
過酷な冬山や極地、高い水圧のかかる深海といった、エクストリームな環境にその出自をもつセイコー ダイバーズ。しかしながら、今やダイバーズウォッチは、過酷な挑戦にのみ用いられるアイテムではない。タフなスペックを誇る防水時計は、アクティブライフ全般に対応する万能ギアと言えるものだ。
例えば、湖畔にて1人で過ごすようなシーンでも、セイコー プロスペックスならば頼れる相棒として実に申し分ない。堅牢性を誇る本格ダイバーズゆえに、水辺のアクティビティはもちろん、ラフな作業時にも着けられる。さらにこのモデルは、ケース素材においてもスペシャルな仕様。世界最高レベルの耐食性をもつセイコー独自のエバーブリリアントスチールは、大きな特徴のひとつである。オリジナルに忠実でありつつどこか特別な存在感があるのは、白く美しい輝きを放つこのケース素材も密かに関係しているのだ。ケース側面は、荒々しい氷山の浮かぶ南極海の情景を想起させるヘアライン仕上げが施されている。
この1本の美点として見逃せないポイントに、静謐なブルーダイヤルがある。マリンブルーの文字盤は、セイコー ダイバーズの信頼性探求における始まりの地(南極海)をイメージしたものだ。光を受けて輝く艶もまた、セイコー ダイバーズが見せる歴史の一部と映る。もちろん見た目だけのモデルではない。本機にはダイバーズ専用となるCal.8L35自動巻きムーブメントが搭載されており、正確な時刻を刻む高精度を実現させている。
この時計は、1人リラックスを求めて、日常の喧騒から離れたソロキャンプに携えるのももちろん良いが、過酷な冬の雪山のように敢えてチャレンジングな環境に連れ出したくなるような、日常を超える挑戦心を与えてくれる時計なのである。
1970 メカニカルダイバーズ 現代デザイン
働くシーンにもネオ・スタンダードなスタイルが求められる昨今。スーツも従来のクラシカルなものではなく、ストレッチ素材やソフトな仕立てのセットアップが広く支持を得てきている。ただし、タイを外し寛ぎ感を優先した着こなしは、ある意味シリアスさに欠ける側面を持つ。その弱点を補うためにも存在感ある小物を積極的に取り入れたいところ。端正かつ知的なルックスに加え、クールなメタルブレスレットを擁したダイバーズのコーディネートなら、ネオ・スタンダードなオンスタイルも骨太の軸が通ること確実だ。
この「1970 メカニカルダイバーズ 現代デザイン」モデルは、武骨なまでに高い視認性を誇る針やインデックスに加え、タフなステンレススティールケースも相まって、腕元にアクティブかつ信頼感を添える効果をもつ。ただしケース厚は、この手のダイバーズとしては控えめとも言える13.2㎜。終日の着用においてもストレスを感じさせないスマート仕立てもまた、魅力的な個性のひとつとなっている。
このモデルの、機能を純粋に追求したデザインからは、どこか知的な匂いが漂う。虚飾を排した3針というレイアウトは、シリアスなビジネススタイルにマッチする大きな理由となる。
新色のマリンブルーというカラーリングも特筆すべきポイント。これは、南極の海を想起させるカラーであり、爽快感溢れる明るめな発色のマリンブルーの色彩は、ダークに偏りがちなビジネスの装いに、若々しいエッセンスを添える効果も期待できる。
"植村ダイバーズ"は、世界最高峰エベレストに日本人として初めて登頂を達成した持ち主を確かに鼓舞したことだろう。このSBDC123は、現代の日常やビジネスにおいていつもより少し挑戦するために、力を与えてくれるに違いない。
Photos: Tetsuya Niikura(SIGNO) Video:Ryutaro Hori Words: Tsuyoshi Hasegawa Styling: Eiji Ishikawa(TRS) Hair&Make:Tomokazu Akutsu
〇衣装協力
<ビジネススタイル>ジャケット6万8000円/チルコロ 1901、ニット2万5000円/フィリッポ ローレンティス、パンツ3万3000円/チルコロ 1901、シューズ5万9000円/フィリップモデル(全てトヨダトレーディング プレスルーム☎︎03-5350-5567)、バッグ11万円/J&M デヴィッドソン(J&M デヴィッドソン 青山店☎︎03-6427-1810)
<キャンプスタイル>、コート5万5000円、シャツ2万3000円、パンツ1万9000円、ハット9000円/全てバブアー(バブアー 銀座店☎︎03-6264-5569)、シューズ、スタイリスト私物