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自然素材と職人技の結晶が導くサステナブルでオンリーワンな価値創造 TOWARD SUSTAINABLE“ONE AND ONLY”

伝統性と時代の空気感が息づく藍染和紙ダイヤルモデルは、“次なる理想を創る”という製品哲学を掲げるザ・シチズンにふさわしい、オンリーワンの価値あるモデルといって差し支えない。

本特集はHODINKEE MAGAZINE Japan Edition Vol.5に掲載されています。

 1976年に世界初のアナログ式太陽電池ウォッチ、クリストロン ソーラーセルを発売以来、シチズンは定期的な電池交換を不要とする画期的なこの技術を、「エコ・ドライブ」の名のもとに進化させてきた。環境への意識の高まりに合わせて、機能価値のみならず光を透過するさまざまなダイヤルを開発しながら、感性に訴えるクリエイティブな表現にも注力してきた。

 そうしたなか、2017年に初めて土佐和紙をダイヤルに採用したエコ・ドライブ搭載モデルが、ザ・シチズンから登場。伝統的な製法により、極限の薄さと丈夫さを兼備しながら、柔らかく美しい風合いの和紙ダイヤルは、光の透過性にも優れ、エコ・ドライブとの親和性の高さを印象づけた。2019年には、第2弾として日本古来の色の名を踏まえた深碧(しんぺき)と深紅(しんく)、そして深い色合いの青を加えた3色の和紙ダイヤルモデルを発表し、みやびやかな情景が表現された。2020年にはザ・シチズン誕生25周年記念として、土佐和紙に金箔、続いてプラチナ箔を施したダイヤルを持つ、華やかさや豊かさを表現したモデルも登場。2022年6月には、国の重要無形文化財に指定されている手漉き和紙、土佐清帳紙を使用した金無垢のザ・シチズンもお目見えした。こうした和紙ダイヤルの深化の流れを受けて、初の試みとなる藍染和紙ダイヤルを採用したザ・シチズンがベールを脱ぐ。ひとつは年差±1秒を誇るエコ・ドライブムーブメントCal.0100を搭載したAQ6110-10L、もうひとつは年差±5秒のCal.A060を搭載したAQ4091-56Mである。

 シチズン時計で商品企画に携わる吉川茂樹氏は、藍染和紙の採用に至った経緯を、こう語る。「2017年に初の土佐和紙ダイヤルモデルを発表以来、エコ・ドライブとの親和性が高い和紙を探求しながら、さまざまな表現や、原料の楮(こうぞ)からダイヤルになるまでの工程から見えてくる魅力を伝えてきました。5年目を迎えるにあたり、和紙と同じく、ものづくりのストーリーが魅力になるものを求めるなかで、日本人の心に染みついていて、海外でもジャパンブルーとして認知されている藍染に着目しました」


伝統の美と、サステナビリティ

 藍染和紙を使用した製品はこれまでにもあったが、時計のダイヤルとして採用されたのはおそらくこれが初。加えて世界一薄いと称される土佐和紙を阿波藍(あわあい)で染めた製品もまれであろう。耐久性や仕上がりの際のムラなど、両方を掛け合わせるには多くの課題が横たわっていたからだ。「だからこそ、チャレンジする意味があると思った」と、前出の吉川氏は言う。「シチズンはエコ・ドライブやチタニウムケースをはじめ、世界初となる技術や機能を次々と開発してきた歴史がありますから」

 新たな試みのパートナーは、Watanabe’sという藍染工房だった。代表で藍師・染師の渡邉健太氏は、1986年山形県生まれの36歳。東京で働いていたとき、たまたま藍染め体験の機会を通じて魅せられ、藍染の聖地・徳島に移住し、キャリアをスタートさせた。

 伝統的な藍染には、気の遠くなるような手間暇がかかる。蓼藍(たであい)という植物の葉を収穫して乾燥させ、数カ月に及ぶ発酵・熟成のあとに“すくも”という堆肥状の染料の元をつくり、これに灰汁(あく)などを加え、さらに発酵・還元させる“藍建て(あいだて)”と呼ばれる工程を経て、やっと染液が出来上がる。これに紙を浸しては取り出すという作業を繰り返すのだが、染液のなかの発酵菌の活動が染め上がりを左右するため、気温や湿度などの繊細な管理はもちろん、熟練の技と経験が求められる。Watanabe’sは伝統に則り、蓼藍(たであい)の栽培、土壌造りから染色、製作まで、天然にこだわりながらすべてを一貫して手がけている。ひとつひとつの部品から時計のすべてを一貫製造できる、シチズンのマニュファクチュールとしてのスタンスとも相通じるものがあった。ともに新しい試みに積極的なことも、両者を結びつけた。

ザ・シチズン キャリバー0100 高精度年差±1秒 エコ・ドライブ Ref.AQ6110-10L 特定店限定モデル 88万円(左)

ザ・シチズン 高精度年差±5秒 エコ・ドライブ Ref.AQ4091-56M 44万円(右)

世界一薄いと称される土佐典具帖紙に、阿波藍(あわあい)を手染めしたダイヤルを採用。6時位置にザ・シチズンの先見性とホスピタリティを象徴するイーグルマークを配置した点は2モデル共通だが、写真上のAQ6110-10Lでは、藍染和紙ダイヤルの上板に12時側、6時側から内側に向かって薄くなるグラデーション加工を施し、ツートンのブルーで大空と大海原を表現。写真下のAQ4091-56Mでは、あえてグラデーションを施さず、自由に舞い飛ぶ鷲の眼下に広がる北の海原のブルーをイメージした。

 ダイヤル製作を担当したシチズン時計マニュファクチャリングでダイヤル技術の要素開発に携わる山影大輔氏は、こう振り返る。「極めて薄い和紙を染めるためにクリアする課題がいくつもありました。まずは耐久性。渡邉さんからの提案で、和紙にこんにゃく糊を塗り強度を高めてから染めることで解決しました。光の透過性を確保しながら、藍染らしい色調に仕上げるために試作を繰り返し、デザイナーとディスカッションしながら目標の色みを決めて、そこをターゲットに染める方向で進めました。今回の和紙ダイヤルは化学薬品を一切排除し、天然成分のみを用いた“天然灰汁発酵建て(てんねんあくはっこうだて)”という伝統技法で染められています。個体差も工芸品としての魅力ですから、一定の範囲に収めながら、通常よりも染色度合いの許容の幅を広げています」

 藍染和紙ダイヤルモデルには、サステナブルなメッセージも込められている。そう語るのは吉川氏だ。「藍染の発酵菌は、色が出なくなり役目を終えると、畑の土に返すそうなんです。それが肥やしとなって、また上質な蓼藍(たであい)が育つ。エコ・ドライブをはじめ、サスティナブルな社会の実現に向けて取り組むシチズンの方向性にも合致します。和紙の世界観を追求してきたように、藍染の可能性も掘り下げていきたいのです」

 山影氏もこう指摘する。「この2モデルに限りませんが、ザ・シチズンでは最長10年間無償保証・無償点検サービスが付帯します(シチズンオーナーズクラブ登録が必要)。藍染は長期にわたって色あせることがなく、使うほどに深みが増すのも魅力。長く、大切に使うことは、サステナビリティにつながると思います」

 自然由来のものだけで染め重ねられた、さえた色合いと深み。和の優しさとモダンなニュアンスとが絶妙に融合し、伝統性と時代の空気感が息づく藍染和紙ダイヤルモデルは、“次なる理想を創る”という製品哲学を掲げるザ・シチズンにふさわしい、オンリーワンの価値あるモデルといって差し支えない。

Photographs:Jun Udagawa Styled:Eiji Ishikawa(TRS) Words:Yasushi Matsuami