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ティソ シュマン・デ・トゥレル。ル・ロックルの道の名を冠した、スイス・クラシカルウォッチの王道

ル・ロックルで続けてきた、伝統的な時計製造のノウハウを伝えるティソのコレクション、シュマン・デ・トゥレル。この重要な時計に今回、ブランドは深くメスを入れた。

 この時計の名は、スイス、ル・ロックルに位置する本社社屋前から伸びる小道に由来する。ティソ シュマン・デ・トゥレルは、ブランドが長年培ってきたクラシックな時計作りを体現するコレクションだ。今回、新たに投入された39mmの小振りなケースを中心とするラインナップは、ダイヤルや針、ケース、ブレスレットのディテールにいたるまで洗練され、上質なエレガンスをまとった。

ティソ シュマン・デ・トゥレル

 時代を超えて愛されてきたコレクションに手を加えるのは、難しい。しかし、ティソはその困難にあえて挑んだ。シュマン・デ・トゥレルはブランドにとって、伝統的な時計製造のノウハウを伝える重要なコレクションである。ティソはこの時計をより繊細で洗練されたものにすることを目標に掲げ、2年の歳月をかけながらディテールを精査していった。ティソはスイスのル・ロックルで時計製造を続けてきた由緒あるブランドだ。1853年から続くその歴史は、新生シュマン・デ・トゥレルにおいてはどのように生かされているのだろう。

ティソ ル・ロックル本社

スイスはル・ロックルの地、トゥレル通りに工房を構えるティソ本社。

 2023年に170周年を迎えたティソは、いくつもの“世界初”を実現してきた。1853年にはふたつのタイムゾーンを統合した初の懐中時計を開発しており、1930年に誕生したティソ アンチマグネティークは世界初の耐磁性腕時計として発売された。1971年には時計としては前例のないプラスチックケースを導入し、1999年にはベゼルに触れて操作するティソ T-タッチを発表して電子技術の面でも時計界をリードしてきた。

 一方でより多くの人に時計を届けたいと望むティソは、クラシックカテゴリーも重要な柱であるという考えからシンプルなドレスウォッチを常にラインナップに取り入れてきた。ティソはクラシックウォッチのデザインにおける確かな知見を持っており、バナナ・ウォッチのように数多くのフォロワーを生みだした傑作をアーカイブとして豊富に保有している。デザイナーはそれらに触発されながら、既存のティソ シュマン・デ・トゥレルのディテールに丁寧にメスを入れていった。

1956年製、ティソ シースター。

1930年に発売された、ティソ アンチマグネティーク。

 ティソいわく、今回の新デザインにおいては特定のアーカイブからインスピレーションを得たわけではないという。だが、新生ティソ シュマン・デ・トゥレルを特徴づけるディテールのいくつかは、過去のタイムピースにも見ることができる。例えば、センターに向かってなだらかに盛り上がるボンベダイヤルと植字のバーインデックスの組み合わせは、1950年代ごろのティソ シースターなどでも試みられたものだ。また、ランセット(柳葉)型の針は前述したティソ アンチマグネティークの時代から使われている。これらのダイヤルとインデックス、針の造作、造形は、クラシカルなデザインの時計における定番でもある。単純に過去のモデルを復刻するのではなく、ブランドが長年手がけてきた伝統的な意匠を厳選、組み合わせることで、ティソ シュマン・デ・トゥレルは普遍のクラシカルデザインを確立したのだ。


ダイヤル、外装、ムーブメント。細部にこそ宿るティソのこだわり
ティソ シュマン・デ・トゥレル グレー39mm

 ティソ シュマン・デ・トゥレルは、ル・ロックルの中心地にある時計塔から引用したローマンインデックスに象徴される、エレガントな顔立ちを特徴とするコレクションだ。だが、今回新たにバーインデックスモデルが加わったことで、プレーンなサンレイダイヤルと相まってクラシカルさだけでなくコンテンポラリーな雰囲気も獲得した印象である。また、フラットからボンベに改められたダイヤルの曲面に合わせてサンレイを施すことは本来難しいものだが、その仕上がりは実に繊細。光を受けることで、ダイヤルのグレーが色のニュアンスを微妙に変化させる様子も美しい。外装はヘアラインをメインにしている点はこれまでと同じだが、ポリッシュ面が増やされたことでさらなる気品を生み出している。

ティソ シュマン・デ・トゥレル グレー39mm

 新しいティソ シュマン・デ・トゥレルを手に取って傾けて見ると、ダイヤルとサファイアクリスタルガラスの柔らかなふくらみが確認できる。ダイヤルのカーブに合わせて、秒針と分針の先端近く、そして植字のバーインデックスがわずかに曲げられていることにも気がつくだろう。また、ランセット型の時分針は左右がポリッシュとブラストに仕上げ分けられ、まるで峰型の針であるかのような立体感を創出している。デイト窓の切り込みの造形も凝っており、小さなドットインデックスのきらめきも十分だ。ダイヤルを織り成すすべてのディテールに丁寧に手間をかけたティソ シュマン・デ・トゥレルの審美性は、極めて高い。

 今作ではダイヤルや風防だけでなく、ケース自体にも丸みが与えられている。裏蓋の外周を絞り、装着時の横顔を実際よりも薄く見せているのだ。加えて、ケースサイドに施すヘアライン仕上げはスリムに改め、裏蓋側にはポリッシュ面が入り立体感が生まれたことで、さらなる高級感も獲得。ブレスレットが5連であるのはこれまでと同様だが、両サイドには新たに面取りとポリッシュが加えられ、よりいっそうしなやかな装着も実感できる。スリムなリンクは丁寧に組まれており剛性も十分だ。さらに、ムーブメントにも進化が見られた。Cal.POWERMATIC 80.111のヒゲゼンマイを新合金ニヴァクロン™製としたことで、耐磁性能を飛躍的に高めたのだ。1920年にいち早く実現した耐磁時計の伝統は、今回のティソ シュマン・デ・トゥレルにも色濃く受け継がれている。

左が今回の新作シュマン・デ・トゥレル(ブルー、39mm径)、右は旧モデル(ブルー、42mm径)。

 新生ティソ シュマン・デ・トゥレルには、これまでにも見られたクル・ド・パリとローマンインデックスを組み合わせたダイヤルもラインナップされる。しかし新旧を並べて見比べてみると、ボンベダイヤルやドーム型のサファイアクリスタルガラスによってクラシック感が強まった印象だ。ランセット型針の仕上げを左右で変えたのも、上質さが増した要因だろう。ケースサイドの仕上げはヘアライン部分が明らかにスリムになっていることが分かり、ラグの下側部分に生まれたポリッシュ面のきらめきにより表情はいっそう豊かになっている。ブランドのクラシックを担うモデルを、さらに繊細で洗練されたものへ、という目標をティソは見事に叶えてみせた。

 20世紀を代表する巨匠建築家のひとりであるミース・ファン・デル・ローエは、“神は細部に宿る”との金言を残した。ティソの新シュマン・デ・トゥレルは、これをまさに体現している。同モデルを構成するあらゆるディテールに気配りしたことで、美観を各段に高めてみせたのだから。その仕上がりは、他社の同価格帯の時計をはるかに凌駕するほど良質である。また、最長80時間駆動で高耐磁と実用性に優れるCal.POWERMATIC 80.111は、わずかなチューニングでC.O.S.C.が取得可能なレベルの高精度も併せ持つ。これらは、エントリーキャリバーとしては異例の性能である。

 より多くの人々へ時計を届けることを目標に掲げ、クラシックカテゴリーに注力を続けてきたティソ。新生シュマン・デ・トゥレルは、そんなブランドのステートメントを十二分に体現している。

ティソ シュマン・デ・トゥレル ウォッチギャラリー

Photos:Tetsuya Niikura(SIGNO) Styled:Eiji Ishikawa(TRS) Words:Norio Takagi