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ユリス・ナルダン マリーンに宿るクラシックと技術力の結晶たるフリーク

マリンクロノメーターが導いた現在地。

今年創業175周年を迎えたユリス・ナルダンの歴史は、つねにチャレンジとともにあった。創業者ユリス・ナルダンは、時計の精度と耐久性、信頼性の象徴としてマリンクロノメーターに照準を定め、開発した数々の時計は海外交易を支え、世界にブランドの名を知らしめたのだ。伝統は現在も受け継がれ、トラディショナルからコンテンポラリーまで幅広く展開するコレクションはいずれも独創性を追求する。マリーンとフリークという2本の代表作から、挑戦を続けるブランドの真髄を探る。


マリーン コレクション

 19世紀、スイス山岳の工房で洋上の船舶時計に思いを巡らす。そこには豊かな発想と革新を追求する精緻な技術が不可欠だったに違いない。やがてユリス・ナルダンのマリンクロノメーターは、苛酷な大海原でも正確な時を刻み、航海を支えた。それはまさに未知の世界を目指す冒険心そのものであり、海の男にとってステイタスシンボルでもあったのだ。

 ブランドのフラッグシップであるマリーンは、その歴史を現代に継承する。腕時計としてのコレクションは、創業150周年に当たる1996年にスタートし、現在では3針からクロノグラフ、アニュアルカレンダー、トゥールビヨンなど多彩なラインナップを揃える。いずれのモデルもベゼル幅を狭めて一杯に広げた文字盤に、スモールセコンドとローマ数字のインデックスを備え、これも視認性を重視したマリンクロノメーター譲りのデザインだ。

 その血統をより現代的に磨き上げたモデルが2017年に登場したマリーン トルピユールである。かつて世界中の海軍将校や船長たちに愛用されたポケットクロノメーターをモチーフに、ケースは従来の43㎜径からサイズダウンし、厚みも約3㎜薄くなった。さらに軽量化によって装着感は増し、オンとオフのシーンを問わず着けられる。デッキウォッチを意味するモデル名には、どんな状況でも変わることなく時を刻み続ける精神が宿るのだ。

 マリーン トルピユールは、2017年に発表され、翌年実装された自社製の自動巻きCal.UN-118を搭載する。シンプルな2針スモールセコンドであり、アンクルとガンギ車には独自のダイヤモンシルを採用。これはダイヤモンドとシリコンを組み合わせた自社開発の先端素材で、軽量かつ硬質に加え、耐衝撃性や耐磁性を備え、摩擦も抑えるため、注油を不要にした。さらに特許取得のシリシウム製ヒゲゼンマイを組み合わせることで、クロノメーターとそれ以上の精度を追求した自社規格(モデルによりCOSC認定)をいずれもクリアし、パワーリザーブも60時間を誇る。

 創業175周年を祝す記念限定モデルは、こうした最新鋭のキャリバーを内に秘める一方、文字盤には古典的なブルーのグラン・フー エナメル装飾を施した。ここに注がれるのがドンツェ・カドラン社の最高峰のエナメル技術だ。

 同社は1972年にマスターエナメラーと讃えられたフランシス・ドンツェによって創業され、ユリス・ナルダンの文字盤も数多く手がけた。両者の絆は深まり、やがて2011年にその傘下に入ったのも自然の帰結といえるだろう。

 そしていまやグラン・フーを始め、クロワゾネ、シャンルベ、フランケといったエナメル技法を駆使し、ユリス・ナルダンの至高の美を支えている。ブルー文字盤はエナメル独特の艶が風格を漂わせ、さらにマリンクロノメーターを出自にした次世代の先進技術を漂わせる。そんな時を超越した技術の邂逅こそブランドの真価である。


フリーク コレクション

 チャレンジというユリス・ナルダンのDNAは、さらに高いハードルに向けてその本領を発揮する。その証左となるのがフリークだろう。1970年代になるとクォーツ時計の台頭からブランドも経営難に陥り、新体制へと刷新。1985年に経営に参画したのがロルフ・W・シュナイダーだ。天才時計師ルードヴィッヒ・エクスリン博士の協力を得て、渾身の超複雑時計シリーズ“天文三部作”を発表し、まさにブランドの中興の祖になったのである。

 そして挑戦のベクトルは、伝統的な時計技術の復活から次世代に向けたさらなる進化へと舵を切った。21世紀を迎えたその年、満を持して発表されたのがフリークだ。誰もが驚嘆したのはまずその斬新なスタイル。そこには文字盤も時分針もリューズすらない。中央の軸によってムーブメント自体が1時間に1回転して分を指し、時間は回転プレートで表示する。だがその斬新な機構を作動させるには、新たな脱進機とともに、軽量性と高硬度を併せ持つ新素材が不可欠だった。

 そこで着目したのがシリシウムだ。研究を重ね、世界で初めて時計での実用化に成功し、これを採用したデュアルダイレクト脱進機によって、フリークに命が吹き込まれたのだ。その後、シリコンによる素材革命がムーブメント技術を大きく前進させたことはいうまでもないだろう。フリークはデビューからいまも刷新を続ける。それはチャレンジをけっして止めないブランドのアイコンだからだ。

 その存在をフリーク足らしめる独創的な機構がカルーセルである。これはトゥールビヨンと同様に、調速脱進機を重力の影響から守るという目的で19世紀末に開発された。その違いは、トゥールビヨンが調速脱進機をケージ状のキャリッジに収納し、回転させるのに対し、カルーセルは調速脱進機を設けたベースそのものを回転させるという点にある。その名が回転台や回転木馬を意味するのもここからきている。

 さらにフリークは、調速脱進機に時針を組み合わせたセンターカルーセルにすることで、重力の影響から逃れるばかりでなく、より個性的なデザインを得たのである。そして時代の先進技術を導入し、フリーク自体も進化を続ける。新設計の脱進機や先端素材ダイヤモンドシルの採用、トゥールビヨンとの合体、さらに自動巻き化など。なかでもフリークXは、デイリーユースという新たな可能性を開いたエポックメイキングだ。基本コンセプトを崩すことなく、43㎜径という程よいサイズに、自動巻きの実用性を備える。

 そして最大の特徴はリューズの新設だ。従来のフリークは、表側のベゼルで時刻を調整し、裏側のベゼルでゼンマイを巻き上げたが、これをリューズで代用する。その使い勝手に加え、72時間というパワーリザーブも日常使いに遜色ないだろう。これはけっしてエントリーモデルではなく、エフォートレスという魅力を備えた新世代のフリークであり、その名の通り、つねに異端であり、マニアックであり続けるのだ。


伝統が息づき、未来を見据える

 マリーン トルピユールとフリークX。現代のユリス・ナルダンを代表する2本は、ヴィンテージとフューチャーという対極にあるようでいて、そこには変わらぬ精神が貫かれている。それはチャレンジというDNAであり、唯一無二の存在であり続けるための技術と革新の追求だ。今年175周年を迎えたユリス・ナルダンの歩みがそうであったように、伝統が息づき、未来を見据える、そんなブランドらしさに溢れるのだ。そして両コレクションのような個性豊かなバリエーションを揃えた魅力は、多様化する現代のライフスタイルにもマッチするだろう。既成概念に縛られることなく、新たな高級時計を示唆する独自の存在感は、時代の感性を映し出すモダニティとともに多くの時計愛好家を虜にするのだ。

Photos: Yoshinori Eto Words: Mitsuru Shibata Styled: Hidetoshi Nakato

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