タキシードやボールガウンを着たゲストがジュウ渓谷のオテル デ オルロジェに集まってくると、2023年6月3日の土曜日がフィリップ・デュフォーとその家族にとってビッグナイトになることは明らかだった。
会場を見渡せば、カリ・ヴティライネン氏、グローネフェルド兄弟、ローラン・フェリエ氏、マックス・ブッサー氏など、独立時計界のレジェンドたちが目に飛び込んでくる。ジャン-クロード・ビバー氏などの時計業界の巨人、時計学者で俳優のオルディス・ホッジ、カメルーンやハイチからの大使、そして遠く日本からのコレクターが集まり、満員御礼の状態だったのだ。その目的はただひとつ、フィリップ・デュフォー氏の75歳の誕生日を祝うことだった。
イベント開始前に談笑する(左から)ローラン・フェリエ氏、フィリップ・デュフォー氏、カリ・ヴティライネン氏。
デュフォー氏は、鮮やかなピンクのスリーピース・スーツに、プロトタイプのシンプリシティ No.000と1900年代初頭のル・サンティエのスクールウォッチ(ミニッツリピーター・クロノグラフ)のふたつの時計を身につけていた。これほど多彩な人々をまとめ、個性とスタイルでそれを実現できる世界で唯一の人かもしれない。
この夜は、歌(エリザベート・デュフォー氏と夫妻の娘ダニエラ・デュフォー氏による美しいパフォーマンスがあった)、食事、飲み物、ダンスで盛り上がったが、14週間前にデュフォー氏がビッグニュースを予告していたため、全体にざわついた雰囲気が漂っていた。誰もが腕時計を期待していたのだ。案の定、時計はあったのだが、それ以上のものがあった。
会場の様子を見下ろす。
パーティーのゲストの手首に、フィリップ・デュフォーのシンプリシティが。
エリザベート・デュフォー氏は、フィリップ & エリザベート・デュフォー財団の設立を発表した。これは、(時計産業ではなく)食料、水、医療、住宅、教育、環境保護など、人道的に必要な複数の分野に焦点を当てた非営利団体だ。すでにインド、ペルー、マダガスカル、レバノン、インドネシア、そしてスイスの農村部ヴァレ・ド・ジュウ(ジュウ渓谷)での医療アクセスを改善するプロジェクトのための資金調達が進行中である。また、「若い才能とあらゆる手工芸へのアクセスを拡大する」ことで、世界中で急成長する芸術職人や女性をサポートすることも目指している。
デュフォー財団は、「忠実な顧客や時計製造の友人など、この取り組みに貴重な援助を提供してくれる人たちがいる」と語っている。「私たちの助けを必要としている人々の生活に大きな変化をもたらすことができると確信している」とも述べた。しかし、これらのプロジェクトを軌道に乗せるために、フィリップ・デュフォー氏は彼の最もアイコニックな時計と言えるシンプリシティを製作し、財団を支援するために今年末にオークションに出品することにしたのだ。
プラチナのケースに収められた37mmのシンプリシティは、(最初で最後の)アベンチュリン文字盤、3-6-9-12が数字のアプライドインデックスを備え、デュフォー氏を象徴する驚異的な仕上げが施された。裏蓋のシリアルナンバーの代わりに、プレートには "unique "とだけ書かれている。
この時計が非営利団体を支援するためにガラの会場で公開されると、コレクターや支援者たちが、写真で何度も紹介されている偉大な時計職人の手のキャストの横に展示された時計を覗き見ようと、すぐにケースの周りに人だかりが。この時計がいくらで取引されるかは、誰にも分からない。シンプリシティは、直接入手するのが信じられないほど難しいだけでなく、オークションでは100万ドル(1億円超え)の値がつく時計になっている。収益がチャリティに使われるということで、価格はさらに高くなることだろう。
発表当時、このプロジェクトは3年以上の歳月を経ており、軌道に乗るまでにはかなりの労力を要したが、夫妻はこのプロジェクトが「世界にポジティブな変化をもたらすことを願う、情熱的な人間と慈善の旅」の始まりになることを願っていると述べている。フィリップ&エリザベート・デュフォー氏を創設者とする役員会では、マルシャル・フラニエール氏がディレクター、マリセラ・ランクー氏が副ディレクター、クロード・スフェール氏、ダニエラ・デュフォー氏がメンバーとして活躍する。
パーティーが進むにつれ、多くの人が誕生日を迎えたデュフォー氏と、夫を支えるだけでなくより広い世界に変化をもたらすために懸命に働く妻のエリザベート氏を、力強く熱烈に支持する声が上がった。
ダニエラ、フィリップ、エリザベート・デュフォー(右)。
フィリップ・デュフォー氏の75歳の誕生日と彼らの努力を祝して、フィリップ氏とエリザベート氏の創業者メッセージからの引用して本記事を締めくくりたいと思う。
「私たちは、世界が直面している、どちらかというと暗い未来に見える主要な課題すべてに開かれた慈善事業財団を望んでいました。人道的、環境的、教育的、公衆衛生的など、緊急の状況がさまざまあります。私たちは、すべての問題を解決できるとは言いませんが、より大きな利益に貢献することで、最も恵まれない人々の苦しみや絶望を軽減するために、できることをしたいと切に願っています。“細き流れも大河となる”ということわざがあるように」
フィリップ & エリザベート・デュフォー財団の詳細、およびプロジェクトへの寄付については、公式サイトをご覧ください。
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