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2024年は、1884年創業のブライトリングにとって140周年にあたる記念すべき年だ。このアニバーサリーイヤーに合わせ、ブライトリングは一年をとおしてブランドの歴史に燦然と輝く“初挑戦の数々”を伝えていく予定だと語っている。そしてその鏑矢(こうし)として3月に放たれたのが、ブランドの“空”の分野における偉業を称えるエアロスペースの新作、エアロスペース B70 オービターだ。
ブランドのプロフェッショナルシリーズの一翼を担う多機能なアナ・デジモデルとして、1985年の登場よりエアロスペースは時代にあったアップデートを繰り返してきた。初代であるRef.80360からしてすでに永久カレンダーにクロノグラフ、第二時間帯表示などパイロットに必要とされる機能を備えており、軽くて錆びにくいチタン外装を採用することで高い着用感も実現していた。以降、他ブランドのアナ・デジウォッチ人気が衰えていったのちもエアロスペースは独自の進化を続け、ブライトリング B-1、クロノスペース、そしてエマージェンシーといった派生モデルを数多く生み出していく。特に1995年登場のエマージェンシーは救難信号発信機(ロケーター ビーコン)を搭載した画期的なモデルで、アンテナのコイルをほどくと国際航空遭難信号周波数で独自のSOS信号が発信され、墜落した救助者の場所を追跡することができた。その特殊性から同モデルはプロパイロットを中心に人気を博し、スイスの冒険家であり飛行家であるベルトラン・ピカール(Bertrand Piccard)氏もまた、エマージェンシー、ひいてはエアロスペースを愛用するひとりだった。
今回新たに発表されたブライトリング エアロスペース B70 オービターと同名の気球、ブライトリング オービター3でピカール氏が熱気球による世界初の無着陸世界一周飛行に挑戦したのは1999年のことだ。彼とブライアン・ジョーンズ(Brian Jones)氏を乗せたオービター3は、スイスのシャトー・デーを同年3月1日に離陸、最長飛行距離4万814kmおよび最長飛行時間477時間47分を経て3月21日にエジプトの砂漠に着陸した。それまでにもリチャード・ブランソンやスティーブ・フォセットなど名だたる冒険家が挑み、ことごとく失敗していたことから、1999年のこの挑戦には大きな期待が寄せられていたという(ピカール自身も1997年、98年と二度の失敗を経験していた)。そして、このときのピカール氏の手首には、オービター3のカプセルと同じオレンジをダイヤルに纏ったブライトリング エマージェンシーが巻かれていた。
今年の3月に発売されたエアロスペース B70 オービターは、ピカール氏による偉業の25周年を讃えるアニバーサリーモデルだ。1999年の冒険を想起させるように、オレンジカラーとミッンョンロゴを文字盤に採用した特別仕様となっている。
ブライトリングは2019年にもオービター3の無着陸世界一周飛行の20周年記念モデルを発表しているが、今作ではケースバックをトランスパレント化し、オリジナルのオービター3の一部を封入することでさらに特別感を高めている。また、クリスタルには1999年の冒険のミッションロゴと、その周囲に“Firstnon-stop flight around the world 25th anniversary(初の無着陸世界一周飛行25周年)”が刻まれている。実際に歴史の一部を所有することができる貴重な仕様であり、(ブランドはこのモデルに限定数こそ設けていないものの)この機会を逃せば二度と手に入れることはできないだろう。
エアロスペース B70 オービターのデザインを見ていこう。従来のエアロスペースに倣って、新作オービターも12時と6時方向に横長のデジタル表示窓が配置された。秒針はなく、時分針が視認性の高い大ぶりなアラビアインデックスの上を周回する。特徴的なライダータブが付いた両方向回転ベゼルも健在で、チタンケースの直径も43mmとエアロスペースのほかのモデルと変わらない。ケースの厚みだけ12.9mmと1mmほど増している(参考までにエアロスペース エヴォは10.8mm)が、これは裏蓋に気球の一部を封入したことが理由だと思われる。
ただ、細部には各所に調整が加えられている。まず、ふたつのデジタル窓は視認性を高めるべく拡大。それに合わせるように針はやや太めになり、逆に印象的な3・6・9時のインデックスは少し細身にすることで文字盤上でのバランスが取られた。4ヵ所のライダータブはポリッシュからサテン仕上げに変更され、5分刻みで配置されていたベゼル上の数字はバーに置き換えられた。このほかミッションロゴがあしらわれたことによるウィングロゴの移動などもあるが、全体的にシャープでモダンな印象に寄せられている。
新作オービターにおいて特に目に留まる変更点が、2時と4時のふたつのプッシャーの追加だ。3時位置にあったリューズもプッシュボタン式になっており、このボタンを押して機能を選択、上下のプッシャーによって機能の操作が行える。実際に時刻設定、デュアルタイム、クロノグラフとひととおり試してみたが、操作系がひとつのリューズに集約されていたとき(リューズをそのまま回す、引いて回す、短く押す、長く押すの4種の動作で操作していた)と比べると、より直感的な操作が可能になったように思う。
また、ケースサイドのあしらいもプッシャーの追加によりアレンジが加えられた。下の写真を見てみると、淵を残しながら一段掘り込まれているのがわかる。これは装飾的なものというよりは、プッシャーが取り付けられたことによって正面から見た時のフォルムに影響が出てしまうことを防ぐ意味合いが強い。
実際に手首に巻いてみるとその効果は一目瞭然だ。直径43mmとやや大ぶりながらすっきりと見えている要因としては、ふたつのプッシャーを内側に隠したことが大きい。ちなみに、プッシャー部分だけでなくその周囲も一段掘り下げたことで、プッシュ時の操作感にも難はない。3時位置のリューズがプッシュボタンになったことも含め、手首に乗せたままでさまざまな機能をストレスなく楽しめる1本に仕上がっている。ちなみにエアロスペース エヴォからは約30gほど重量が増しているものの、軽量なチタンケース&ブレスレットのパッケージは手首のうえでの馴染みもいい。
ムーブメントには、今作のために開発されたマニュアファクチュールキャリバー、B70が搭載された。標準クォーツの10倍の精度を誇るスーパークォーツムーブメントであり、COSCクロノメーターも取得。機能としては100分の1秒から計測可能なクロノグラフ(スプリットタイム、フライバック機能付き)、カウントダウンタイマー、デュアルタイム表示、アラーム、ラップタイムにパーペチュアルカレンダーまで備えている。
ベルトラン・ピカール氏の偉業を祝したアニバーサリーモデルでありながら、向上した操作性、よりモダンな調整が施された外装面を見てみても、今作はエアロスペースの正統進化と呼ぶにふさわしい一本に仕上がっている。もちろん、グラデーションが効いたオレンジダイヤルも日々のスタイルアクセントとして効果的だ。実際に編集長・関口と僕が身につけてみて、どんな思いを抱いたのか。動画ではここまでの内容に加え、それぞれのインプレッションも語っているのでチェックしてみて欲しい。
そのほか、時計の詳細はブライトリング公式サイトへ。
Video by Kazune Yahikozawa (Paradrift Inc.)、Camera Assistance by Kenji Kainuma (Paradrift Inc. )、Sound Record by Saburo Saito (Paradrift Inc. )、Video Direction & Edit by Marin Kanii、Video Produce by Yuki Sato
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