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BRIDGING THE PAST AND PRESENT: ブランパン フィフティファゾムス 70周年記念 Act 3で1950年代後半のアイコンモデルにトリビュート

ブランパンからフィフティ ファゾムス誕生70周年を記念するモデルが発表された。第3弾はヴィンテージのオリジナルモデルのなかでも特に希少なMIL-SPECモデルにオマージュを捧げたモデルだ。知る人ぞ知るリファレンスが選ばれたのには理由があった。

本特集はHODINKEE Magazine Japan Edition Vol.7に掲載されています。

名は体を表すという。であるなら、ブランパンのフィフティ ファゾムスほど、自身を明確に語ったモデルはないだろう。1953年に誕生したフィフティ ファゾムスは、水深の測定単位であるファゾム(1ファゾム=1.8288mに相当)になぞらえ、50ファゾム、つまり約90mもの防水性能を有していることを意味しているのだ。

 この時計の開発にはふたりの重要人物が登場する。ひとりは当時ブランパンのCEOで自身もダイビング愛好者だったジャン=ジャック・フィスターだ。あるとき南仏でのダイビング中に経過時間を間違えたことによるエア切れを体験し、ダイバーズウォッチの開発に取り組み始めた。

 もうひとりはフランス軍のロベール・“ボブ”・マルビエ大尉である。コンバットダイバーと呼ばれる潜水特殊部隊の編成を進めていたフランス海軍は、海中で正確に隠密行動をするために優れた腕時計を必要としていた。しかし当時の市販品は、どれもその用途に適していなかった。

フィフティファゾムス 70 周年記念 Act 3は、水中カメラから着想を得たボックスに収められる。

 そこで部隊を率いるマルビエ大尉らは、ブランパンにコンタクトをとった。ジャン=ジャック・フィスターが海を愛し、ダイビングを愛する男でもあったことを聞きつけていたからだ。海中で安心して使用できる時計の必要性を理解したフィスターは、彼らが提案した「黒いダイヤル」「読みやすい表示」「回転ベゼル」「夜光表示」に加えて、「ベゼルの逆回転防止機構」「ダブルOリングのリューズ」「自動巻きムーブメント」「耐磁性能」を加え、ついに1953年に製品化を果たした。

 こうして生まれたフィフティファゾムスは、その優れたスペックで評判となり、多くの潜水士や軍人から愛された。そして海中で使用できるダイバーのための時計の必要性に気付いた多くの時計ブランドが、ブランパンの後を追った。フィフティ ファゾムスは、モダンダイバーズの原点と呼ばれているが、それは紛れもない事実なのである。

フィフティ ファゾムスのバイカラーの水密性表示を搭載したモデルは、アメリカ海軍の仕様案に合わせて開発されMIL-SPECの表記が入る。1957年〜59年にかけてテストされ、アメリカ海軍のUDT(水中爆破舞台)およびSEALダイバーの時計として採用された。堅牢なケースと読みやすい表示だけでなく、安心して使えるというのも重要なことだった。

アメリカ海軍の仕様案が改定されたことを受けて、非磁性素材を使ったモデルMIL-SPEC 2が1960年代初めに誕生。さらに光の反射を防ぐため、表面にツヤ消し加工を施し、ムーブメントのブリッジやメインプレートにはベリリウムを使用した。ちなみにフランス海軍の戦闘水兵やイスラエル海軍特別攻撃隊、ドイツ海軍の機雷処理部隊なども、フィフティファゾムスを制式時計に採用している。

 モダンダイバーズウォッチの原点であるフィフティファゾムスを生み出したブランパンだったが、70年代のクォーツ革命の波を受けて一時期は休眠状態に陥ってしまう。その後、ジャン-クロード・ビバーによって再興され、機械式時計の伝統技術に光を当てたシックスマスターピースの成功で、華々しく時計業界へと復帰を果たした。しかし当時はドレスウォッチやコンプリケーションを強化していたこともあって、フィフティ ファゾムスはほとんど日の目を見ることはなかった。

 そんなブランパンがフィフティ ファゾムスに本腰を入れ始めたのは、誕生50周年となる2003年からだ。なぜならその前年にCEOに就任したマーク・A・ハイエックもまた、ダイビングを愛し、水中写真家としても活動する海の男だから。つまりフィフティ ファゾムスは、ジャン=ジャック・フィスターとマーク A. ハイエックという海を愛する男たちによって、その伝統を守ってきたともいえるだろう。

 レギュラーモデルとして待望の復活を果たしたフィフティ ファゾムスは、もちろんすぐに高級時計愛好家から万雷の拍手をもって受け入れられた。1953年モデルのスタイルを継承しつつ、防水性能は300mへとスペックアップ。さらにロングパワーリザーブモデルやコンプリケーションなどさまざまなバリエーションを追加。一躍ダイバーズウォッチの主役へと舞い戻った。

 2023年はフィフティ ファゾムスの誕生 7 0 周年を迎える記念の年ということで、3モデルがリリースされた。フィフティファゾムス 70周年記念Act 1は2003年の復刻モデルへのトリビュートで、フィフティファゾムス70周年記念 Act 2は、潜水能力の進化に合わせた3時間計を搭載した現代のダイバーに向けたもの。そしてこのフィフティ ファゾムス 70周年記念 Act 3は、フィフティファゾムスの歴史の始まりである軍用ダイバーズウォッチへのオマージュを捧げるモデルとなった。

 1953年に誕生したフィフティ ファゾムスは、その優れた機能が評価され、各国の軍隊が制式時計として採用。その後アメリカ海軍では1950年代後半に定めたミルスペック規格に準拠させるため、ダイヤルにモイスチャーインジケーターを加えることをブランパンに要請。これは時計内部に水が浸入すると6時位置のディスクが濡れて赤く変色することで、時計が故障する危険性を着用者に知らせるものだった。フィフティファゾムス70 周年記念 Act3はこのミルスペックモデルがベースとなっている。

 原点モデルのディテールが丁寧に継承されており、例えばケース径は初代と同じ41.3mm。その一方でケース素材には、9Kのブロンズゴールドという特別な素材を採用。そもそもブロンズは加工しやすいため古来からさまざまな部品製造に用いられてきた。潜水士のヘルメットもそのひとつだ。

 海との関係性の深い素材であるため、近年はダイバーズウォッチに用いられることも増えているが、フィフティファゾムスでは当時からミルスペックモデルのRef.3200からRef.3246という短いシリアルレンジのなかでこの素材を使用していた。しかしAct 3では、そのままブロンズ素材を使用するのではなく、37.5%のゴールドに50%のブロンズを割り金し、さらにシルバーやパラジウム、ガリウムなどを含む9Kブロンズゴールドを用いる。その結果、ブロンズ特有の酸化による緑青が発生せず、肌への負担も少ない。さらにゴールドともブロンズとも異なる色合いに仕上がっている。

初代モデルやミルスペックモデルを丁寧に解読し、ケースサイズやボックス型の風防なども継承。BLANCPAINのロゴは、当時使用していたブロック体に。

Cal.1154.P2を搭載。ブランパンでは初めて1000ガウスの耐磁性を実現。ケースバックはオリジナルと同じくツーピース構造だが、トランスパレント仕様だ。

 1953年にフィフティファゾムスが誕生した時代、ダイバーズウォッチは完全なるプロフェッショナルツールであり、堅牢性と機能性が尊ばれた。しかし現在のダイバーズウォッチは、海を愛する人たちに選ばれるライフスタイルツールでもある。事実ブランパンは、過去70年にわたって、さまざまな団体とパートナーシップを組みながら、海洋保全活動や海洋探査を行っており、それをブランパン オーシャン コミットメントという形で発表することにより啓発活動を続けてきた。つまりフィフティファゾムス 70周年記念 Act3は、ブランパンの海を愛する気持ちを、華やかな形で具現化した時計なのである。

1953年モデルからほとんど変わらないスタイルは、そういった気持ちが変わらない証明でもある。モダンダイバーズウォッチの原点は、外見だけでなく、その熱いハートも含めて、語り継がれる時計となっているのだ。

Words:Tetsuo Shinoda Photos:Tetsuya Niikura(SIGNO) Styling:Hidetoshi Nakato

「ブランパン ブティック 伊勢丹新宿店」が2023年12月13日(水)にオープン

伊勢丹新宿店 本館 5階 ウォッチに新たなブランパンブティックがオープン。店内はジュウ渓谷にある〈ブランパン〉の工房をイメージしたデザインを基調に上質なチェリーの木工細工が使用されており、「革新こそ伝統」というブランパンのブランド哲学が表現されており、フィフティ ファゾムスをはじめ幅広いラインナップが展示されている。

伊勢丹新宿店 本館5階 ウォッチ(東京都新宿区新宿3丁目14−1)