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シチズン、チタニウムウォッチの開発から55周年を祝う

チタニウムに対するシチズンの先駆的な取り組みと、最新技術であるデュラテクト アンバーイエローの発表を振り返る。

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無限に選択肢が広がり、デザインも多様化する世界のなかで、あるブランドが特定の素材に注力し、その分野で卓越した技術を示す姿には感銘を受けるものだ。先週、僕はある“石の塊”を見ながらそのことを思い出した。いや、ただの石ではない。実は地中から採掘されたスポンジチタンなのだ。僕はシチズンのイベントに参加していた。このブランドは55年前に世界初のチタニウム製腕時計を市場に投入し、いまもなおこの素晴らしい素材で時計製造を革新し続けている。その石はチェルシーのギャラリーに展示されていたこともあり、まるでアート作品のように見えたが、実際にはシチズンの時計ラインの基盤を成すものであり、ブランドの代名詞ともいえる存在なのだ。

 55周年を記念して、シチズンは“CITIZEN Super Titanium™: The Beauty of Time”と題した魅力的で情報豊富な展示会を開催した。僕はそこで、チタニウムが単なる“石”ではないことを、より深く知ることになった。

Titanium

展示されていたスポンジチタン。


歴史:時計製造におけるチタニウムウォッチの先駆者

シチズン エックスエイト(X-8) クロノメーター

シチズンは1970年にエックスエイト(X-8) クロノメーターを発表し、時計業界に革命をもたらした。これは世界初のチタニウム製腕時計である。モデル名の“X-8”には特別な意味が込められている。“X”は未知を表し、“8”は無限を象徴する(∞)。つまり、チタニウムの持つ無限の可能性を示唆しているのだ。

 シチズンはチタニウムが時計製造において定番の素材となるはるか以前から、その優れた耐腐食性と軽量性に着目していた。これらの特性は、かつては航空宇宙や医療分野でしか活用されていなかったものである。しかし、チタニウムには加工や研磨が難しいというそもそもの課題が存在した。それでもシチズンは粘り強く技術を磨き、先進的な表面硬化処理技術を開発し続けた。

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シチズン アテッサ

 シチズンは時代とともに革新を続けてきた。1987年には、初代アテッサを発表。新たな加工技術を駆使し、チタンに柔らかかつメタリックな輝きを与えた。これにより、それまでのチタニウムウォッチの粗いマット仕上げとは一線を画す、エレガントなビジネスウォッチが誕生したのだ。

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シチズン アスペック ワールドタイム

 2000年にはスーパーチタニウム™の時代が幕を開ける。ワールドタイム表示を備えたアスペック ワールドタイムは、シチズン独自の表面硬化技術デュラテクトで処理された最初のモデルである。この革新により誕生したスーパーチタニウム™は、デュラテクト技術によって強化された次世代素材として、業界の新たな基準を打ち立てた。スーパーチタニウム™はステンレススティールの5倍の硬度を持ち、40%も軽量で、優れた耐傷性と一日中快適に過ごせる装着感を実現している。

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シチズン プロマスター エコ・ドライブ

 シチズンは2006年、プロマスター エコ・ドライブ電波時計でデュラテクトMRK+DLCの二重表面硬化技術を導入し、さらなる進化を遂げた。2016年には桜にインスパイアされたデュラテクト サクラピンクを発表し、2018年にはわずか3.53mmという驚異的な薄さを誇る エコ・ドライブ ワンをリリースした。そして革新は続き、2019年には新色であるゴールドカラーのデュラテクトMRK、2022年には再結晶チタンとユニークなデュラテクト DLC ブルーが登場。そして、現在へと至る。


現代におけるチタニウム技術の進化

チタニウム製の時計を作るだけでなく、それを駆動するムーブメントも自社製造するシチズン。しかし、シチズンの革新はそれだけではない。なんと、シチズンはチタニウムから時計を製造するための機械そのものも自社で製造しているのだ。この特別な素材に対するシチズンの情熱は、現代の時計業界におけるチタニウム製造をリードするまでに至っている。

Titanium, in a different form.

製造工程の一部として、円柱状に加工されたチタニウム素材。

 この革新について詳しく知るため、今回のイベントに参加するために日本から訪れた佐藤利磨氏に話を聞く機会を得た。彼はスーパーチタニウム™の新色開発を担当する人物であり、そのクリエイティブなプロセスについて多くを語ってくれた。アンティークやヴィンテージな美学に影響を受けた彼は、派手さや目立ちすぎるデザインではなく、あくまで機能美を重視したカラーを目指したという。その目標は見事に達成されており、デザインが機能に従うというシンプルな美学が貫かれている。

 展示会を巡り、佐藤氏との会話を通じて、シチズンの歴史におけるチタニウムの発展、特にデュラテクト アンバーイエローの開発プロセスについて理解を深めることができた。展示スペースには、時計の正確な色味を決定するために使われる約40種類のチタニウムのサンプルが並べられていた。それらは肉眼ではまったく同じに見えるが、顕微鏡で拡大すると細かな違いが確認できる。さらに驚くべきことに、4倍の拡大率で未処理のチタニウムを観察すると肉眼では滑らかに見えていた表面が傷だらけで不完全であることが明らかになった。シチズンの表面処理技術の高さを改めて実感する瞬間であった。

チタニウム製ケースの洗浄作業。


デュラテクト アンバーイエロー

シチズンの最新技術であるデュラテクト アンバーイエローは、暖かみがありながらも落ち着いたゴールドの色合いを持ち、あらゆる肌の色に調和。どんなシーンにもなじむ洗練された美しさを備えている。この革新の核となるのはシチズン独自の表面硬化技術、デュラテクトである。ベースとなるチタニウムに複数のコーティングを施すことで、金属の硬度と発色を強化し、従来のゴールドカラーとは一線を画す長期的に持続可能な色合いを実現している。シチズンは製造工程を徹底的に見直し、時を経ても色褪せない独自のゴールドの色調を完成させた。

 デュラテクト アンバーイエローは、ニオブとチタンの合金によって生み出されており、ニッケルを含まないためアレルギーを引き起こしにくい設計となっている。これにより、ニッケル、コバルト、クロムに敏感な人々にとっても最適な選択肢であるといえる。実際、これらの金属に敏感な反応を示してしまう人は全体の15%にものぼるとされている。この新素材は、シチズンが最近発表したアンバーイエロー xCで初めて採用された。

 チタニウムについて語るとき、その硬度を無視することはできない。デュラテクト アンバーイエローの硬度は1700〜2300 HVに達し、従来の金メッキと比較して10倍から20倍の硬さを誇る。これにより傷に対する耐性も飛躍的に向上し、シチズンのデュラテクトシリーズのなかでもトップクラスの硬度を実現している。耐久性だけでなく、この独自のカラーはさまざまなガスをチタンと組み合わせることで生み出され、機能性と普遍的な美しさを追求している。

 このアンバーイエローの名前の由来は、古代の木から化石化した樹脂である天然の琥珀(アンバー)に似ていることからきている。天然の琥珀が長年にわたり愛され続けてきたように、シチズンはデュラテクト アンバーイエローを採用したタイムピースもまた、時を超えて愛されるスタイルと職人技術の象徴となることを目指している。シチズンの現在のカラーバリエーションには、シルバー、ゴールド、ブラック、ブルー、ピンク、サクラピンクが存在し、アンバーイエローはそれに加わる新たな一色だとなる。

 新作のxCはケース径27mm、厚さ8.2mmで設計されている。光発電エコ・ドライブムーブメントを搭載し、もちろんスーパーチタニウム™製のケースである。このモデルは現在日本国内で発売されており、今夏にはマンハッタンのシチズン旗艦店でも限定数量で販売される予定だ。

Citizen Attesa Hakuto-R

チタニウムウォッチの最新形、シチズン アテッサ HAKUTO-Rモデル。

 これらの合金や特別なプロセスを見ると、僕はあの“石の塊”のことを思い出す。僕は地質学者ではないが、地中から掘り出された生のチタニウムは初めて地上に姿を現したころとほとんど変わっていないのではないかと感じる。チタニウムの人気と用途が拡大するなかで、シチズンは常にその先を行き、素材科学の限界を押し広げている。彼らが目指すのはより快適で、より多くの人々に届く、軽量で耐久性に優れた時計を生み出すことである。

詳細はシチズンのウェブサイトをご覧ください。