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Hands-On ダニエル・ロート トゥールビヨン ローズゴールドをハンズオン

ダニエル・ロートとラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトンが見事に仕上げた後継モデル。

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Photos by Mark Kauzlarich

まず、ダニエル・ロート トゥールビヨン ローズゴールドで目を引くのはブラックポリッシュ仕上げである。時計を裏返してサファイア製シースルーバック越しにCal.DR001をのぞくと、スースクリプションモデルのクローズドケースバックから進化した点が分かる。そして大きなブリッジのコート・ド・ジュネーブと対比する形で、曲線的なブリッジには完璧に仕上げられたブラックポリッシュが施されている。

 数週間前に新しいトゥールビヨン ローズゴールドの紹介文を書いたときには、その仕上げのレベルをあまり理解していなかった。レンダリング画像だけではその精巧さを感じ取るのは難しい。だが実物を目の当たりにすると、その完成度の高さがすぐに分かる。

daniel roth tourbillon rose gold

 同じ感動は、ケースやダイヤル、そしてトゥールビヨンに組み込まれたすべての部品にも表れている。正直に言えば、かなり地味な自分の好みからは大きく外れているものの、これほど卓越したウォッチメイキングとクラフトマンシップの最高峰を示す時計はそう多くない。確かに、エリプソカーベックスケースへの揺るぎないこだわりや古風なデザインは、ダニエル・ロートのコレクターにとって魅力の一部なのだろうが、これは間違いなく好みが分かれるデザインだ。

 しかしダニエル・ロート トゥールビヨン ローズゴールドとそのCal.DR001に込められたクラフトマンシップとウォッチメイキングは、誰もがそのよさを認めるだろう。

daniel roth tourbillon rose gold

 本作は昨年のスースクリプションモデルと大きく異なるわけではないが、明らかに進化を遂げている。5Nのケースとダイヤルは、より温かみを感じさせる仕上がりになっている。両方を並べてみるとトゥールビヨン ローズゴールドはとくに印象的だ。ゴールドのダイヤルはカリ・ヴティライネンが所有するコンブレマイン(Comblémine)工房でつくられ、直線的なギヨシェがきわめて精巧に施されている。トゥールビヨンの特徴的な“ムスターシュ”の細かい縁までもが手作業でギヨシェ加工されている(ちなみに、ジャーナリストのクリス・ホール氏がこれについて言及しているのを見たことがあるが、スイスの時計業界は“ギヨシェ”という言葉の使用を制限し、旋盤を使った伝統的な製法で作られた文字盤にのみ限定するべきではないだろうか。現在“ギヨシェ”という用語は過剰に使用されており、顧客に混乱を引き起こしているように感じる)。

daniel roth tourbillon rose gold case
daniel roth tourbillon rose gold case

 実際、トゥールビヨン ローズゴールドはスースクリプションほど厳密に限定されてはいないが、ダニエル・ロートによれば年間の生産数を50本に絞っているという。とくにギヨシェによる装飾が生産の制約となっているとのことだ。

 スースクリプションモデルからの最大の進化は、サファイア製シースルーバックの採用によりCal.DR001が完全に見えるようになった点だ。スースクリプションは1990年代のオリジナルトゥールビヨンのスースクリプションに倣い、クローズドケースバックを採用していたが、この次世代モデルでは1990年代のトゥールビヨンの後続モデルと同様、オープンケースバックが採用されている。

daniel roth tourbillon rose gold
daniel roth tourbillon rose gold

 Cal.DR001はスースクリプションと同じ手巻きムーブメントで、ダイヤル側に1分間で1回転するトゥールビヨンが配置されている。このムーブメントはラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトンによって開発、組み立てられており、精巧に施されたコート・ド・ジュネーブを特徴とするふたつの大きなブリッジを備えている。またゴールドシャトンやブラックポリッシュ仕上げが美しく映える曲線的なブリッジなど、今では高級時計製造の定番となったディテールも見受けられる。

daniel roth tourbillon rose gold and souscription

トゥールビヨン ローズゴールドと昨年のスースクリプション。

 仕上げや作り込みは、現代のコレクターが高級インディペンデント(メーカー)に期待する水準にしっかりと応えている。15万5000スイスフラン(日本円で約2570万円)という価格もさることながら、ルイ・ヴィトンという後ろ盾がある以上これは当然かもしれないが、それでもこのウォッチメイキングの素晴らしさは揺るがない。その精巧な仕上げは表側にも施されており、6時位置のワンミニッツトゥールビヨンとともに美しく映えている。

 RG製ケースは38.6mm×35.5mmで、厚さは9.2mmとなっている。これは1990年代のオリジナルトゥールビヨンよりも2mmほど薄いのだが、これはDR001のおかげであり、写真では十分に理解できなかったディテールである。ケースのバランスもよくなり、ミドルケースの側面が上下を完璧に二分している。さらに丸みを帯びたラグがわずかに下に傾斜しているため、オリジナルと比べてもつけ心地が格段に向上している(ダニエル・ロートはアーカイブからいくつかのピースを展示し、新作トゥールビヨンとの比較ができるようにしていた)。

daniel roth tourbillon rose gold wrist shot

私の6.3インチ(約16cm)の手首に装着してみた。

 スースクリプションに続いて、トゥールビヨン ローズゴールドでも、ダニエル・ロート、ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン、そして時計師のエンリコ・バルバシーニ氏とミシェル・ナバス氏は、オリジナルのダニエル・ロートデザインを再現しつつ、ほぼすべての面で少しずつ改善を重ねたことを示した。世界中に豊富なリソースがあったとしても、これは称賛に値する成果である。

 とはいえ、復活したダニエル・ロートが純粋に新しいものをどのように生み出すのか、まだ注目している。ブランドは時計師ダニエル・ロートがデザインした未発表の時計が未だにあり、それらが今後のリリースのインスピレーションになるとほのめかしており期待が持てるのだ。またダニエル・ロートならではの独自の美学を求める人々に向けて、もう少し手の届きやすいモデルが今後登場するのではないかとも考えている。

daniel roth tourbillon rose gold

同僚マークの大き目の手首に巻いている。

 現時点でトゥールビヨン ローズゴールドはダニエル・ロートとラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトンの技術力を余すところなく披露している。美しく、今年体験したなかでも特に印象的な高級時計のひとつだ。

詳しくはダニエル・ロートのウェブサイトをご覧ください。

ダニエル・ロート トゥールビヨン ローズゴールド。38.6mm×35.5mm径、9.2mm厚、30m防水。5Nローズゴールドケース&ダイヤル。手巻きCal.DR001搭載、約80時間パワーリザーブ、2万1600振動/時(3Hz)、1分間で1回転するトゥールビヨン。ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトンが設計・組み立てを担当。カーフスキンストラップ、ピンバックル。限定モデルではないが、ダニエル・ロートによると年間生産数は50本に制限。価格は15万5000スイスフラン(日本円で約2570万円)