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もしWatches & Wondersで発表された新作のなかから最高のラインナップを選ぶとしたら、ジャガー・ルクルトは間違いなくその最有力候補のひとつとなるだろう。入門機としてのレベルソ・トリビュート・デュオフェイスから、驚異的なハイエンドモデルであるトリビュート・ミニッツリピーターやハイブリス・アーティスティカ(および幾つかのエナメルピース)まで、その中間に位置するモデルを含めて語るべきことは多い。なかでも注目を集めたのは、あるピンクゴールドのリヴァースォ・モノフェイスだったかもしれないが、今回はそれよりもむしろ、ひっそりとした佇まいでありながら力強く、そしてよりエレガントに再解釈されたレベルソ・トリビュート・ジオグラフィークに注目したい。個人的には、見落とされがちだったこのモデルこそが印象に残った。
レベルソ・トリビュート・ジオグラフィークは、レベルソ・トリビュートのデザイン言語を忠実に継承しており、オリジナルを想起させるゴドロン装飾、アプライドのアワーマーカー、ドフィーヌ針、そしてスモールセコンドをフロントダイヤルに備えている。しかしトラベルウォッチとしての側面を持つこのモデルにはJLCが実用的な大型日付表示機能も加えており、ブランドロゴの上部にふたつの窓で構成された表示が配置されている。ジオグラフィークという呼称について触れるなら、過去にさかのぼって2000年代の限定モデル、ピンクゴールド製のレベルソ・ジオグラフィーク Ref.270.2.58を思い起こすべきであろう。下の写真に示されているように、当時のモデルも印象的な存在感を放っていた。
25年前のジオグラフィークのデザイン言語を好む人もいるだろうが、私としてはそのダイヤルレイアウト(表・裏ともに)はややちぐはぐで時代遅れに感じられる。特に裏面のブラックダイヤルに見られる複雑な構成にはユニークな魅力もあるものの、近年では(個人的にはありがたいことに)ブランド各社がよりタイムレスなデザインへと落ち着いてきているように思う。そうした傾向は、新しいレベルソ・トリビュート・ジオグラフィークの裏面にもはっきりと表れている。
ステンレススティールケース(もしくは、150本限定のPG製ケース)は、49.4mm×29.9mmというサイズで、厚さは快適な11.4mm。デュアルダイヤルの時計としては非常にコンパクトな部類に入る。写真で見るとやや大きく感じるかもしれないが、実際には日常使いに十分適した、実用性の高いモデルと言えるだろう。
私は、この時計の裏側の眺めがとても気に入っている。北半球の大陸を囲むように、美しく手作業でラッカー仕上げされたオーシャンビューが広がっているのだ。ワールドタイムの設定方法も実に洗練されており、まずローカルタイムに時刻を合わせたのち、ケースのなかに隠されたスライダー(記事下部の、反転ケースの上端に位置する)を用いてワールドタイムの時刻をローカルタイムに合わせるだけでよい。非常にシンプルでエレガント、そしてそれ以上の機能は必要ないと感じさせる仕組みである。もちろん、モノフェイスのレベルソのようにケースバックに広いスペースがあるわけではないため、エングレービングなどの余地は限られている。だが、その代わりとして得られる機能と美観を考えれば、十分に納得できるトレードオフだといえる。
文字盤に施されたサンレイ仕上げ(SSではブルー、PGではやわらかなブラウン)は、JLCが細部にまで配慮していることを示すさりげない演出のひとつであり、遠目には目立たないものの、光の加減で表情を変える様子を眺めるのは実に楽しい体験であった。これに加えてPGモデルのケースバックには、ブラックラッカー仕上げとブラック×グレーのデイ・ナイト表示の組み合わせが施されており、もしお金に糸目をつけなければ、2本のうちから選ぶなら間違いなくこちらを手に入れたいと思わせる仕上がりである。
もっとも、このJLCレベルソ・トリビュート・ジオグラフィークの複雑機構は決して安価ではない。SSモデルで330万円、PGモデルでは545万6000円(ともに税込)と、レベルソラインにおける入門機とはかけ離れた価格帯に位置している。しかし現代的なトラベルウォッチを求めるレベルソ愛好家にとっては、その価格に見合うだけの価値がしっかりと詰まっている。そんな直感がある。
詳しくはIntroducing記事をお読みいただくか、ジャガー・ルクルト公式サイトをご覧ください。
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