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Watches & Wondersにまつわるちょっとした(もはや公然の)秘密がある。年を追うごとに、より多くのブランドが事前にプレスリリースを配信したり、事前プレビューの機会を設けたりするようになってきたのだ。これは、発表内容が話題の渦に埋もれてしまわないようにするための施策である。それでもなお、毎年いくつかのサプライズは必ず残されている。そして今年、最大級の驚きのひとつが、比較的最近刷新されたばかりのパルミジャーニ・フルリエ トリックラインに、新作トリック パーペチュアルカレンダーが加わったことだった。
この新作について執筆が遅れた理由のひとつは、それがごく自然に魅了する存在であり、まるで以前からそこにあったかのような感覚を与える時計だからである。昨年、新生トリックラインを取り上げた際にすぐに明らかだったのは、グイド・テレーニ(Guido Terreni)CEOの構想が、ブランド創設以来のラグジュアリーな魅力を保ちながらも、控えめでミニマルな美学へと回帰するものであるという点だった。
トンダ PFラインが、よりスポーティなデザインの多様な解釈によって容易にファンを獲得してきたのに対し、ドレスウォッチを売るというのは必ずしも華やかな仕事ではないし、少なくともそれを魅力的に見せるのは容易ではない。しかし新作トリック パーペチュアルカレンダーは、ドレスとスポーティの絶妙なバランスを実現しており、それが人々の関心と期待を高めているように思われる。
新作トリックQPは、ケース素材にプラチナとローズゴールドの2種類を用意し、それぞれに淡いブルー(モーニングブルー)またはオレンジサーモン(ゴールデンアワー)のダイヤルが組み合わされている。ケースサイズは比較的コンパクトな40.6mm×10.9mmで、価格はそれぞれプラチナで1511万4000円、ローズゴールドで1397万円(共に税込)に設定されている。外観としては、実寸よりもやや大きく見える印象を受ける。おそらくドーム型のダイヤルに起因しており、光と影のコントラストを生み出すことで奥行きを感じさせると同時に、ケース構造や傾斜のあるベゼル形状と美しく響き合っているからである。加えてダイヤルに施されたグレイン仕上げの質感が、視覚的にやわらかな印象を添えており、見る者の体験に一層の深みをもたらす。その表情はハイポリッシュ仕上げが施された針やロゴ、インダイヤルの面取りリングとも調和し、洗練された完成度を生んでいる。
このQPの表示はきわめてシンプルであり、左側のインダイヤルに曜日と日付、右側に月とうるう年表示が配されている。左右の水平シンメトリーを好む者にとっては、完璧なバランスが取れていると言えるだろう。しかしこれらの表示はダイヤルの赤道より下に位置しているため、上下のバランスという観点から見ると、やや独特な印象を受ける配置となっている。ただしこれは、A.ランゲ&ゾーネのコレクターたちのあいだでは、長年にわたって魅力として愛されてきた特徴でもある。
ムーブメントの各機能は、リューズの左右に設けられたプッシュボタンによって調整する仕様となっている。またリューズはケースの中心よりやや下方に位置しており、これは手巻きのマニュファクチュール製Cal.PF733の設計に起因するものである。今年はリューズ操作によるキャリバーについて多くの議論が交わされた1年であり、(どちらが先か、どちらが優れているかといった話題が)紙面をにぎわせた。しかし現実的には、こうした革新は今後もしばらく希有な存在であり続けるだろう。一方でCal.PF733は比較的薄型に設計されているため、時計全体がすっきりと収まり、装着時にも軽やかで快適な印象を与える。
PF733の構造は、昨年発表されたスモールセコンド搭載モデルを想起させるような、洗練されたエレガンスを感じさせるものだ。設計はシンプルかつクリーンで、直列に配置されたふたつの香箱がムーブメントの薄型化に貢献しながら、約60時間のパワーリザーブを確保している。手巻き式のパーペチュアルカレンダーとしては、もう少し長めのパワーリザーブがあれば理想的だと感じる。ただ美的な観点から見れば、パルミジャーニ・フルリエは今なお、ミシェル・パルミジャーニの理念と伝統への敬意を反映した、端正でクリーンなムーブメントづくりにおいて卓越した手腕を発揮している。そして忘れてはならないのが、コート・ド・フルリエ仕上げの上に刻まれたミシェル・パルミジャーニ(Michel Parmigiani)氏のサインである。
手首に乗せたとき、この時計はまさにパルミジャーニが意図したとおりの仕上がりなのだと実感できる。現代のユーザーに向けた、エレガントなドレスコンプリケーションなのだ。初期のレトログラード パーペチュアルカレンダーを思い返すと、そこには確かにノスタルジックな趣が漂っている。しかし現実として、それらのモデルもケース径は40mmであり、今回のモデルと同サイズだった。そしてパルミジャーニが追求するシンプルさを考えれば、この簡素化されたデザインこそが大きな進化であると言わざるを得ない。
だからこそ、この時計についてようやく語る段になってこう言うのは少々妙な感じもあるが、今年のWatches & Wondersで最も優れた発表のひとつだったかもしれない。決して注目を求めるような時計ではなかったが、それでももっと注目されてしかるべき時計である。
詳しくはパルミジャーニ・フルリエ公式サイトをご覧ください。
Photos by Mark Kauzlarich
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