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ここ数年のパテック フィリップを注視してきた読者なら、カラトラバの新たなスタイルの台頭に気づいているはずだ。カメラのテクスチャーグリップに着想を得たデザイン、大胆なケースフォルムはヴィンテージのRef.3448を想起させる角ばったシルエットを持ち、そしてケースのミドル部分をぐるりと取り囲むクル・ド・パリ装飾が途切れることなく施されている。もしパテック フィリップを日常づかいする人で、もう少しカジュアルかつ素朴な雰囲気を求めていたなら、センターセコンドカラトラバのRef.5226Gや、年次カレンダー・トラベルタイムを搭載したRef.5326Gがまさにうってつけの選択だった。そして今、新たにRef.5328Gが加わる。しかも最小8日間という圧巻のパワーリザーブを備えている。
新作Ref.6196Pの魅力はよくわかる。ベン(・クライマー)は“ひと世代で最高のカラトラバだ”と評していたし、確かにそのとおりだと思う。多くの人がカラトラバをドレッシーな時計だと考えており、それは99%の場面で正しい。だが、Ref.5328Gがパテックのカラトラバラインに属しているのは承知のうえで、それでも自分はまったく別のものとして捉えている。それは、市場で最もエレガントであり最も高価なフィールドウォッチなのだ。
フィールドウォッチに大きな防水性は求められていない(もともと水中での使用を想定していないからだ)。だからこそ、パテックが昨年から製品ライン全体に標準採用している30m防水仕様をRef.5328Gが備えていても、ホワイトゴールド製のカラトラバを身につけて泳ぐ人はまずいないだろう。とはいえ、実際にこれをフィールドウォッチとして使う人もほとんどいないに違いない。しかし、それでも自分が思いつくなかで最も近いアナロジーがフィールドウォッチなのだ。
ブルーダイヤルへの移行も、このモデルをより万能な存在へと進化させている。外に向かって暗くなるグラデーションリム、アプライドのWG製アラビア数字、ホワイトの夜光塗料といった仕様は以前のアンスラサイトダイヤルやイエロートーンの夜光よりも使い勝手がいい。さらにこのモデルの文字盤は、より複雑なカラトラバでありながらも完璧なバランスを実現している。曜日、日付、そして圧巻の8日間(以上)のパワーリザーブを備え、もし1119万円(税込)の時計をフィールドウォッチとして使う覚悟があるなら、これはまさに理想的なハイエンド・フィールドウォッチといえるだろう。
うまく言葉にしづらいのだが、新しい手巻きCal.31-505 8J PS IRM CI Jの構造には引かれるものがある。ブリッジレイアウトや大きなハーフプレートといった古典的な趣を備えつつ、ジュネーブ・ストライプやしっかりと面取りされた仕上げはきちんと施されており、自社製ムーブメントとしてはなかなか見どころのある外観だ(独立系の仕上げと比べるとやや異なるが、それでも十分魅力的である)。
このムーブメントには、パテックに期待するような気の利いたディテールが随所に盛り込まれている。曜日・日付の瞬時切り替え、最小8日間パワーリザーブの明確なインジケーター、そして9日目にあたる赤で表示された余力表示などだ。唯一の難点を挙げるとすれば、曜日と日付の調整にスタイラスが必要なこと。そして、年に少なくとも5回は日付の修正を求められる点だろう。
このケースデザインの開発にまつわるオーラルヒストリーによれば、パテック フィリップのCEOであるティエリー・スターン(Thierry Stern)氏は、前身モデルを含めこれらの時計にクル・ド・パリやホブネイル模様をミドルケース全体に継ぎ目なく施すことを強く望んでいたという。その実現のために、パテックはケースバックのふちに対してラグを“吊る”という構造を採用した。これにより、サファイアケースバックがしっかりと固定される。一般的に見られる溶接式やねじ留め式のラグとはまったく異なるアプローチだ。サイズは直径41mm、厚さ10.52mmで、特に8日間パワーリザーブを考慮するとバランスの取れた装着感が得られるプロポーションといえる。付属するのは、ファブリック調のネイビーブルーカーフストラップと、グレイン加工が施されたトープカラーのストラップ。いずれも、特許取得済みのゴールド製3ブレード・フォールディングクラスプが装備されている。
正直なところ、自分でもこの議論が少し込み入っていて、いわば“雰囲気”に基づいた感情的なものだという自覚はある。1119万円のカラトラバと8万5800円(ともに税込)のハミルトン カーキ フィールドを比べるなんて、常識的に考えれば無茶な話だ。でも世の中には(あるいは複数人の誰かにとって)それでも意味のある比較になり得るのだ。もしRef.6196Pが新たな“it(イット)”なドレッシーカラトラバなら、なぜ5328Gが日常づかいの相棒になれないと言えるだろうか? 少なくとも、週に1度くらいの特別な日には頼れる存在…次に手に取ったとき、正確な時刻(と日付)を示してくれている、そんな信頼を寄せられる時計なのだから。
詳しくはパテック フィリップをご覧ください。
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