先週末に第82回グッドウッド・メンバーズ・ミーティングが開催され、グッドウッドの年間カレンダーが華やかに幕を開けた。会場ではヴィンテージカーによるレースが繰り広げられ、熱気と興奮に包まれた週末となった。IWCは2015年からこのイベントの公式計時パートナーを務めているが、今年はいつもと少し様子が違う。というのもIWCは、アップル・オリジナル・フィルムズが製作し、今年6月27日(金)に公開予定のF1映画に深く関わっているのだ。
その関係もあって、IWCは今回のメンバーズ・ミーティングで大規模なプロモーションを展開した。映画に登場する時計を紹介するポップアップブースをはじめ、劇中に登場するサーキット用および公道用の車両の展示、出演俳優2名の来場、さらに映画のなかで使用されたドライビングや撮影技法のデモンストレーションなど、見どころ満載の内容となった。映画『F1/エフワン』(原題:F1)の監督は『トップガン マーヴェリック』(原題:Top Gun: Maverick)で知られるジョセフ・コシンスキー(Joseph Kosinski)氏。彼と、確かな腕を持つ多数のスタッフ陣があの『トップガン』続編の臨場感を少しでも再現できれば、『F1』はこれまでにない革新的なレーシング映画となるだろう。期待は高まるばかりだ。
この記事に並ぶ100枚以上の写真とともに、僕が初めて体験したグッドウッドの模様を楽しんで欲しい。そこには迫力満点で時に破壊的でもある本気のヴィンテージレース、パドックの散策、観客のなかに見つけたIWCの腕時計、そして映画『F1』のサーキット走行シーンなどさまざまなハイライトがあった。快晴の土曜日、私の1日はグッドウッドの正門を入ってすぐのIWCブースから始まった。
『F1』のためにAPXGPカラーでラッピングされた現代のメルセデス・ベンツ AMG GT。
映画に登場するレースカーのプロップ。興味深いことに、劇中のマシンはF2カーを改造し、メルセデスがF1仕様として特別な撮影機材を組み込んで仕立てているという。俳優とスタントドライバーの両方が実際に運転し、映画は実際のグランプリイベントと並行して撮影された。
IWCのクリストフ・グランジェ・ヘア(Chris Grainger-Herr)CEOが着用していたのは、IWC パイロット・ウォッチ・パフォーマンス・クロノグラフ 41 メルセデスAMG・ペトロナス・フォーミュラ・ワン™・チーム。
ネクタイに、腕時計(IWC ポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダー)。すべてが、まさにグッドウッド的だ。
最初のインヂュニア目撃例――これから始まる多くの発見の始まりだった。
スタート/フィニッシュライン手前のシケイン前に集まる観客たち。
1971年製シボレー カマロ Z28が、ゴードン・スパイストロフィーに出場。
1965年製のフォード GTは、ガーニー・カップに出場予定(詳細はのちほど)。
イベントを楽しむファンたち。
イベント会場で、友人であるStandard Hのウェスリー・スミス(Wesley Smith)氏に偶然遭遇。IWC ポートフィノ・クロノグラフを手首に、イベントにぴったりの装いをしていた。
息を呑むほどクールなElbe BMW MK8が、ガーニー・カップ序盤の周回でコースに登場。
1932年製フレイザー・ナッシュ TTレプリカが、1935年製のアストンマーティン アルスターの猛追から逃れようとしている。
1965年製のフォード GT40。
発売されたばかりのインヂュニア・オートマティック 35 Ref.IW324903。
ビッグ・パイロット・ウォッチ・ショック・アブソーバー XPL トト・ヴォルフリミテッドエディションを着けている男性に出会った。写真をお願いすると彼はスマートフォンを取り出し、前作のトト・エディションも所有していると見せてくれた。こうしたコラボモデルは、メルセデスAMG・ペトロナスのようなチームの熱烈なファンにとって、まさに響くものだ(なお、トト・ヴォルフ氏は同チームのCEO)。
1932年製フレイザー・ナッシュ TTレプリカがシケインを駆け抜ける様子を、より間近で。
古いランドローバーはグッドウッドにおいて、ほとんど何にでも“なれる”存在だ。
IWC パイロット・ウォッチ・クロノグラフ・レーシング・グリーン。
IWC ポルトギーゼ・クロノグラフ。
伝統的な風景だ。
パドックにて
ひとまずコースを離れ、歩道橋の下をくぐってインフィールドへ。そこにはパドックが広がり、レース前の整備や、レース後の修理が行われている。パドックは出入り自由で活気に満ちており、歩行者の絶え間ない流れのなかをクルマたちが行き交っていた。
サーキット下の屋根付き歩道。この階段上の金属屋根は、かつてレーシングカーが歩道内に突っ込んで立ち往生したことを受けて設置されたもの。
施設内の各所に設置されたトラッククロックには、IWC インヂュニアの仕様が採用されている点に注目。
クルマに工具、そしてテント。土曜日にこれ以上、何が必要だろう?
レーシング・チーム・ホランドが出場させた、シルバーの1961年製フェラーリ 250 GT SWB/C。250シリーズは非常に高価でコレクター垂涎のモデルであり、サーキットで競り合っている姿を見るのは実に珍しい。
もう1台のフェラーリ 250 GT SWB/C。激しいレースで“勲章”を刻まれる前の姿(このあとの姿もぜひスクロールしてご覧あれ)。
IWCの専属フォトグラファーのひとりがつけていたのは、Ref.IW506003 トップガン “モハーヴェ・デザート”だ。
1964年製、フォードエンジン搭載のロータス23B(ロータス-フォード 23B)。
僕にとって今回のハイライトのひとつであり、のちのレースでは手強い競争相手にもなった1966年製フェラーリ 206S。
やっぱりフォード GT40は最高だ。
2台のフォード エスコート RS2000。左が1976年式、右が1980年式。
本格仕様のカラーリングをまとった1979年製BMW 323iとオースチン メトロHLS。
展示されていた数台のジャガー Dタイプのうちの1台。個人的にはスポーツカー的な美しさという点で、これ以上のデザインはそうそうないと思っている(残念ながら運転した経験はないが)。
大変目立っていたイエローの1965年製ロータス-フォード 23B。
レースで刻まれた傷をまとったヴィンテージ・フェラーリの美しさは、言葉ではなかなか言い表せない。しかもそれが250 SWB/Cとなれば、なおさらだ。もし使っていたレンズがもっと広角だったら、自分の笑顔まで写り込んでいたはずだ。
DタイプとCタイプはEタイプより上。それが間違ってるって? なら僕を説得してみてほしい。
これは珍しい! 1963年製のロータス11 GT “ブレッドバン”。
このクルマは、1962年のグッドウッドでクラス2位を獲得している。
レース後のメンテナンスを受ける、あの主役級250のアナザーショット。
フォード GT40 #6。こちらも1965年製の1台。
このカラーリングはうらやましい。
このライトカバー、思わず見とれてしまう。
このエンブレム、たまらなく惹かれる。
ロータス クライマックス15のトリオ。
1958年製のロータス クライマックス15。完璧なグリーンの1台だ。やはりグリーンのクルマがいちばん魅力的だと思う。
おそらく現行インヂュニアのなかでいちばん好きなモデル。チタン製のオートマティック40(Ref.IW328904)だ。インデックス周囲のブラックの縁取りが全体の印象を引き締めている。
GMA(ゴードン・マレー・オートモーティブ) T.50。クルマに寄りかかっている白い服の男性は、レーシングドライバーでありコメンテーター、そしてT.50開発チームのテストドライバーでもあるダリオ・フランキッティ(Dario Franchitti)氏だ。
息をのむほど美しい、1962年製AC コブラ。
1960年製のアストンマーティン DB4GT。
レースで勝利を収めたジャガー Dタイプのコックピット。ステアリングホイールに添えられたメモにも注目。
1955年製メルセデス・ベンツ300SL“ガルウィング”。
グッドウッドのパドックで気を抜いていると、貴重なフェラーリがすぐそばまで近づいてきて驚かされることもある。
1973年製BMW 3.0Siが周回を重ねる姿を、じっくりと見届けた。
僕の手首にもIWC。スティール製のインヂュニア 40だ。
このピットバイクに憧れを抱いてしまう。
クラシックなアルファロメオに敵うものはなかなかない。こちらは1965年製ジュリア スプリント GTA。
並ぶクラシック・アルファたち。
IWCと映画『F1』がサーキットで共演
パドックを歩いていたとき、親切な男性ボブに案内してもらっていたところで場内アナウンスが流れた。「まもなく、IWCと映画『F1』によるサーキットデモが始まります」。そう聞いて観覧エリアへ急ぎ戻り、プレ・ウォー(戦前車)シリーズのレース終盤を見届けながら、映画のマシンが登場するのを待った。
IWCのデモ走行を見に集まった観客のなかに僕が見つけたのは、珍しいビッグ・パイロット IWC レーシング・ワークス。グレード5チタン製で、500本限定のモデルだ。
さまざまなクルマが走るサーキットの光景はいつも楽しい。だが例外もある。フラットベッド(回送トラック)を見るのは、あまりうれしくない。
ましてやその荷台に、美しいグリーンの1931年製タルボ AV105が載っているとなれば、なおさらだ。
観客のなかにもう1本、IWCのパイロットモデルを発見。
映画『F1』に登場するレースカーがサーキットへと押し出されていく。残念ながらこの個体は展示専用で、エンジンは搭載されていないとのこと。
最後のレースが終了するとすぐに、映画『F1』に登場する3台の車両がサーキットに登場。そのなかには先ほど紹介した2台(映画用のF1マシンとAPXGPカラーのAMG GT)に加え、リモート操作のロシアンアームを搭載したIWCロゴ入りのメルセデスSUVも含まれていた。
AMG GTとカメラカーは数周にわたって走行し、撮影映像はサーキット各所に設置された大型ディスプレイにリアルタイムで中継されていた。映画のなかで展開される緊張感あふれるスタントドライビングが、どのように撮影されているかを見事に実演してみせた。
撮影デモのあと、映画『F1』の主演俳優のひとりであるダムソン・イドリス(Damson Idris)氏が、自身の劇中マシンとともにフォトセッションのためスーツ姿で登場。すぐにIWCのCEO、クリストフ・グランジェ・ヘア氏も合流した。その姿は、架空のAPXGP F1チームのチーム代表と見まがうほど自然だった。
F1ドライバー、ジョシュア・ピアース役のダムソン・イドリス氏と、IWC CEO クリストフ・グランジェ・ヘア氏。
さあ、レースに戻ろう
『F1』の特別デモが終わり、再びレースへと戻る時間がやってきた。このあとは午後から夕暮れにかけて、まさに圧巻の展開となった。なかでも最大の見どころは、プロトタイプレーシングカーが登場するガーニー・カップ。これは伝説のレーサー、ダン・ガーニー(Dan Gurney)と1960年代にル・マンなどで活躍したスポーツカーたちに敬意を表して開催されるレースだ。
なかでも注目を集めたのが、チーム・ジョタによるデモ走行。同チームの25周年を記念し、登場したのは本気の1台――キャデラック Vシリーズ.R LMDhだ。2025年の世界耐久選手権(WEC)を戦うこのマシンは、まさに最先端といえる存在。しかもこの日の前のレースで走っていた100年以上前のクラシックカーたちと比べると、驚異的な速さを誇っていた。
深みのある赤いトーンが美しいポルトギーゼ。ストラップも同色で統一。
さらにコンプリケーションを加えたモデル、ポルトギーゼ・トゥールビヨン・ミステール・レトログラード Ref.IW504602。
1918年以前に製造されたクルマによるSFエッジトロフィーの一種として周回する1914年製ストレイカー スクワイア TT。
長年ずっと実車を見てみたかった、フィアット S76 レコード、通称“ビースト・オブ・トリノ”。1910年製で、なんと28.4リッターの4気筒エンジンを搭載している。
ガーニー・カップのスタートをいまか、いまかと待つ観客たち。
1965年製フォード GT40。
こちらは運に恵まれなかった別の1965年製フォード GT40。
愛らしい1966年製フェラーリ 206Sが、フォード GT40とBMWエンジン搭載のシェブロン B6(Chevron-BMW B6)を追いかける。
ガーニー・カップの熱戦は続く。
土曜日のガーニー・カップを制したのは、1966年製フェラーリ 206Sを駆るフランク・スティプラー(Frank Stippler)氏。手に汗握る接戦の末、勝利を収めたマシンにはその爪痕がしっかりと刻まれていた。
オールドインヂュニア。
現行のインヂュニア。
1969年製シェブロン-BMW B8から、レース終了の挨拶。
60年代のフェラーリとフォード GT40が歓声に包まれたサーキットで激しく競り合う。これ以上に特別な光景があるだろうか。
グッドウッドでの素晴らしい1日を終えた皆は、ピットでひと息ついていた。
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