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Four + One 「テレビで見栄えして、泡まみれになっても大丈夫な頑丈な時計が欲しいんです」

ニューヨークでフィリピン料理店を営むマニラ出身のシェフ、アントン・デイリット氏(Anton Dayrit)は、最近、厳しい現実に直面した。彼は1956年製デイトジャストを愛用している。「でも、私はサブマリーナー派なんです。」コレクターとして、どうすればいいだろう。

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マンハッタンのヘルズ・キッチンにある料理店トラディシオンに立ち寄って、とにかく何でもいいから注文してみてほしい。あごひげを生やしてヤンキースの帽子をかぶった40歳前後の男が、フィリピン家庭料理を紙のボウルで楽しそうに提供していたら、それがアントン・デイリット氏、この店の経営者その人だ。彼の時計コレクションについて質問してみてほしい。彼は本記事で紹介した4本をはじめ、チューダー、ユニバーサル・ジュネーブ、オメガなどを収集している。

 「シェフとして、またはレストラン経営者としての歩みを一歩進めるたびに腕時計を買うというわけではありませんが、そういう傾向はあります」とデイリット氏は言う。例えば6年ほど前、ある店で時計の修理を受けていたとき、1970年製ハミルトン9988クロノマチックに目が留まったという。「『素敵ですね』と言ったら、『ええ、たった1,000ドルですよ』と言われました」そして彼はそれを買った。彼はロレックスも好きだが、ハミルトンも好きなのだ。しかも、ちょうど2軒目のレストランを開店するところだったので、その時計を記念にしようと考えた。「時計を闇雲に買うということはできません」と彼は言う。まあ、読者のあなたであればできるかもしれないが。彼はそうしないようにしている。「何千ドルも失うことになりますから。でも、私はのびのびと自由でいたいのです」。

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ジェローム・ローレスタ氏と仕事を行うデイリット氏。

 42歳のデイリット氏はフィリピン育ちだが、ニューヨークで15年のキャリアを持つ。「カマの塩焼きはいかがですか」と私に聞く同氏。その顔は、私のおかげでいい一日になったというように微笑んでいる。「今、これが一番おいしいメニューだと思います」。彼は、ありのままの自分に自信を持ち、がっしりした体格で、足取りは軽く、確固たる自信と、少なくとも今日は、7年前から所有している太陽電池式のカーボンファイバーG-SHOCKのリズムに合わせて動いている。

 デイリット氏は、欲しいものを見て前に進むタイプの人間だ。トラディシオンの開店は、2020年3月、ロックダウンの1週間前であった。「Googleで検索しても、『初めてのパンデミックへの対応策』なんて出てきません」と彼は語る。少なくとも当時はそうだったはずだ。彼は「新規開店するレストランは、まず店内での食事提供というものを理解し、その問題点をすべて解決してから宅配業を始めるものです。しかし我々は宅配から始めなければならず、1日ですべてを理解しなければなりませんでした」と肩をすくめた。「大変でしたよ。でも、せっかくここまで来たんだから、なんとかしようという気持ちでした」。

 2年以上経った今でもそれは続いている。パートナー数人とともに経営しているトラディシオンは、彼の、自信に満ちた飾り気の無さを反映している。店外にはほとんどテーブルを置かず、店内には白く塗られたむき出しのレンガの壁と籐の吊りランプが雰囲気を醸し出しており、それで十分である。カマの塩焼きは信じられないほど美味しかった。缶の炭酸水は紙コップとともに提供される。給仕は迅速で、食べ物以外は特に際立ったところはない。正直を言えば、この店で食事をして以来、ニューヨークでの外食は、度この店に来てイカのアドボを食べたときを除いて、すべて後悔している。

 そういえば、ある時、私がこの店にいると、近隣住民とみえる60代の客が一人で入ってきたことがあった。彼はメニューを見ることさえせず、「自分の欲しいものは分かっている」「イカのアドボが欲しい」と言った。その男性の昼食に対する果断さはあなたの時計収集に似ている、と私はデイリット氏に言った。彼も同感だった。「欲しい時計があり、それを良い状態で見つければ、私はすべてを捨ててしまいます」。

chef and friend

デイリット氏とミゲル・ブエノ氏。

 女性たちのテーブルがカルデレタと呼ばれるビーフシチューを注文している。ビーフシチューとトマトソース、玉ねぎ、大蒜、パプリカ、トマト、そして牛のショートリブだ。オリーブも入っている。「これは非常に、まさしくスペイン風です。でもフィリピン人は、これにチーズと醤油も入れました。それをご飯の上に乗せると、もう最高なんですよ」。彼はその美味しさを思い浮かべて笑う。女性たちも同意見のようだ。

 今日は、トラディシオンでは普通の木曜日である。一方、デイリット氏にとっては大切な日だ。1956年製のデイトジャストを売り、サブマリーナーを手に入れるのだから。彼は、デイトジャストについて「この時計は厨房ではつけられません」と語る。「サブマリーナーを買おうとしているのは、2店舗目の開店記念ということもありまけど、デイトジャストを処分して、結局のところ、どれだけ働いても、私はサブマリーナー派だということを認めるためでもあるんです」。

chef in apron

とても素敵なエプロン姿のサブマリーナー派男性。


彼の4本
ロレックス サブマリーナー Ref.1680

 「実は、本当に、本当に美しい1675ペプシGMTを持っていました。でも、それほど好きではなかったんです。そういうときにこれを見たんですよ。これほど良い状態の1680は見たことがありません。だからGMTを売却し、現金を手に入れ、これを購入しました。というのも、僕のやり方では、何かを買いたければ、何かを手放さなくてはならないからです。なぜなら、私は買って、買って、買って、買いまくるから。いつの間にか2つの手首に25個の時計をつけているんです。わかるでしょうか」

rolex sub

クリーミーな夜光が素晴らしい。

 「これはマイアミにいる友人の時計ディーラーから入手したものです。彼は『アントン、君のための時計が手に入った』という感じでした。『気に入った。美しくて、完璧だ。今すぐ欲しい』と私が言うと、彼は『わかった。今すぐ買いたいなら取っておくから、この値段で譲るよ』と、とても良い値段を提示してくれたので、手に入れることになったんです。当時、私はサブマリーナーを持っていませんでした。というか、サブマリーナーを所有していたことはあったのですが、その夏の初めには持っていなかったんです。GMTは持っていました。でも当時、私は料理の解説や動画などをたくさん作っていました。それで、『テレビで見栄えがする頑丈な時計が必要だ。そうだ。こういうのが欲しいんだ。泡に浸かっても大丈夫な時計が要るんだ』と考えました」

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ロレックス サブマリーナーRef.5513

 「このゴールドのデイトジャストを持っていて、気に入っているのですが、トラディシオン2店舗目の開店記念にこのサブマリーナーを手に入れるために手放すことにしました。購入理由は、とても丈夫で頑丈だからということもあります。この時計は、身につけて何も心配する必要はありません。デイトジャストのような格好良くて見た目の良い時計を持つのもよいですが、サブマリーナーはいつでも身につけることができます。実は、私は初めはGMT派でした。GMTやデイトジャストは美しい時計です。薄型で、美的に優れている。でも、結局は自宅にいるときや店に行くときしかつけないようになります。結局、私のライフスタイルから無意識にサブマリーナーを所有するようになりました。僕はサブマリーナー派の人間なんです」

rolex sub

もう一つのサブマリーナーによく似ているが、別物だ。日付なし。

ハミルトン クロノグラフ

 「これは6年前から持っています。2店舗目のマイティボウルを開店したときに購入しました。たった1,000ドル(約14万円)とは思えないでしょう。本当に素敵です。1,000ドルですよ!? なんてお買い得だったんだろう。まったく。ストラップが付いていましたが、自分でブレスレットを買って付けました。私は、オメガの時計にもたくさん使われている、剣針と呼ばれるこの針の形状が大好きです。ハミルトンは、常に劣勢にある者の味方なので、好きなんですよね。入手できる時計で、値段の割に最も美しいもののひとつだと思います」

Hamilton watch

Only a grand! 

G-Shock マッドマン

 「料理人時代、G-SHOCKを5個くらい買いました。電池が切れるたびに新しいのを買うんです。電池を交換したことはありませんでした。だって、値段を知っていますか? 料理人の給料からしても非常に安い値段だったんです。最終的にこれを買いました。私が買った最後のG-SHOCKであり、長持ちしています。何よりもまず、カーボンファイバー製だから。次に、太陽電池なので電池交換は要りません。この時計は、シェフになった時に初めて買ったもの。料理人から副料理長になったとき、その記念に買ったんです。7年前でしたね。買ったときのことを今も覚えています。当時のG-SHOCKは100ドル(約1万4500円)から200ドル(約2万9000円)といったところで、これは450ドル(約6万5000円)でしたから。『なるほど、ちょっと高いな。でも私はシェフになったんだ』と考えたんです。SOHOのカシオショップで買いました。実は、仕事でこの時計に何度も救われたんですよね。冗談ではなく本当に。診断を受けていませんが、私はかなりの確率でADD(注意欠陥障害)だと思います。オーブンにものを入れっぱなしにして、2分後には忘れてしまうんです。でも今は違う。タイマーをつけると、ほら! いつでも覚えておけるんですから」

g shock watch

Job saver.


もうひとつ
ブランビーサプライ エプロン

 「このエプロンなしでは生きていけません。かなり汚れていますが、使ったままを見てほしかったんです。バルセロナに店を構えていたアルゼンチン人が作ったもので、彼らは田舎に引っ越したけど、まだ制作を続けています。何着か持っていて、最初に手に入れたのは2016年のこと。マイティボウルの1号店を開くところでした。妻との新婚旅行先でこの革製品店が目に入り、ウィンドウにとても格好良いエプロンが飾られているのを見ました。なかに入ると、店のオーナーがちょうどひとりでそこにいました。それから彼と握手しました。最初の一枚は200ドルくらい(約2万9000円)でしたね。エプロンにしては確かに高め。買ったあと、最初のレストランを開いて、それを使い、それから一度も変えることはありません。それくらい使い心地がとても良かったんです」

chef in apron

エプロンを身にまとった真剣なシェフ。

 「細部へのこだわりが気に入っています。腰に負担がかかりません。洗いたければ紐を外せます。そういう細かいところが個性的ですよね。それに、これをつけていると、自分の役割を感じられるので好きです。時計も同じですね。このエプロンや時計をつけていると、自分のやっていることに少し自信が持てるんです」

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HODINKEE ShopはG-Shock および ハミルトンの正規販売店であり、ロレックスの中古時計も販売しています。各ブランドについて詳しくはG-Shockハミルトンロレックスのウェブサイトをご覧ください。