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港町である神戸の三宮・元町界隈に、現在6店舗を展開する「カミネ」は、スイスを中心に40を超える時計・宝飾ブランドを扱う正規輸入販売店だ。山手から海手、そして外国文化の玄関口として栄えた旧居留地をつなぐランドマーク的な存在「トアロード本店」をはじめ、「元町店」「クロノメトリー店」「旧居留地店」「Bis店」と、各店が異なるコンセプトで“時を楽しむ空間”を提供している。さらに、近隣には「リシャール・ミル神戸」を展開。今夏には「パネライ」のエクスターナルブティックも誕生予定だ。四代目社長・上根 亨氏いわく「これまで続けてこられたのは、この街のおかげ。だから、これからも神戸の街と人々に夢を与える、美しく伝統的なものを届けていきたいと思っています」
二代目・馨時代の店舗。
いまや日本屈指の老舗名店として知られるカミネが創業したのは1906年(明治39年)、福山で神主を務めていた初代・上根銀助氏が、元町の柴田音吉洋服店と柴崎時計店の間の路地裏に開いた貴金属細工店が始まりだ。明治維新後、いち早く海外の文化に触れ、美食やファッションにこだわる気風を育んだハイカラ都市の神戸で、お洒落な金細工のかんざしや懐中時計の鎖など、カミネが取り扱う宝飾品が評判となったのは想像に難くない。
創業者 初代・上根銀助氏
長田神社の表道筋に店舗を構えていた二代目・上根 馨氏の時代に、日本は第二次世界大戦に突入する。1945年、終戦までの8ヵ月間で128回の空襲を受けた神戸は、ほぼ全土が壊滅状態に。一方、戦時中に沖縄に出征していた三代目・上根 保氏が奇跡の生還を果たし、復興途上の三宮で小さな時計宝飾店を開業した。当時の日本では極めて珍しいロレックスやオメガ、パテック フィリップなど高級時計の取り扱いを始めたという。
三代目・上根 保(左) 。
阪神淡路大震災の爪痕を残す、当時のカミネトアロード本店。
順調に商いを広げていた1995年、再び悪夢がカミネを襲う。戦後初の大都市直下型地震、阪神淡路大震災である。カミネの店舗も甚大な被害を受け、周辺は荒れ果てた状態が続いた。しかし、「ささやかだが、少しでも人々の役に立ち、神戸の街を明るくできれば」という思いから、瓦礫の中でいち早く店舗を再開し、目覚まし時計を配った。すると、様々な方面から山のように励ましのメッセージが届き始めたのである。
「生きていくうえで人の“情”がいかに大切か、このとき知りました」という上根 亨氏が、四代目社長に就任したのは2001年のこと。神戸に根ざす店として、当時の想いは現在につながっている。
震災で時を止めた、壁掛け時計。
カミネで扱っている時計は、デザインはもちろん、クオリティやアフターサービスも含めて“購入いただいたことに責任がもてる”逸品だけがセレクトされている。
上根社長が時計界のご意見番として一目置かれる理由のひとつも、時代の一歩先を行く目利きぶりにある。たとえばリシャール・ミルの素晴らしさにいち早く着目し、取り扱いのキャリアが西日本で一番長いのがカミネだ。この古い付き合いがそのままブランドとの深い信頼関係となり、国内3店舗目のブティックとなる「リシャール・ミル 神戸」の2019年オープンにつながった一面もある。
時計への深い知識と確かな審美眼を生かし、価値ある時計なら知名度は低くとも取り扱いを独断決行してきた上根社長ゆえに、ヨーロッパのブランドCEOや独立時計師たちにも慕われ、カミネオリジナルモデルの製作時には皆が喜んで協力してくれるという。日本人のニーズをブランド本社に伝えることにも熱心に取り組んでおり、逆に上根社長に認められなければ店頭に時計が並ぶことはない。
「神戸にカミネあり」。パテック フィリップやオーデマ ピゲをはじめ、スイス時計界でも一目置かれる存在である。
4代目、現社長の上根 亨氏
2021年、記念すべき創業115周年を迎えたカミネは、各ブランドとコラボレーションした限定モデルやイベントなど、話題に事欠かない1年になりそうだ。
1Fでは、3月19日より昨秋リニューアルしたカルティエコーナーにてフェアが開催される。ブランドの世界観を反映した洗練の空間で、通常よりもボリュームアップした商品をじっくりと吟味していただきたい。
【カミネ トアロード本店】
■住所:兵庫県神戸市中央区三宮町3丁目1-22
■TEL:078-321-0039/フリーダイヤル:0120-02-7039
■営業:10:30~19:30 ※不定休
カミネでの買い物はWEBからの「来店事前予約」がオススメ。混雑を避け、じっくりと吟味して買い物を楽しめると好評とのこと。新型コロナウイルス感染拡大防止対策も万全に実施している。
詳細は、カミネ公式サイトへ。
Words:Takahiro Ono
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