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セイコー プロスペックス 本格ダイバーズがたどり着いた新たな最適解

ダイバーズウォッチは、深海という未知なる神秘を解明したいという冒険心から生まれた。セイコーでは1965年に初代モデルが完成。そのチャレンジ精神を受け継いだ「プロスペックス」は、今や海だけでなく、あらゆるフィールドで活躍するタフウォッチである。

 宇宙よりも謎が多いといわれる海。その神秘を解明する一助となるために、ダイバーズウォッチは生まれた。そのきっかけは、1950年代にスキューバダイビングの技術が確立されたことだった。海中を自由に移動できるようになったことに伴い、潜水用の防水腕時計が求められるようになったのだ。まずはスイスの時計メーカーがダイバーズウォッチの開発を進めた。他の時計と決定的に違ったのは、防水性を担保する肉厚なケースと海中での視認性を確保するシンプルな表示、そして潜水経過時間を計測するための目盛り付き逆回転防止ベゼルを備えていたこと。セイコーでは1965年に国産初のダイバーズウォッチを発売したが、これが現代のプロスペックスへと繋がるタフウォッチの始まりとなった。


プロスペックスの原点

国産初のダイバーズウォッチとして誕生した自動巻きの150m防水ダイバーズ(62MAS-010)。通称“ファーストダイバー”。空気潜水仕様のダイバーズウォッチであり、いわばプロスペックスの原点。1965年。

 国産初のダイバーズウォッチとして、1965年にデビューした「150m防水ダイバーズ」は、優れた防水性や視認性はもちろんだが、搭載ムーブメントに耐衝撃性に優れるダイヤショック付きのCal.6217を使用し、安全性と信頼性も備えた時計であった。ケース径は当時としては大型の38mm。しかし、スポーツウォッチであることを考えれば、これは妥当なサイズだろう。それよりも気になるのは、水中で使うための時計でありながら、視認性に優れるカレンダーが備わっていたことである。当時製作されたほとんどのスイス製ダイバーズウォッチには、カレンダーは付いていなかった。海の中で今日は何日だったっけ? と気になる人はいなかったためと思われるが、セイコーはこの時計を“海中だけのもの”にするつもりはなかったのだ。販売価格は1万3000円だったが、これは当時の国家公務員の初任給約2万円よりも低く抑えられている。つまり特別な人だけが手にする時計ではなく、普通の勤め人が手に入れられるスポーツウォッチという位置づけだったのだろう。

発表当時、世界最高水準のメカニカルハイビート(10振動)自動巻きムーブメントを搭載し、300m防水を実現したモデル。61ダイバー プロフェッショナル。1968年。

冒険家・植村直己が実際に身に着けていた150m防水のダイバーズウォッチのセカンドモデル。通称“植村ダイバー”。1970年。

 事実、セイコーのダイバーズウォッチは、1966年から4回にわたって南極観測越冬隊によって使用されている。極寒の過酷な地でも安心して使える時計であったわけだ。さらに日本映画の金字塔『男はつらいよ』シリーズの初期作品で、主人公であるフーテンの寅こと車 寅次郎が着用していたのも、1965年に登場した初代ダイバーズウォッチ、通称“ファーストダイバー”であった。劇中ではメタルブレスレット仕様に変更していたが、全国を渡り歩く男であるからこそ、こういったタフな時計が必要だったのだろう。(なお、ダイヤルカラーをブラックにしたファーストダイバーの復刻モデルが、昨年ビームス×松竹×セイコーのトリプルネームモデルとして限定発売された

 さらに1968年には、国産初の10振動ムーブメント(Cal.6159)を搭載した高精度ダイバーズを発表。本作はケースをワンピース構造とすることで防水性能を300mへと高めたことに加えて、リューズ位置を4時位置に動かすことで、手首への不快な食い込みを軽減。これはロープなどがリューズに引っ掛かりにくくするための工夫でもあり、実用的に進化したこの時計は冒険家の植村直己が愛用し、エベレスト登頂などにも使用。その堅牢さを証明することになる。

2007年に誕生したセイコーのダイバースキューバ SBDC001。ケース両サイドが太い回転ベゼルを包み込むようなどっしりとしたスタイル、そして12時位置のインデックスが力士の頭にある大銀杏のように見えることから、“SUMO”の愛称で呼ばれる。

 さらにセイコーでは、チタンケースを世界で初めてダイバーズウォッチに採用したり(1975年)、世界初のクォーツ式600m飽和潜水ダイバーズウォッチ(1978年)を発売するなど、数多くの画期的なダイバーズウォッチを開発し、世界中のプロフェッショナルダイバーたちから愛されてきた。しかし、一方で“TUNA-KAN”や“SAMURAI”といったニックネームで呼ばれる、親しみやすいモデルも多かった。それは卓越したスペックをもちつつも、豊かなデザインバリエーションも含めて、スポーティなデイリーウォッチとしての魅力にあふれているからだ。

 例えば2007年にデビューした「SBDC001」は、海外では“SUMO”の愛称で呼ばれていた。4時位置リューズやボリューム感のあるケースフォルムからも、デザインのルーツは1968年モデルにあることは明白だが、45mmという大型ケースながら、斜面を活かしたキレのあるケースデザインによってぐっと締まった雰囲気がある。ボリューム感があり、アスリートとしての強い体幹をもつ力士を思わせる絶妙なネーミングだが、そういった愛称が付くほどに、セイコー・ダイバーは多方面から愛されたのだ。

 歴史を振り返ると、ダイバーズウォッチは紛れもなく“潜水士の道具”として生まれたものだ。しかし、その優れたスペックは、時計としてのポテンシャルが高いということでもある。良質な時計は誰もが好むもの。
 海から山、そして街へとフィールドが広がり、それが現代のプロスペックスへと繋がっている。


日本の美しい情景からインスピレーションを得たセイコー創業140周年限定モデル

西表島のマングローブ林。島の面積の約90%が亜熱帯の自然林で覆われており、山奥から流れ出す河川の下流には広大なマングローブ林が形成されている。

 数々の冒険家に愛されたタフウォッチの系譜は現在、プロスペックスへと継承されている。陸、海、空。そのあらゆる過酷な環境でこそ真価を発揮する時計であり、常なる前進という精神を込めて「Keep Going Forward」をブランドフィロソフィーとしている。
 しかしながら、その優れたスペックをブラッシュアップし続ける一方、現代的なライフスタイルに寄り添うデイリーウォッチとしての価値も高めつつある。

 例えばプロスペックスの最高峰ラインである「LXライン」は、世界的工業デザイナーの奥山清行氏を開発アドバイサーに招き、所有欲を満たす美しさも追求するコレクションだ。また、海外から火が付き、逆輸入という形で日本にやってきた「ストリートシリーズ」は、外胴プロテクター付きモデルを現代的に進化させ、サファリやグレーなどカラーリングを楽しむファッション感度の高いモデルである。どちらも卓越したスペックを使えるだけでなく、時計を腕に着ける喜びがある。それもまた時計の正統進化の一例といえよう。

 2021年はセイコー創業140周年の節目である。それを記念するセイコー プロスペックスの記念限定モデルもまた、腕に着けること自体を楽しめる時計になっている。3モデルをラインナップするが、2つの機械式モデルは1968年デビューのハイビートダイバーズウォッチのデザインを継承した4時位置リューズのスタイルになっており、さらに実用性を強く意識したソーラー発電式のクォーツクロノグラフも用意されている。

 さらに日本生まれの時計であることを明確化するために、美しい日本の自然をデザインテーマとし、世界屈指のダイビングスポットである西表島の美しい海を支える島の原生林をデザインモチーフとしている。ダイヤルカラーを「深緑」で統一し、力強い鼓動を感じさせる深緑の世界を表現。そして針には原生林に差し込む陽の光をイメージしたゴールドカラーを採用した。毎日の生活にアクティブな冒険心を加えてくれる、タフで美しい時計たちである。 


ダイバースキューバ SBDC133

 もともと潜水計器として生まれたダイバーズウォッチは、その性能基準に対して厳しい規格がある。セイコーでは規格を順守しており、空気潜水用のダイバーズウォッチと混合ガスを用いたダイバーズウォッチを明確に分けている。この「SBDC133」は、空気潜水用のダイバーズウォッチで、200mの防水性能を備える。1968年製ダイバーズウォッチのデザインを現代的にアレンジしており、リューズ位置は4時位置にありつつ、ヘアライン仕上げをベースとしたケースでポリッシュ仕上げの存在を際立たせたシャープなデザインが特徴。搭載するムーブメントは、約70時間のパワーリザーブを誇るCal.6R35である。 

2万1600振動/時で駆動し、最大約70時間パワーリザーブを備えるCal.6R35。プロスペックスのほか、プレザージュの上位モデルにも搭載される極めて優秀な実用ムーブメントだ。

ポリッシュとヘアライン仕上げの稜線が美しいケースから、クオリティの高さが見て取れる。ブレスレット表面は全てヘアライン仕上げ。スポーティな本機とマッチしている。


マリーンマスター プロフェッショナル SBDX043

 こちらはプロの潜水士が行う混合ガスを使った飽和潜水のためのダイバーズウォッチである。通常の飽和潜水用モデルは、内部に侵入したガスを排出するためのバルブが必要となるが、セイコーでは、L字型パッキンなどを用いることでガス自体が時計内部に浸入しないような構造を採用しているためバルブは不要。そのためハイスペックモデルでありつつ、ケースデザインは端正で洗練されている。4時位置のリューズは1968年モデルを継承するスタイルだが、そのスペックは驚くほど進化しているのだ。搭載ムーブメントは、毎秒8振動(2万8800振動/時)のCal.8L35だ。

雫石高級時計工房で製造されるダイバーズウォッチ専用の機械式ムーブメントCal.8L35。最大約50時間パワーリザーブを備え、日差+15秒~-10秒の精度を誇る高級機だ。

前出のSBDC133よりも滑らかな質感をもつSBDX043のケース。本格的なスポーツモデルでありながら、高級機に採用されるザラツ研磨が施される。


ダイバースキューバ SBDL083

  クォーツムーブメントを搭載したダイバーズクロノグラフ「SBDL083」は、空気潜水用防水のダイバーズウォッチで、防水性能は200m。省エネICを使用することで、発電用のソーラーセルを小型化し、積算計などのインダイヤルの中に収めているため、深緑の美しいグリーンダイヤルと優れた機能性を両立している。ケースなどを含めたデザインは、2007年に誕生した“SUMO”モデルがベースになっている。 

搭載するのはソーラークロノグラフムーブメントのCal.V192。インダイヤル部分のわずかな開口部から入る光でも十分な充電量を確保できるのは、優れた省エネルギー設計ゆえ。

“SUMO”の名で親しまれているモデルと共通のケースデザインを採用。ポリッシュ仕上げも施されているが、ヘアライン仕上げの面積が広く、力強い印象を与えている。


デイリーウォッチへの進化こそ、今日におけるプロスペックスの魅力

 少々アクティブに扱っても故障しにくく、水に強くて、時刻を読み取りやすい。ダイバーズウォッチが備えるスペックは、すなわち腕時計が求めるスペックでもある。だからこそダイバーズウォッチは、その機能を本当に必要とするプロフェッショナルダイバーだけでなく、多くの人から愛されている。ハイスペックでありつつ、使いやすい時計でもあるのだ。事実、世の中にダイバーズウォッチが生まれてから60年以上が経っているが、基本的なスタイルを継続しながら、現代へとそのまま受け継がれている。それはダイバーズウォッチが極めて普遍的な存在であることの証明でもあろう。

 セイコーは2020年にダイバーズウォッチの55周年を迎え、過去の傑作モデルを復刻させたり、現代的なデザインへと進化させたりしているが、そのどれもが普遍的な魅力に満ちている。つまるところ、防水能力という分かりやすく明確な目標値が軸にあるがゆえに、そこからぶれることなくデザイン領域を広げることができるのだ。

 セイコーのダイバーズウォッチの歴史と文化を継承するプロスペックスは、“プロのための武骨な道具”という枠をこえ、自分らしいライフスタイルや審美眼に合わせて楽しむコレクションへと進化を続けている。それこそがプロスペックスが進化の中で見つけた最適解なのである。 


セイコー プロスペックス セイコー創業140周年限定モデル ギャラリー

Photos:Yoshinori Eto Styled:Eiji Ishikawa(TRS) Words:Tetsuo Shinoda