trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

Introducing セイコー プロスペックス スピードタイマーに70年代の雰囲気を宿すメカニカルクロノグラフが登場(編集部撮り下ろし)

既存のメカニカルクロノグラフとは大きく異なるフォルムに国産クロノグラフの名作の面影を載せた、新しいアプローチのスピードタイマーだ。

Photo by Masaharu Wada


クイック解説

スピードタイマーがセイコー プロスペックスのラインに加わったのは 2021年のことだ。1960年代に見られたセイコーの計時における飛躍の過程、具体的には1964年に東京で開催された世界的なスポーツ競技大会で使用された超高精度なストップウォッチに始まり、1964年の国産初のクロノグラフであるクラウン クロノグラフ、そして1969年にリリースされた世界初の垂直クラッチ式自動巻クロノグラフこと1969 スピードタイマーまで駆け抜けたセイコークロノグラフの歴史をルーツとし、モダンに昇華したコレクションとなる。そのデビュー作であるSBEC007とSBEC009に見られた、円柱形のソリッドなケースフォルムと操作性に優れるハンマー型のプッシャー、ツーカウンターなどの意匠は、現在に至るまで同コレクションのメカニカルクロノグラフに共通するデザインコードとなっている。

 だが、セイコーブランドの100周年を目前としたこの冬、スピードタイマーのメカニカルクロノグラフに少し趣向の異なる新作が加わった。パンダダイヤルと逆パンダダイヤルのSBEC021とSBEC023だ。1970年代に発売された、Cal.6138搭載のパンダクロノに着想を得たというこれらのモデルは、従来のスピードタイマーと比較してスポーツテイストがグッと抑えられた印象を受ける。

セイコー自動巻きクロノの50周年時にもデザインソースとされた、オリジナルのセイコー “パンダ” クロノグラフ Ref.6138-8000。

 デザインモチーフとなった1972年の個体であるRef.6138-8000は、パンダの配色、短めのラグに流線型のケース形状、オレンジのクロノ針と多連のメタルブレスを特徴としている。レギュラーモデルとして展開されるSBEC021は、ブルーグレーのパンダダイヤルも含めて、そのエッセンスを強く受け継いでいる。大ぶりなハンマー型プッシャーなど従来のスピードタイマーらしい要素も残ってはいるが、ケースのフォルムが変われば与える印象も大きく変わる。これまでの工業製品然としたメカニカルクロノグラフと比べると、ラグからラグまでが緩やかなカーブを描く今作には、どこか品のある空気が漂う。

付属のカウレザーストラップを取り付けたSBEC023。

 逆パンダデザインのSBEC023は、来たるセイコーブランド100周年を祝した限定モデルとなる。マットなブルーグレーダイヤルを備え、ホワイトシルバーのサブダイヤルにはレコード引きが施された。世界限定1000本となるこのモデルには、写真のメタルブレスに加えてブラックのカウレザーストラップも付属する。ステッチを効かせたマットな質感のストラップは、多連のメタルブレス装着時とはまた異なる男らしさを漂わせる(欲を言えば、価格帯を考慮するとクイックチェンジ機構が付いていればなおうれしかった)。

 SBEC021、SBEC023ともに、ケースサイズは直径42mmで厚さが14.6mm、防水性能は10気圧となっている。価格はSBEC021が35万2000円(税込)で、レザーストラップが付属するSBEC023が38万5000円(税込)だ。発売は12月8日(金)を予定している。


ファースト・インプレッション

今作はスピードタイマーのメカニカルクロノグラフ、そのセカンドシーズンの始まりを告げるモデルだ。サイズ感にこそ大きな違いはないものの、ソリッドさを抑え、むしろエレガンスが感じられるような新たな舵取りがなされている。直近でレビューしたマリンマスターでも感じたが、無骨なスポーツウォッチとしてのイメージが強いプロスペックスの新たな可能性を模索しているようにも見える。

 ケースフォルムの変更と並び、その傾向がもっとも顕著なのが多連のメタルブレスの採用だろう。デザインとしてはCal.6138搭載モデル、Ref.6138-8000のブレスを再現したような形ではあるが、当然ながらこの50年ほどで加工技術は大幅に進歩している。ピッチの細い中ゴマもガチャつきなくしなやかに動くし、各コマはサテンとポリッシュで交互に磨け分けられるなど手間がかかっている。ブレス全体の厚みも程よく、手首に巻いたときには時計本体をしっかりと支えてくれる感覚があった。総じて、既存のスピードタイマーのソリッドな3連ブレスと比べ、美観や作りの面で大幅な向上が見られた。70年代風のレトロさと現代的な高級感がバランスよく同居している。

 だが一方で、内部に大きな違いはない。ムーブメントには、従来のメカニカルクロノグラフにも搭載されていたセイコーの8R系に連なる8R48が搭載された(余談だが、同ムーブメントは2019年のヒストリカルコレクション、セイコー自動巻クロノグラフ 50周年記念モデルにも使用されている)。これは約45時間のパワーリザーブに2万8800振動/時で駆動し、ダイヤル側に垂直クラッチとコラムホイールを採用したクロノグラフモジュールを重ねたものだ。これは(モジュール式クロノグラフでは一般的な数値だが)14.6mmのケース厚の要因となっており、個人的にはあと2mmでも薄くなれば流線型のケースフォルムがもっと生きてくるかも……、と思わずにはいられなかった。だが、今年発表されたモジュール式クロノグラフのグランドセイコー テンタグラフ(こちらは厚さ15.3mm)と同様、重心が低めに設定されていることから装着感は良好だ。上でも述べたブレスの作りの向上もあり、時計本体に振り回されるようなバランスの悪さはない。

 ブルーグレーの塩梅は、僕個人としてとても気に入ったポイントだ。遠目にはブラックにも見えるほど暗いトーンなのだが、近くで眺めてみるとホワイトシルバーとのコントラストも強すぎず品があり、それが70年代のアーカイブに範をとった外装デザインに絶妙にマッチしているように見える。ダイヤルに溶け込むように馴染む、4時半位置のデイト窓の色味もうれしい配慮だ。

 2021年の登場から丸2年間、あの円柱形のケースデザインに慣れ親しんでいたことから、今作を初めて見たときには少々驚きもあった。だが、セイコークロノグラフ史のなかでも特にポピュラーなモデルがベースとなっていることもあり、決して突飛な印象は受けない。また、その年代の時計を下地としたメカニカルクロノグラフを今作るなら、スピードタイマーの名前を冠するのが自然だろう。3年目を迎えたコレクションの拡幅を狙った挑戦としては、実に手堅い。むしろデザインやカラーリングにおいては、時計好きというよりもより広い層に受け入れられるものとなっている。8R系ムーブメントの安心感もあり、着用感の高さもあり、機械式クロノグラフをデイリーに嗜みたいという人には個人的に強くおすすめしたい。


基本情報

ブランド: セイコー プロスペックス(Seiko Prospex)
モデル名: スピードタイマー メカニカルクロノグラフ
型番: SBEC021、SBEC023(限定モデル)

直径: 42mm
厚さ: 14.6mm
ケース素材: ステンレススティール(ダイヤシールド)
文字盤色: シルバーホワイト(SBEC021)、ブルーグレー(SBEC023)
インデックス: バーインデックス、アプライド
夜光: あり
防水性能: 10気圧防水
ストラップ/ブレスレット: ステンレススティール製ブレスレット(ダイヤシールド)、SBEC023はカウレザーストラップも付属
追加情報: 内面無反射コーティング付きデュアルカーブサファイアガラス

SBEC023の裏蓋には右下にシリアルナンバーが入る。


ムーブメント情報

キャリバー: 8R48
機能: 時・分・秒表示、デイト表示、ストップウォッチ(30分積算計、12時間積算計)
パワーリザーブ: 約45時間
巻き上げ方式: 自動巻き(手巻き付き)
振動数: 2万8800振動/時
石数: 34


価格 & 発売時期

価格: 税込35万2000円(SBEC021)、税込38万5000円(SBEC023)
発売時期: 2023年12月8日(金)
限定: SBEC023は世界限定1000本(うち国内150本)

詳細はセイコーのWebサイトをご確認ください。