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Watches & Wonders 2025の開催前週、私はロンドンで友人たちと会うために滞在していた。そこにいるからには、愛してやまないブランドの“聖地”とも言える場所、新しくオープンしたロレックス ブティック(オールド・ボンド・ストリート34番地)を訪れずにはいられなかった。この店舗についての詳細は、先月のオープン時に、我々の仲間であるティム・ジェフリーズがしっかりと取材しているので、そちらを参照して欲しい。ちなみに同店舗は我々の親会社であるWatches of Switzerlandが運営している。今回はそのブティックで目にしたいくつかの素晴らしい時計について紹介したいと思う。とにかく、圧巻であった。
まず最初にお伝えしておきたいのは、この記事は私が“認定中古”セクションで見かけた6本の時計についての話であるということ。正直に言えば、これらはこのブティックのなかでも特に興味深い時計たちであり、まさに我々が注目すべき存在なのだ。とはいえ、コメントが寄せられる前に釘を刺しておくが、この店舗では新品の時計も販売している。それもたくさん。そういった個体を確実に見る最良の方法は、事前に来店予約を取って関心のあるモデルを登録しておくことである。予約はこちらからどうぞ。
さて、それでは本題に入ろう。2022年12月、ロレックスが自社による認定中古プログラムを始めると発表した。これは業界にとって、とてつもなく大きなニュースだった。そして今、そのプログラムは見事に国際展開されて大成功を収めている。このプログラムの最大の魅力は、ロレックスがあらゆる“かつての”ロレックスをしっかりとメンテナンスし、そのメカニカルな性能を新品同様に蘇らせてくれる点にある。ただし、外観はできるかぎり当時のままに保たれるよう努めている。さらに言うとRCPO(Rolex Certified Pre-Owned)認定されたあとのロレックスについては、ロレックス自身がすべてのパーツ(文字盤も含めて)とその真正性を保証してくれるのだ。ヴィンテージコレクターにとって、このプログラムの価値がまだ十分に理解されていないのではないか、そんな気もしている。とはいえ私が知る限りでは、ひとりのあるコレクターが何年も前から自身のポール・ニューマン デイトナをロレックスに送り、本物であることの確認を依頼しているという例もある。認定による安心感はもちろんのこと、このプログラムでは時計が完全に分解され、整備され、そして再み組立てされる。つまり可能な限りベストな状態で機能するように仕上げてくれるのだ。しかも国際保証が2年間もついてくる。このロレックス認定中古プログラム(RCPO)は、まさに市場を一変させる存在だ。我々が目の当たりにしているのは、人々が中古やヴィンテージロレックスを買う方法そのものが根本から変わってきているという現実なのである。
上にあるのは、ロレックス自身がRCPOについてどう捉えているかを簡単に紹介した動画だ。でも個人的には、認定プロセスがいかに緻密かつていねいに行われているかを知るために、ぜひ公式サイトの詳細ページを見てみて欲しい。本当に驚くほどしっかりしている。ただ我々のようなコレクターにとって、RCPOで時計を買うということにはもっとシンプルな意味がある。それはつまり、“この時計はグッド”だということ。ここで言う“グッド”とは、ヴィンテージロレックスの世界でよく使われる、あの意味合いの“グッド”だ。ヴィンテージ市場では、モデルの真贋が不確かだったりこれはどうなの? という声が上がることもしばしばある。そんな中で“グッド”とされる個体は、正しいものであり、本物であるという証になる。そしてRCPOで本当にレアな時計を買う最大の魅力は、そのグッドが保証されていること。なにせ、それがロレックス自身から出てきたものだから。
誤解のないように言っておくと、オールド・ボンド・ストリート34番地やそのほかのロレックス正規販売店のRCPOケースに並んでいる在庫の大半は、まあいわゆるちょっと使われた時計たちだ。たとえるならBMWディーラーに行って2019年式の330XIが並んでいるようなものだ。もちろん素晴らしいクルマだが、本当に探しているのは走行距離が少なくて、ナンバーマッチで、サビひとつないE9クーペだったりするだろう。私がオールド・ボンド・ストリートのブティックに足を踏み入れたとき、店内には“今すぐ買える”、しかも“ちゃんと認定された”素晴らしい時計が山のようにあった(250本以上!)。でもそれ以上に驚かされたのはそのなかに混ざっている、真にレアで興味深い時計たちがかなりの数しっかりと並んでいたということだ。今日の話はまさにその部分。この新しいロレックス ブティックのRCPOケースのなかで出合った、まさかここで見られるなんてと驚かされた6本の時計についてである。
1. 1968年にNAAFI(英国海軍・陸軍・空軍協会)で販売されたRef.1016 エクスプローラー
HODINKEEらしさの象徴といえる時計を挙げてみて欲しい...エクスプローラー Ref.1016以上の存在なんて、きっと出てこないはずだ。そしてその1本が、ロンドン中心部のロレックス ブティックのショーケースのなかに、まるでさりげなく置かれていたのである。しかもただの1016ではない。なんと“NAAFI”のスタンプが押されたオリジナルの保証書付き。このNAAFI(ナーフィ)とは、英国海軍・陸軍・空軍協会(The Navy, Army and Air Force Institutes)の略称であり、100年以上前に英国政府によって創設された軍関係者向けの物資提供機関だ。どんな場所に赴任していようとも、軍人たちが必要な物資を手に入れられるようにするのがその役割だった。つまりこのモデルは、1968年当時に軍人の手に渡った由緒ある本物のエクスプローラーなのだ。NAAFIは現在も存続しており、その役割は海外に展開する軍関係者に対して、遠隔地での支援、施設管理、レクリエーション、そして小売サービスを提供することにある。そう考えれば1968年1月8日にロレックスのエクスプローラーがNAAFI経由で販売されていたとしても、何ら不思議ではない。とはいえ、私はこれまでに同様の個体を見たことがない。この時計の針は過去のどこかのタイミングで交換されているが、もし気になるなら色味を合わせることも不可能ではないだろう。でも個人的には、そんな細かいことよりこの時計が持つ背景のほうが圧倒的に魅力的だと感じる。これは本当にクールなストーリーだ。
この時計には、オリジナルのギャランティ(パンチ穴入り)が日付入り・署名入りで付属しており、もちろんRCPOとしての書類一式も揃っている。この世界ではあまりに使い古された言葉なので使いたくはないが、ほかにはまず見つからない、そんな1本だ。販売価格は2万3000ポンド(日本円で約440万円)をほんの少し下回る程度で提示されている。
2. ホワイトゴールド製メテオライトダイヤルのRef.126719BLRO GMTマスターII
さて、話はこうだ。ロンドンでこの時計を目にしたとき、私はてっきりこのWG製ペプシベゼル×メテオライトダイヤル仕様は、もう生産終了していると思っていた。それくらい、このリファレンスはレアなのである。正直、私はこれまでに店頭でこのモデルを見た記憶がないし、所有している知人すら思い当たらない。だからRCPOのケースのなかにメテオライトGMTを見つけた瞬間、完全に取り乱してしまった。個人的に、これは本当に最高にクールな時計だと思う。GMTというモデルが持つ“宇宙”とのつながり(まあ、私の思い込みかもしれないが)やそれも含めて、より特別に感じられる。というのも歴史的な宇宙飛行士たちが、個人的に選んだ時計の多くがGMTモデルだったという背景があるからだ。こうしたロレックス ブティックでメテオライト仕様のGMTを買えるというのは、本当に特別な体験だと思う。そして正直なところ、私がその翌週にジュネーブに行くまではこのモデルはもうカタログ落ちしているとばかり思っていた。ところがロレックスとのミーティングでこの前ロンドンで見たよと話したところ、「まだ生産は続いていますよ。ただしきわめて少数ですが」と教えてもらったのだ。そんな時計が10年後に超コレクターズピースになっていないはずがあるだろうか? 現在、この1本はボンド・ストリートのロレックス ブティックでおよそ5万8000ポンド(日本円で約1100万円)で販売されている。
3 - 4. オリンピックダイヤルのデイトジャストと、ピラミッドダイヤル×バーク仕上げのデイデイト
この2本については、正直なところこんなモデルが存在するなんて知らなかったとしか言いようがない。まずひとつ目は1980年代後半、まさに“ロレックスのコンビ全盛期”にあたる時代のデイトジャスト。しかもそのダイヤルには、あのオリンピックのシンボルマークがあしらわれている。もしヨーロッパ最大級のRCPO店以外の場所で見ていたら、私はきっとアフターマーケットのカスタムだろうと思っていたに違いない。だが、そうではない。この1本はれっきとしたロレックス製であり、つい最近RCPOプログラムの一環としてロレックスによって整備・検証されたものでもある。もともとは1987年に、1988年のソウル五輪の功労に対してIOCの関係者に贈られたものだという。価格は約1万9000ポンド(日本円で約360万円)だ。そしてその隣に並んでいたのがもう1本の異色作。イエローゴールドのデイデイトに独特なピラミッドスタイルのダイヤル、そしてベゼルとブレスレットにはオリジナルのバーク仕上げ。ヴィンテージデイデイトのなかでもかなりクセ強めな個体だ。こちらも価格はおよそ1万9000ポンド(日本円で約360万円)。
5. 新品同様、ワンオーナー、書類完備のハンジャル デイデイト
世界にはごく少数ながら、異常なまでに情熱を注ぐコレクターが存在する。そう、オマーンのハンジャル紋章入りロレックスに心酔する人々だ。このハンジャルの紋章とは、帯に差された湾曲した短剣の上に、交差した2本の剣が描かれたもの。これがダイヤルやケースバックに刻まれているということは、すなわちその時計がオマーンを約50年間統治したスルタン、カーブース・ビン・サイード(Qaboos bin Said)陛下から贈られたものであることを意味する。カーブース陛下は無類の時計愛好家であり、この紋章があることでその時計のコレクター価値や市場価格は一気に跳ね上がる。そして、よく探せばスパイ小説顔負けの逸話まで付随してくるのもこのジャンルの奥深さだ。だがその一方で“新品同様の状態”で、“実質的にワンオーナー”、しかも“スルタンとの関係が証明できる来歴付き”の個体となると、まさに別格でまず見つからない。ところがロンドン・ボンド・ストリートのロレックス ブティックには、まさにそんな個体が存在していたのである。
この時計は2003年、スルタン・カーブース・ビン・サイード陛下から、ボールドウィン・ワイト准将(大英帝国勲章オフィサー、軍功十字章、准尉) に直接贈られたものだ。ワイト准将は、スルタン直属の特殊部隊SSF(Sultan's Special Forces)の司令官を退任した直後だった。彼は1997年から2002年までのあいだ、SSFを指揮していたがそれ以前は英国軍の特殊部隊に所属し、きわめて重要かつ特異な任務において指揮を執り、数々の勲章を授与された人物である。キャリアを通じて国際的にも非常に高く評価された特別な軍人だったのだ。このデイデイトが特別なのは、まずそのケースバックにスルタンの紋章が刻まれていること、そしてそれだけでなく、オリジナルオーナーであるワイト氏とスルタン本人が一緒に写った写真、さらにサイファー入りのオリジナルの箱と保証書がすべて揃っているという点にある。それに加えて、この時計は1度も着用されておらず、新品同様(NOS)かつ極上コンディションを保っている。新品同様、しかもワンオーナーで来歴の明確なオマーン仕様のデイデイトを見つけるだけでも驚きなのに、それがロレックス自身によって真正性が確認された個体であるというのはもはや別次元の話だ。現在この1本はボンド・ストリートのロレックス ブティックにて、およそ5万ポンド(日本円で約950万円)で販売されている。
6. 書類完備、オリジナルオーナーのCOMEXサブマリーナー Ref.16800
サブマリーナーにおけるCOMEX(コメックス)モデルの存在は、デイトナにおけるポール・ニューマンに匹敵する特別なものだ。そして、それが完全に真正確認済みで、しかもオリジナルオーナー物としてロンドンのロレックス旗艦ブティックに並んでいたというのは、ちょっと信じがたい光景だった。このRef.16800、COMEXナンバー6091の個体は、1982年にカート・スティーヴン・ヘンドリックス(Kurt Stephen Hendricks)氏に支給されたもの。彼はこの時計を手に世界中を飛び回って愛用したという。実際には、彼にはもう1本ロレックスが支給されており、それは息子さんに譲ったそうだ。本個体はコンディションも素晴らしく外装もオリジナルのまま。そして特筆すべきは、彼がこの時計をブレスレットではなくストラップで着用していたという点。そのため、付属のブレスレットはほぼ新品同様という驚きの状態が保たれている。
Ref.16800は日付表示付きのサブマリーナーであり、COMEXモデルのなかでは比較的珍しい存在だ。この個体はいい感じに焼けたフェードベゼルが装備されており、さらにケースには実際にCOMEXダイバーが使用していたことを物語る小傷や打痕がしっかりと残っている。そう、まさに使われていた“道具”としての説得力がある。とはいえRCPOセクションにあるすべての時計と同様に、この1本も徹底的に検証・認証され、真正性が確認されている。COMEXのような特殊モデルにおいては、こうした確実な裏付けがあることが特に重要な意味を持つ。ちなみに店舗スタッフの話によれば、この個体はRCPOプログラムを通過した最初のCOMEXモデルだそうだ。それだけでもちょっとした“事件”である。本格的な背景を持ち、状態、来歴ともに申し分がない。価格はそれに見合う、およそ15万ポンド(日本円で約2860万円)であった。
ロレックス ロンドン旗艦店への問い合わせ方法
今回紹介した驚くほどスペシャルな6本の時計は、ロンドン・ボンド・ストリート34番地にあるロレックス ブティックにて販売されている。ほかにも250本以上のRCPOウォッチが店頭に並んでおり、まさに“宝の山”といえるラインナップだ。もしこれらの時計に興味がある方はもちろん、ヴィンテージでも現行でもロレックスに興味があるならとにかく1度足を運んでみるのがいちばんだ。その際は、事前にアポイントメントをこちらから予約するのをおすすめする。それと、来店時にはぜひこう伝えて欲しい。“ベンの紹介で来ました”と。
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