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Hands-On ストラム ヤンマイエン チタニウム、ブランド初となる一体型ラバーストラップが登場

価格以上のクオリティを誇るストラップ技術と、新たに採用されたグレード5チタンケースが、北欧的なアーティスティックなダイヤルデザインとともに強い存在感を示す。

Photos by Thor Svaboe

新作のストラム ヤンマイエン チタニウムを前にすると、右手をウォッチメイキングに関する書物の上に置き、北欧出身である自身の視点が客観性を失わないことを宣誓したくなる。ストラムというブランドとは数年前から付き合いがあり、スカンジナビアを代表する優れた腕時計ブランドのひとつへと成長する過程を見てきた。今回の新作は、ブランドを次の段階に引き上げるモデルだ。

Straum Jan Mayen Titanium

 正直に言うと、去年ミンを購入するまでチタンという素材にあまり好意的ではなかった。しかし今ではその考えが完全に変わったと言える。ストラムは快適性をいっそう高めるべくチタンケースを採用し、それに合わせて独自設計によるケース一体型のラバーストラップを組み合わせた。近年人気を博している“一体型ブレスレット”のデザインに引かれながらも、レザーやラバー製のストラップを諦められないという声は少なくない。この問題は中途半端な解決に終わり、装着感に満足できないままが多いが、そうしたニーズに対し、ストラムは明確な答えを出してきたのだ。クイックチェンジシステムが複雑、というのはあまり聞いたことがない。多くの場合、ツメが小さく、なかなか操作しにくいという問題に繋がる。なので扱いにくいクイックチェンジシステムの話などはここでは省くとして、この新しいストラム  ヤンマイエンはどのように評価されるべきなのか。そしてこれほどエレガントでドレッシーさも備えたスポーツウォッチでありながら、ブランドがなぜここまで北極探検の美しいイメージばかり提示してくるのだろうか。

 ストラムは、スモールブランドのなかでも、すでに確固たる地位を築いていると言えるだろう。世界中で開催される時計愛好家向けイベントに定期的に参加し、熱心な支持者を抱えている。2023年にジェームズがレビューした火山のように赤いヤン マイエン限定モデルと今回のモデルはよく似ているが、さらに洗練された印象を受ける。そしてこの“洗練”という言葉こそ、自分にとって重要なポイントだ。確かにこれはスポーツウォッチであり、グレード5チタンを採用したことで軽量かつ非常に快適な装着感を実現している。ただ、正直に言えば私は時計を慎重に扱うタイプなので、本格的な探検にはもっとツール感の強い時計を使いたいと思ってしまう。もっとも、ノルウェーを拠点にしている自分としては、北極の澄んだ空気感を感じさせるデザインや、ストラムのものづくりへの姿勢には自然と心引かれるのだ。

 このアークティックブルーのモデルは、ヤンマイエン島を取り囲む広大で過酷な北極海に着想を得ている。航海好きであれば、この冷たく荒々しい海流が簡単に立ち向かえる相手ではないことを理解しているだろう。そういった背景からも間違いなくこれはスポーツウォッチと言える。しかし、自分にとってはグランドセイコーのようなカテゴリに位置づけられるモデルだ。頑丈で着け心地も快適だが、ポリッシュ仕上げの美しいディテールや芸術的なダイヤルデザインは、パタゴニアのウィンドブレーカーよりも上質なニットTシャツを合わせたくなるような存在感がある。

Straum Jan Mayen Titanium
Straum Jan Mayen Titanium
Straum Jan Mayen Titanium

 最近の時計は小型化がトレンドになっているため、39mmのストラムは今やミドルサイズと見なされている。だが、実際の装着感を決めるのはラグ・トゥ・ラグの長さであることは誰もが知っている。ブランド創業者兼デザイナーのラッセ・ロックスルー・ファースタッド(Lasse Roxrud Farstad)氏とウィスタイン・ヘッレ・フスビー(Øystein Helle Husby)氏は、時計とは異なる分野でのデザイン出身でありながら、サイズ感の勘所をしっかりと押さえている。ラグ・トゥ・ラグは45.8mmで、ラグは劇的に下方向へ傾斜する構造となっている。もっとも厳密にはラグがあるのではなく、ノーチラスやロイヤル オークのようにクラッシックなケース一体型デザインだが、その仕上がりは非常に現代的だ。ケース厚は11.3mmとスリムで、“ラグ”の先端は固定式エンドリンクがケースから伸びるような形になっており、ケースバックから数mm下にまで続いている。ステンレススティール(SS)製のヤンマイエンも装着感は良好だが、今回の軽量チタンケースとしなやかなFKMラバーストラップの組み合わせにより快適性は劇的に向上している。

 チタンケースはビーズブラスト仕上げによって、繊細なテクスチャーを備えたやわらかなサテン仕上げとなっている。全面マット仕上げにしなかったストラムの判断は正しかったと思う。もちろんこれは好みの問題で、もし全面ビーズブラスト仕上げであればより現代的な印象になっただろう。ただしダークトーンチタンに、ポリッシュにより広い範囲に面取りを施すにはコストがかかり、サプライヤーによる試作も何度も必要となる。そうしたこだわりが、外装の完成度を大きく引き上げている。コンパクトなウブロ クラシック・フュージョンを彷彿とさせる上品さも感じられるが、それ以上の共通点はない。滑らかなチタンと磨き上げられたポリッシュ部分の組み合わせが、この成熟したケースデザインと力強い個性をいっそう際立たせている。ムーブメントはスティールモデルと同じラ・ジュー・ペレ製G101を搭載しており、2万8800振動/時で駆動し70時間のパワーリザーブを誇る。同ムーブメントは、ETA 2824の堅実な代替機として十分な実績を示している。

Straum Jan Mayen Titanium
Straum Jan Mayen Titanium
Straum Jan Mayen Titanium

 柔らかな質感のチタンケースは、深みのあるラッカー仕上げが魅力的な鮮やかなダイヤルを囲んでいる。ダイヤルの周囲には剣のようにシャープなインデックスが並び、そこには鮮やかなブルーの光を放つグレードAのスーパールミノバを塗布。放射状のパターンはグランドセイコーを思わせる雰囲気があり、深いブルーがフュメ効果によってダークなミッドナイトトーンへとグラデーションし、ホワイトのミニッツトラックがその美しさを引き立てている。このダイヤルは緩やかなカーブを描くダブルドームサファイアクリスタルによって美しく歪められており、これがさらなる魅力に繋がっているように感じられる。こうしたストラムの大胆なダイヤルデザインはブランドのトレードマークとなっており、この現代的なデザイン言語に完璧にマッチしている。ダイヤルはプレスを段階的に重ねることで細部のディテールを際立たせたあと、複数工程で処理・塗装され、最終的にフュメダイヤルとしてのグラデーション効果が加えられる。幅広のソード針とインデックスは取り付け後にポリッシュ仕上げが行われ、グレードAのスーパールミノバが塗布されることでブルーの光を放つ。

 この記事の構成を考えるにあたり、新しいFKMラバーストラップについては、ケースやムーブメントと同じくらいのスペースを取ることにした。それだけ、この一体型ストラップには重要な技術的背景があるということだ。ストラムのラッセ氏によれば、このストラップの開発には少なくとも1年を要したという。もともと今風のデザインであるケース一体型のブレスレットを特徴とするモデルにラバーストラップを組み合せるのは、非常に難易度が高い課題だ。さらに近年は、ストラップに柔軟性や付け替えやすさが求められているうえ、チタンはSSよりも加工が難しい素材であることを考えると、今回の完成度の高さには驚かされる。FKMラバーは柔軟性と耐久性のバランスにおいて市場でも最高品質とされ、シリコンのようにホコリを引き寄せない点も優れている。ストラップの幅はケース側で24mm以上あり、そこから急激にテーパーして、角穴がある部分では18mmとスリムになっている。デザインは無骨で溝が施され、カルト的な人気を誇るブランドであるラヴァンチュールのストラップを思わせるが、ケースサイドとぴったりフィットする一体感を実現している。クイックリリースシステムの完成度も高く、時計業界ではなくデザイン業界出身のブランド創業者だからこそ生まれた発想と作り込みであり、多くの大手ブランドのシステムを凌駕していると感じた。

Straum Jan Mayen Titanium

 一般的に見られるように、ブレスレットの最初の中央リンク部分が接続部分の役割を果たしており、今回のモデルではその裏側に非常にスリムで滑らかなプッシュボタンが備わっている。このボタンを爪先で軽く押すだけで簡単にストラップが外せる仕様だ。接続部分はビーズブラスト仕上げで、両サイドには大きなアーチ状のポリッシュが施されており、バネ棒をしっかりと固定する構造になっている。ストラップには2本の平坦なSS製のフックが内蔵されていて、これがエンドリンクにぴったりとはまり、非常に安定感がある。さらにプッシュボタン付きのエンドリンクはできるだけ目立たないようにデザインされており、もともと優れていた装着感をさらに高めている。こうした工夫はほかの優れたディテールと相まって、この一体型ストラップをアップグレードするうえでは、現在の市場における最良の選択肢のひとつとなっている。

 ストラップの裏側にはスカラップ加工(溝彫り)が施されており、暑い日でも熱がこもりにくくなっている。バックル側のストラップは3段階で調整でき、カットしなれば大きめの手首にも対応可能だ。“medium(ミディアム)”、“small(スモール)”とマーキングがあり、必要に応じてオーナー自身がカットしてからチタン製バックルを取り付け直す仕組みになっている。そして最大の特徴がこの先端部分にある。これまでに私が見たことのないデザインで、先端はテーパーして丸みを帯びた形状になっている。ミンの画期的な差し込み式構造には及ばないかもしれないが、ストラップのカーブに沿うように成形されているため、手首に巻いたときに自然なフィット感を生む。このアイデアには思わずブラボーと言いたくなる。ストラム、さすがだ。

Straum Jan Mayen Titanium

 グレード5チタンを採用したストラム ヤンマイエンを選ぶのはどんな人だろうか。2000ドル(日本円で約29万円)以下という比較的手が届きやすい価格帯は、ふたつの異なる層に訴求している。ひとつは、機械式時計を初めて購入するにあたりモダンで目を引く1本を探している人。もうひとつは、独立系ブランドの個性や高いコストパフォーマンスに価値を見いだす経験豊富なコレクターだ。新たに採用された一体型ラバーストラップと軽量なチタンケースのおかげで、日常使いにおいては申し分なく快適で、100m防水というスペックもスポーツウォッチとして信頼できる。“価格以上の価値を発揮する”という表現は、ときに使い古された言い回しに聞こえるかもしれないが、この時計に関しては、細部にわたる工夫と完成度によってその言葉がぴったり当てはまる仕上がりになっている。

Straum Jan Mayen Titanium

 新しいストラム ヤンマイエン チタニウムは、今回紹介したアークティックブルーに加えて、モスグリーン、モノクロームのブラックサンド、グレイシャーホワイトの全4色展開となる。注文時にはFKMラバーを7色から選択でき、追加ストラップをオプションで購入することも可能だ。小売価格は1930ドル(関税別、日本円で約28万円)で、すでに予約受付を開始している。さらにストラムは、フラテッロ限定モデルで採用され人気を博したチェリーレッドダイヤルも自社サイトで再販しており、こちらはすでに売り切れている。また、SS製のストラム ヤンマイエンについても、同じくFKMラバーストラップの選択肢が用意されることがブランドから発表されている。

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