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良くも悪くも、時計業界のマーケティングの派手な手法に僕はうんざりしています。「最高のこれ」とか「すべてを一変させるあれ」という煽り文句は、最近では退屈だったりあきれるだけだったりすることが多いからです。僕は仕事柄、数多くの時計を(恐らく、みなさんが思っている以上に)見ていますが、その経験から煽り文句と品質はしばしば反比例の関係にあると思うようにりました。マーケティング的に静かなブランドが最も目を見張るような時計を製作し、いちばん騒がしいところは声の大きさでごまかそうとする、そういった例が多いわけです。まあ、必ずしもそうとは限りませんが、大抵の場合は当てはまります。
けれども、時には全く予想外の製品に出会い、そんな考えが間違っていると認めざるをえないこともあるのです。マイアミで開催されたWatches & Wondersで、僕は光栄にもピアジェ アルティプラノ アルティメート・コンセプトを目にする機会を得たのですが、心底驚きました。これについては「アルティメート(究極の)」という言葉は誇張でもなんでもありませんでした。純粋なコンセプトモデルであり、まだ消費者向けの商品ではないことは注記しておく必要がありますが、これは世界で最も薄い機械時計なのです。厚さはわずか2mm、実際に触れてみると正面から受ける印象よりももっと薄く感じます。
とにかく、一般的な名刺と並べた上の写真を見てください。僕の言いたいことはもうお分かりですよね? これ程までの薄さを実現するためには、頭が下がるとしか言いようのない、ひたむきな努力をもって製造しなければならないはずです。この薄さを実現するためにどんな工夫がなされているのか想像力を掻き立てられる時計です。
例えば、レザーだと十分な薄さを確保できないため、ベルトには特殊な合成素材を用いています。また、従来通り時分針を重ねて中央に配置するのではなく、ダイヤルにはめ込まれたディスク上に時針を表示することで、さらなる薄さを追求しているのです。また、おかしな話かもしれませんが、この時計で最も惹かれたのは手首につけた時の不思議な感触でした。ケースと一体に埋め込まれたリューズ、直線的なラグ、着けていないかのような軽さなど、通常の腕時計であろうという意識は全くしていないと大胆に宣言しているようでした。時計としての優先順位が全く異なったものなので、みなさんは魅了されるか、それとも全然興味がないかのどちらかになるのだと思います。
SIHH 2018で初めて公開された時、この異端の時計はガラスケースの中からほとんど出されることなく展示されており、大勢の人々が台座の上に置かれたその姿をひと目見ようと、ケース前でひしめきあっていました。その時も素晴らしい時計だと感じましたが、それから1年と少しが経過して自分の手首につけた実物を見ると、なぜこの時計がピアジェの言うようにあらゆる点で「アルティメート」なのか、ようやく本当に理解できたように思います。
この時計について詳しく知りたい方は、ピアジェ公式サイトへ。
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