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Apple Watchは、私がHODINKEEに入社する数ヵ月前の2015年に発売されて以来、地球上で最も成功したスマートウォッチとなった。このカテゴリで唯一というわけではないが、Apple Watchは機能とOSの組み合わせで、非常にうまく統合されたユーザー体験を提供している。そのため、使っているときには、舞台裏で行われている膨大な量の技術的な内容をまったく意識することはない。
先日、同社はApple Watch Series 7を発表。Series 7は、IP6X規格の防塵性能を備えた耐久性の向上や、ディスプレイの大型化など、従来のApple Watchを構成する要素にさまざまな変更を加えている。また、バッテリー駆動時間は変わらず18時間ではあるが、充電の高速化も実現。Series 7は、Series 6に代わってApple Watchの最上位製品となり、価格は399ドルから(日本での価格は未発表)となる。なお、Series 3とSEは、より手頃な価格の製品としてラインナップに残ることになった。
IP6X防塵機能は、その名の通りだ。Series 7の防水性能はSeries 6と同じだが、防塵性能も完全に確保されている(Appleは基調講演において、自転車の衝突事故を見事に再現してこの機能を発表したが、ライダーも時計も無傷で済んだ)。クリスタルにも改良が加えられ、「より強く、より堅牢な形状」によって耐久性が向上している(クリスタルの最も高い部分の厚さは、Series 6のクリスタルの2倍以上になった)。Appleは、Series 7を「これまでに作ったなかで最も頑丈なApple Watch」と謳っている。
Appleによれば、ボタンの大型化、画面上により多くのテキストを表示できるようになったこと(50%増)、QuickPath入力(注:フリック入力のこと。ローマ字入力には対応していなかった)とシンプルなキーボードタップの両方に対応したテキスト用フルキーボードなどの機能追加によって、全体的に使い勝手が向上しているとのこと。Series 7の画面は、Series 6よりも20%大きく、エッジは1.7mmに縮小された(Series 7は、Series 3に比べて画面領域が50%も拡大している)。
ところで、今回のリリースは、基調講演前の噂がかなり間違っていた例だった。最大の予想は、iPhone 12(そして今回、同じく発表されたばかりのiPhone 13)のようなフラットなケースデザインが採用されるかもしれないというものだったが、Series 6のバイオモルフィックな丸みを帯びた形状はSeries 7でも健在だ。
バッテリー駆動時間は18時間と高速だが、睡眠トラッキング機能を使用している場合は、午前中にバッテリーを充電する必要がある。また、Series 7には、身体に負担を与えない血糖値モニターが搭載されるのではないかと噂されていたが、これも少し先の話のようだ。もちろん、Series 6に搭載されていた血中酸素と心電図のセンサーは搭載されている。血圧計が内蔵されていれば、スマートウォッチのキラーアプリになるはずだが、今のところ、ハードウェアの大きさや必要な電力などの条件から、これもまだ先の話になりそうである。
実際のバッテリー駆動時間が向上していれば素晴らしいのだが、Series 7では45分でバッテリーを0から80%まで充電が可能で、スリープトラッカーをよく使う方であれば、朝の充電をかなり早く済ませることができる。
Appleはこれまで、ゴールドやセラミックなどの高級素材を使ったApple Watchを製造してきたが、Series 7のケースオプションは、Apple Watch全体のガシガシ使える雰囲気に合わせたものとなっており、発売当初はアルミニウムとスティールの2種類が用意されている。アルミニウムには、グリーン、ブルー、レッド、スターライト、ミッドナイトの5つの新色がある。
Appleは、よりサステナブルな製造プロセスに向けた取り組みも行っている。Series 7のケースに使われる金属はすべてリサイクルされ、磁石に使用されているレアアースもリサイクルされているものだ。
WatchOS 8
Series 7には、パーソナルセキュリティ、健康、ウェルネスを目的とした機能が引き続き追加されたWatchOS 8を搭載。昨年6月にApple社から発表されたWatchOS 8には、睡眠中の呼吸を(Watchの加速度センサーを使って)追跡する機能や、太極拳とピラティスの2つの新しいフィットネスモードが含まれている。また、WatchOS 8では、Watchを使って車のロック解除やエンジン始動ができるようになり、今秋には、自宅やオフィス、ホテルのロックもWatchに追加できるようになる。また、ID情報をWatchに保存できるようになるのも楽しみだ。この機能を最初に使うことになるのは、TSA(米国運輸保安局)のチェックポイント(注:米国の空港内におけるセキュリティチェックが行われる場所)だと思われる。
また、呼吸アプリもアップデートされ、「マインドフルネス」アプリと呼ばれるようになった。通常の呼吸エクササイズに加えて、リフレクトと呼ばれるエクササイズも用意されている。
フィットネスは、Apple Watchの大きなセールスポイントだったが、Series 7でも引き続き、その重要性が増している。アクティビティやウェルネス機能を使わなければ、Apple Watchが提供する機能の大部分を失ってしまうほどだ。Appleのワークアウトサービス「Fitness+」との連携も、引き続き大きな魅力である。
太極拳やピラティスなどのワークアウトに加え、サイクリスト向けの機能も強化された。通常のワークアウトの進行状況だけでなく、信号待ちの際の一時停止と再開が可能になったのだ。また、電動/アシストペダリングのワークアウトには別の測定アルゴリズムが用意されており、転倒検知アルゴリズムは自転車からの転倒時にみられる特有の動作を認識するように調整されている。
これまでの情報によると、Series 7とWatchOS 8は、ゲームチェンジャーといえるような革命的な製品ではないが、現時点では、そうする必要はないのかもしれないし、そうすべきではないかもしれない。同社が、Apple Watchを成功させられたのは、ハードウェアとソフトウェアの両方のユーザーエクスペリエンスと機能性を磨き続け、より簡単に、より日常生活に溶け込ませることができたからに他ならない。HODINKEEの創業者であるベン・クライマーは、かつて「Apple Watchを本当に理解するには、それにコミットしなければならない」と語っていたが、これは今まで以上に真実味を帯びていると感じる。
Apple Watchは、現時点では2020年に大きく揺らいだ高級時計市場にダメージを与えるようなものではないことは明らかだ。しかし、時計愛好家にとってのApple Watchは、想像していたものとは少し違っている。というのも、Apple Watchを最大限に活用するためには、それを「ローテーション」の1本として持つことはできないからだ。私はApple Watchを時々使う時期と毎日使う時期の両方を経験してきたが、Apple Watchは毎日使うときに最高の機能を発揮する。Series 7とWatchOS 8によって、Apple Watchが日常生活の魅力的なパートナーであることの主張はさらに強くなっている。Apple Watchを手に入れることができたら、すぐにハンズオン記事をお届けしたいと思う。
Apple Watch Series 7は今年の秋後半に発売される予定。ケースはアルミニウム製で、ミッドナイト、スターライト、グリーン、ブルー、レッドの5色。ステンレススティールモデルは、シルバー、グラファイト、ゴールドが継続される。Series 7の開始価格は、399ドル。WatchOS 8は9月20日にリリースされる。
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