trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble
Shop
November 25, 2020
November 25, 2020
Introducing 新キャリバー9SA5を搭載したグランドセイコーブランド誕生60周年限定モデル SLGH002

Introducing 新キャリバー9SA5を搭載したグランドセイコーブランド誕生60周年限定モデル SLGH002

グランドセイコー限定モデルが、新たな脱進機を備えたハイビートキャリバーで遂げた跳躍的進化。

ADVERTISEMENT

グランドセイコーはハイエンドウォッチの熾烈な競争に参入しながら、同時に新たなチャレンジに挑んでいる。それは、ラグジュアリーブランドとして不動の地位を築くことだ。そこは、必ずしも品質だけで勝負が決まる世界ではない。

 もちろん、グランドセイコーのムーブメントとダイヤルのクラフツマンシップに対しては文句のつけようがない。グランドセイコー エレガンスコレクションのスプリングドライブモデルを例に取ると、実質的にはクレドール 叡智クラスのスプリングドライブムーブメントが移植されていて、これは称賛に値することだと私は評価している;もちろん、スプリングドライブを採用するグランドセイコー、クレドールのどちらも、各々のやり方で類稀なるテクノロジーを確立している。

 エレクトロニクスを除く機械式時計の分野においては、グランドセイコーは、少なくとも技術面に関する限り、重要ではあるが話題にはなりにくい既存の基幹ムーブメントに対する小さな改善に腐心してきた。もちろん、それらの改善は重要で、例えばMEMS(微細加工技術)による中抜きされた脱進機の製造、ヒゲゼンマイに使用する合金「スプロン510」の発明は、耐久性や精度に多大な貢献を果たした−しかし、それだけを以って購入の決め手となるような改善ではなかった。

 しかし、全てが大きく変わろうとしている。グランドセイコーが先日発表したグランドセイコー60周年記念モデルSLGH002には、最新技術によって時計製造における旧来からの課題を解決する脱進機を搭載した、完全に新しいムーブメントが採用されているのだ。

 1998年に登場した最初の9Sメカニカルムーブメントはグランドセイコーにとっての原点回帰となった。以降、グランドセイコーの機械式ムーブメントはその堅牢性と信頼性によって名声を高めた−2019年に、The Naked Watchmakerの創設者にして英国人独立時計師ピーター・スピーク-マリン氏がハイビートキャリバー9S85Aを分解して指摘したところによると、

 “ムーブメントとケースの構造は、耐久性を考慮した堅牢性と正確性という目標に理にかなったものとなっている。<中略>結果として、Cal.9S85Aはヴィンテージの特徴である構造の堅牢性と、最新製造技術と合金とを効果的に組み合わせている。”

 “壊れていないのに直そうとするな”というプリンシプルが進歩の歩幅の狭い機械式時計界に広く浸透しているが、グランドセイコーがCal.9SA5で見せる新鮮で新しいアプローチは、私たちにとって実に興味深いことである。

 本機の外観は、徹頭徹尾グランドセイコーそのものである。100本限定モデルである本作は、ケースサイズが40mm×11.7mmで、印象的な形状のゴールド製ダイヤルマーカーと針に加え、美しい仕上げのデイト表示窓が備わっている。先代モデルと比較して薄くなったケースは、内部で何かが変わったという最初のヒントとなる。そもそもグランドセイコー ハイビートシリーズは重量感のあるモデルで、2018年に登場したハイビートスペシャル 9S誕生20周年記念モデルのケースサイズが39.5mm×13mmであることからも、ハイビートムーブメントがケースサイズの所与の条件となっている。

 対して、SLGH002の40mm×11.7mmのケースサイズは、超薄型時計を目指したものではないものの、ハイビートシリーズとしてはより薄くなるように配慮されたものだろう。ところで、個人的にはグランドセイコーがラグの側面に貫通したホール(バネ棒用の穴)を残しておいてくれたことに感謝したい。−時計というのは普通、自分で改造することを許容しないことは神もよくご存じだ。時計のストラップを自分で交換する際に、大切な宝物に傷を付けないよう配慮されていることは、私の考えではより価値が高くなる。

 時計を裏返してシースルーバック越しに9SA5を眺めると、従来との違いが明らかになってくる。初めて見た印象は、従来からのグランドセイコームーブメントとそれほど大きく変わらないといったところだ−もちろん、バランスブリッジ(両持ちテンプ受け)の存在は大きな変化だ。堅牢性を謳うロレックスやオメガなどの近代的なムーブメントによく見られる様式でもある。

グランドセイコーが堅牢でないという誹りを受けたことはないにしろ、改善点としては妥当ではないだろうか。ムーブメントの仕上げは芸術的で、優美な形状の両持ちバランスブリッジは従来のハイビートやその他のグランドセイコーのムーブメントに典型的な、重厚な外観とは一線を画している。

 さらに目を凝らすと、9SA5がまるで異なったムーブメントであることが判明する。

 ムーブメント全体からテンワに焦点を当てると、筆頭に挙がるのは、ヒゲゼンマイの進化である。巻上げ式を採用するヒゲゼンマイは同心円に完璧な“息吹”を与える;正確な時間計測を念頭にしたハイエンドなムーブメントに古くから採用された手法でもある。そして、現行型の調速機構がなく、緩急針が取り除かれたことで、テンワに取り付けられたミーンタイムスクリュー(偏心錘)が採用された−グランドセイコーでフリースプラング方式を採用するのは私が知る限り初めてのことで、スムーステンワと緩急針の調速機構が過去のお決まりであった。

 ロレックスはマイクロステラナット、パテックも同じくジャイロマックスという名で同様の調速機構を採用している。オメガも巻き上げ式の合金ヒゲゼンマイ群の利点を応用したシリコン製の平ヒゲを採用し、ロレックス、パテック、そして今やグランドセイコーと共に緩急針方式を廃し、フリースプラング方式に移行している。

さらに細心の注意を払って観察すると、テンワの下側に見たこともないようなガンギ車を見つけることができるだろう。テンワを裏返すと、想像していたスイスレバーとはまるで異なる脱進機構を発見し驚愕することになる:すなわち、グランドセイコー独自のデュアルインパルス脱進機構である。

 左側の手裏剣型のガンギ車はテンワに直接トルクを伝え、テンワが振り戻る際にもトルクを交互に伝える役割を担う。上の画像でガンギ車の刃先がインパルスローラーの爪石と噛み合っているのが見えるだろうか? この機構の基本的な利点はテンワへのトルクを効率的に配分できる点にある。これを見て思いつくのは、もちろんコーアクシャル脱進機構であろう。ガンギ車によって二方向に交互にトルクを伝える点では同じ考え方である。しかしながら、コーアクシャル脱進機は同軸に2つの独立したガンギ車をマウントする(その名のとおり)のに対し、新ハイビートの脱進機は1つである。また、コーアクシャル脱進機ではアンクルの爪石が3石であるのに、Cal.9SA5では2石であることも大きな相違点である。

 トルクをテンワに直接伝達する脱進機として最も有名なのが、航海に使用するマリンクロノメーターに搭載されたデテント式脱進機である。数世紀にわたってデテント式脱進機を腕時計用のムーブメントに移植しようと試みられたが、この脱進機は一方向にしかトルクを伝達できない構造から、テンプが停止すると自動的に再稼働させることができない点で、導入するのが困難なのである(スイスレバー方式の場合は、主ゼンマイからトルクが解放されれば何も操作はいらない)。また、デテント式脱進機は堅牢な機構ではない。衝撃が加わると、ロックが解除されてしまう弱点もある。

 歴史的にみて、ロビン式脱進機こそテンワにダイレクトにトルクを伝達し(デテント式脱進機の他に)、衝撃に対する対策(時計用語で“セーフティ”と呼ぶ)を試みた代表例といっていいだろう。しかし、ロビン式脱進機もトルクの伝達は1方向のみである。ロビン式脱進機とその進化形であるチャールズ・ファソルトのコーアクシャル脱進機はジョージ・ダニエルズのコーアクシャル脱進機の発明の礎となり、後者は現代において唯一ダイレクトインパクト式かつ自動再稼働型脱進機として工業化に成功した唯一の脱進機となった。

 そう、今日に至るまでは。

AP脱進機。ガンギ車がバランス・ローラーの爪石を介してトルクを伝達する瞬間の図解。

 いくつかの点で、新ハイビート脱進機はロビン式脱進機に影響を受けたオーデマ ピゲの脱進機(AP脱進機)との共通点が多い。当初は注目を集めたものの、この独特な脱進機の生産はごく限られたものとなっている。ロビン式脱進機とよく似たレバーを採用しているものの、ガンギ車により確実にアンクルパレットをロックするよう工夫されている;ロックが解除されてしまわないように、セーフティ機構が内蔵されているのだ。AP脱進機は高振動ムーブメントに対応している−4万3200振動/時と2万8800振動/時の現代のムーブメントでは一般的な振動数である。オーデマ ピゲはこの脱進機をジュール オーデマ クロノメーター AP脱進機(生産終了)に初採用した。これは非常に独創的なデザインであったものの、デテント式脱進機の欠点であるテンプ停止後の自動再稼働ができない点を受け継いでいる。

 脱進機構の再発明は、現代の時計製造においては非常に稀なことである。脱進機の研究開発は最も高く付くもので、投入したコストに見合うメリットが目に見えにくいものなのだ。脱進機の製造において、−それも3万6000vphもの高振動に、80時間のパワーリザーブ、薄型のムーブメントに搭載するために−グランドセイコーは針に糸を通すような偉業をやってのけたのである(実際、取り組んだブランドも数少なければ、成功したブランドはもっと少ない)。新ムーブメントは、さらに言えば、グランドセイコーがクラシックな薄型時計を手がけるための布石となるかもしれない−新ハイビートムーブメントは、GSによると従来比15%も薄くなっているといいうことだ(9S85は28.4mm×5.99mm、9SA5は31.0mm×5.18mm)。

 大量生産可能かあるいは、その意図がグランドセイコーにあるのかは現在のところ不明であるが、グランドセイコーとセイコーは不具合が解消するまでは新しいテクノロジーを簡単に公開しないことは歴史が証明している(スプリングドライブが市場に登場するまで時間を要したのは周知の事実だ)。

 SLGH002はGS時計の新たな金字塔としてはもちろん、ブランドとしての覚悟を示したものだ−ハイエンド層への本格的な参入の歩みをより確かなものとする覚悟だ。

グランドセイコー60周年限定モデルSLGH002概要:18KYGケース、40mm×11.7mm;10気圧/100m防水;ARコーティングされたボックスサファイヤクリスタル風防とシースルーバック;耐磁性能4800A/m(60ガウス)。ムーブメント 、グランドセイコー Cal.9SA5 ハイビート3万6000振動/時、パワーリザーブ80時間;31.0mm×5.18mm;時刻と瞬間切り替えカレンダー。最大日差+5/-3秒/日。価格450万円(税別)。世界限定100本。詳細はGrand-Seiko.com