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本稿は2015年12月に執筆された本国版の翻訳です。
何度話したかわからないが、私はヴィンテージオーデマ ピゲのコレクターになることを夢見ている。これらの時計は非常に珍しく、とても美しく、特別で、つい最近までまったく注目されていなかった。今では少しずつ注目されるようになり、クリスティーズ・ジュネーブでは素晴らしいトリプルカレンダークロノグラフが高額で落札されたばかりだ。ただ世界全体が注目しているわけではない。だからこそ、今日はこの記事を書いている。真にワールドクラス級の時計が来週出品されるが、コレクター界全体にも注目してもらいたい。これは1950年代に製造されたオーデマ ピゲの個体で、(4つのインダイヤルを用いて文字盤全面を使用した)フルパーペチュアルカレンダー、ツートーンダイヤル、うるう年表示がついている。これまでに製造された9本のうちの1本で、今シーズン販売される時計のなかで一番の時計になるかもしれない。
Ref.5516は9本製造され、うち6本が6時位置にムーンフェイズを備えている。
5516の特徴は何だろうか? まず希少性だ。同モデルはわずか9本しかつくられていないのだ。ヴィンテージパテック フィリップのパーペチュアルカレンダーのリファレンスと比較してみて欲しい。我々が話しているのはごく一部だ。次にヴァシュロン、ランゲ、ゼニス、ロレックス、オメガ、IWCのヴィンテージパーペチュアルカレンダーの生産数と、オーデマ ピゲのヴィンテージパーペチュアルカレンダーの生産数を比較する。ああそうだ、ヴィンテージのパーペチュアルカレンダーウォッチを製造したメーカーはなかったのだ。
次に5516はうるう年表示付きのパーペチュアルカレンダーを搭載した最初の腕時計であり、パテック フィリップのRef.3450が登場するのは、1980年代初頭のことである。
オーデマ ピゲのRef.5516は、うるう年表示を搭載した史上初の腕時計である。
ご覧のように、5516のうるう年表示は12時位置にある。このリファレンスの9本のうち、既知の例の6本では、ムーンフェイズがダイヤル下部にあり、うるう年表示が上部にある。この構成は、現在でもオーデマ ピゲの最新ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダーで見ることができる。忘れてはならないのは、この時計の歴史は1957年までさかのぼるが、パテックの腕時計にうるう年表示が見られるようになったのが2年前、そしてほかの時計に採用されるのは3年前だということだ。
この5516をさらに際立たせているのは、ツートンカラーのシルバーダイヤルである。外周にある日付リングに加えて、3つのインダイヤルはすべてシルバーカラーとなり、ダイヤル自体のオフホワイトと対になっている。シンプルなデザインの特徴は、このオーデマ ピゲを同クラスのものと比較して最も輝かせているものであり、同ブランドが前世紀半ばにいかに思慮深くつくられていたかを改めて示している。
オリジナルダイヤルにある、深いエナメルプリントに注目だ。
上記の理由から、5516は間違いなくオーデマ ピゲのなかでも史上最も重要なリファレンスのひとつだ。しかしこの時計が私にとって特別な理由は、その美しさだ。下向きのラグ、37mmのサイズ、視認性は抜群なのに複雑なツートンカラーの文字盤。この時計は本当に素晴らしく、私の意見としてはプラチナ製2497を除けば、この時代のどのパテック フィリップよりも突出してクールだ。
Ref.5516は、写真家の手首で見られるように、非常に存在感がある。
最後に、この特別な例はクリスティーズ・ニューヨークの次のセールで入札できるが、本当に素晴らしいコンディションのようである。私はMarcus collectionでもオーデマ ピゲのプライベートリザーブでも、素晴らしい個体の5516を見てきたが、この時計は私がこれまで見てきたどの時計よりも、いや、それ以上に優れていると信じている。最高のコンディションであるなら、最終的には最も美しく、最も希少で、最も重要なミッドセンチュリーオーデマ ピゲのひとつになる可能性が高い。だからこそ記事の冒頭で言ったように、私はここでそのことを皆さんに伝えているのだ。この時計は本当に世界的にも素晴らしい時計であり、そのすべてを評価してくれる世界的なコレクターの手に渡ることを心から願っている。
クリスティーズは、この1957年製オーデマ ピゲ パーペチュアルカレンダーに、15万ドルから30万ドル(当時の相場で約1815万~3630万円)の見積もりをつけた。詳細はこちらから(編集注記:結果54万5000ドル、当時の相場で約6600万円にて落札)。
Photos: Atom Moore
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