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POINT/COUNTERPOINT キャラクター腕時計には、キャラクターの動く針の手が必要だ

そうでなければ、私たちは何を話しているのだろうか?

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 今日は、HODINKEEの2人のライターが、「キャラクターウォッチとは何か」について、まったく異なる意見で議論します。ジャック・フォースターは、「キャラクターウォッチ」と呼ばれるためには、時計の針がキャラクターの腕として動いて時を告げることが必要だと主張します。一方、ダニー・ミルトンは、「キャラクターウォッチ」という言葉の定義をもっと広く、腕の形をした針をもたないキャラクターも含めて受け入れるべきだと主張しています。ぜひ、両方をお読みいただき、コメント欄でご意見をお聞かせください。

キャラクターウォッチとは、最もシンプルな時計の種類だ。それは一番基本的なことだが、文字盤にアニメのキャラクターが描かれている時計である。マンガやアニメのキャラクターである必要はないと思うが、ほとんどのキャラクターウォッチの文字盤にはそういったキャラクターが描かれている(ときにはマンガ化された人物が描かれていることもある)。その歴史は古く、1904年のセントルイス万国博覧会で公開されたのが最初とされている。

 その時計は懐中時計で、のちにインガーソル社から発売されることになる。インガーソル社は、アメリカの時計を研究している人(もちろん、キャラクターウォッチのファンも)以外には、今ではほとんど忘れられている存在だが、史上最も民主的な時計会社のひとつであった。同社は1896年にダラーウォッチを発表したが、これは1ドルのピザひと切れに相当する価格だった。ダラースライスの価値提案はシンプル、「We have pizza, it costs a dollar,(ピザがある、1ドルだ)」(これは誰かの言葉の引用しているが、誰かは覚えていない)だ。ダラーウォッチの価値提案も同じで、明らかにピザではなく時計を手に入れたわけだが、どういうことかもうおわかりだろう。

 ダラーウォッチには石がなく、ピンレバー脱進機を搭載し、基本的には使い捨てであったが、多く人々が手に入れることのできる時計として、絶大な人気を誇った。当時はいろんな人のポケットのなかでカチカチと動いていたことだろう。

バスター・ブラウンのポストカード(1906年、ウィキペディアより)

 1902年、バスター・ブラウンの最初のコミックストリップが創刊され、運命の歯車が回り始めた。バスター・ブラウンは、お金持ちのいたずら好きの少年で、タイガという犬を連れていて、にこやかに笑っている。インガーソル社は、バスターとタイガが文字盤に描かれた時計を作る契約を結び、1908年に市場に投入。大成功を収めたが、バスターとタイガは文字盤に描かれた静止画に過ぎず、時刻は通常の針で読み取るものだった。

インガーソル社のバスター・ブラウンウォッチ、2020年Barneby'sオークションに掲載

 しかし、1933年、インガソール社は初めてミッキーマウスの懐中時計を発売した。バスター・ブラウンの時計とは異なり、インガソール社のミッキーは、その手が文字盤上で針として動き、時間と分を示していた。ウォルト・ディズニー・エンタープライズがライセンスを取得し、インガソール社が契約に基づいて製造したこのアニメーションするミッキーマウスは、一時期、ホットケーキの販売業者が「フラップジャックがミッキーマウス・ウォッチのように売れている」と言っても不思議ではないほどの人気を博したという。

 約2mもあるミッキーマウスの懐中時計など、大掛かりなビジュアルマーチャンダイジングを施して百貨店メイシーズで発売したところ、1日で1万1000個も売れてしまった。サブセコンドの表示は回転ディスクで、3人のミッキーが永久に動き続けるというものだった。このミッキーウォッチの大ヒットにより、インガーソル社は倒産の危機を脱した。

インガーソル社ヴィンテージのミッキーマウス・ウォッチ、ウィキペディアより。

 なぜこのような話をしたかというと、今回の「Point/Counterpoint」(別名「何をいっているんだ、もちろん私が正しい」)では、「時計は、針が文字盤の周りを動いて時間を知らせなければ、本物のキャラクターウォッチではない」と、激しく、独断的に、断定的に主張するからだ。インガーソル・ミッキーマウスの大ヒットは、世界で最もカリスマ的なげっ歯類の存在が大きかったのは確かだが、ミッキーマウスはアニメーションのキャラクターであり、その主人公にはアニメーションする時計が必要であることに気付いたのは天才的なことだった。

デイル・エヴァンス(アメリカの女優、シンガーソングライター)でさえ、この時計をキャラクターウォッチにすることはできない。画像: Joe Haupt, Wikipediaより。

 それこそがキャラクターウォッチの魅力なのだ。確かに、スパイダーマンやスタートレックのカーク船長、あるいはリチャード・ニクソンの低解像度の写真を文字盤に刻印することはできるが、それは寮の壁に貼られたポスターであって、キャラクターウォッチではない。超ファンの方にはたまらないかもしれないが、静止画とアニメーションキャラクターのギャップを埋める針のアニメーションがなければ、文字盤に絵が描かれているだけになってしまうのだ。

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 インガーソル、タイメックス、セイコー、セイコー ローラス、ジェラルド・ジェンタといったメーカーは、このことを理解していたようだ。いわゆるキャラクターウォッチで、針が動いていないものは、本物に似せただけの弱々しいものであり、夢のなかで大好物の牡蠣を3ダース食べても肉体的にも精神的にも満足できないのと同じことだ。

ジェラルド・ジェンタはそれを理解していた。

 スイス人は早くからそのことを理解していた。文字盤の中央にいる人物がゆっくりと手を上げて、左右にある時間と分を示す円弧を指し示す"bras en l'air"(空中の腕)と呼ばれる時計のカテゴリがある。これはアニメのキャラクターではないが、グーフィー(私のお気に入りのひとつで、針は反時計回りに動く)の後ろ姿と同じように、真のキャラクターウォッチなのだ。

そして、こんなのもある。文字盤側のスヌーピーは静止しているが、ケースバックの宇宙船は動く。これはキャラクターウォッチなのか、キャラクターウォッチではないのか。宇宙船はキャラクターになれるだろうか? うーん、どうだろう。

 時計的に変なこだわりは私にはほとんど残っていない(私は何年も前に、人々にルモントワールコンスタントフォース脱進機と呼ぶのをやめさせようとしたが諦めた)。ここで私は自分の立場を確立し、旗を立て、大砲を構え、銃剣を固定し、唯一の真のキャラクターウォッチであるアニメーションキャラクターウォッチを私の主張とする。

セイコー製ミッキーマウスウォッチ、とある紳士のコレクションより。

 キャラクターウォッチは、私が矛盾なく主張しているように、時計の針のような手を持つキャラクターがいなければならない。このアニメーションによる視覚的なダジャレ(訳注: 時計の針は英語でhand、手もhand)こそが、キャラクターウォッチの存在意義なのだ。文字盤にキャラクターがいても、アニメーションがない時計は、例えばドミノピザのロレックスも同様に、キャラクターウォッチではない(あるいはピザウォッチでもない)。そして私は、アニメーションのないキャラクターウォッチも本物であるという主張が、泣き叫んだり歯ぎしりするような外なる闇に投げ込まれますように、と言いたいのである。