A Week On The Wrist Apple Watch Series 5 エディション チタンを1週間レビュー（動画解説付き）

　昨年のシリーズ4は大きな進化を果たしたことから、先日の新作イベントの前評判はマイナーアップデートに留まるという声が大勢でした。後から考えれば杞憂だったわけですが、Apple Watch シリーズ5はフィット感、仕上げ、ユーザ体験に至るまで、またもや大きな躍進を遂げたといえます。

　僕はチタニウムケースのシリーズ5 エディションモデルを着けて1週間過ごしたのですが、とても多くのことを考えさせられました。

　Appleが僕のために貸し出してくれたシリーズ5は、今回一新されたエディションモデルで、ケースはサテン仕上げのチタニウム製です。これについては後で詳しく説明するとして、Apple Watch エディションの過去のラインアップを振り返り、プレミアムラインの製品が5年間でどのように変化したかを俯瞰してみましょう。

　初代Apple Watchが2014年9月9日に発表されたとき、メディアの注目を最も集めたもののひとつが、エディションのすべてのモデルが金無垢ケースのラインアップだったことでした。初代Apple Watch 全エディションモデルは18Kローズ＆イエローゴールドケースに、同色のバックル、特別仕様のストラップ、そしてハイエンドなパッケージング。そして価格は1万ドル（約109万円）から始まり、最高1万7000ドル（約186万円）という設定でした。

　これはAppleからの明確なメッセージで、テクノロジー製品であると同時にラグジュアリー製品であるということを示しました。Appleは地球上で最も偉大なマーケティング戦略のメッカであり、これは彼らの天賦の才が成せる例といえます。ビヨンセとカール・ラガーフェルドが着用する、カスタムされたゴールドブレスレットが装着されたApple WatchがVogueの誌面を飾ると、瞬く間に話題の的となりました。もちろん、この業界にはPRエージェントがばっこしているので、ステマだと揶揄する声もありますが、とにもかくにも注目を集めることに成功したのです。

　2016年にシリーズ2がリリースされると、ゴールドモデルは忽然と姿を消してしまいました。Appleはコメントをほぼ拒否しましたが、コレクションは常に進化しており、それもその一環であるとのみ説明。僕たちは何本のゴールドモデルが売れたのか未だ把握できていませんが、多くのアナリストは比較的少量だっただろうと見ています。ただし、Appleに関しては「少量」というのは、数万から数十万を意味する点に注意が必要です。

 　シリーズ3が登場すると、僕たちはホワイトセラミックとスペースグレーの2モデルを入手し、ベンがレビューしました。これらのエディションシリーズは1000ドル（約10万9000円）ちょっとと、入門モデルの2倍のプライスタグが下げられたものの、初代のゴールドモデルに比べれば程遠い価格でした。ちなみにHODINKEEの仲間たちはこのモデルのファンです。Apple Watchの曲線美は白く輝くセラミックによく映えるのです。

　だからこそ、昨年シリーズ4のリリースでエディションコレクションが再び消えたことに失望しました。その代わり、新しいゴールドカラーのスティールケースが投入され、昨年ラグジュアリー色の最も高いモデルとなったのです。もちろん僕はあのモデルも好きですが、セラミック程ではありません。

　そして待ちに待った日がやってきました。シリーズ5にAppleはホワイトセラミック エディションを再投入したのです（スペースグレー・セラミックは依然生産終了）。加えて、マットな純チタンとブラックDLCチタンのペアをチタニウムケースとして投入しました。Apple Watchとして初のチタニウム採用は、Appleにしては興味深い変化です。価格面ではセラミックとSSモデルの中間に設定され、フィットネスデバイスとして使用するユーザーにラグジュアリーらしさを付加する魅力的な選択肢となっています。この機能とラグジュアリーの融合は、AppleがApple Watchで健康とファッション性を同時に追求したいという考えを如実に表しています。

　それでも残る謎：果たして1年後（長くても2〜3年後）には買い換えるだろうモノに、高級素材とそれに伴う追加投資は見合うものでしょうか？　もちろんこれは個々人の問題であり、どちらの側についても非難されるべきではありません。機能的でありながら、比較的コストの安価なセラミックやチタニウムなどの素材は、確かに金無垢よりははるかに理に適っていますが、今後数年採用される素材の変化が見られなくなるとしたら、それはそれで驚きに値します。

　今回シリーズ5の登場はちょっとした驚きでした。もちろん、Appleが新しいApple Watchを発表する事は100%確かな事。しかし、これほどの技術的進歩がもたらされるとは思っていなかったからです。発表前のリークで新しいケース素材やヘルストラッキングの噂はありましたが、常時表示ディスプレイの導入は寝耳に水で、これまで見てきたApple Watchの変化の中では大きなものといえます。

　ここで重要なことは、Appleが新ディスプレイを導入しつつも本体サイズやバッテリー持続時間を維持したことです。44mmと40mmモデルはシリーズ4と全く同じサイズですが（ラージサイズは44mm×38mm×10.7mm）、バッテリーの持続時間も同じ18時間。これによって、Apple Watchにおいて最も大きな不満が解決されたことになります。
　すなわち、時刻を確認するために手首を振らなければならないという不満です。この手首をフリックする行為は現代の文化では、失礼にあたると解釈されています（ピンと来ない読者は、自分が話しかけている相手が、あからさまに時計を見ている姿を想像してみてください）。でもこれで、時刻をこっそり見ることができるようになったのです。

　これはWatch OS 6のソフトウェアの多くの変更も意味しました。最も重要なことは、Appleのデザインチームは時計の文字盤を見ているときにはフルパワーで、時計を見ていないときやデスクに置いてあるときには低電力モードに切り替わる、柔軟性のある文字盤デザインを再発明する必要があったのです。多くの文字盤では、これは文字盤から色が失われ、秒針も消え、明るさも減少することを意味します。しかし、そうなっても必要な情報は（ほとんど全て）得られるのです。実用的な利点についてこれからお話しします。ネタバレ注意ですよ：マジですごいんです。

　あまりオタクっぽく語っても仕方ないのですが、常時表示を可能とした技術を低温多結晶酸化物（LTPO）ディスプレイと呼びます。引き続きOLEDベースのRetinaディスプレイではあるのですが、可変型リフレッシュレートを採用しています。この意味するところは、通常、毎秒60回以上の表示読込みを低電力モードでは、毎秒1回読込むよう切替えする制御方法です。これが、画質と視認性を犠牲にすることなく、バッテリー持続時間を維持できる秘訣なのです。

 「Meridian（子午線）」、「Numerals Duo」、「Solar Dial」を含む新しい文字盤デザインは、以前に比べずっとカスタマイズ性に優れています。Appleのストラップの種類が充実するにつれ、それに合わせる文字盤のカラーの選択肢も豊富に用意されるようになりました。僕のお気に入りはAppleのデザインチームに時計マニアが混じっていることの証左となる「カルフォルニア」ダイヤルです。僕はこの文字盤に限定カラーである「エディション」と組み合わせています。この色は素晴らしい色合いのトープなのです。AppleはかつてエルメスモデルとNike+モデルに専用の文字盤を与えながら、エディションモデルは通常モデルの文字盤と同じでした。トープ色を用意することくらい、誰のストレスにもならなかったはずです。

　他にもハード、ソフト両面で進化がありますが、その価値を引き出すためにはApple Watchをどのように活用するかにかかっています（コンパス、月経周期、ノイズ測定など）。けれど、何をしてもディスプレイの常時表示は、間違いなくApple Watchの近年の最も重要なアップデートです。

　価格に関しては、「エディション」チタニウムモデルはSSモデルとセラミックモデルの中間という絶妙なプライスタグとなっています（8万2800円/40mmと8万7800円/44mm、いずれも税抜価格）。もちろん、これらの価格にはスポーツループかスポーツバンドが含まれていますが、差額を支払うことでレザーやメタルブレスレットに交換することも可能になりました。僕個人は、スポーツバンドが最も使い勝手に優れたApple Watch用ストラップだと思いますし、新色は本当に素晴らしいので費用面のことを考えてもベーシックなセットが一番です。

　僕は先週いっぱいApple Watchシリーズ5「エディション」44mmチタニウムモデルを着用して過ごしました。箱から出して腕に巻いた瞬間、昨年着用したSSモデルとの違いを感じることになります。今回のモデルは41,7gで、スチールモデルは47,8gなので、その差は7,1g。ほとんど違いがないように思えるかもしれませんが、およそ13%軽くなったといえば伝わるでしょうか？　しかし、チタニウム製「エディション」にはまだ確かな存在感があるのです。僕のアルミニウム製モデルへの不満は軽すぎるということでした。存在感が薄いのです。腕に乗せた感覚が認識できるというのは装着性の良さに直結するのです。

　僕はチタニウムの仕上げがとても気に入っています。Appleはこれを「ナチュラル」と表現していますが、ブラッシュ仕上げが繊細に施されているためか、反射がギラつかないのです。僕は四隅のコーナーと、ラグへの回り込みにかけての曲面の仕上げのアクセントが特に好ましく感じられます。手触りがやや粉っぽく感じられますが、これは金属加工仕上げと腐食の発生を防止するためのナノコーティング両方の影響からくるものだと思います。経年変化で味の出るようなケースが好きかと言われたら確かにそうです。だけど、僕のそういう嗜好は少数だと思うので、まずはAppleの細部にわたる配慮を享受しようと思います。

　時計を着け始めたとき、常時表示ディスプレイには少し違和感を感じました。長年の経験から、液晶には光沢のある暗黒の「虚無」があるはずが、意図して注意を払っていないときでさえ何かが自分を見つめているような感覚に襲われたのです。面白いことに、この当初の奇妙な感覚に慣れてくると、シリーズ5が俄然自然で心地よく感じられるようになりました。あらゆる種類の機械式時計を取替え引っ替えしている者として、僕は相手に悟られずに時間を確認する所作に長けていて、常に時計の針と文字盤を見えるようにしています。機能云々を超えたところで、シリーズ5の常時表示ディスプレイはこれまでで最もApple Watchを時計たらしめることに成功しているでしょう。

　常時表示ディスプレイの副作用というべきは、よりシンプルな文字盤を選ぶようになることです。もちろん、僕が「カルフォルニア」文字盤に執着しているからというわけではありません。ディスプレイが常時表示されている状態で、断りもなく他人が僕の文字盤から時刻以外の情報を盗み見て欲しくないのです。僕のヴィンテージ・ロレックスは僕のスケジュールを表示しませんし、現行IWCだって通りかかった人に心拍数の情報をシェアしたりしないわけで、それと同じことです。気にならない人はいるかもしれませんが、僕はシンプルであることを心がけてきたし、そのことで悪い意味でユーザビリティが影響されたことはありません。気になるという人は常時表示をオフにするオプションも用意されています。

　僕は先週、シリーズ5について仲間たちと雑談しました。ある仲間は新作発表イベントで金属ケースのモデルを目にしており、そうでない仲間もいました。話題は今作のApple Watchがちょっとした進歩なのか革命的な進化なのか侃々諤々。僕はこの点について何度も意見を変えましたが、最終的な結論は革命的といいうる進化だということです。ディスプレイの常時表示はこの時計の活用法を根本から変えるものであり、常に時計とコミュニケーションを取るということにもなります。それは、もちろん僕にとっても、とても重要です。

　さて、今年も毎年と同様、9月に新しいApple Watchが発売されたときと同じ経験をしていることにふと気づきました。僕は毎回その世界に吸い込まれていくのです。同僚のジャック・フォースターがApple Watchを日常生活の一部に取り込んだ方法について記事を書きましたが、僕も同じことをしたい誘惑に駆られています。瞬時の情報パイプライン、使い勝手の良さ、日常のタスクに使えるユーティリティをもたらすことができるすべてのツールですから、慣れるのは簡単なことです。シリーズ5を日々どれくらい着用するか定かではありませんが、年を追うごとに機械式時計のローテーションに戻るのに少しずつ時間がかかっています。

　Apple Watchが発表された当初から取り上げてきた者として、新たな進化がリリースされるたびにより多くの哲学的な疑問に捕われていることに気づきました。Appleが自社製品のエコシステムの中に、このプロダクトをどう取り込むのか？　最新バージョンが占うApple Watchの未来は何か？　どんな難しい決断がなされ、製品版にその決断がどのように反映されたのか？　そして、どんなレビューにも必ずついてまわる質問がこれです：僕はこれを買うべきか？

　もしあなたがユーザーではなく、Apple Watchに興味があるのなら、僕は試す価値があると思いますし、完璧に理解するには使ってみるということが必要です。エントリーモデルや型落ちで安くなったシリーズ3（まだ製品ラインとして残っています）を購入するというのは一見魅力的かもしれませんが、僕はそれがApple Watchを最大限に活用し、楽しめる方法だとは思いません。身体に密着して四六時中触れるデバイスとして、Apple Watchはスティール、チタニウム、セラミックこそ相応しいと思うのです。チタニウムモデルとアルミニウムモデルから得られる体験は昼と夜程に異なるのです。

　既にシリーズ4を持っているあなたには、価値のあるアップグレードだと僕は思います。Apple Watchの価値を引き出すならば常時表示ディスプレイと新文字盤デザインは必須です。このような変化の速いプロダクトは、それに没頭したい人にとっては契約のひとつに過ぎません。もう少し気軽に使いたいという人なら、FOMO（取り残されることへの不安）を寄せ付けないメンタルの強さが前提となりますが、シリーズ4でも素晴らしく感じるでしょう。

　僕にとっては至極簡単な話で、これこそ求めていたApple Watchだということ。マットなチタニウムの質感はときどき食傷感のあるホワイトセラミックと隙なくポリッシュされたスティールの中間のちょうどいい塩梅にあり、常時表示ディスプレイは日常使いでより自然に、時計らしく感じられます。以前にも言いましたが、もう一度言います：Apple Watchが必要不可欠となる時代はまさにすぐそこまで来ています。―多分、僕たちが想像するよりずっと早く。

　Apple Watch シリーズ5は現在発売中、税抜価格4万2800円から、上記のチタンエディションは8万2800円から。詳細についてはApple公式サイトへ。