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弁護士であり、時計コレクターでもあるH.ジェーン・チョン氏は、隔離をきっかけにコレクションに対する考え方が大きく変わった。自称、荷造り好きな彼女だが、隔離期間は多くの私物から切り離された。だが、時計だけは別だった。
「毎日、腕時計をしていると、とても安心するんです」と、彼女は振り返る。しかし、それは同時に、それぞれの時計がきちんと価値をもたらしてくれているのかを見極めることでもあった。「なぜ、私はこの時計を持っているのだろう? なぜ、この時計に保険をかけ、お金をつぎ込んでいるのだろう? 私は生計を立てるために働いていますが、ふと『もう時計を安全にしまっておくのはやめよう』と思ったんです」。
パンデミックのさなか、彼女のコレクションは大整理され、その間に、これまでの人生で最も多くのコレクションを手放したという。「隔離措置によって、私はよりよい人間に、少なくともより賢明な人間になったと思います」と彼女は言い、今日のコレクションはよりつやすさに重点を置いているのだそう。「つけないのであれば、持つべきではない」と彼女は付け加える。「客観的に見れば、投資目的でない限り、時計を所有することに金銭的な意味はないのです。でも、私は時計を投資とは考えていません」。そのため、彼女のヴィンテージウォッチはすべて耐水圧テストが行われている。「雨が降っても大丈夫な時計であることを確認したいのです」。
現在、彼女のコレクションは約85%がヴィンテージまたはネオヴィンテージで、「自分らしい」と感じている。その理由は、何よりもまずムーブメントのクオリティにあるのだとか。「機械式時計は私が理解できるものであり、自分で扱うことを恐れないものです。時計はまるで生きているようですよね。私のヴィンテージウォッチが、実際に時を刻んでいるのが好きなんです」とチョン氏は語った。
以下は彼女のベスト4で、それぞれに思い出と物語が込められている。また、時計以外のもので、家族の特別な歴史を持つ記念品もご紹介する。
彼女の4本
プラチナ製のカルティエ タンク ア ギシェ(1997年)
チョン氏の時計収集が本格的になったのは、2015年頃、ロースクール(法科大学院)でのこと。「ロースクールが大変だったので、そこで自分は成長したんだと思います。『これは自分が興味があるのものなのだから、弁解しようとは思わない』と考えたのです」と語る同氏は、現在、本業の傍ら、ニューヨーク時計協会(Horological Society of New York)の顧問としてプロボノ活動も行っている。2018年12月、彼女はこのプラチナのタンク ア ギシェに出会った。これまでカルティエを意図的に敬遠していた彼女にとっては、意外なことであった「店員がパンテールを見せようとすると、顔をしかめていました」。それでも、驚いたことに、彼女はタンク ア ギシェの存在を知っていたのだ。「そのデザイン、時代性、そして存在感に、すぐに心を奪われました。こんなに小さいのに、存在感があって、しかも重さもずっしり。私を見て! って言っているような感じで、もうこれは買うしか無いと思いました」。
この時計は、チョン氏のチェックリストのなかでデザインの重要性を一挙に高めると同時に、「根気が必要で高価なヒストリカルなカルティエの道を歩ませた」モデルでもある。
シンプルでミニマルなスタイルのタンク ア ギシェは、チョン氏が普段から愛用しているみっつの時計のうちのひとつだ。この1本は、オペラやブラックタイから、「ママのところに帰るときのスウェット」まで、さまざまなシーンで着用されているそう。
パテック フィリップ Ref. 2526J、イエローゴールド製(1950年)
2019年8月にこの36mmのヴィンテージパテックを手に入れたことは、チョン氏にとってかなりドラマチックな出来事だったが、彼女の時計収集に最も影響を与えた人物が関わっているため、特に感慨深いものがある。同氏は、この時計が入荷されたとき、たまたま正規販売店でぶらぶらしていたそうだ。「時計師の部屋にお客さんが来ることはないですよね。でも、私たちは友達だから、ロレックスの1601バックリーの文字盤を修理してもらいに行ったんです。それでその場に居合わせた。当初はボーイフレンドが時計の確保を手伝ってくれたそうだ。「私は移民の娘です。だからクレジットカードに時計を預けるとか、そんなことはしないんです」。
この時計は、タンク ア ギシェと並んで、もし彼女がコレクションを売らざるを得なくなった場合、最後に手放すことになるふたつの時計なのだという。しかし、タンクとは異なり、この時計は、その純粋なエナメル文字盤のため、日常的に使う時計とは言い難い。「ドアにぶつけたり、地下鉄に駆け込んだりするような、走り回るようなときにはつけないことにしています」。そしてそれは間違いなく、お母さんに会うためにスウェットと一緒に着用されることはない。
A.ランゲ&ゾーネ カバレット、ホワイトゴールド製(2007年)
隔離されているあいだ、チョン氏はZoomやWhatsAppで時計仲間と連絡を取り合っていた。特に、このバゲットダイヤモンドベゼルのカバレットでは、2人の友人が協力してくれた。「彼らは時間を割いて、私を助けてくれました。この時計は、彼らのサポートによって購入しました」。
チョン氏は確かに長方形のアールデコ調のケースにこだわりがあるようだ。しかし、この時計はレベルが違う。チョン氏はこの時計を「力強い」と表現し、手首にゆったりとつけることを好む。「確かに派手だけど、いい意味での派手さ。仕事でもプライベートでも、難しいやりとりがありそうなときに、この時計に引き寄せられるんです。馬鹿げていると思われるかもしれないですが、この時計をしていると2インチ背が高くなったような気がするんです」。
カルティエ タンク ア ビス ア ギシェ タイム&デイト、ホワイトゴールド製(2005年)
カバレットで自信をつけたチョン氏は、2021年1月に「私とは次元の違う」コレクターからこのカルティエ タンク ア ビスを購入したそうだ。「彼はコレクターで、私は愛好家です。私は多くのものを集めていますが、他の趣味では、人々は時間や知識をそれほど惜しまないものです」。何よりも、カルティエへの愛を分かち合おうとする彼の姿勢に心を打たれたそうだ。
1998年から2008年にかけて、カルティエの最も大胆なアーカイブデザインを復活させたコレクション プリヴェ カルティエ パリで特徴的なロゼット模様を中心に、手彫りのギヨシェ文字盤を配した一風変わったディスプレイ表示。「これはCPCPの作品ですが、だから気に入ったわけではありません。ギヨシェ装飾やムーブメント、美意識に至るまでが美しく作られています。私はユニークでレアなものに惹かれるんです。この時計は、私に語りかけてくるものがあります」。
もうひとつ
1976年の2ドル紙幣
1976年製の2ドル札は、チョン氏が10歳前後の頃、父親からもらったものだ。ある日、学校でいじめられた彼女は、父親から約80枚あるお札のコレクション(毎年1枚ずつ集めようとしていた)の最初の1枚としてこのお札をプレゼントされた。
「初めて買ったものだし、状態もいいし、特別なものだと言っていました」とチョン氏は振り返る。「言い方が不器用なんです。でも、父は理解してくれていて、変わっていてもいいんだと言ってくれたんだと思います」。
Photos by Meghan Marin.
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各社のウェブサイトからA.ランゲ&ゾーネ、カルティエ、パテックフィリップの詳細をご覧ください。HODINKEEショップでは、ヴィンテージウォッチも多数取り揃えています。
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