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November 28, 2020
November 28, 2020
In-Depth G-SHOCK カシオークと呼ばれる令和の寵児GA-2100の開発秘話を独占取材

In-Depth G-SHOCK カシオークと呼ばれる令和の寵児GA-2100の開発秘話を独占取材

高級時計の世界にはアイコニックなデザインがいくつか存在し、中でも八角形モチーフは近年加熱する人気作の中心だ。このGA-2100は1万円台のG-SHOCKながら、八角形であることから"カシオーク"の愛称で一気に人気作へと躍り出た。これは開発陣が意図したことなのか、否か。その裏側に迫った。

カシオークとは、海外の時計フォーラムやRedditで生み出された愛称で、日本でも瞬く間に浸透し近年最大のヒット作のひとつとなったGA-2100のデザインがその名の由来である。この時計がもつ八角形のベゼルは、時計界においてはあまりにアイコニックな時計たちが備えるモチーフであり、確かにロイヤル オークやノーチラスを彷彿とさせる雰囲気を感じ取ることができる(このGA-2100に関する時計の詳細はこの記事をご参照あれ)。

 今回僕は、カシオ側の好意に甘え、図々しくも上記のようなデザインがいかにして生まれたのか、企画担当者とデザイナーに直撃することができた。決して順風満帆ではなかったその紆余曲折をお伝えしたいと思うので、楽しんでいただけたら幸いだ。

 まず商品概要の簡単なおさらいだが、GA-2100シリーズは2019年に発表されたG-SHOCKのベーシックラインに位置するモデルで、2年弱の開発期間を経て誕生した。価格は1万3500円(税抜)で、オリジンであるDW5000のDNAを継承しながら進化させることが使命だったとのこと。

 さて、冒頭からズバリ、製品企画を担当したカシオ計算機 羽村技術センター 開発本部 第一企画室 泉 潤一さんに、ラグスポウォッチが企画に影響しているかを尋ねた。

カシオ計算機 羽村技術センター 開発本部 第一企画室 泉 潤一さん。

 「正直、意識していないんです。なので反響を聞いたときには逆に驚いてしまったぐらいで。このGA-2100は、これまでのG-SHOCKがリーチできていない若者層をターゲットに企画を立案しました。有識者へのヒアリングも、ファッション誌のエディターや欧・米・中の流通マーケットなどに行い、ラグジュアリースポーツウォッチとは割と遠いところからスタートしたのが実情です。G-SHOCKは、1983年にオリジンであるDW5000が誕生し、1989年に初めてアナログ針を採用したAW500が登場。これは無駄を削ぎ落とすことがテーマに掲げられていましたが、それから30年後にさらに無駄のないG-SHOCKを現代のテクノロジーを載せて作ったのがGA-2100なんです。企画コンセプトとして、DW5000のアナデジコンビモデルを実現する、というものがありました」

カシオ計算機 羽村技術センター 開発本部 Gデザイン室 網倉 遼さん。

 一方で、デザインを担当した開発本部 Gデザイン室の網倉 遼さんは、その"八角形"デザインについてこう語った。 「八角形というのは、実はG-SHOCKにおいてもアイコニックな形状です。初代のDW5000から八角形ベゼルは採用していましたし、これまでも度々使用しているモチーフではあります。今回もどんなバランスの八角形にすべきか、3Dプリンターで20本以上は試作を重ねて検討しました。また、デザインテーマとしては、薄く小さいG-SHOCKを作るという大きな課題もあり、厚みを抑えながらいかに立体感を出すかも苦労したポイントです」

苦心の末、完成したGA-2100の八角形ベゼル。

本機の薄型化と耐衝撃構造に大きく寄与した、カーボンケース。

3Dプリンターで出力された、プロトタイプの数々。

当初、社内の風当たりは強く、今でも"売れた理由が分からない"と言われています(笑)

 ユーザーサイドに立ってみると、これまでのG-SHOCKのイメージを覆す薄型モデルというと、聞くだけで興味が湧くような時計であるが、社内の風当たりはアゲンスト。G-SHOCKはラギッドでゴツゴツしたもの、というこれまでの価値観を崩すのは非常に苦労したという。

 「G-SHOCKのメインの価格帯は100〜120ドルで、本来ユースの方々に手にとってもらいやすいゾーン。でありながら、今のユースに話を聞いてみると従来のG-SHOCKのコンセプトがマッチしていない部分もあると気づいたんです。彼らは時計をファッションの一部と考えていて、全体の中でさりげなく着けたいと思っている。決して時計だけを目立たせたいわけじゃないんです。薄く、小さく、シンプルに。そんなユースの皆さんの潜在ニーズに答えられるG-SHOCKを作りたかった」(泉さん)

 泉さんの目論見どおり、実際の購入層は10代も目立ち、ファーストG-SHOCKとして手に取る人が多いとのことだ。今やG-SHOCKの売上比率は日本よりも海外が高まっているが、北米や欧州など、普段そこまで活発でない地域でも好評を博しているという。

 「正直、売れてくれてホッとしています。これまでのG-SHOCKと全く違ったアプローチで企画を作ったため、当初社内の風当たりは良いとは言えませんでした。結果の出た今でも、"売れた理由が分からない"と言われることもあります(笑)。良い意味で注目を集められたのだと捉えていますが、予算面でも苦労することがあったので、しっかりと良いモノにデザインしてくれた網倉君にはとても感謝しています」(泉さん)

こだわりの赤が配された1本。色調の異なる、9色の赤を用いて視認性を保っているという。

G-SHOCKの新時代を切り拓くGA-2100シリーズ。

赤のモデルのみ、尾錠までレッドの樹脂製となっている。

 良い製品というのは、制約があるところで生まれやすいのかもしれないというエピソードだが、GA-2100のデザインを手掛けた網倉さんはそのあたりの不自由さを感じなかったのだろうか?

 「特にやりづらさは感じませんでした。確かに、高額モデルでは複雑な加工などを用いることが可能になりますが、造形や色などコストをかけずともこだわることのできるポイントはたくさんあります。僕は3年前くらいにG-SHOCKのデザインチームに異動してきたのですが、元々はオシアナスなどを担当していました。なのでG-SHOCKに対する先入観なく、まっさらな気持ちでデザインできたのもコンセプトを貫けた理由かなと思っています。このチームに入って感じたのですが、G-SHOCKは他社を意識してデザインすることがないんです。社内でも"独自チーム"と呼ばれていて、先頭を切って新しい時計のデザインを生み出す、そんな意気込みで望んでいます」(網倉さん)

 網倉さんは最近、G-STEEL B300のデザインも担当したそうである。確かに、それまでのG-STEELと違い、シンメトリーでアナログとデジタルが融合したような特徴的なデザインをもっている。GA-2100においても、もはや他社のモチーフを流用しているはずなどないが、どんなポイントにこだわりが詰まっているのか?

 「この時計は薄く、小さく作ることが至上命題だったため、G-SHOCKがもつ最大の個性である"立体感"をもたせることに苦心しました。また、インデックスや針もダークトーンの"ブラックアウト"モデルは、泉さんからも絶対作りたいモデル、と強い要望をもらっていたので、機能性をいかに担保するかも大きな課題でした。外装の樹脂ケースなどは、たくさんのカラーチャートから最適な色の組み合わせを探し出して、どういうトーンにするのかも開発を重ねました」

ユースの潜在ニーズに応えられる、薄型のG-SHOCKを出したかった

 今回の取材を終えて、本企画のきっかけであった、僕や多くの時計愛好家が抱いた"カシオークという愛称は、カシオの中の人はどう思っているのだろう?"という疑問。僕が思うに、これは、GA-2100が従来のG-SHOCK的アプローチを止め、いかにも伝統的な高級時計を作る発想が用いられたからこそ、みんなが思ったことではないだろうか? 最後に、デザイナーの網倉さんはデザインに関してこんなことを話していた。

 「今回、他のG-SHOCKと大きく違う点は、ダイヤル上の"間"をとるようにしたことです。つい余白を埋めるようなデザインを入れてしまいたくなりますが、今回はアナログ表示にこだわり、G-SHOCKのアイデンティティである液晶表示は最小限に抑えています」

泉さんの腕元。近年のフルメタルモデルはここから始まった。

網倉さんの腕元。遊び心のある、ファンキーカラーがお好み。

 自社の伝統的アプローチから離れて全く新しい時計を作ることは、クォーツ危機に瀕したスイス時計界が決死の覚悟で行ったことであり、だからこそ、腕時計は単なる時間を知る道具でなく文化的価値を備えたアイテムとなり得た。カシオ計算機の若いチームリーダーは、今後のGA-2100について力強く次のように語ってくれた。

 「僕はこの時計を、G-SHOCKの新しい定番として定着させたいと思っています。衝撃に強く、壊れにくいのがG-SHOCKの特徴ですが、GA-2100は皆さんに衝撃を与え続ける時計でありたいですね」(泉さん)

その他詳細は、G-SHOCK公式サイトへ。