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Watching Movies ブラッド・ピット、映画『マネーボール』でタグ・ホイヤーを身につけて野球チームを作る

今週ご紹介するのは、ホームランとステンレススティール製の時計でいっぱいの映画だ。

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ブラッド・ピットが「Watching Movies」に戻ってきた。最後に見たのはクエンティン・タランティーノ監督の映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』で白髪交じりの中年スタントマン、クリフ・ブースを演じたときだった。この作品で彼はアカデミー賞を受賞した。今週のブラッド・ピットは映画『 マネーボール(Moneyball) 』(2011年)のなかで、ソフトな語り口の、噛みたばこを吸うオークランド・アスレチックスのゼネラルマネージャー、ビリー・ビーンを演じている。彼はこの作品でアカデミー賞を受賞するべきだった。実話をもとにしたこの映画は、2002年のアメリカを舞台に、ビーンと彼のアシスタントGMであるピーター・ブランド(演じるのは同じくWatching Moviesで取り上げたジョナ・ヒル)が、メジャーリーグの常識を覆し、データ分析を駆使して競争力のあるチームを低予算で作り上げていくストーリーを描く。ピットとヒルが演じる人物は、選手を評価してトレードを行う過程で、超クールなSS製のスポーツウォッチを身につけている。

『マネーボール』でビリー・ビーンを演じるブラッド・ピット。Photo courtesy: Alamy


注目する理由

 先週末から始まったMLBオールスターウィークは、7月14日(水)にコロラド州デンバーで開催されるオールスターゲームでクライマックスを迎える。数ある野球映画のなかでも、これほど時計に関してアツい作品は、そうはない。

 『マネーボール』の筋書きはとても明快だ。アスレチックスのゼネラルマネージャー、ビーンには毎シーズン、競争力のあるチームを作る役目がある。それは、選手を選抜し、マイナーリーグで育て、フリーエージェント契約することでもある。しかし、大リーグでの問題は、一部の企業(ニューヨーク・ヤンキースとか)がほかよりずっと資金力があることだ。結果として毎シーズン、そういうチームが選手により多くのお金をかけ戦力を維持できることになる。ビーンと彼のオークランドのチームにそんな余裕はない。映画のなかでビーンはブランドを雇い、大金を使わずに競争力のあるチームを作るため、クリエイティブな方法を開発してもらうことになる。映画『カポーティ』 (2005年)で有名なベネット・ミラー監督は、このよくある話を最高に面白く描いて見せた - もっともそれは、スティーブン・ザイリアン/アーロン・ソーキンが書いた脚本によるところが大きいと思う。

タグ・ホイヤーを身につけ『マネーボール』でスカウトマンにクイズを出すビリー・ビーン(ブラッド・ピット)。スクリーンショット: Sony Pictures Entertainment

 今週の映画の裏には、かなりいい時計にまつわるストーリーがある。実は、HODINKEEのコントリビューターであり、大人気のホイヤー専門サイト「On The Dash」を運営するジェフ・スタイン氏が、時計の調達に関わっていたのだ。彼の話によると、映画のためにブラッド・ピットに2つの時計を見せ、一つを選ぶ予定だった。しかし直前になって、プロップマスターがスタッフのつけていたタグ・ホイヤーのキリウムを見つけ、ピットに見せるために貸してくれないかと頼んだのだ。運命的と言うべきか、彼が選んだのはこの時計だった。SS製のブレスレットを備えた、想定外のタグだったのだ。スタイン氏は、オリジナルの時計に何かあったときのために、業界で“替え玉”と呼ばれる時計を調達した。

『マネーボール』でブラッド・ピット演じるビリー・ビーンが身につけていた時計と同型のタグ・ホイヤーの「キリウム」。 Image courtesy: Vintage & Prestige

 この時計はスクリーン上のビリー・ビーンのキャラクターにぴったりで、基本的に作品中ずっと見ることができる。映画公開時にスタイン氏が書いた記事によると、キリウムは「2002年の野球シーズンに焦点を当てたストーリーにぴったりの、1990年代後半に製造された時計で“時代に合っている”」そうだ。

『マネーボール』で一部袖から見えるデイトナを披露するピーター・ブランド(ジョナ・ヒル)。スクリーンショット:Sony Pictures Entertainment 

 メリーランド州出身で(私のように!)イェール大学を卒業し(私は違った!)、2つめの仕事としてメジャーリーグ球団のGM補佐になった、ヒル演じるピーター・ブランドももちろん見逃せない。彼の時計は、SS製のロレックス デイトナのブレスレットモデルで、ホワイトダイヤルのRef.116520と思われる。現在のセラミックベゼルのモデルより前のものだ。これはイェール大学の卒業記念と思いたい。とはいえ、彼はこの時計をさりげなく身につけており、しょっちゅう袖で隠れている。ヒルはWatching Moviesに登場するのが2回めであるだけでなく、デイトナと登場するのも2回めだ。映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート(The Wolf of Wall Street) 』 では、彼の時計はレプリカで(ため息)、しかもゴールドだった。今回は、ポリッシュ仕上げのセンターリンクを備えたSS製のモデルを見事に着こなしている。

『マネーボール』でジョナ・ヒル演じるピーター・ブランドが着用していた時計と同型のロレックスのデイトナ Ref.116520。

 しかし、それだけではこの映画の時計祭りは終わらない - 延長戦に突入する。おまけとして、ビーンのスタッフであるスカウトマンが、ブラックダイヤルのロレックス エクスプローラー Ref.16570を身につけているのだ。見つけた方はコメントで知らせてほしい。


見るべきシーン

 映画の序盤でビーンとブランドが、分析重視で低予算の選手リストをどうやって組み立てるか研究している様子が、クールなモンタージュとして描かれている。コンピュータのクリック音とBGMがミックスされ、画面には選手の情報や統計データが次々と映し出されていく。そして、コンピュータの前に座るブランドの姿がつなぎ合わせで映し出され [00:28:54]、このプロセスが、現実ではいかに非ロマンチックで、非モンタージュ的かを示している。コンピュータを操作し、モニターをぼんやりと見つめながら、窓のない暗いオフィスの机に置かれた彼の腕には、ホワイトダイヤルと光沢のあるセンターリンクをもつロレックス コスモグラフ デイトナがある。そしてモンタージュは終了だ。

スクリーンショット: Sony Pictures Entertainment

 『マネーボール』の中盤で、ビーンとブランドは、窓のあるビーンのオフィスでひとときを共有する。彼らが新たに編成したメンバーによるオークランド・アスレチックスのファーストシーズンが始まり、ビーンはブランドに一緒に遠征してほしいと頼んでいた [01:00:27]。これを口実に、消極的なブランドにリストから選手をカットする方法を教えるのだ。ビーンは机の上に足をのせて座り、固く結んだ上唇を紙コップに吐き出しながら、太陽の光が降り注ぐ机の上でタグ・ホイヤーのキリウムをつけた手首を見せている。

スクリーンショット: Sony Pictures Entertainment

『マネーボール』(出演:ブラッド・ピット、ジョナ・ヒル、ロビン・ライト、フィリップ・シーモア・ホフマン)は、マイケル・ルイスの著書を基に、ベネット・ミラーが監督、モーリーン・ファーリーが小道具(ジェフ・スタインがアシスト)、スティーヴン・ザイリアンとアーロン・ソーキンが脚本を担当。iTunesまたはAmazonでレンタル可能。

Lead image courtesy: Alamy