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Bring a Loupe ギュブランとダブルネームのノーチラス、プラチナのサントス デュモン、クロノメーター仕様のシーマ

今回のBring A Loupeで紹介する時計には、そのバックボーンにも多くの情報が詰まっている。

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Bring A Loupeへようこそ。2週間前、アメリカではサンクスギビングの週だったが、その際に公開した前々回のコラムでは私にとって衝撃的な個人的ニュースをお伝えした。それはeBayアカウントへのアクセスを失ったことだ。しかし朗報がある。数回の電話を経てニューヨーク州ブルックリンの住所で2台のiPhoneと1台のiPadを受け取り、無事にアカウントが復活した。私を取り巻く世界のすべてが素晴らしい方向へ向かったお祝い代わりに、eBayでヴィンテージのオメガを掘ったりもした。

 Iconeekのオークションで出品されたロンジンの“スクールウォッチ”トゥールビヨン式懐中時計は、入札が一切なく流札となった。そのため、今回はひとつだけ結果を振り返る。イギリス、チェシャー州のAdam Partridge Auctioneers & Valuersでオークションに出品されたタグ・ホイヤー カレラ Ref.2447 NSTが、手数料を除いて8800ポンド(日本円で約170万8000円)という価格で落札された。風防のテンションリングとリューズの修理が必要なプロジェクトウォッチであることを考えると、この時計の価格は妥当であるといえる。

 さあ、今回のピックアップを見て行って欲しい!

パテック フィリップ ノーチラス Ref.3700/1 ギュブラン製(箱、保証書付)
a patek nautilus signed by gubelin

 ヴィンテージのノーチラスやロイヤルオークを購入するには、まさに絶好のタイミングだと言いたい。ここでいう“ヴィンテージ”とは真のヴィンテージ、具体的にはノーチラスのRef.3700/1とロイヤル オークのRef.5402を指す。これらの時計は過去3~5年で大幅な価格上昇を見せたが、その後価格が見直された。この値下がりにより、多くのコレクターがこれらの素晴らしい時計から距離を置いているのが現状だ。ある意味では、この価格の下落が新規層の関心を集める妨げになっていると言える。しかしながら、これらふたつのジェラルド・ジェンタのデザインが時計の世界を一変させたという事実には議論の余地はないだろう。

 1976年に発表された“ジャンボ”ことノーチラス Ref.3700/1は“ラグジュアリースポーツウォッチ”の象徴的存在であり、「One of the world's costliest watches is made of steel(世界で最も高価な時計のひとつはスティール製である)」という有名なキャッチコピーで宣伝された。最初のノーチラスとこのマーケティングは、時計購入者の認識を変えるうえで大きな役割を果たした。ラグジュアリーウォッチは複雑な機構を持つ貴金属製品である必要はない、という概念を広めたのだ。UBS House of Craftのステージ上でジャン-クロード・ビバー氏は、ジェンタがロイヤル オークとノーチラスの類似性をはぐらかすように、「ノーチラスとはロイヤル オークを何年も水中に沈めたようなものだ」と語ったという逸話を話してくれた。これは決して忘れられない、素晴らしいエピソードだ。

a patek nautilus signed by gubelin

 非常に良好なコンディションで箱と保証書が付属するこのRef.3700/1は、文字盤の6時位置にギュブラン(Gübelin)のサインがあるため特別感が一層際立っている。このヴィンテージノーチラスが今買い時だという私の理論に同意するなら、リテイラーの名前を冠した真に特別で希少なモデルに投資するのが賢明だ。ギュブランは私がパテックのなかで最も好きなサインであり、世界で最も名高い宝飾品店かつ時計販売店のひとつでもある。それに加えて、“U”の上に見られるウムラウトという小さなディテールが個人的にとても好きだ。この些細な特徴が本当にクールだと感じる。

 販売者はマイアミのMenta Watchesのアダム・ゴールデン氏だ。彼はこのヴィンテージノーチラスを12月13日に限り、16万5000ドル(日本円で約254万円)で自身のウェブサイトに掲載していた。詳細情報はこちらから確認可能だ。

 16万5000ドルのノーチラスが意に沿わないなら、先日同じくMentaで掲載された1930年代のオーデマ ピゲもおすすめだ。この時計もおそらく非常に希少だろう。

カルティエ サントス デュモン Ref.1575 プラチナ製“プレCPCP”1990年代
A platinum Cartier Santos

 サントス デュモンは、個人的なカルティエのランキングを急速に駆け上がっている存在である。現行モデルはブランドが提供する“通常モデル”のカタログのなかで最も優れたメンズウォッチであり、これらのネオヴィンテージモデルは本物のヘリテージデザインを採り入れつつ、極端にサイズアップされていないカルティエをコレクションに加えるための比較的手ごろな手段のひとつとなっている。Ref.1575は1980年代のRef.96054と本質的には同じ時計であり、さらに1973年のルイ・カルティエ コレクションに属するRef.78097をわずかに改良したものだと言える。この型番の説明は少し退屈かもしれないが、同モデルが真の“ヴィンテージ”カルティエに直結する系譜を持つことを示すためにあえて触れている。ルイ・カルティエ コレクションはカルティエ初の本格的な時計コレクションであり、それまでに作られてきた優れた時計をもとに設計されたものだった。つまり1904年の最初のサントスからここに紹介したRef.1575までの流れは、非常に直接的なものなのである。

 ネオヴィンテージウォッチが輝くのは、1980年代や1990年代の技術とウォッチメイキングが、過去数十年で見られた素晴らしいデザインに適用されているときである。当時の時計は現代ほど日常的な使用に耐えられるものではなかった。例えば1910年代のカルティエ サントスを毎日使いたいと思っても、それは現実的ではない。しかしRef.1575は堅牢な作りによって、当時のデザインをほぼそのままの形で再現している。

A platinum Cartier Santos

 この時計をプラチナ(Pt)で見つけるのは非常に難しい。Chrono24のような販売サイトでいくつか見つけることはできるが、基本的に希望価格はやや高めで、2万ドル中盤(日本円で約385万円)の価格帯に達することが多い。この時計を手にしたディーラーの多くが、その美しさと類いまれな希少性に目を輝かせるのは間違いないが、個人的には2万ドルを超えると少し割高に感じる。この時計は素晴らしいものではあるが、サイズが小さいため市場がやや限られるという現実もある。

 この時計は1998年にカルティエ パリ プリヴェ コレクション(CPCP)が正式に始まる以前の“プレCPCP”にあたるものである。それを簡単に見分けるポイントは文字盤に“Paris”の文字がないことであり、このモデルには12時位置に“Cartier”とのみ記されている。そのほかの点はのちに登場するCPCPの派生モデルと同一であり、いずれもカルティエとしては高級な部類に入るF.ピゲベースのCal.21を搭載している。

 このカルティエは販売者であるマイク・ヌーヴォー(Mike Nouveau)氏が新しいウェブサイト兼アプリ、Pushers.ioで販売している。希望価格は妥当な1万7000ドル(日本円で約262万円)である。詳細はこちらから確認して欲しい。

シーマ クロノメーター 1950年代
A Cyma chronometer

 少し前のBring A Loupeでフィリップ・デュフォーのデュアリティと並んでゼニス クロノメーター Cal.135を紹介した際、その並びにまったく違和感を覚えなかったことを思い出す。ヴィンテージのクロノメーター認定を受けたこのようにシンプルな時計には、特別な愛着を感じる。それらは同時代において最高品質のシンプルウォッチであり、ある意味では今日のデュフォーの目指すところと似ている。2024年現在ではシーマという名前を知る人はあまり多くないが、ヴィンテージ時代には非常に優れたブランドとして知られていた。シーマは1862年に設立され、歴史のなかで最も注目すべきは1903年にタバンとのパートナーシップを結んだことだろう。その後の数十年にわたり、シーマとタバンは卓越したムーブメントを備えた素晴らしい時計を共同で製作してきた。シーマはムーブメントの設計が天才的だと現代の時計職人に評価されるヴィンテージブランドのひとつであり、ラウル・パジェス(Raúl Pagès)氏が自身の最初の時計であるソバリー・オニキスを制作する際、同ブランドのムーブメントをインスピレーションとして挙げたことは無視できない。

A Cyma chronometer

 この時計はシーマのCal.216を搭載している。このムーブメント自体はラウル・パジェス氏の現代的な作品に直接影響を与えたものではないが、クロノメーター認定を受けており、コート・ド・ジュネーブ仕上げと販売者の写真から推測するに精密なアングラージュが施されているようだ。文字盤側もまた目を引く特徴を備えている。クロスヘアのディテール、ローズゴールドトーンのアワーマーカー、そして“シリンジ”スタイルの針が目を引く。この針について、私はその形状から“スカイスクレーパー(高層ビル)針”と呼ぶのが好きだが、あまり一般的ではないようだ。

A Cyma chronometer

 販売者であるArrow Of Timeはパリに拠点を置き、このシーマを非常に手ごろな2750ユーロ(日本円で約44万5000円)で出品している。詳細はこちらから確認できる。

オメガ コンステレーション ブレゲ数字 1970年代
an Omega Constellation

 eBayへの復帰を記念しておすすめの時計を紹介すると約束したが、こちらがその1本だ。この1970年代のオメガ コンステレーションは、先に紹介したシーマと同様にクロノメーター認定を受けている。しかし1970年代にはオメガが多くのコンステレーションモデルを製作し、そのほぼすべて、または大半を認定に出していたためにこの点はあまり重要ではない。この時代にオメガは膨大な数の時計を製造しており、とりわけコンステレーションには多くのバリエーションが存在した。1952年に最初のコンステレーションを発表して以来、オメガはこのモデルのブランド力を活かし、数十年にわたって積極的にラインナップを拡充してきた。1970年代にはコンステレーションは特定の金ケースと“パイ・パン”文字盤を備えたモデルを指すのではなく、オメガが提供するプレミアムなシンプルウォッチを象徴する名前へと変化していった。

 このモデルはステンレススティール(SS)ケースであるが、エッグシェルホワイトの文字盤とブレゲ数字がその存在感を一層引き立てている。オメガが当時このようなブレゲ数字を用いることはあまりなく、コンステレーションでは特に珍しい特徴となっている。HODINKEE Shopのヴィンテージチームに在籍していたころを思い返すと、ブレゲ数字を備えたヴィンテージのオメガがいくつか手元に来たことがあったが、通常はこのような“ワークホース”(実用性重視)のモデルで品質もさほど高くなかった記憶がある。

an Omega Constellation

 このオメガを出品しているのは、イリノイ州ホームウッドのeBay販売者である(ちなみに、私の故郷の隣町だ)。オークションは12月15日(日)午後1時4分(東部標準時、日本では12月16日の午前3時4分)に終了している。詳細はこちらで確認してほしい。

ユニバーサル・ジュネーブ コンパー30 クロノグラフ Ref.12429 1930年代
A Universal chronograph

 このユニバーサル・ジュネーブのコンパー30は、ブランドの再始動を控えるなかますます市場で見つけるのが難しくなっているヴィンテージUG(ユニバーサル・ジュネーブ)のカテゴリーに属する時計だ。私の考察ではブライトリングによる再始動がヴィンテージUGウォッチの“価値”にどのような影響を与えるのか見極めようと、コレクターたちが市場での良質なユニバーサルの出品を控えているように感じる。それはさておき、この時計は素晴らしい1本だ。直径36mmの18Kイエローゴールド(YG)製ケースに加え、美しいが少し経年変化の見られるツートーン文字盤を持つ。この文字盤のエイジングは個人的には非常に魅力的だと感じる。参考までに、パテックのようなブランドでこのような真のヴィンテージツートーン文字盤を探そうとすれば、少なくとも5万ドル、場合によっては10万ドルを超える価格になるだろう。これこそがUG(ユニバーサル・ジュネーブ)の強みであり、ヴィンテージ時計の黄金時代のルックをビッグブランドたちと比べてはるかに手ごろな価格で提供してくれる。

 ケースはユニバーサル・ジュネーブのソリッドゴールド製クロノグラフケースの供給元として知られる、Jung & Filsによって製造されている。この会社はジャガー・ルクルトや他ブランドのケースも手がけていた。ケース側面の大きなスクエアプッシャーが特徴的で、非常に興味深いことに下向きでやや小振りなラグが採用されている。このラグデザインは1930年代において36mm径という“大きめ”の時計をデザインする際の工夫を反映したものであり、着用時に時計を“小さく”感じさせる役割を果たしている。また3時位置のインダイヤルにある、3分、6分、9分部分の延長されたマーカーが特にお気に入りだ。これはかつて電話が3分ごとに課金されていた時代の名残を表したデザインである。ケースバックのシリアルナンバーからは、この時計は1938年から1941年のあいだに製造されたことがわかる。

A Universal chronograph

 ニューヨークのeBay販売者がこのユニバーサルを出品しており、オークションは12月19日(木)午後11時5分(東部標準時、日本では12月20日の午後1時5分)に終了する予定だ。現在、入札価格は865ドル(日本円で約13万3000円)に達している。詳細と写真はこちらで確認してほしい。