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Bring a Loupe フィリップ・デュフォーのデュアリティ、ゼニスのCal.135 クロノメーター、そして一風変わった1920年代のカルティエ

今週もヴィンテージウォッチに焦点を当てるHODINKEEの当コラムで、さまざまな時計を紹介していこう。

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Bring A Loupeへようこそ。現在ウェブ上で販売されているなかでも最高で興味深く、ときに奇妙さも覚える時計のセレクションを今週も紹介する。

 先週の記事を振り返ると、カバーしておくべき結果がたくさんある。ボナムズに出品されたカルティエのシャッターパースウォッチは、1000ドルから2000ドル(日本円で約14万5000~29万円)の想定落札価格であったものの、結果的に1万1520ドル(日本円で約164万円)で落札された。これは市場のカルティエに対する熱狂を再確認させてくれるものである。そして次に、クリスティーズでのヴァシュロン “トゥール・ド・リル” は6479.34ドル(日本円で約92万円)で売却され、グッドウィルのベンラスは1445ドル(日本円で約20万5000円)、eBayに出品されたヘルマン・ホルマンのミモは731.77ドル(日本円で約10万円)で落札された。最後に、ジョーンズ&ホーランのアバクロンビー&フィッチ ツインタイムは来週の木曜日、10月10日の午前11時(東部標準時、日本では11日の午前1時)に終了予定であり、現在の入札額は2400ドル(日本円で約34万円)である。

 さあ、今週のピックアップを見ていこう!

フィリップ・デュフォー デュアリティ プラチナ製 34mm
A Durfour Duality

 当コラムを「インターネット上で販売されている最高の時計」のまとめとして紹介している以上、フィリップ・デュフォーのデュアリティを無視したまま進めるわけにはいかない。デュアリティがいかに重要で特別な時計であるかをひと言で表現するのは難しい。そこでベン・クライマーにこの時計が時計業界にとってどれほど意味があるかについて1文を求めたところ、彼は「むしろ5文ほど挙げたい」と言った。ベンの言葉を借りれば、「デュアリティが最初のダブルバランスホイール搭載の腕時計であるという事実は、その存在が極めて希少であることに比べればほぼ注釈に過ぎない。そして希少性を超えて、デュアリティはデュフォーのなかのデュフォーと呼べる時計で、複雑機構、仕上げ、デザインのすべてが揃っており、シンプリシティはその名のとおりシンプルさを表現している。デュアリティはデュフォー作品が持つすべての優れた点を34mmのケースにまとめている。もしあの時代のどの時計でも選べるとしたら、間違いなくデュアリティを選ぶだろう」。

 ますますの混乱を極めるこの分野においても、フィリップ・デュフォー(Philippe Dufour)は多くの人にとって最も重要な“現代”の独立時計師と考えられている。デュアリティがなければレジェップ・レジェピのCCIやCCII、あるいはサイモン・ブレットなども存在しなかったかもしれないという議論がある。この時計は一種の起源と呼べる存在であり、それこそが特別たる所以なのである。優れた仕上げと美しい美学に加え、歴史的にも重要なのだ。

A Dufour Duality

 11月にフィリップスがデュアリティのユニークピースをオークションに出す予定であることも重要なポイントだ。デュフォーのユニークピース自体はまったく別のカテゴリーに属するが、ここで少し比較してみたい。デュフォーコレクターの一部には、A Collected Manで提供されているこの時計を狙っている人々もいるだろう。彼らにとっては、“本物の”デュアリティはオリジナルの生産期間に作られたものであり、それ以外は後から依頼によって作られた“その他”と見なされる。ACMの個体は1999年末から2000年初めにかけて製造されたものである一方、フィリップスで競売にかけられる予定の時計は2014年に製造されたものである。このような非常に細かい差だが、この市場のバイヤーからすると大きな違いになることがある。

 A Collected Manのリスティング全体をぜひチェックして欲しい。価格は141万5000ポンド(日本円で約2億7000万円)だ。現時点でデュアリティが最後にオークションにかけられたのは昨年6月のフィリップスが最後で、シリアルナンバー3が総額205万6500ドル(日本円で約2億9000万円)で落札された。

ロレックス オイスターパーペチュアル デイトジャスト Ref.1601 レッドジャスパーダイヤル、1971年製
A Rolex Red Jasper dial

 ストーンダイヤルのロレックス デイデイトやデイトジャストはここ数年で“トレンド”となっており、日々このニッチな分野に対する関心が増してきているように見える。さまざまな種類の石やその色彩は、写真でも手首の上でも非常に映える。というのも、私たちはこれらのモデル(デイデイトやデイトジャスト)をもっと自然でシンプルなダイヤルで見ることに慣れているからだ。通常は無地のシャンパンカラーやシルバーダイヤルを合わせている時計だからこそ、ストーンダイヤルは特に目を引く。このようなモデルでは、カラフルなストーンはより興味をそそる。その魅力はすべて(陳腐な表現かもしれないが)、とても自然なものだ。

 ロレックスのストーンダイヤルにはランクがある。確かにオニキスダイヤルの深い黒はクールだが、正直なところ比較的ありふれたものだ。加えてラピスラズリについても同じことが言える。もちろんこれはすべて相対的な評価であり、これらが“ありきたり”であると示唆されるのには少々舌を巻いている。しかし、レッドジャスパーダイヤルと比較すると、オニキスやラピスのバリエーションはそこまで大したものではないと断言できる。私がこのストーンダイヤルを目にしたのは昨年11月のジュネーブオークションの直前で、約1年前のことであった。それ以前には同ダイヤルを見たことがなかったほど希少なものである。当時ディーラーやオークションハウスは3本、10本、または12本の個体が市場に存在すると推定していた。実際のところ、これらが実際いくつ存在するかは誰も知らない。もちろんロレックスが教えてくれない限りはだが(しかしこの1年間で2、3本を市場で見るようになった)。

 これまでのところレッドジャスパーダイヤルはデイトジャストのケースでのみ発見されており、デイデイトには見られていない。一部の人々はロレックスが使用するほかの石に比べてこの石が壊れやすく、大振りな曜日表示窓を切り抜くことに対する懸念があったのではないかと推測しているが、実際のところはわからない。このダイヤル自体はイエローゴールド(YG)製デイトジャストのケースのなかで非常に美しく見える。赤のトーンは深く、仕上げは写真で見る限りかなりマットな印象だ。時計が希少であっても魅力的でなければ意味がないが、ここではその魅力について疑いの余地はない。

 売主であるアーキウォッチのリチャード(Richard、いい名前だ)が提供するこのレッドジャスパーダイヤルのロレックス デイトジャストの価格は6万4900ユーロ(日本円で約1030万円)である。こちらからチェックして欲しい。

ゼニス クロノメーター Cal.135、1945年製
A Zenith Cal. 135

 ゼニスは時計界で最も華々しい天文台クロノメーターコンクールの記録を持つブランドのひとつである。総計で2330のクロノメーター賞を獲得しており、特に1950年から1954年にかけては5年連続でヌーシャテル天文台クロノメーター賞を受賞するという前人未到の記録を打ち立てた。この快挙を支えたのがCal.135であり、この30mm径のキャリバーは驚異的な精度と腕時計部門での受賞を目指して設計された。実際、2330の賞のうち230はこのCal.135によるものだ。このムーブメントは時計製造の歴史上、ほかのどのムーブメントよりも多くの天文台クロノメーター賞を獲得している。2022年にはゼニスとカリ・ヴティライネン(Kari Voutilainen)、フィリップスのコラボレーションでデッドストックのCal.135を10個レストア。カリとそのチームによって手作業で装飾されたうえで38mm径のプラチナケースに収められ、カリのダイヤル制作工房・コンブレマイン(Comblémine)製ギヨシェダイヤルで仕上げられた。それぞれの価格は13万2900スイスフラン(日本円で約2250万円)で10本の限定版はすぐに完売し、11本目は唯一チャリティーのために31万5000スイスフラン(日本円で約5300万円)で売却された。

 これら現代的におけるコラボレーション事例を考慮すると、ヴィンテージのゼニスは間違いなくお買い得である。このクロノメーター認定がなされた35mm径のヴィンテージウォッチは、eBayにて4000ドル未満で掲載されている。そして、この時計のコンディションも申し分なさそうだ。ゼニスのヘリテージ部門に対して簡単かつ非公式な確認を依頼したところ了承が得られ、シリアルナンバーから1954年製であることも確認された。

A Zenith Cal. 135

 北マイアミビーチのeBayの出品者がこのゼニスを“即購入価格”3999ドル(日本円で約57万円)でリストしており、オファーを出すことも可能である。出品詳細はこちらから確認して欲しい。

カルティエのレクタンギュラーウォッチ、1920年代製
A 1920s Cartier

 ヴィンテージカルティエを評価する流れはまだまだ続いているようだ。毎週Bring A Loupeをまとめる際に、何かしら興味深いカルティエの時計が出てくる。今回紹介する時計はロンドンのオークションハウスで出品されており、友人に聞いたところレビューはまちまちであるが、希少なものだ。出品情報では1920年代と記載されており、私の見立てでは製造は1920年代半ばから後期と推定されるので記載の情報はほぼ正確である。この個体は奇妙な存在であり、この時期のカルティエの多くの時計にはまだモデル名がなく、現在タンク ノルマルとして知られているモデルでさえまだそう呼ばれてはいなかった。ブランドは宝飾品の観点から時計製造に取り組んでおり、顧客の要望に応じたさまざまな形状とサイズの時計を作っていたのだ。

 個人的に、このカルティエの来歴は興味深い。なぜなら1933年に発表されたタンク バスキュラントの前身のように思えるからだ。ケース全体の形状やムーブメントは現在より認知が高まり、収集対象として評価されているバスキュラントと非常に似ている。このモデルが何と呼ばれていたにせよ、バスキュラントのデザインに大きな影響を与えたのではないかという強い疑念を抱いている。

A 1920s Cartier

 同時期のその他多くのカルティエの時計と同様に、状態や各パーツのオリジナリティを確実に言い切るのは難しい。出品情報の説明文を読んだ限りではケースとムーブメントのシリアルは一致していると思われ、これは非常に重要なポイントである。一方、ダイヤルのオリジナリティに関しては判断を保留する。実物を手に取って見るか、それを確認した人と話をする必要がある。

 この“プレ・バスキュラント”カルティエの腕時計は、ハットンガーデンオークションズが開催する“PRESTIGE WATCH & LUXURY DIAMONDS + VARIOUS UNCLAIMED SAFE DEPOSIT CONTENTS AUCTION”のロット5Bである。記事公開時点で、入札は5000ポンド(日本円で約97万円)に達していた。

ホイヤー モンツァ Ref.150.501、1970年代製
A Heuer Monza

 ホイヤー モンツァは、自動巻きクロノグラフのCal.11およびその後継機の開発に伴うブランドカタログの拡充期にあたる1970年代後期に登場したモデルである。すでにご存じのとおり、このムーブメントを初めて搭載したホイヤーの時計であるモナコは1969年に発表されている。しかしモンツァのように、ホイヤーの歴史のなかには埋もれてしまったモデルもあった。モンツァはモナコの技術を取り入れ、さまざまな外観と形状の自動巻きクロノグラフウォッチを統合した結果生まれた時計である。このほかにも、忘れ去られた1970年代後期のモデルをいくつか見てみるといい。ホイヤー コルティナの名前を聞いたことがあるだろうか? ジャルマは? ホイヤーのデイトナはどうだろう? このなかでは、モンツァはとりわけ私のお気に入りである。

 eBayで出品されているこの個体は、黒いコーティングが施されたケースに少し使用感はあるが大きなダメージはなく、ダイヤルや針の夜光に美しいパティーナがあるなど状態は良好である。ボックスと保証書が付属しているのはいいが、以前の所有者が保証書にメモを書いているのはいささか残念だ。リーガルパッドやポストイットなどはなかったのだろうか?

 カリフォルニア州レドンドビーチの出品者がこのモンツァをオークションに出しており、終了は9月28日(土)午後7時42分(東部標準時、すでに終了)である。この記事が公開された時点で入札は1075ドル(日本円で約15万円)に達していた。出品詳細はこちらから確認して欲しい。

ルガンのクロノグラフウォッチ(ギャレットのマルチクロン45がベースか?)、1960年代製
A LeGant

 もしこの名前にピンときていないなら、少し付き合ってほしい。ルガン(LeGant)はモンゴメリー・ワード社のインハウスブランドであり、同社は20世紀中ごろにおける最大級のカタログビジネスおよびデパートメントストア企業のひとつであった。シカゴ出身としては、ルガンのヴィンテージウォッチ界隈での立ち位置には非常に興味をそそられる。モンゴメリー・ワードは当時非常に巨大な企業で、その創業者であるアーロン・モンゴメリー・ワード(Aaron Montgomery Ward)はシカゴの街の形成のうえで大きな役割を果たした。興味がある人のために簡単に説明すると、大都市の成長期において、ワードはシカゴの湖岸を私有地として切り分けられることを強く否定し、“湖岸の番犬”というニックネームを得た。今日、シカゴの大部分が公有の湖岸として保たれているのはワードのおかげであり、シカゴの街で最も素晴らしい場所となっている。

 時計の話に戻ろう。モンゴメリー・ワード社はシーズンごとのカタログを通じて最高品質の時計を提供するために、スイスの時計ブランドと提携していた。ルガンという名前は“エレガント"という言葉にかけたもので、カタログの顧客に対してこれらの時計を高級で洗練されたものとして位置付ける狙いがあった。以前ゼニス製のルガン クロノグラフを見かけたことがあるが、今回のものはギャレットが製造したものと思われる。というのもマルチクロン45に非常によく似ているからである。

 さらにおもしろいことに、eBay上のこの出品情報には私好みの間違いが含まれている。出品者は商品名に“Le gant watch Men's Watch Needs Battery As Is(ルガン 時計 メンズ 時計 要電池交換)”と記してが、この時計に必要なのは電池交換ではなく、むしろ巻き上げかオーバーホールであると確信している。何が必要であれ、これは救済する価値がある時計だ。さらにヴィンテージのビーズ・オブ・ライスブレスレットが装着されているように見えるのも魅力的である。

 出品者はeBayでこのルガンをオークションにかけており、終了は9月29日(日)午後8時23分(東部標準時、日本では30日の午前10時23分)だ。現在の入札額は驚きの117.5ドル(日本円で約1万7000円)である。出品情報はこちらから確認して欲しい。

おまけ:奇妙な“コレクターズ”ウォッチであふれかえるオークション

 これはHODINKEE Slack、そこでのミネソタ出身のマット・トンプソン(Matt Thompson)からの情報だ。ミネソタ州エデンプレイリーに拠点を置くオークションハウスが、非常にマイナーなブランドやプロモーション用のクォーツウォッチを大量に販売している。入札の締め切りは9月29日(日)午後8時(東部標準時、日本では30日の午前10時)である。これについて私から特に言うことはないが、カタログを1度閲覧してみて欲しい。