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“ゴールデンブリッジ”や“コインウォッチ”などのモデルで知られるスイスの時計ブランド、コルムが、経営陣による買収(マネジメント・バイアウト)によって再びスイス資本へと戻ることとなった。ラ・ショー・ド・フォンを拠点とするこの創業70年のブランドは、インターナショナルセールス ディレクターのハソ・メフメドヴィッチ(Haso Mehmedovic)氏を中心とする経営陣と投資家グループによよって、2013年から所有していた香港上場企業シティチャンプ・ウオッチ・アンド・ジュエリー・グループから買収された。
時計師としての訓練を受け、約15年間にわたりコルムでキャリアを積んできたメフメドヴィッチ氏は、今回の買収により新会社のCEO兼会長に就任する。新たなコルムは2026年半ばのブランド再始動を計画している。新CEOである彼がこの事業の筆頭株主となり、彼を支えるのは、金融およびラグジュアリー業界に精通した2名のスイス人投資家たちであるという。
かつて最先端のデザインと高度な時計技術の革新で知られたこの歴史あるブランドは、スイス人経営陣のもとで新たな販売およびマーケティング戦略を構築し、コルムをかつてのハイエンドブランドの地位へと復権させることを目指していると、メフメドヴィッチ氏はインタビューで語った。32歳の彼はブランド再始動の際には「新作で驚かせたい」と意気込みを見せている。今回の売却は売上の低迷と財務赤字を受けたものであり、香港証券取引所に提出されたシティチャンプの開示資料によれば、旧オーナーがブランドの将来性に見切りをつけたことがうかがえる。
1955年にラ・ショー・ド・フォンで創業したコルムは、独創的なデザイン、個性的なケース形状、ムーブメント構造で注目を集めた。代表作にはリニア・ワインディング式のムーブメントをシースルーバックから眺められるゴールデンブリッジ、大きな拡大レンズ付きのクリスタルが印象的なバブル、潮の満ち引きやムーンフェイズ、潮流を示すアドミラルなどがある。また、20ドル硬貨をそのままケースに使用したコインウォッチは、ニクソン、レーガン、クリントンといった歴代のアメリカ大統領たちや、アーティストでポップカルチャーの象徴であるアンディ・ウォーホルにも愛用されてきた。かつてはロールス・ロイスのグリルを文字盤にあしらったユニークな時計も製作したことがある。
コルム “ゴールデンブリッジ”のムーブメント。
新たなオーナーたちは、ブランドを“創造性と革新”の原点に立ち返らせると語っている。現在の生産本数は年間約3000本で、かつての生産規模と比べるとわずかなものだが、今後は日本、中東、アメリカといった主要市場を強化・集約しながら、販売網の再構築を図るという。
ハソ・メフメドヴィッチ氏。
スイスの新聞、ル・タン(Le Temps)によれば、シティチャンプは2013年にコルムを買収した際に8600万スイスフラン(当時のレートで約91億1600万円)を支払い、さらに数百万スイスフラン規模の関連負債も引き受けたとされる。香港証券取引所に上場する同社はコルムのほかにエテルナやドレファス・グループの時計資産も保有しており、最新の年次報告書では2024年のこれらの時計ブランドによる税引後収益が1億5500万香港ドル(当時のレートで約28億6750万円)で、前年の2億1800万香港ドル(当時のレートで38億1500万円)から大幅に減少したと報告されている。2024年には時計資産全体で約9000万香港ドル(当時のレートで約16億6500万円)の損失を計上している。
シティチャンプによれば、2024年の中国および香港へのスイス製時計の輸出が2桁の割合で減少したことがコルムにとって大きな打撃となったという。同社の年次報告書では「変化する消費者ニーズへの対応が遅れた」ことも課題として挙げられていた。
これらの状況を受けて同社はコスト削減と業務の効率化を実施するとともに、本数を絞って高価格帯のモデルに注力する方針へと転換したとしている。
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