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Four + One アンドレア・パルメジャーニは、イタリアのコレクションスタイルに新鮮さをもたらす

最も影響力のあるディーラーの息子は、過去に思いを馳せながら独自の収集スタイルを確立しつつある。

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アンドレア・パルメジャーニ(Andrea Parmegiani)氏は自信に満ちたコレクターだ。世界で最も尊敬される時計ディーラーのひとり、ダヴィデ・パルメジャーニ(Davide Parmegiani)氏の24歳の息子であるアンドレア氏は、内気で臆病で、父親の時計業界での数十年の歴史に対して過度に気配りをすることさえあった。アンドレア氏は日頃一緒に仕事をしている大物コレクターたちに敬意を払いながら、父の好みの真似をするのではなく、父とともに働き、父親が共同会長を務めるモナコ・レジェンド・グループという小さなチームの一員として、希少な時計を発掘しながら独自の収集スタイルを確立してきた。

 確かにふたりの親密な関係はアンドレア・パルメジャーニ氏の見解を形成するのに役立ったが、しばらくSNSで彼をフォローしているうちに、私はパルメジャーニ氏のセンスとコレクションを彼独特のものとして楽しむようになった。情熱と深い知識というイタリア市場をより若々しくとらえたものだが、“ブルックリン・ブリッジ”の文字盤、ダイヤモンドベゼル、そしてニューヨークで初めて会ったときに彼が身につけていた、ダイヤモンドインデックスを備えたロレックスのプラチナ デイデイト Ref.1804のように、宝石がセットされたものも多い。

Andrea Parmegiani

 世界屈指のコレクターに囲まれ、またそのコレクターから学んできた彼が、自分だけの時計、より深い意味を持つ時計、そして父親から学んだ教訓など、どのような嗜好を持っているのかに興味が湧いた。

 「時計は移り変わるもので、常に自分のためのベストを持っているとは限りません」とパルメジャーニ氏は私に語った。「いい金融ビジネスでもないし、顧客にとっても最高のものを独り占めしていると思われるのはよくありません。だから愛着を持ちすぎてはいけません。特にいい顧客があなたのつけているものを本当に気に入ってくれたのならなおさらです。しかし同時にまだ珍しいものや、もしかしたら顧客にあまり人気のないものを見つけたり、自分の時計を楽しむための空間を見つけたりすることもできます」


彼の4本
ロレックス GMTマスターII Ref.116758 SARU

 パルメジャーニ氏といえば、ジェムセットされた時計を思い浮かべる。彼が光り輝くものに夢中になっていた子どもだったせいかもしれないが、彼はすぐにGMTマスターII SARU(サファイアとルビー、そしてもちろんダイヤモンドを使用)と、その類似モデルをプロとして目にするようになった。

Rolex gold GMT with Diamonds and Sapphires

 「父が持っていた時計の在庫を初めて調べた日のことを覚えています。私はすぐにすべてのSARUに魅了されました」と話す。「彼はホワイトゴールド、イエローゴールドといったすべての金属にノーマルとフルパヴェといったすべての文字盤の組み合わせ、そしてブラックストーン、ルビー、サファイア、ダイヤモンドといったすべての宝石を揃えていました。クオリティ、多様性、ケースワークをすべて目の当たりにして、私はすぐにSARUに惚れ込みました」

 その愛情の一端はジェムセットされたGMTが、彼がこれまでに見た豪華な宝石で覆われた作品よりも控え目に見えたからだ(彼はそれもつけるが)。「もっと繊細でした」と同氏。「あまりに出来過ぎた話でした」

GMT Master SA

 ただしこのバリエーションは、フルパヴェダイヤルにブルーサファイアとダイヤモンドベゼル、およびダイヤモンドラグを使用しているが、一般的に採用されるダイヤモンドパヴェのセンターリンクブレスレットを備えていない希少なモデルだ。そしてそれは彼から離れていこうとした。それは父親が教えてくれた教訓のひとつ、ごくまれな例を除いて、物事を独り占めしてはいけないという事実によるものだ。

 「SARUコレクションの時計は売らないで欲しいと父に懇願していました」と話す。「でも時間が経つにつれ、彼は売り始めました。それはビジネスの内にすぎません。ひとりが去り、またひとりが去り、そしてまたひとりが去っていきました。ケースなかには私がいちばん気に入ったこの時計を含めて3、4本の時計が残っていました。彼がそれを顧客に持っていく準備をしながら書類をチェックしていたとき、私の祖父の名前を見つけました。その瞬間、彼は宝石商をしていた祖父が、この時計をロレックスから直接新品で購入したことに気づいたのです」

 そしてこの時計は一家に残ることとなり、現在はアンドレア氏が世話をしている。

Rolex GMT SA diamonds
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ヴァシュロン・コンスタンタン ピンクゴールド製のRef.4072 マルチスケールダイヤル、1947年製

 見本市や蚤の市で時計を漁る価値がないと思っているなら、このヴァシュロン・コンスタンタンを見れば考えが変わるかもしれない。

Early Vacheron chronograph

 「これは一生身につけられる時計です」と言う。「この時計はパルマ(イタリア)の見本市で見つけました。その時、私はダイヤモンド付きのとても素晴らしいオヴェットーネ(ロレックスのバブルバック)を持っていたのですが、この時計とすぐに交換しました」 

 しかし彼が迅速な決断を下すことができたのは、時計そのものだけではなく、ブランドに対する長期にわたる個人的な憧れがあったからだ。「父が持っているすべてのヴァシュロンを見ながら、私はずっとヴァシュロンを愛していましたし、パテックと同じレベルで彼らに感謝してさえいます。私にとってヴァシュロンとパテックは同じ品質であり、過小評価されているだけにすぎません。この時計が100倍希少であることを考えると、同じ価格でオヴェットーネと交換できたことは大きな収穫でした」

 「私は昔からマルチスケールのダイヤルが大好きでした」と、彼はダイヤル中央にある巻貝のようなタキメーターと、外側に二重の脈動と呼吸のトラックを備えたスケールについて語った。「昔からヴィンテージクロノグラフが好きで、特に40年代から50年代のものが好きです。特に運転中にクロノグラフ機能を使うのが好きなので、タキメーターは私にとってとても重要です。その点において、これは完璧ではないかもしれないですが、それでもこれに出合えたことは非常に特別なことだったと思います」

Vacheron Chronograph
Vacheron Chronograph

 パルメジャーニ氏は「クロノグラフはかなり使い込まれていて、作動させるためには非常にソフトなプッシュが必要です」と話す。「しかし全体的には驚くほどコンディションがよく、ブレスレットにつけても素晴らしいものでした」

 「ブレスレットは後から作ったんです。すべてのヴィンテージウォッチについて、私は完璧なブレスレットを装着した姿を頭のなかに思い描きます。今のところあまりストラップは好きではありませんが、このブレスレットがあれば、この時計は本当に何かを得ることができると思います。この時計にぴったりのブレスレットを探しましたが、これが第1候補ではありませんでした。むしろヴァシュロンのブレスレットを見つけたかったですが、最終的にこのハニカム状の伸縮性のあるブレスレットを見つけ、そして私の腕になじんだのです」

アスプレイ デイトナ By バンフォード ウォッチデパートメント

 ここにあまり見かけない時計がある。我々は2012年に、この時計の発表を報じている。ブラックコーティングされたケースに、パープルのポール・ニューマンダイヤルという組み合わせのこのロレックス デイトナはアスプレイ用にカスタムされたもので、ジョージ自身が顧客の要望やコラボレーションに合わせてロレックスやそのほかの時計をカスタマイズしていたバンフォード初期のころの時計である。実際に手にしてみると驚かされるものであり、わずか12本しか製造されていないという信じられないほど希少な時計である。パルメジャーニ氏によると、これは12本ある内の12番目で、おそらくバンフォードがカスタムした最後のロレックスである可能性が高いという。これを手に入れるために、彼はコレクションのほとんどすべてを手放した。

Rolex Bamford Daytona

 彼は「自分の時計コレクションを作っていたとき、この時計が私のところに来ました」と話す。「そのなかにはブレスレット一体型のパテック Ref.3970も含まれていて、これは私が実際に自分で買った最初の時計でした」

 この時期、彼は思いがけないものに出くわした。「私たちがミラノに赴いていてクローゼットを整理していたところ、アスプレイのボックスが目に入ったのです。父に聞いたら開けるように言われました。“きっと気に入るよ”と彼は言い、それを開けてみたら正気を失いそうになりました」

 実際、ダヴィデ・パルメジャーニ氏はこの時計が発売されたとき、ロンドンを歩いていた際ほかのふたりの友人と一緒にウィンドウでこの時計を見て購入していた。彼は実際に3本セット(サブマリーナーとミルガウスも同じスタイルで作られていた)のすべてを小売店で購入したが、その後それらをしまい込んでしまったという。

Rolex asprey bamford daytona
Rolex asprey bamford daytona

 アンドレア氏はすっかり夢中になり、それまでに買ったすべての時計をすべて集め、この珍しいロレックスとの交換を申し出た。

 「父は当時すでに10万ドル(日本円で約1413万5000円)という大きな査定額をつけていましたが、彼のほうがいい取引をしたと思います。もちろん、父はその3970を売却しました。結局はビジネスなのですが、いまだにあの時計は恋しいです。しかしこれはジョージ・バンフォードとアスプレイが行ったコラボレーションの最後の時計として、信じられないほど特別なものです。バンフォード・デイトナは好きで、何本か所有もしたことがあります。でもこれだけはずっと残しておきたいですね。単なるカスタムウォッチではなく、その裏には大きな意味が秘められています。誰もがスティール製のスタンダードなものではなくこれらを求めていたほど、ロレックスに狂わされた時計であり、その歴史の一部を持つことは特別なことだと思うのです」

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ロレックス “ゼニス” デイトナ Ref.16559 SACO

 クロノグラフ、宝石、そしてこのコレクションの多くを結びつけているロレックスというテーマに沿って、アンドレア・パルメジャーニ氏のコレクションのなかで、最近購入されたものを紹介しよう。また、パルメジャーニ氏がストラップをつけているというルールを破っているが、彼を責めることができるだろうか? ここにあるのは非常に、つまり極めて珍しいロレックス デイトナ Ref.16559 SACOだ。これはサファイア・コニャック(ロレックス流に言えば)であり、時計にセットされた素晴らしいサファイアのことを指す。そして光の加減で変化するピーチカラーのマザー・オブ・パールダイヤルもある。さすがに“余分”だと思うだろうか? アンドレア氏はそれを理解している。

Rolex Daytona SACO

 「ロレックスがこのデイトナのエンドリンクに、ダイヤモンドをあしらったのが気に入りました」と話す。「やりすぎだと思う人もいます。でも私にとっては、時計がいかに自分の好みを反映しているか、そして時計そのものをどう思っているかがとても重要なのです。他人の評価に左右されないようにしています。私は本当につけることを楽しむのがとても好きで、これはとても楽しいものです。これは私にとってお守りのようなものです。身につけていると、強く、自信に満ちあふれ、自分自身に忠実でいられるような気がします」

 この時計には、そもそも彼がなぜジェムセットされた時計を愛するのかということに結びつく、特別な思いがある。

 「祖父が宝石を扱う仕事をしていたこともあって、私はルビー、サファイア、エメラルド、ダイヤモンドといった、宝石に対する魅力を形成していきました。18KWGは、コントラストをつけて石を引き立たせてくれると思いますし、それを見ると彼のことを思い出します」

 最後にもう1度、希少性の話に戻ろう。パルメジャーニ氏によると、ラグのあいだにコニャック・サファイア、ダイヤモンド、コニャックバゲットを組み合わせて製造されたデイトナは6本しかないという。しかしそれ以上に、パルメジャーニ家の友人にこの時計の写真を見せたところ、彼はこのような明るいマザー・オブ・パールダイヤルを持つ時計は2本しか知られていないと言った。オークションの世界で言われているように、 まさに“ほかを探せ”である。


もうひとつ
アストンマーティン V8 ヴァンテージ “X-Pack”

 ヴィンテージであれ新品であれ、パルメジャーニ一家はクルマが大好きだ。オフィスを初めて訪れたときにガレージに停めてあったポルシェ 918スパイダーから、ランボルギーニ・ミウラ、メルセデス・ベンツ 300SL ハードトップ、フェラーリ、そしてそしてモナコF1ホテルのヘアピンを疾走しながら、アンドレア氏がランチに連れて行ってくれた際に乗っていたフィアットジョリー(転倒しないか、私が落ちてしまわないか心配になったほどだ)まで、彼のヨーロッパ車への好みは腕時計と一致する。しかし彼はアメリカンマッスルカーも愛しているので、このアストンマーティン V8 ヴァンテージ “X-Pack”はその両方の長所を表している。

An Aston Martin in a garage

 パルメジャーニ氏は「X-PackはV8 ヴァンテージの最後進化形で、少しパワーが上昇し、フェンダーも広くなっています」と語る。「このクルマは本当に何でもやってくれるから、子供のころからファンだったのです。私はずっとアメリカンマッスルカーが大好きでした。このクルマはまさに本格的なアメリカンマッスルカーではありますが、ブリティッシュスタイルも持ち合わせているので、非常にエレガントで、はるかに上品なものになっています」

 「子供のころ、父はいつもクルマを所有していました。姉が生まれたとき、母は父に“娘が生まれたんだから、そろそろクルマを売って責任を持ちなさい”と言いました。そして私が生まれたとき、父は母に“息子が生まれたからまたクルマを買うときが来たよ”と言ったのです。だから彼は、いつこの1台に乗っていました。もちろん、彼は時計と同じように、よりいいクルマやおもしろいクルマを買うために売ることもありましたが、最終的には私自身がそれを手に入れるときが来たのです」

Aston Martin headlight
Aston Martin interior

 「彼らはかなりの数のクルマを製造したはずです。私の記憶では350台か400台のX-Packが作られたかもしれないですが、よくわかっていません。時計のようにクルマを知らないのは、私の家系はクルマが主な生業ではなかったからです」

 パルメジャーニ氏は、これを家族の歴史を称えるものであると同時に、自分で収集するための安息な空間でもあると考えている。クルマはモナコ・レジェンド・グループが販売する主要アイテムではないため、このX-Packはクライアントが大切にしている多くの時計とは異なり、いつかクライアントから“リクエスト”される可能性は低いものだ。しかし彼はまた、いつか自分のコレクションと呼べるような、もう少し幅広いコレクションを構築できる権利を得たいと望んでいる。

Andrea Parmegiani and an Aston Martin

 「私の父のコレクションには、長い時間をかけて集めた非常にレアな時計がいくつかありますが、父はその権利を得ているのです」と彼は言う。「私はディーラーとして、この場で時間を過ごし続けなければなりません。そして私自身でコネクションを形成し、より多くのお金を稼ぐことで、いつの日か私だけの聖杯を手に入れることができるかもしれません。しかしそれまでは経験を積み、知識を蓄え、自分の仕事でベストを尽くします。たとえそれを手放すことになったとしても、多くのものを見られるということが何より楽しいのです」

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アンドレア・パルメジャーニ氏とモナコ・レジェンド・グループについての詳細は、彼らの公式ウェブサイトをご覧ください。