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Entry Level F.P.ジュルヌの世界への扉を開く、金無垢のクロノメーター・スヴラン ハバナ

我々は価格の上昇とクォーツを避けてハバナに向かう。

『エントリーレベル』企画では、高級時計メーカーのなかで最も手ごろなモデルを紹介する。そうはいっても手ごろではないものもあるが、どんなブランドでも入門機というものがあるのだ。

掲載している定価は2月25日時点のものです。現在、為替レートが非常に不安定なため、掲載価格は予告なく変更される可能性があります。

先日、あるベテランの時計コレクターと、1960年代にロンドンで生産されたカルティエの時計がオークションで高額落札されている話題について話をした。彼の意見に私は驚かされた。

 真の意味で希少で興味深い時計の価値が上がるのは、時宜にかなった動きだと考えているという。数十本しか存在しないといわれるカルティエ ロンドンのクラッシュ ウォッチもそのひとつだ。彼は最後に、クラッシュの価値が急上昇する前に購入できた幸運な人は、“棚ぼた”だったと言い切った。つまり、このコレクターはクラッシュがすぐに暴落するとは考えていないということだ。

A top-down lifestyle image of the FP Journe Chronomètre Souverain Havana propped up on a rock.

 このコレクターの考えは、FP.ジュルヌの時計を取り巻く小売、二次流通市場を理解する上でも当てはまると思う。F.P.ジュルヌの時計は二次流通市場でも価値が高く、特別な個体がオークションに出品されれば、とんでもない高額で取引される。フィリップ・デュフォーを除いて、存命中の時計師のなかでジュルヌほど独立時計師の時計製造に世界的な関心を集める人物は存在しないだろう。これほどまでに注目され続けていることは驚異的ですらある。しかし、その一方で長年の時計愛好家やコレクターのなかには投機家に買い叩かれたと、しかめっ面になる人も少なからずいるようだ。

On the wrist with the FP Journe Chronomètre Souverain Havana

 ブランドとしてのジュルヌは2022年から大幅な値上げを発表したが、これは新年のちょっとしたトレンドになっている。今回の価格改定を受けて、私の友人であるコレクターの考えも変わり、現在のF.P.ジュルヌのカタログに掲載されている最適な“入門機”を棚卸しする時期に来ているのではないかと思ったのだ。その意味でクロノメーター・スヴランは注目する価値のあるモデルなのだ。

 しかしその前に、クロノメーター・スヴラン ハバナとは決定的に違うモデルを確認しておこう。

クロノメーター・ブルーではない

 もしこの記事を2009年から2021年のあいだで書いていたら、クロノメーター・ブルーの話をしていただろう。このモデルは2008年の金融危機によって高級時計の需要が減少したあと、F.P.ジュルヌが開発したエントリーレベルの時計として有名だ。ケースは貴金属ではなくタンタル製で、ムーブメントはクロノメーター・スヴランの通常モデルよりもやや複雑さを抑えたものでった(“ブルー”にはパワーリザーブがない)。また、歩留まりが悪いことで有名な玉虫色のブルーダイヤルを採用し、希望小売価格も当初は2万ドル以下(日本定価は税込で279万3960円)に設定されていた。

The FP Journe Chronomètre Bleu pictured on a picnic clotch

クロノメーター・ブルーは、かつてThreeOn Threeで、2万ドル以下の自社製手巻きドレスウォッチの比較で紹介した。8年のあいだに時代は変わるものだ。

 時代は変わるものだ。2010年代に入ってジュルヌが有名になり、時計への関心が高まるにつれ、クロノメーター・ブルーは世界で最も人気のあるF.P.ジュルヌの時計となった。The Journe Guyを主宰するコレクター、オサマ・センディ(Osama Sendi)氏によると、クロノメーター・ブルーの年間生産数は2019年まで年産約190本で、その後約100本にまで減少したという(注釈:F.P.ジュルヌは年産1000本を超えたことがない)。

The famous reflective blue dial of the Chronomètre Bleu
A close up of the famous reflective blue dial of the Chronomètre Bleu

 高い関心と生産量の少なさから、二次流通市場は伸長しており、クロノメーター・ブルーは過去12ヵ月間、常にプラスマイナス10万ドル規模の価格で推移している。2022年の価格改定の一環として、F.P.ジュルヌはクロノメーター・ブルーの希望小売価格を3万7400ドル(税込で480万8800円)に引き上げた。これは、この時計の需要や製造に必要な工数と時間を反映した大幅な値上げである。

エレガントでしょ?

 F.P.ジュルヌの入り口としてよく挙げられるのは、2014年に突如発表され、その後(これも突然だが)特にこの2年間で需要と価値が急上昇した超クールなクォーツウォッチ、エレガント(Élégante)だ。

A wrist shot of a woman wearing the FP Journe Élégante

エレガントがデビューした後の、2014年のジュルヌ本人へのインタビューもお見逃しなく。

 2次流通市場の貴重な情報源であるChrono24は最近、5万ドル以上を安定して売り上げていることから、F.P.ジュルヌ のエレガント 48mmを「2022に投資するべき時計トップ5」にラインクインさせている。登場した当初、エレガントは1万3000ドル程度だった。2022年の値上げにより、このコレクションはエレガント 40mmが1万4500ドル(185万9000円)、エレガント 48mmが1万6700ドル(214万5000円)からとなった。もちろん、希望小売価格(ともに税込)で見つけられたらの話だが。 

Three FP Journe Élégante examples lined up next to each other.

 考えてみてほしい。現代のクォーツウォッチで、数万ドルの値段がつくだけでなく、2次流通市場に出回ると何倍にも価値が上がるような例をほかに思いつくだろうか? クォーツの分野では、数万ドル規模の価格で取引されているロレックス オイスタークォーツのヴィンテージモデルくらいしか思いつかない。

正解はクロノメーター・スヴラン ハバナだ

 確かにクロノメーター・ブルーやエレガントコレクションの定価は、クロノメーター・スヴラン ハバナよりも手ごろだ。しかし最近のブルーの価格高騰を受けて、スヴラン ハバナはブルーダイヤルのタンタルに比べて、プレシャスメタルケースにもかかわらず“たった”2600ドル分高価なだけである。

A FP Journe Chronomètre Souverain Havana tilted diagonally on its side.

 エレガントは内部に電気機械式のムーブメントを搭載しているため、クロノメーター・スヴランとは単純に比較できないと私は考えている。もちろん私はエレガントを高く評価しているし、ぜひ所有したいと思っているが、クロノメーター・スヴランとエレガントの購買層は重ならない。また、後者は最近公表されているとおり、在庫を確保するのが難しいため、私はクロノメーター・スヴランこそが現在、F.P.ジュルヌにおける入門機の称号にふさわしいと思うのである。

 誤解しないでいただきたいのだが、この金額でもまだまだ高額なことに変わりはない。そして、クロノメーター・スヴラン ハバナが、クロノメーター・ブルーやエレガントよりも定価で簡単に手に入ると約束するつもりはない。だが、理論的にはそうなるはずだ。

On the wrist with the FP Journe Chronomètre Souverain Havana.

 私が知っているのは、クロノメーター・スヴランがもっと注目されるべき時計であるということだ。発売された2005年にはメンズウォッチ賞を受賞しており、F.P.ジュルヌが時計師として大切にしていることを最もシンプルかつ直接的に表現していると広く評価されているからだ。だからこそ、ジュルヌ本人もプラチナケースの個体をメンターであり伝説の時計師である、故ジョージ・ダニエルズ氏に2010年に寄贈したのだろう。

 クロノメーター・スヴランは、スモールセコンド、パワーリザーブインジケーター、そしてクロノメーターの性能を最大限に引き出すために設計された手巻きムーブメントを搭載した3針時計である。一方、ハバナは2017年に通常モデルとして登場したもので、私が想像する限り、金無垢の時計を最も控えめに表現したモデルである。

A caseback shot of the FP Journe Chronomètre Souverain Havana that highlights the caliber 1304 inside.

 ケースは6N(グリーン)ゴールド製だが、ライトブラウンダイヤルはF.P.ジュルヌの関連企業であるレ・カドリア・ド・ジュネーブ(Les Cadraniers de Genève)が、ゴールドとルテニウムをブレンドした独特なタバコブラウンの色調を実現している。クロノメーター・スヴランの内部には、2004年以降に製造されたすべてのモデルと同様、ブリッジと地板が18Kローズゴールドで作られた手巻きムーブメントのCal.1304が組み込まれている。ケース、ダイヤル、そしてムーブメントと、どこを見てもゴールドで統一されていていながら、派手さは抑えられている。

 私がジュルヌを“エントリーレベル”の企画で取り上げたいと思ったいくつかの理由のうち、いずれも生産量の少ない約4万ドル以上の金無垢の腕時計を“入門機”と表現して、読者を苛立たせるつもりは毛頭ないと誓っておきたい。この企画の目的は、特定のブランドへの入門機を明らかにし、時計メーカーが提供する最高の体験を享受するのに、必ずしも最も人気のあるモデルや最も高価なモデルを選ぶ必要はないことを示すことにあるのだ。

A three-quarter lifestyle image of the FP Journe Chronomètre Souverain Havana propped up on a rock.

 このことは、カルティエが今オークションで高値をつけているのが、時計の真の価値を反映した、待ち望んでいた市場の神の見えざる手によるものだという考えを打ち明けた、先述のコレクターの話を私に思い出させる。だからといって、クロノメーター・ブルーが一部の業者が提示している数十万ドルの価格に見合わないと言いたいわけではない。私は二次流通市場での価格は徐々に安定していくと確信しているが、それが10万ドルを超えるか超えないかはわからない。

 将来がどうであれ、今の事実は変わらない。F.P.ジュルヌは、本人が会社の顔として現役で活躍している生きた伝説である。彼は40年間(1982年に最初の懐中時計を発表してから数えて)、時計製造のビジョンを微調整しながら取り組んできた。彼の本格的なアプローチがようやく実を結んだと言っても不思議ではない。たとえそれが、私が個人的に時計を購入することが日に日に遠ざかっていくことを意味するとしても。

 しかし、私が自分の予算内で、今F.P.ジュルヌの現行モデルを購入するなら、6Nゴールド製、レザーストラップのクロノメーター・スヴラン ハバナ(税込509万800円)がイチ押しだと思っている。

撮影:ティファニー・ウェイド(Tiffany Wade)

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ジュルヌの詳細については公式サイトまで