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Business News パテック フィリップとロレックスの価格が急騰、インフレ率は40年ぶりの高水準に

買い貯めしていた時計は、もう少し待ったほうがいいかもしれません。

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私が住んでいるマンションでは、居住者ポータルサイトがあり、近隣住民にメッセージを投稿することができるようになっている。その内容は、不要な家具の売却から犬の散歩の際のおすすめまで、多岐にわたる。ところが数週間前、私の受信トレイにかなり慌てた内容のポストが届いた。件名は、「賃貸の更新料がパンデミック前よりさらに高騰しているが、皆さんどうされているか」というもので、本文より長かった。その後に、「今パニックになっているのは私だけだろうか」という短い、しかしインパクトのある文章が続いていた。

 間違いなく、この2年間は奇妙な日々だった。COVID-19の影響は計り知れない。家賃の問題であれ、私たち自身の気持ちであれ、サプライチェーン、製造業、小売業、外食産業、映画館...などなど、二次的、三次的な影響を及ぼしているのである。ロレックスがパンデミックの影響に伴って、自社工場を一時閉鎖せざるを得なかったというニュースを覚えているだろうか(記事「ロレックスがコロナウイルスの影響を受けスイスの工場を一時閉鎖」)。クラウンでさえも無縁ではなかったのだ。

Rolex HQ

 しかし、私の匿名の隣人からのメッセージは、パンデミックの進行中の第四次的な余波を示している。昨年(2021年)は、1982年以来最も高いインフレ率(7%)を記録した。この「ニューノーマル」の影響を受ける新たな年を迎えるにあたり、ある種の雪だるま式効果が起き始めている。

 毎年、時計の値段が上がっていく。これは当たり前のことであり、高校の経済学の授業で習ったインフレという現実の一部でもある。その結果、物価の上昇を考慮して毎年給料が上がる幸運な人たちもいる。これは俗に、生活費の増加として知られている。高級時計は、どんな指標でも、どこでも、生活費の一部として考慮されることはない。

Rolex Submariner on wrist

 それに対して、高級時計は憧れの存在だ。インターネットで気に入った時計の写真を何時間も眺め、ブティックの店員を困らせるかのように何度も試着に行く(スティール製のロレックス、パテック、オーデマ ピゲを除く)。預金の中身をチェックするのも、ここまでいけば買うことができるという目安があるからだ。さて、皆さん、雪だるまはインディ・ジョーンズとの玉石混交になってしまった。

 値上げが時計業界をかつてないほど大きく直撃している。ウブロのリカルド・グアダルーペ(Ricardo Guadalupe)CEOは、Bloombergのインタビューのなかで、サプライヤーが10〜15%の値上げを実施したため、すべての時計の値上げを行う予定であると述べた。

 本日、パテック フィリップのウェブサイト全体が更新され、2022年の新価格も発表されたが、その上昇幅は実にさまざまだ。インフレ率の低い方では、5270J、パテックの金無垢のグランドコンプリケーションが17万6240ドルから18万2150ドル(日本円では2104万3000円)へ、これは3.4%の上昇を表していることがわかる。ジョン・メイヤーとキーガン・アレンが愛用するアクアノート トラベルタイム 5164Aは、3万9030ドルから4万810ドル(471万9000円)へと4.6%上昇した。

Aquanaut Travel Time from Patek Philippe on wrist with a Leica

 7%という数字に迫ったのは、パテックのエントリーモデルであるスティール製のアクアノートのラバーストラップ仕様で、現在2万3070ドル(約6.6%・267万3000円)と、以前より1420ドルの値上がりを記録している。また、ホワイトゴールドの5168Gは、4万3760ドル(476万3000円)から4万7310ドル(546万7000円)へと8%の値上げとなり、インフレの境界線を越えることになった。そして、本当に希少なノーチラスでも人気モデルである5726/1Aは、5万270ドルから5万4410ドル(629万2000円)へと8.1%の上昇を見せた。

White gold Aquanaut, green dial, green strap, on wrist

 しかし、グアダルーペCEOが二桁の数字を口にしたのは、時計業者だけの話ではないようだ。実際、ロレックスも、最も人気のあるモデルの価格を驚異的な割合で引き上げた。ここでは10%以上の数字を話している。

 ひたすら下を目指すのがベストである。憧れのサブマリーナーは、ノンデイト仕様で、希望小売価格8100ドルから8950ドル(99万円)へと10.5%上昇。スティール製のオイスタースチールブレスレットが再登場したGMTマスターIIは、9500ドルから1万550ドル(116万6000円)と11%上昇。これがピークかと思いきや、そうではない。昨年発売されたばかりの36mmエクスプローラーは、6450ドルから7200ドル(79万3100円)へと11.6%の値上げとなった。

Rolex Submariner on wrist

 今頃になって、「欲しくても手に入らないスティールウォッチの値上げの話をされた」とお思いではないだろうか。ロレックスやパテック フィリップのスティール製スポーツウォッチに関しては、あらゆる意味で需要が供給を大幅に上回っていることは、よく知られていることであり、ロレックス自身によって確認されていることでもある(記事「ロレックスがついに製品不足について声明を発表 - 陰謀論は存在しない」参照)。コメント欄で「本当の値段はグレーマーケット価格だ」とか「こんな時計は誰も買えない」といった指摘が殺到する前に、クリアにしておきたいことがある。ブティックでこれらの時計を見つけられないのは、ショーケースに並ぶ前に買われていくからだ。そう、そこにいる誰かがこれらの小売価格を払って購入しているのだ。それも多くの人たちが。だから、私たちにとっては品薄なのである。

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 では、なぜこのような価格になっているのか、考えてみよう。正直なところ、既知の外部要因を考慮すれば、推測するのが精一杯だ。昨年はサプライチェーンが壊滅的な打撃を受けた。ただでさえ難しい時計を顧客の手元に届けるという作業が、さらに難しくなった。2021年のスイスフランと米ドルの為替レートは、最低で1.0593ドル、最高で1.1387ドルで、インフレ率(実際は7.5%とやや高め)と同じように推移していることも確認できる。米ドルの価値が下がっているため、スイスの時計は米国内の人々にとって(日本にとってはなおさら)より高価なものとなっている。

 そして、あの記録的なインフレ率だ。私は経済学者ではなく、このウェブサイトで経済学者を演じているだけだが、ここに見られるものの多くは、このインフレに直接起因するものだ。ロレックス、パテック、そしてウブロのようなメーカーは、自分たちの生活水準を維持し、これらの時計をこれ以上滞りなく生産し続けるために、自社の従業員の給料を上げなければならなかったことは容易に推測できるだろう。それに加えて、マーケティング、技術、輸送、経営陣の給与などのコストがかかる。しかし、この7%という数字には、ふたつめのしわ寄せが来ている。インフレ率は絶えず、しかも急速に変化しているのだ。Bloombergのレポートによると、11月から12月のあいだだけで、インフレ率は0.5%上昇した(2020年全体では1.2%になる)。

Patek Philippe Aquanaut Travel Time

 あとどれくらい物価が上がるかはわからないが(なにしろ未曾有の時代だ)、ひとつだけ確かなことがある。給料の上昇や材料費の高騰は、ブランド側でもとに戻すことはできないし、どうしようもないということ。しかし、多くの場合、その最終価格は、私たちの想像をはるかに超えるものなのだ。

 貯金箱を憧れの時計貯金で満タンにし続けるなかで、目先のこの流れに目を向けよという教訓だと思う。来年はこんなに値上がりはしないと思うが、絶対にないとは言い切れない今日この頃だ。

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正規価格については、ロレックスパテック フィリップウブロの公式サイトをご覧ください。

ウブロはLVMHグループの一員です。LVMH Luxury Venturesは最近HODINKEEの少数株主となりましたが、私たちは編集上の完全な独立性を維持しています。