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Auctions 2021年ジュネーブ・オークション・ウィークに関する5つの予測

大きな数字が予想されるときに期待するもの。

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深夜のフライトでスイスへ向かっている。国際便に乗るのは2019年6月以来だ。我々のボスがジュネーブ・ウォッチ・オークションに参加するために、スイスフランで200万ドルの裏金を貸してくれたのだ。もちろん冗談だ。(とはいえ、もし裕福な後援者で私のVenmoアカウントを知りたい方がいたら、ご一報いただきたい)

 オークションは、私にとって特別なものだ。6年ほど前に私が時計の世界に足を踏み入れた当時、クリスティーズの展示会に行くことは何百もの、奇妙な、興味深い、希少な、そして重要な時計を一度に経験することができる最高の方法の一つだとわかった。私の知識は、大学生のころにインターンをしていた小さな時計雑誌のために書くような新作時計に限られていた。私がプレビューに行ったのは、最近になって発掘されたポール・ニューマン デイトナを調べるためではなく、私がまだその存在さえ知らない風変わりなもの、興味深い時計を見に行くためだった。そうした経験は今日に至るまで私の時計の好みに影響を与えた。私は独立系や一風変わったもの、ランダムなもの、イレギュラーな時計が大好きなのだ。

 私がジュネーブでの主要なオークションに参加するのは今回が初めてだ。11月6日にクリスティーズが主催するオンリーウォッチ、11月5日と7日にフィリップスのジュネーブ・ウォッチ・オークション XIV、11月8日にクリスティーズのレアウォッチズに参加する。毎年11月のジュネーブのオークションシーズンは、本格的なコレクターにとってもオークションハウスにとっても、そして業界ウォッチャーにとっても1年で最も重要な週である。そこは翌年のトレンドが見えはじめるところであり、また本当にとんでもない時計(価格面でも)が登場する場所でもある。

 私がジュネーブ・オークション・ウィークを取材するのは今回が初めていうこともあり、まずはこの週について論じ、またこの数日間で私が予想または期待する5つの事柄について簡単に紹介したいと思う。みなさんの予想や夢をコメントでお寄せいただきたい。


市場は減速しない

バブルなの? 談合? 希少だから? フォーラムやInstagramには、こうした質問が何千件も投稿されている。確かなのは高級時計に対する需要がかつてないほど高まっているということで、特に超高級時計の市場においてなおさらである。

 6桁台(数10万ドル)の時計を純粋に投資目的で買っているのか、その時計が好きで買っているのかはわからない。本当に私にはわからない。私とは住む世界が違うのだ。確実に言えるのは2020年と2021年はこれまでとは違うということだ。さまざまな理由で価格が高騰している。パテック フィリップ、ロレックス、F.P.ジュルヌ、カルティエ、オーデマ ピゲ。かつては掘り出し物と見なされていた可能性のある大手ブランドの時計は、少なくとも主要レーベルのオークションシーンでは、とっくに枯渇してしまっている。

 しかし、近いうちに価格が大幅に下落するとは思えない。市場全体でコレクターの信頼を揺るがすような理由が必要だ。ここ数日のうちに何か重大なニュースでもない限り、私は信頼が揺るぐようなことはないと思う。

 ジュネーブ・オークション・ウィークでは通常、高い値が付くため、多くの本格的なコレクターにとっては初めての対面式オークションということもあり、なかにはいつものごとく困惑するほどの高値で落札するものもあると思う。

 必要なのは2人の裕福なコレクターが同じ時計を競い合い、ライブオークションに特有の相手の一歩先を行くプロセスを楽しむことだけである。

注目すべきロット

ロレックス デイデイト ステンレススティール製、ジュネーブ・ウォッチ・オークション XIV、Lot 52、落札予想価格5万〜10万スイスフラン(約625万〜1250万円)

ロレックス ディープシー スペシャル No.1、クリスティーズ レア ウォッチズ、Lot 33、落札予想価格200万〜400万スイスフラン(約2億5000万〜5億円)

フィリップ・デュフォー グラン プチ ソヌリ ナンバー1、イエローゴールド製、第14回フィリップス ジュネーブ ウォッチ オークション、Lot 14、100万〜200万スイスフラン(約1億2500万〜2億5000万円)

パテック フィリップ Ref. 2499、ジュネーブ・ウォッチ・オークション XIV、Lot 63、200万〜400万スイスフラン(約2億5000万〜5億円)

ロレックス デイデイト Ref. 18058、ジュネーブ・ウォッチ・オークション XIV、Lot 114、15万〜30万スイスフラン(約1875万〜3750万円)

パテック フィリップ Ref. 2497、ジュネーブ・ウォッチ・オークション XIV、Lot 122、150万〜300万スイスフラン(約1億8750万〜3億7500万円)

ロレックス Ref.6062、ジュネーブ・ウォッチ・オークション XIV、Lot 178、60万〜120万スイスフラン(約7500万〜1億5000万円)

パテック フィリップ Ref. 2523、クリスティーズ レアウォッチズ、Lot 88、100万〜300万スイスフラン(約1億2500万〜3億7500万円)

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独立系ブランドの市場はリアルタイムで成熟する

数年前までは、F.P.ジュルヌがオークションで6桁(数十万ドル)の価格で売られることは希だった。今や6桁に達しないなどというのはむしろ驚きである。ジュルヌのほかにも、いくつかの独立系ブランドへの関心が高まり、二次市場での価格が高騰している。アクリヴィア(Akrivia)/レジェップ・レジェピ(Rexhep Rexhepi)、フィリップ・デュフォー、ドゥ・べトゥーン(De Bethune)、ロジャー・スミス(Roger Smith)、ウルベルク(Urwerk)などもその一例である。

 ただし、大手ブランドだけが好調というわけはではない。最近、いくつかの独立系ブランドと話したところ、誰も需要に追いついていないようである。以前は活発な顧客ベースを見つけるのに苦労していた多くの会社に対し、何年分も前倒しで注文が寄せられている。独立系ブランドの時計づくりを愛する者としては、この分野で熱気が高まっているのを見るのはとてもエキサイティングなことだ。そして、今が彼らの時計づくりが最も熱い時期であり、オンリーウォッチとジュネーブ・ウォッチ・オークション XIVでは、とてつもなく高い価格に達するものもあるだろうと私は予想している。

 今年のフィリップスに出品されている独立系ブランドのいくつかを見てよう。パスカル・コヨン(Pascal Coyon)、クリスチャン・クリングス(Christian Klings)、トーマス・プレシャー(Thomas Prescher)。これらは我々がいつも目にしている名前ではない。私はフィリップスがこれらのメーカーを選んだことは戦略的だと考えている。独立系の時計づくりに飢えている人々の前に、(ほぼ)新しい名前を提示しているのだ。近々、これら4社のいずれかに人気が集中することになるかもしれない。

 それと同時に、オンリーウォッチは今後も独立系ブランドのマーケットメーカーとしての存在感を高めていくだろう。オンリーウォッチに多くの独立系ブランドが出品しているのには理由がある。もし独立系ブランドがオンリーウォッチでその落札予想価格を超えれば、その後全商品の価格帯を上向きにシフトすることができるからだ。

注目すべきロット

アクリヴィア クロノメーター コンテンポラン Ⅱ、オンリーウォッチ、Lot 1、7万〜10万スイスフラン(約875万〜1250万円)

F.P. ジュルヌ×フランシス・フォード・コッポラ FFC ブルー、オンリーウォッチ、Lot 22、30万〜40万スイスフラン(約3750万〜5000万円)

ドゥ・べトゥーン×カリ・ヴティライネン カインド オブ マジック、オンリーウォッチ、Lot 21、20万〜25万スイスフラン(約2500万〜3125万円)

MB&F HM10 パンダ、オンリーウォッチ、Lot 38、10万〜15万スイスフラン(約1250万〜1875万円)

H. モーザー ストリームライナー・シリンドリカル トゥールビヨン、オンリーウォッチ、Lot 26、6万〜8万スイスフラン(約750万〜1000万円)


パスカル・コヨン オブザバトリー クロノメーター、ジュネーブ・ウォッチ・オークション XIV、Lot 82、4000〜8000スイスフラン(約50万〜100万円)

クリスチャン・クリングス Ref. N°7、ジュネーブ・ウォッチ・オークション XIV、Lot 118、2万〜4万スイスフラン(約250万〜500万円)

デレク・プラット for ウルバン・ヤーゲンセン ポケットウォッチ、ジュネーブ・ウォッチ・オークション XIV、Lot 193、10万〜15万スイスフラン(約1250万〜1875万円)

トーマス・プレシャー イーグル オートマトン、ジュネーブ・ウォッチ・オークション XIV、Lot 195、1万〜2万スイスフラン(約125万〜250万円)


現行モデルにわずかな価格修正が見られる

さて、昨年のフィリップスではちょっとした波乱があった。ロレックスの現行モデルに誰もがまったく理解できないような驚異的な値が付いたのだ(おそらくバイヤーは例外かもしれないが、私は当時でさえ半信半疑だった)。

異論を覚悟で言うと、ロレックスのSS製スポーツウォッチの現行モデルが、昨年のような高値を記録することはないだろうと思う。

 人々からは躊躇なく非難の声が上がり、その不可解な結果が議論された。舞台裏で怪しいことが行われていたと思うかって? そうは思わない。オークション会場ではつい夢中になりやすいと思う。もしあなたがオークションで複数の時計を購入する大富豪なら、新品のサブマリーナの1本をほかの希少な時計と一緒に引き渡しに含めてみてはどうだろうか?

 昨年は生産ノルマを達成するのが非常に困難だった。その後、状況はわずかに良くなってきているため、ロレックスやパテック フィリップの現行モデルは現在の市場価値まで修正されると思う。これはもちろん、すでに小売価格を上回っている。

注目すべきロット

ロレックス、パテック フィリップ、オーデマ・ピゲ、F.P.ジュルヌがここ2年間に制作したすべてのもの。

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予想外の独立系がオンリーウォッチで健闘する

2019年の前回のオンリーウォッチの後、今年はF.P.ジュルヌとレジェップ・レジェピ/アクリヴィアに注目が集まっている。いずれの独立系ブランドも有力な製品を発売している。ジュルヌはフランシス・フォード・コッポラとのコラボレーション(詳細は別の記事で!)、一方、レジェピは2018年にスーパースターの地位に上り詰めるきっかけとなったRRCC-01の第2世代となるRRCC-02の初版を発表している。どちらの時計も100万ドル(約1億1400万円)を突破しても不思議ではない。

 ジュルヌとレジェピの価格高騰はオンリーウォッチで売りに出されているほかの独立系ブランドの時計の価値も高めるだろう。また、興味深い時計がたくさんある。独立系ブランドは通常、オンリーウォッチに全力を投入する。それは彼らにとって1年で最も注目度の高いイベントであり、注文を増やすのに役立つからである。

 まだジュルヌやレジェピのレベルには達していないが、注目すべき暫定的なプレーヤーが何社かある。ウルべルク、H.モーザー、MB&F、チャペック(Czapek)、そしてカリ・ヴティライネン(Kari Voutilianen)とドゥ・べトゥーンのコラボレーションは、いずれも以前の落札予想価格を上回るものになると思われる。

 ただし、今回のオンリーウォッチでは、私はコンスタンチン・チャイキン(Konstantin Chaykin)にとても注目している。チャイキンはジョーカーに代表される Wrist Monsシリーズの独特な魅力によって最近注目度を高めているが、彼の作品は決して笑い事ではない。今年の初め、彼は私にジョーカーの成功により、超複雑時計の制作により多くの時間を費やすことができるようになったと語ったが、今年の初めに我々が見た火星の時間を表示するマーズ・コンカラーにその一端を見ることができる。

 オンリーウォッチでチャイキンは世界初のマーシャン トゥールビヨンを発表しているが、これは火星での1分間の経過に相当する61.65秒ごとに1回転する。私は非常に魅力的だと思うし、まさにオンリーウォッチで本格的なファンを見つけることも可能な種類の時計だと思う。ここは目新しさが本当に重視される場だからだ。

注目すべきロット

物事は馬鹿げた方向に

「モンティ・パイソン・アンド・ザ・ホーリー・グレイル」の印象的なシーンのひとつに、アーサー王(グレアム・チャップマン/Graham Chapmanが演じる)が部下を率いてキャメロット城に向かうが、途中で部下を方向転換させ「やっぱりキャメロット城に行くのはやめよう。あそこはバカらしい場所だ」と言う場面がある。

 この瞬間はジュネーブのオークションシーンに対する私の気持ちを表すのに最も適した方法だと思う。高級時計の世界で起きていることの多くがそうであるように、この集まりには不条理さを感じる

 誤解しないで欲しいが、そこには真剣な男女が大勢いて巨額のお金が湯水のように使われている。ただ、それもちょっと馬鹿げているのではないだろうか。

2本のロレックス ディープシー スペシャルが1つの週末に。これもありか?

 私は、どこかの時点でこのとんでもない事態の推移をじっくりと見守ることができればと思っている。多分、11月8日のクリスティーズのレアウォッチズのオークションでオープニングを飾る16本のモダンなロレックスのスポーツウォッチのオークションの最中にでも。あるいは、オンリーウォッチでバルチックのモノプッシャー ユニークピースがインターネット上のマイクロブランドとしてはオークション記録を達成するであろうと私は確信しているのだが、恐らくその後にでも。

注目すべきロット

バカバカしさに限界はない。

オンリーウォッチクリスティーズフィリップスで、オークションカタログの全文を読むことができる。