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毎年恒例のジュネーブ時計グランプリ(Grand Prix d'Horlogerie de Genève)は、時計界のアカデミー賞と呼ばれている。そして、オスカーと同じように、たくさんの議論が交わされるのだ。今年のショーは幕を閉じ、大賞のエギュイユ・ドールを含む全18部門が決定・発表されたところである。
ジュネーブからの生中継で、毎年恒例の授賞式と今年の受賞者のすべてをご紹介する。
GPHGとは?
ジュネーブ時計グランプリは、2001年以来、ジュネーブ州とジュネーブ市が監督する財団法人として運営されてきた。2011年には、正式に公益法人として認定されている。
毎年11月には、財団が主催するGPHG受賞セレモニーが開催され、各部門の受賞者が発表される。2021年版では、エントリーするすべての時計が2020年5月以降、遅くとも2021年10月末までに商品化されていることが条件となっている。世界のどの時計メーカーも、各カテゴリに1点に限定され、合計7点までの時計を応募することができる。
GPHGの賞(特に金の針大賞"Aiguille d'Or")は、受賞者にとって、ブランドの重要なマーケティングツールとなる。GPHGは、多くの時計愛好家にとって、成功のバロメーターとして認識されているのだ。
腕時計の勝敗を決めるのは誰?
よくご存知の名前もたくさん並んでいるでしょう(私は選ばれなかったが、ベンとジャックは入っている)。アカデミーは、メディアや小売店、コレクターやディーラーなど、時計界の多様な声を代表して選ばれる。すべてのエントリーが確認されると、GPHGアカデミー全体で投票を行い、各カテゴリーで6本のショートリストまで絞り込まれる。
最終的には、11月の授賞式の数日前のジュネーブで、小規模な審査員たちによって公証人の立会いのもと、非公開な会議と投票が行われる。大規模なアカデミーメンバーによる再度の投票が行われ、最終的な集計では公式審査員の投票よりも重みが軽くなるよう設定されている。GPHGの投票方法については、こちらをご覧あれ。
私のお気に入りの時計/ブランドが掲載されていないのはなぜ?
基本的に、このアワードに参加することを望んでいないからというのが理由だ。GPHGは慈善事業ではない。応募するブランドは700ドルを前払いすることになっており、最終選考に残った場合は、さらに6000ドルを支払うことになっている。また、GPHGが毎年行っているイベント前の巡回展示のための旅費と警備費も負担しなければならない。
GPHGアカデミーは時計を推薦することができるが、ブランドが推薦を受け入れた場合、上記の料金が発生する。このショーはブランド側からの任意参加であるため、多くの時計メーカーは参加しないことを選択している。今年は、ロレックス、パテック フィリップ、F.P.ジュルヌ、そしてスウォッチグループのブランドが参加していないことに注目を。
GPHGは重要なの?
イエスであり、ノーでもある。
GPHGは業界を一つにまとめる素晴らしいツールであり、幸運なブランドはその年の終わりに特別な羽飾りを手に入れることができる。しかし、アカデミー賞やグラミー賞のようにGPHGは完璧ではない。時計のテイストは主観的なものであることは、HODINKEEのコメント欄をご覧になった方ならおわかりいただけると思う。
ジュネーブの会場テアトル・デュ・レマンで受賞者がまだその功績に酔いしれるなか、誰が受賞したのか、そして受賞者の感想をご紹介する。
金の針大賞(Aiguille d'Or)
受賞者: ブルガリ オクト フィニッシモ パーペチュアル カレンダー
クイックインプレ: ブルガリのこの受賞は、イタリア生まれのブランドとしては初めて金の針大賞を獲得したこととなる。オクト フィニッシモは、薄さに関する7つもの世界記録を達成し、GPHG審査員のあいだでもファンが多く、これまでにメンズウォッチ賞、クロノグラフ賞、クロノメーター賞を受賞してきた。しかし今日、オクト フィニッシモは、まったく新しいレベルに到達した。ファブリツィオ・ボナマッサ氏とジャン-クリストフ・ババン氏は、ブルガリの時計製造の新しい次元を確立し、実現するための過去10年間の多大な努力の結果、この賞を受け取るために出席したのだ。おめでとう、ブルガリ。
レディスウォッチ賞 (Ladies')
受賞者: ピアジェ ライムライト ガラ プレシャス レインボー
クイックインプレ: まず第一に、この時計はゴージャスで、ピアジェのデザイン美学を見事に表現している。絶対に受賞に値する作品だと思う。しかし、1970年代にインスパイアされた1000万円超えの時計は、現代の女性コレクターを代表するものだろうか? そして、もっと一般的なことを言えば、私たちは皆、時計のジェンダー化からまだ脱却していないのだろうか? 優れた時計は、優れた時計として受賞すべきなのだと思う。
レディス・コンプリケーションウォッチ賞(Ladies' Complication)
受賞者: ヴァン クリーフ&アーペル レディ フェアリー ウォッチ
クイックインプレ: ヴァン クリーフは歴史的にこの部門を支配してきた。実際、この部門の9年の歴史のなかで、同社は4回受賞を果たしている。これは打率5割近い数字だ。私は、ヴァン クリーフの時計としてよく知られる妖精のモチーフを使って挑戦し続けていることが大好きだ。新たに受賞したレディ フェアリー ウォッチももちろんそうだ。
メンズウォッチ賞 (Men's)
受賞者: グランドセイコー ヘリテージコレクション SLGH005
クイックインプレ: ハレルヤ! グランドセイコーは、2014年以来、史上2度めとなるGPHG賞を受賞した。そしてそれは、ハイビートのSLGH005で、これ以上ないふさわしいものとなった。このモデルは、新型脱進機を備えた通常生産モデル(!)で、日本の白樺の樹皮からインスピレーションを得たゴージャスな文字盤が特徴だ。正直なところ、この時計が受賞していなかったら、この賞を真剣に受け止めることはできなかっただろう。
アーティスティック・クラフト・ウォッチ賞 (Artistic Crafts)
受賞者: MB&F × エディ・ジャケ LM スプリットエスケープメント
クイックインプレ: ジュール・ヴェルヌからのインスピレーション、チェック。非常に豪華なダイヤルのエングレービング、これもチェック。本機は、MB&Fがいかに友人やパートナーシップを大切にしているかを示す好例だ。そうそう、この時計はノミネートされたなかで唯一、製品名に職人の名前(エディ・ジャケ)が入っている。あとは、文字盤をルーペで数時間じっくり観察したいところだ。
メンズ・コンプリケーションウォッチ賞 (Men's Complication)
受賞者: MB&F LMX チタン
クイックインプレ: マックス・ブッサー氏が「アーティスティック・クラフト」賞を受賞した直後、彼はステージに再び呼び戻され、レガシー・マシーンの10周年を記念して発表された、非常に印象的なMB&F LMX チタンでメンズ・コンプリケーション賞を受賞した。マックス氏とそのチームにとって素晴らしい夜となった。また、今朝、彼とのTalking Watchesを発表した私たちにとっても、非常にラッキーな偶然だった。
アイコニックウォッチ賞 (Iconic)
受賞者: オーデマ ピゲ ロイヤル オーク 15202PT "ジャンボ"
クイックインプレ: ロイヤル オークだからね、当然"アイコニック"だ。たとえこのカテゴリが現在の形式ではあまり意味をなさないとしても。
もし、この時計が相応しくないと思うなら、今年の初めにベンが書いたエッセイを紹介しておこう。「オーデマ ピゲ ロイヤル オーク "ジャンボ" についての考察 - 新しいプラチナモデルをなぜ誰も好きと言おうとしないのか?」
トゥールビヨンウォッチ賞(Tourbillon)
受賞者: ドゥ・べトゥーン DB Kind of Two Tourbillon
クイックインプレ: 1つの価格で2つの時計? これはいい。しかし、真面目な話、「Kind Of Two」はデュアルフェイスの時計に新しい風を吹き込んだ。片面にはトゥールビヨン用の開口部を備えた時刻表示があり、もう片面には伝統的な3針表示がある。片面はフレキシブルに、もう片面はより控えめなシーンに。今回の受賞は、ドゥ・ベトゥーンにとって素晴らしい1年の締めくくりとなった。
カレンダー&天文時計賞(Calendar & Astronomy)
受賞者: クリスチャン・ヴァン・ダー・クラウ CVDK プラネタリウム エルス エルジンガ
クイックインプレ: クリスチャン・ヴァン・ダー・クラウは、この時計を"世界最小の機械式天動説プラネタリウム"と称している。私は彼らの言葉を信じよう。同社は一般的に過小評価されがちだが、GPHG審査員たちが彼らの仕事を評価しているのは素晴らしいことだ。
メカニカル・イクセプション賞(Mechanical Exception)
受賞者: ピアジェ アルティプラノ アルティメート・オートマティック
クイックインプレ: これって、昨年に金の針賞を受賞したばかりじゃない? 違う? 似たような時計では? オーケイ(記事「ピアジェ アルティプラノ アルティメート・コンセプトがGPHG2020で金の針賞を受賞」参照)。
とはいえ、これは非常に素晴らしい時計であり、祝福に値する偉業だ。この愛を業界全体で共有したいと思う。
クロノグラフウォッチ賞(Chronograph)
受賞者: ゼニス クロノマスター スポーツ
クイックインプレ: 他の候補者に失礼かもしれないが、私はこのモデルがクロノグラフ部門の唯一の候補であると考えていた。アイコンであるエル・プリメロに新しい、実際に新鮮な解釈を加えたものだって? ああ、そのとおり。ゼニスがGPHGのクロノグラフ部門で優勝したことがなかったというのは信じられないことだ。これは当然のことであり、ゼニスの驚異的な1年に素晴らしいプライズをもたらした。ジュリアン・トルナーレCEOは、1960年代後半にオリジナルのエル・プリメロ・クロノグラフムーブメントの開発に携わった人々に感謝する、素晴らしいスピーチを行った。
ダイバーズウォッチ賞(Diver)
受賞者: ルイ・ヴィトン タンブール オトマティック ストリート ダイバー スカイラインブルー
クイックインプレ: 誤解しないで欲しい。タンブール オトマティック ストリート ダイバー スカイラインブルーはクールな時計だ。もし私が、現代的なデザインを好む人々のために作られたコンプレッサーケースの時計に興味があるとしたら? これは素晴らしい選択だと思う。
しかし、オリス アクイス キャリバー400はどうだろう? 私は彼らがこれを受賞すると思っていた。印象的な独自の新ムーブメントに挑戦した独立ブランドに報いることができないのであれば、我々は何をしているのだろうか?
ジュエリーウォッチ賞(Jewelry)
受賞者: ショパール フラワーパワー
クイックインプレ: 私はこの時計を実際に見たことはない。また、私は宝石のセッティングの専門家でもない。でも、確かにきれいだ。実際、ノミネートされたすべての作品がそうだと思う。何よりも、この時計を見ていると、GIA(米国宝石学会)のオンラインコースに今すぐ登録したくなってきた。
小さい針賞(Petite Aiguille)
受賞者: チューダー ブラックベイ セミラック
クイックインプレ: 他の時計が受賞していたらショックだったと思う。フルセラミックケース、自社製ムーブメント、そしてMETASクロノメーター認定だよ? そう、これはチューダーが正当に力を発揮した結果なのだ。
チャレンジウォッチ賞(Challenge)
受賞者: CIGA デザイン Planète Bleue
クイックインプレ: CIGA デザインは中国を拠点とするブランドで、今回の受賞は中国ブランドがGPHG賞を受賞する初めてのケースとなった。近いうちに、この会社の時計を実際に見てみたいと思う。
オーダシティ賞 (Audacity Prize)
受賞者: ルイ・ヴィトン タンブール カルペ・ディエム
この時計が認められたことをとても嬉しく思う。ルイ・ヴィトン タンブール カルペ・ディエムがなぜそれほどまでにクールなのか、あるいはコメント欄でファッションウォッチとして否定しようとしている方は、ジャックが以前に執筆したIn-Depth記事「ルイ・ヴィトン タンブール カルペ・ディエムは執着しすぎないように注意するためのアイテムだ」をお見逃しなく。
イノベーション賞(Innovation Prize)
受賞者: ベルナルド・レデラー セントラル インパルス クロノメーター
クイックインプレ: 私はベルナルド・レデラーを金の針賞のダークホースとして候補に挙げていた。しかし、イノベーション賞は非常に印象的であり、このような真面目で重厚な時計にはふさわしいものだ。今週末にレデラー氏と会い、セントラル・インパルス・クロノメーターを実際に見ることになっているので、その印象を報告したいと思う。
レヴェレイション賞(Revelation Prize)
受賞者: フーラン・マッリ Mr.グレイ Ref. 1041-A
クイックインプレ: この賞は、設立から10年未満のブランドに贈られる賞だ。フーラン・マッリ(Furlan Marri)は、わずか半年前に設立され、古典的な時計のデザインを手頃な価格で提供することで、インターネット上で絶大な支持を得ている。同社の創業者たちは、受賞スピーチのなかで、同社初のスイス製機械式時計を今後6ヵ月以内に発表する予定であることを明らかにした。
審査員特別賞(Special Jury Prize)
受賞者: ドバイ・ウォッチ・ウィーク
クイックインプレ: 審査員特別賞は、正当な理由がある場合に審査員が任意で授与する賞だ。今年は、今月末に開催される「ドバイ・ウォッチ・ウィーク」、特にこの地域の代名詞ともいえる小売チェーン「セディキ&サンズ」に敬意を表して、審査員が決定した。
ベストヤングスチューデント(Best Young Student)
受賞者: ネイサン・ルウ・モラン氏(Nathan Roux Morand)
クイックインプレ: 正直に言うと、私はネイサン・ルウ・モラン氏も彼の作品もよく知らないのだ。でも、それがこの賞の目的ではないだろうか? 若い才能に光を当てること。この数時間で、ネイサン・ルウ・モラン氏のGoogle検索が急増していると思うが、この若者の今後の活躍を期待している。
イベントでの画像はすべて GPHG提供.
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