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Hands-On ブレゲ 新しいタイプ XXとタイプ 20を正しく理解する

パイロットウォッチの定番ラインから生まれた最新作の未来はどうなるのか。日付窓などのディテールを掘り下げて、ブランドが下したデザインの決断を深く理解する。

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Photos by Mark Kauzlarich

史上最もアイコニックな時計のひとつである時計のレガシーを継承していくことは、大いに報われるべきだ。オーデマ ピゲの担当者に、ロイヤル オークで“シングルウォッチブランド”と呼ばれるのはどんな心境なのか聞いてみてほしい。あるいはステンレススティール製ノーチラスの製造を中止(現時点では)したことについて、ティエリー・スターン(Thierry Stern)氏が出したコメントを思い出して欲しい。ただしこれらのコメントはどれも真実ではない。オーデマ ピゲはCODE 11.59にこだわっているし、パテックはほかの分野でも力を発揮しているが、しかしアイコニックウォッチという王冠を戴く者の頭は重いのだ。

The Breguet Type 20 (left, with mint green dial and two registers) and Type XX with three registers

タイプ 20のミリタリーバージョンと、タイプ XXの民生バージョン。

 パイロットウォッチの代表的なモデルであり、目的に合わせてつくられた専用のタイプ 20ほど象徴的な時計はない。だから先週の水曜日に、ブレゲがパリで新型のタイプ XX(およびタイプ 20)を発表したとき、自分たちのやり方、つまり“正しいやり方”でない限り、マニアックな人たちからの評価は厳しいものになるだろうと、誰も驚かなかったはずだ。ブレゲの最高経営責任者であるリオネル・ア・マルカ(Lionel a Marca)氏もそれを予想していた。

 「カレンダーを入れなければ欲しいという人もいたでしょう。みんなを幸せにすることはできないのです」。ア・マルカ氏は発表翌日のインタビューで、デイト機能についてこう語ってくれた。「私たちは21世紀を生きていますが、現在のトレンドを考えるとカレンダーを搭載していない時計は顧客にあまり喜ばれません。 だから今日ではほとんど必須機能になっています。しかし、もし私がオリジナルモデルに正確なレプリカをつくりたかったら、それは自動巻きではなく手巻きだったでしょう」

Type XX on the wrist

 タイプ 20のようなモデルをリリースする際、ブランドが誰に対して責任を負うかについては多くの議論が持ち上がる。(US版の)最初の記事には100以上もの熱烈なコメントが寄せられたが、タイプ 20のような時計を購入するほとんどの人は、そのモデルやブランドの歴史について特に学んでいるわけではなく、さらには時計メディアの読者ですらないことが明らかになった。事実小売業界の多くの人々は、オンライン上のコメントはおそらく売り上げに大きな影響を与えないだろうと話している。その話題に入る前に、タイプ 20とタイプ XX(なおここでは両方について話すとき、タイプ 20/XXと表記することがある)はとてもしっかりとした時計でありながら、いくつかの判断により影が薄くなりつつあると、私は純粋にそう思っているんだと伝えておかなければならない。

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 なお今回リリースした、似たような名前を持つ2本の時計はある意味混乱を招く可能性があり、常に(軍用)と(民生用)のように括弧を使用して名前を明確にする必要がある。まあ私はブレゲが(テイラー用)というサプライズを用意していることを待ち望んでいたのだが。パイロットウォッチの愛好家と、この言葉をすぐに理解してくれた人たちに感謝したい。またル・ブルジェ航空宇宙博物館(Musée de l'Air et de l'Espace du Bourget)に展示されている、オリジナルのタイプ 20/XXのモデルを少しだけ見て、その違いを頭のなかで自動的に切り替えるのに1時間ほど要した。タイプ 20はミリタリースペックの軍用モデル、タイプ XXは民生用モデルとなる。

Breguet Type 20

 ブレゲは当初、タイプ 20の仕様書を受け取ったときすぐにその競争に参加した。ブレゲ家は航空との関わりが深い。1911年にルイ-シャルル・ブレゲ(Louis Charles Breguet)が設立したSociété des Ateliers d'Aviation Louis Bréguet社(ブレゲ・アビエーション社とも呼ばれる)は、航空機製造の一翼を担っていたほどだ。第1次世界大戦に参戦したとき、フランスは120機もの航空機を保有していた。終戦までにルイ・ブレゲの会社は、戦争中に国が生産した5万5000機の航空機と11万基のエンジンの一部を製造する役割を果たしていた。第一次世界大戦の開戦から40年後、ブレゲは、エイラン、ドダーヌ、ヴィクサ、アウリコスタ、マセイ・ティソといった多くの企業とともにタイプ 20(2レジスタークロノグラフ)を製造することでこの争いに加わることになる。これらの企業はすべてタイプ 20の(仕様書の)要求に応えており、なかでも最も重要なのはフライバッククロノグラフであることだった。民生向けには3つのレジスターを持つタイプ XXを生産し、(モデル名称も変えることで)その線引きをなした。

 タイプ XX Ref.3800の製造中止から5年後、ブレゲがシンプルなクロノグラフをひとつだけ発表することはなかったと考えるのが自然である。その5年間はマルカ氏がいうところのモデルを進化させるための前進であり、新しい技術があってもアブラアン-ルイ・ブレゲ(Abraham-Louis Breguet)自身が古い時計をリメイクすることに満足することはなかっただろうと思わせる。

Breguet Type XX dial

 「特にコレクターのあいだでは過去にしがみつきたいという気持ちがあるような気がします」とマルカ氏。「それはブランドのDNAに影響を与える可能性があるために、ブレゲは進化することも新しい機能を導入することさえも許されていないという感覚に近いのでしょう。そして私たちも、時代に合わせてごく自然にブランドを進化させたいと望んでいるからこそ難しいのです」

 「アブラアン-ルイ・ブレゲは革新者であり、アヴァンギャルド主義者でもありました。もし彼が、ほかのブランドがやっていたことをすべてやったとしたら、今のようなブランドの歴史はありません。同じことを続けて、すでに行っている時計を再現し続けるとして、どうして未来に向かって進んでいるといえるのでしょうか?」

 このレンズをとおせば、ブレゲがタイプ 20/XXで行ったステップを少しだけ理解しやすくなる。新しいCal.728と7281のムーブメントは、ブレゲにとって確かに前進といえる。スタート/ストップ/リセットとフライバック機能の各動作はすべて満足のいく操作感であり、最後までバランスよくプッシュすることができる。ほかのクロノグラフにありがちな針ずれ、操作する際の抵抗の大きさなどはなく、クロノグラフの使用目的を間違えたりすることはない。

Breguet Type XX Civilian version movement 728

Ref.2067(民生用)に搭載されたCal.728は、12時間積算計を備えた新ムーブメント。

 それはこの時計の重要な機能につながってくる。フライバック機能は、特にパイロットが計器飛行をする際に使用するパイロットウォッチには欠かせない機能だ。タイプ 20の発表会にいたパイロットから聞いた話によると、計器だけを使って飛行したら外界が見えなかったという悲惨な話を以前聞いたことがあると繰り返し話していた。このような場合は、山などに飛び込まないようにするために地図を用いながら、飛行速度や計算尺で計算をして1秒単位でターンのタイミングを計る必要があるそう。そのような状況にはなりたくないが、新しいタイプ 20/XXのように大きくて読みやすく、信頼性の高いクロノグラフが相棒であれば安心できるだろうということは想像に難くない。

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 いうまでもなく約60時間分のパワーリザーブを完全にテストすることも、長時間の精度を測ることもできなかった。ローターとコラムホイールにはDLCコーティングを施しており、ムーブメントとのコントラストをより際立たせていた。また垂直クラッチを採用したことで、ムーブメントに信頼性と複雑さを加えているほか、ヒゲゼンマイ、ガンギ車、アンクルはすべてシリコン製である。さらにブリッジやクロノグラフは手仕上げで、完全一体型のまったく新しいフライバッククロノグラフムーブメントの一部として、希望小売価格の258万5000円(税込)に見合ったものとなっている。

Breguet Type 20 Military version movement caliber 7281

Ref.2057(軍用)のために、2レジスターを備えた新しいムーブメント、Cal.7281を搭載。一部ローターにより覆われているが、ムーブメントの6時位置、民生用ムーブメントでは積算計があるはずのブリッジから、ふたつの石がなくなっている点に注目だ。

Column wheel and chronograph parts for the Type XX

DLCコーティングを施したコラムホイールをはじめとする、タイプ XX用のクロノグラフパーツ。

 しかしここではっきりとさせておこう。この時計に対する否定的な反応は、ある1カ所に集約される。それは従来日付窓がなかった時計に、美的感覚、市場原理、あるいは実用性などの観点から日付窓を追加したということである。まあ価格もまた論点のひとつだったが、正直いってそれを判断するのは難しい。以前もいったように、期待よりも少し高かったかもしれないがこの価格に衝撃を受けることはなかった。日付窓の話に戻ろう。

 かつては日付のないオリジナルか、あるいは日付のあるタイプ XXの“トランスアトランテック”、Ref.3820(または日付もあるタイプ XXI)を買うという選択肢があった。いずれにしても日付窓は6時位置にありダイヤルのバランスを保っていたために、時計評論家が思うすべての“悪い”と思う部分のなかでも小さいように思えた。日付を入れること自体がピュリストを動揺させるに違いなかったが、ブレゲはここで彼らが最も理想的でないと考えている、4時30分位置への日付窓を選んだのである。

 この日付窓は、窓とミニッツトラックのあいだに白く“Swiss Made”が含まれていることでさらに強調されている。この窓を隠すのにはあまり役立つとはいえないディテールだ。私が思うに、日付窓が抱えている最大の問題は、もともとの軍用仕様に日付が含まれていないことだと思う(また自動巻きでもない。ア・マルカ氏のご指摘のとおりだ)。しかし、もしブランドが2バージョンの時計として発売すると決めていたのであれば、少なくともどちらか片方の日付表示を見送ることができたのではないだろうか。

Date window on the Type 20 Military Version

 発表イベントで何人ものコレクターや小売業者と話をしたが、一般の人たちにとって日付窓は最も好ましくないことが明白だった。私が話を聞いたコレクターたち(ほとんどが自他ともに認める現代ブレゲのコレクター)でさえ、日付窓にはまったく見向きもしなかった。なおある小売店では、24時間以内にすでにいくつかの予約注文が入っていたそうだ。またその小売業者は彼の経験から、ブレゲはある程度裕福なコレクターが、その何倍もの価格で時計を手に入れるための出発点として購入することが多いブランドであるとも話していた。それが全面的に正しいかどうかはわからないが、時計の歴史をより詳細に深く研究する(そして熱狂的な)ファンたちによる、熱心なオンラインコミュニティの一員でなくても、ブレゲあるいは時計全般を好きになれるというのは確かだ。そしてブレゲの市場調査により日付があっても時計が売れるということがわかったため、これはタイプ 20/XXにとって最良の選択だったのだ。

Breguet Type 20

 「残念なことにもしカウンターのなかの6時位置に日付を配置したら、“6”を失っていたかもしれません」とマルカ氏はいう。「不幸なことに、3時だとそこもカウンターの真ん中になっていたでしょう。そこでベストポジションを考えて色々と検討した結果、4と5のあいだにして、4・5・6をキープするようにしました」

 「私たちはパーツも文字盤もすべて持っていますから、オリジナルの時計をつくることはできました。しかしそれは私がやりたかったことではありません。私は時計を複製するのではなく、これまで行ってきたものと似ているけれど、新しいムーブメントを搭載した時計がつくりたかったのです」

Breguet Type XX Civilian Version

 ピュリストのコレクターたちの不満はよく理解できる。2019年と2021年のオンリーウォッチで、ブレゲは彼らが何を求めているか把握していることを示したため、たったひとりのコレクター以外誰も手の届かないモデルがこの世に存在しているというのは不満だろう。しかしそれをマルカ氏が認めてくれたことで、正直なところ、伝統的なコアユーザーをより満足させる時計が将来登場するのではないかと、私は大いに期待している。私も普段は伝統主義者だからだ。ひどく非難される日付窓を乗り越えると、これらの特徴の多くが好きになってくる。

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 タイプ 20の仕様には緑色の光を放つ夜光が塗布されており、そのおかげでミリタリーモデルが好きになったというのが正直なところである(エマニュエル・ブレゲ氏が発表翌日のミーティングでヴィンテージの例を見せてくれたのだ)。各モデルに配されたベゼルの三角マークも含め、短時間の蓄光でかなり明るく輝く。民生バージョンでは、数字に塗布されたクリーミーな夜光はすぐには光らなかったが、私はこの時計と短い時間しか過ごせなかった。クイックチェンジストラップシステムも、間違いなくオリジナルにはないものだが、この価格帯の腕時計にはあってしかるべきであるもうひとつの素晴らしい機能である。

Lume shot of Type XX and Type 20
Quick change system for the straps

クイックチェンジシステムは魅力的だが、愛好家と一般ユーザーとではセールスポイントが異なるかもしれない。

 タイプ 20(軍用)のほうで採用しているグリーンの夜光に最初は抵抗があったのだが、だんだんと好きになっていった。日付窓が問題だったとしても、2レジスタークロノグラフのシンプルなダイヤル配置のおかげで少なからず緩和もされている。ビッグ・アイのデザインと刻みがつけられたフルーテッドの双方向回転ベゼル、さらに(一方の端が細くなった)ペアシェイプドクラウンも、私のなかのヴィンテージポイントを満たしてくれるものだ。

 ブランドの担当者によると、民生バージョンはより消費者をターゲットにしたものと考えているとのことだった。またマルカ氏とのインタビューでも繰り返し述べていることだが、一方のミリタリーバージョンのほうは純粋なコレクターの一部を満足させることを期待しているとのことだ。これは明らかに満足させるのが難しいユーザーである。発表会で話を聞いた、当時軍が支給していた初年式のオリジナルタイプ 20を着用していたコレクターのひとりは、インデックスの長さがおかしいなどいくつか指摘していたが、それでもやはり新型のタイプ 20を両方とも購入すると話していたと記憶している。

Breguet Type XX Crown

タイプ XXの“ストレート”リューズ。

Breguet Type 20 Crown

そしてタイプ 20の“ペアシェイプド”リューズ。

 それからサイズだ。タイプ 20/XXはともに42mm、厚さ14.1mmと、はるかに現代的なサイズであることは導入でお伝えしたかと思う。オリジナルの38.5mmであればもっと満足していた人も多かったとは思うが、ただ42mmサイズは思った以上につけ心地がよくて装着感も悪くなかった。また市場にあるほかの選択肢とかなり近似しているため、たとえそれが私たちの好みの枠にはまらなかったとしても、時計メーカーは自分たちのマーケットや何が売れるのかをよく理解しているのだと思う。

Breguet Type 20

ブレゲ タイプ XXは手首に対して重心がやや高かったが扱いやすい。

Breguet Type XX

 リリースされた製品にはいい面がたくさんあるにもかかわらず、残念ながら多くの人々がブレゲを見限ってしまったようだが、ぜひもう1度チャンスを与えて欲しい。少なくとも、せめて実物は直接見て欲しいと思っている。リオネル・ア・マルカ氏もエマニュエル・ブレゲ氏も、この新しいタイプ 20/XXは新しいことの始まりに過ぎないと言っていた。私はマルカ氏に、新しいムーブメントでつくれる最小の時計は何かと聞いたことがある。

Breguet Type 20

フルーテッドベゼルがいい感じだ。

ペアシェイプドリューズに配されたブレゲの“B”もいい味を出している。

Breguet Type XX Civilian version

 「40です」と、マルカ氏は少し笑いながら答えてくれた。

 そしてエマニュエル・ブレゲ氏も「新しいモデル、伝統、バリエーション、色、形、素材など、まだまだこの先も時間はたっぷりあります」と語った。「これは新しい冒険の始まりにすぎないのです」

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