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In-Depth 時計愛好家がApple Watchに触れて思うこと(大量の写真と共に。2014年執筆)

2014年のApple Watchローンチイベントに参加した唯一の機械式時計のエキスパートとして、それが時計なのか、はたまた別の物体なのかを探った。

果たしてこれを時計と呼んでいいのか、私には自信がない。確かに、それは腕に巻くことができるし、時を告げることもできるが、アップルが発表したばかりのこの時計と、我々がしばしば記事に取り上げ、夢中にもなっている丹念に仕上げられた機械式時計との共通点といえばこれくらいだ。私は幸運にも、アップル本社のあるクパチーノに招待され、直接Apple Watchの発表に接し、私は現時点では高級時計メーカーに対する脅威とはなりえないと確信してはいるものの、Apple Watchは低価格のクォーツ式時計やエントリーレベルの機械式時計を担うメーカーにとっては大きな問題になるだろうと思った。また、将来的には高級時計にとっても大きな脅威となるだろう。

 その理由は? アップルは同程度の価格帯の時計を作るスイスやアジアの大半のブランドよりも、時計の細部を詰め、その積み重ねを強烈な印象を与えるデザインへと結実したからだ。他のデジタル時計が恥ずかしくなるくらい、その機能性は豊富である。しかし、どうしても完璧とはいえない。Apple Watchに対する私の考えを、ある一人の時計ファンの視点として聞いて欲しい。それから、大量の実物の画像も用意した。

編注:本記事は2014年に執筆されたものです。

 私はApple Watchの機能について深堀するつもりはない―それが知りたければ、仲間のケリー・ジャスパーの書いたイントロダクション記事を一読されたい。代わりに、Appleに対して私が正しい、もしくは間違っていると感じたことに焦点を当てたいと思うが、その前提として、このウェアラブルテクノロジーをデジタル周辺機器ではなく、時計としての実用性の観点から評価した。大事なことはスイスの時計メーカーがAppleから何を学ぶべきかであり、その逆もまた然りだからだ。

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Apple Watchの何が素晴らしいのか

質感

 Apple Watchのデザインの完成度の前には、3〜5万円の価格帯の時計―デジタルも機械式も―の全てが吹き飛ばされてしまうほどだ。Apple Watchほど変化に富んだ、細部まで行き届いた仕上げ、高い製造品質に肉薄できるような時計は、この価格帯で存在しないだろう。Sistem51を例にとると、非常にクールで、手ごろな機械式時計ではある。しかし、あくまで150ドルなりの良さなのだ(念のため、私は実際に購入して愛用している)。では、Apple Watchの価格に近い時計を購入することはできるが、それはまあ言ってみれば、これを基準に時計を見ることは率直に言って非常に厳しいものがある。セイコーは素晴らしい時計を3万5000円以下で販売しており、しつこいが、彼らはその販売価格を原価近くまで切り詰めているかと思わせるほどだ。Apple Watchには多くのことが盛り込まれており、それが成功したことは疑う余地がない。いわゆる高級感があるのだ。

仕上げ

 時計全体のデザイン―最もわかりやすいのが、ケースの丸みに沿って取り付けられたスクリーン―実にゴージャスだ。キーノート公演でティム・クックが語ったとおり、ソフトウェアとハードウェアの境界線が見分けられないほどだ。丸みを帯びたエッジは非常にアップルらしく、勘以外の何ものでもないが、Apple Watchと何らかの関係があると私が確信するマーク・ニューソンらしくさえある。なぜか? よく見て欲しい。また、私が2012年にニューソン氏のブランド「アイクポッド」が当時新境地を拓いたと記事で書いたことも思い出して欲しい。私は記事中ベゼルがケースと継ぎ目なく一体化している事実を指摘した。Apple Watchの、纏うようなスクリーンもよく似ている。さらに、Apple Watchスポーツのストラップはどうだろう?ニューソン氏のアイクポッドと比べてみると、その共通点は明らかだ。ジョニー・アイブとニューソン氏の交友はつとに知られているし、酒の席でアイディアを共有したことはあり得るし、あるいはニューソン氏はプロジェクトにおいて、アップルの友人に自分がアイクポッドで得た知見を秘密裡にアドバイスしていたが、アップルが彼の参加を公にする前に役目を終えてしまっただけかもしれない。しかし、その真相を知ることはないだろう。

抑制の効いたデザイン

 Apple Watchは38mmと42mmの2サイズで展開される。私は両方試着し、いずれも完璧に動作した。彼らはこの選択肢を過大評価せず、男性には44mm、女性には35mmといったやり方は採用しなかった。どの男性も、女性も、子供も、どちらのサイズも難なく装着することができる。そうは見えないかもしれないが、これはアップルが初めて販売する時計なので、大きすぎるか小さすぎるといった間違いは実に犯しやすいポイントだ。さらに大きくするという議論があったに違いないが、どうしてそうしなかったのだろう? 全体のインターフェースをより大きく、大胆に、視認性も高くなり、使いやすくもなっただろうに。アップルが装着性を重視したという事実は、抑制の効いたデザインによく表れている。38mmモデルは腕に巻いた感じが非常に良いのは下の画像を見ればお分かりだろう。

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オマージュ

 Apple Watchesは実に独自のやり方で、伝統的な時計製造と時計学の発展の基礎となった環境に敬意を払っている。初の計時装置、日時計は太陽と星の位置が今日でいう時刻そのものであったことを思い出して欲しい。アップルが宇宙観に特化した2つの文字盤デザインを開発したことは、彼らが最低限、初期の計時装置の起源と重要性、それから時空を支配する存在―宇宙に注意を払っていることを示唆している(注記:この“アストロノミー(天文)”文字盤フェイスは永久カレンダーのムーンフェイズを設定するのに超便利な存在だ #watchnerdalertで検索)。

 アップルは、モダンなアナログ時計を連想させるような文字盤もいくつか提供するだろう。店に並ぶころには、さらなる進化が期待できる部分だ。

 さらに、アップルはリューズを残した。Apple Watchでの呼び名は“デジタルクラウン”ではあるのだが、何しろボタンやスイッチ類を毛嫌いした男が創立した会社のやることである。時計学的コントロールセンターの原型を残したのには、何かワケがあるに違いない。

豊富なオプションと妄想

 Apple Watchのバリエーションは多いので、全てを把握することは難しい。通常のApple Watchに加え、Apple Watchスポーツ、Apple Watchエディションが展開されている。つまり、スティールケースと、DLCコーティングされたスティール、アルミニウム、グレーにDLCコーティングされたアルミニウム、ローズ/イエローゴールドからケース素材を選ぶことを意味するのだ。そこに6種類のストラップとブレスレットのスタイルが、多くのカラーバリエーションから組み合わされる。

 Apple Watchが万人向けであるために用意されたオプションなのだろうか? いいや、それは違う。しかし、アップルの最もパーソナルだと位置付けられるこのデバイスは多様化するライフスタイルにフィットするように幅広い選択肢を提供するというクックCEOのメッセージに裏付けられたものなのだ。スイス時計でこれほど多くの仕上げを持つ時計は存在しないし、あらゆる産業が細部にこだわる時代にあっては(BMW 4,6,8シリーズよ/アウディ A2,A3,A5,A7シリーズよ。君らのことだよ)、人々に細かいところまで自由に妄想してもらうチャンスを与えるのは当然のことにも思えるのだ。

 細部へのこだわりは人生に彩りをもたらすものだ―例えば、それは私に「文字通り」不必要であるが、楽しいと思えるものについて書く仕事を与えてくれる。私はノーマルなApple Watchを称賛しながらもApple Watchスポーツを忌嫌う層がかなり存在することを保証しよう。金無垢のApple Watchエディションも然り、インスタグラムで2000超のLikeを獲得しながら、コメントの多くは否定的であった。スイス時計業界は、これにヒントを求めるべきで、ヒットを目論むモデルに外観上の選択肢を幅広く展開することが害になることはないのだ。Hodinkee Shopの時計ストラップビジネスが堅調であることも考えてみて欲しい―時計の購買層は、OEM生産されるストラップやブレスレットだけが選択肢として提供されることは好まないのである。ただし、最近はスイスからも逸脱した動きがみられ、チューダー ブラックベイシリーズは、バーガンディベゼルにミラーダイヤル、ブルーベゼルにシルバーダイヤルの配色に、3種類のストラップオプションを用意しているのは注目に値する。

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ストラップ

 そして、これこそが私を次の視点へと導くのだ。アップルは、間違いなく、前向きに、そして明白にストラップとブレスレットに対し注目を集めた。レザーからフルオロエストラマー、リンクブレスレットからミラネーゼまで豊富なオプションを用意しただけではなく、アップルの人々が時計を身に着けることにどれほど注意を払ったか、そして既存の時計業界の惨憺たる有様を見せつけたのだ。

 Apple Watchは一体化、あるいはワイヤー型のラグが付いたストラップかブレスレットを取り付けることができる。それは時計の外観をガラリと変え、交換も非常に簡単だ。ストラップの交換もそうだが、ストラップとブレスレットそのものに対する細部のこだわりも率直に言って信じられないほど素晴らしく、上述したように同価格帯の他社製品が及ぶべくもないほどで、ストラップに関しては非常に顕著に表れている。

 Apple Watchスポーツのアイクポッド風のバックル部は前述したように、ストラップを留める方法として明らかにより優れた方法である。しかし、さらに素晴らしいストラップが存在する。レザー製ストラップは超がつく柔らかさで、超ハイクオリティ―である。私が350ドルのアナログ時計で感じたどんなレザーストラップよりも良い。尾錠部分を見て欲しい。一見すると何の変哲もないツク棒は、バネ棒上に配置しているのではない。バックルそのものと一体化しているのだ。

 そしてリンクブレスレットである。ツールなしで手だけでサイズ調整できることをご存じだろうか? リンクの裏側の中心部のボタンを爪で押すだけで、リンクが飛び出して解除される。それはIWC アクアタイマーのブレスレットのケースとの連結部分を彷彿とさせたが、このリンクブレスレットは全てのリンクに付いているのだ。さらに、デプロイアントバックル(ジョニー・アイブ氏が動画内で“ディプロイメント”と言い間違ったのにお気づきだろうか? かわいい!)はやはり非常に薄く、閉じた状態でも伝統的なブレスレットのクラスプよりもずっと薄い。

 しかし、私にとってはミラネーゼブレスレットこそが本命なのさ、ベイビー。アップルがこれを何か知っていることですら、注目に値するものだ。明らかに時代錯誤と認めざるを得ないオプションを用意するために時間を割いたテック企業は他にひとつとしてないことを誓おう。しかし、私はこれが本当に好きなのだ。

 私が好きなのは装着性の良さであり、伝統的なリンクブレスレットとは明らかに異なるものだ。そして、50年代、60年代を感じさせるところもまた良い。私は実際に1957年製オメガ スピードマスター(オタクよ見たまえ、これがRef.2915-2だ)にミラネーゼ風のブレスレットを装着しており、ブレスレットのおかげで、自分が所有する何よりも褒められることが多い。

オメガ スピードマスターRef.2915-2

 Apple Watch 42mmとこのミラネーゼブレスレットは、私が一番初めに試着すると決めた組み合わせである。

 この“ループ”スタイルのブレスレットは実に素晴らしく、私のオメガのブレスレットは異なり、実に機能的だ。どんなサイズにもフィットするようにマグネットで固定する方式だ。着用時に重さは感じないが、重量感は心地よく、腕への感触も良好だ。これに似たブレスレットの美しいティソと比較するとどうだろう? スイスよ、知りたくもないだろう。

 繰り返すが、アップルはApple Watchのデザインと装着性に血の滲むような思いで細部へのこだわりを貫いてきたので、多くの面で、スイス(またはアジア)からリリースされる時計が稚拙に見えるほどだ。しかし、私がこの時計をあくまで外観上の対象として評価しており、中身についてはそうでないことを思い出して欲しい。これが単なるデジタル時計なら、よくデザインされ、素晴らしい仕上げだと言うだろう。しかし、これは時計ではない。私が的外れだと思う所以だ。

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Apple Watchのイマイチだと思うところ

感情、それ自体の欠落

 スクリーンに支配された、ウェアラブルな大き目な端末のリリースで私を最も驚かせたのは、ローンチイベントに集まった決して少なくない割合のアーリーアダプター(初期採用層)が、そのデバイスを身に着けなくても問題ないとアップルが考えている点だ。機械式時計を愛し、着用する層は高収入の部類に属する傾向にある。彼らは大きな目的のために美しく作られたものを欲しがる傾向にもあるのだ―簡単に言えば、アップル製品である。しかし、何百万もの我々時計愛好家がロレックスをApple Watchと取り替えることがないのは、時計がもたらす情緒が存在するからだ―時間を超越する、普遍的で、パーソナルであるという事実である。

 ジョニー・アイブ(やマーク・ニューソン)がデザインしようとも、単なる製品寿命の制限だけの理由であったとしてもデジタルガジェットがそれに代わることはあり得ない。私の時計コレクションは数世代先まで遺るだろう;このApple Watchはせいぜい5年がいいところだろう。情緒の面で、それらを比べることなどできないので、ガチな時計愛好家(繰り返すが、彼らは普段であればアップルの新作に飛びつくような人々だ)が夢中になることはないだろう。ところが、昨日発表されたブレスレットを見てしまうや否や、同じ不動産を巡って競合するかのように我々のような愛好家を含むアーリーアダプターは、アップルに先行・事前・予約注文を懇願してしまうのである(実は、私も間違いなく1本買うのだが、自分が何を言っているか分かっている)。

袖の下に収まるかテスト

 Apple Watchの形状について私が批判するとしたら、それは以前私が言ったことと同じだろう(最近ではThree On Threeで取り上げたハブリング2に詳しい);Apple Watchをシャツの袖の下に収めるには、四苦八苦することになる。偉大なデザインというものは、日常を邪魔しないことだと私は考えていて、シャツの袖の下に収まらない時計にはそうした視点が欠けていると思う。アップルは薄くエレガントなマシンを創り出すことに長けており、また、Apple Watchの発表前45分間がiPhone6の美しさについての議論に費やされただけに、そのバルキーな形状に驚いてしまった。私は物理的な制約と時計の裏側にドックが必要なことは理解しているものの、Apple Watchは私の好み以上にイカついのだ。

 Apple Watchを薄くするために実施されたあらゆることについて、良い解決策を提案することができるかといえば、それは無理だ。しかし、大衆の支持を得るには、もっとスマートな形状が必要だと私は思う。

結局のところ、デジタル時計はオタクのオモチャ

 これについて触れておこう。Apple Watchはエンジニアリングの粋を尽くしたプロダクトであり、そこに疑いの余地はない。それでも、実際には機械式時計ほどクールな存在とみなされてはいない。時代の移り変わりと共にその認識も変わるかもしれないが、デジタル腕時計は、それがどれだけ高い能力を実装していても“クール”と思われる日は当面来ないと感じている。もちろん、それは純粋な美学と100%表面的な判断に限られた見方ではあるが、結局のところ、美を好む人々がこれを着けて、日常的に過ごすところを目にすることはない。

 中産階級に生まれ育ち、まともな学校に通い、良い職を得て、ある大都市の街の素敵なアパートに住んでいて、ドイツ車を乗り回し、たまに自分へのご褒美を買う男を想像してみて欲しい。そんな彼がApple Watchを着用している光景が目に浮かぶだろうか? 私には想像できない。私には、彼がきっと購入するところまでは想像できるが、Apple Watchにはそれ以上の何かが必要なのだ。私を例に挙げると、ゴージャスな27インチのiMacを前に、ホワイトゴールドの超薄型パーペチュアルカレンダーを着用している。実際、私の左側にはひと目見た瞬間から欲しかったアイクポッドの砂時計(マーク・ニューソン氏によるデザイン)がある。私が貯金して購入したのは、それが完璧なオブジェであるからであり、時間や、時計のデザインに興味が全くない人々でさえ、一様に美しいと認める品だ。平均的に裕福な人がiPhone6を買うのは、それがそのカテゴリの中で形状と機能の両面で絶対的最良を提供するからである。Apple Watchにも同じことが当てはまるのか私に分からないのは、私にはパテック フィリップ3940Gがあり、この先もずっと存在するからだ。

未知数な独立性

 実際のApple Watchの機能に関して主なマスコミの最大の関心は、iPhoneに紐づけられる必要があるということだ。ジョギングに出かける際、iPhoneも持って行かなければならないのだろうか? 昨日のハンズオン・セッションでアップルの広報に直接尋ねたところ、その時点では回答を得ることができなかった。もしそうなら、それは問題ではあるが、重大な懸念が少しでもあるならば、すぐに解決されると期待している。

ニーズのない市場にリーダーが登場した

 Apple Watchは間違いなく、地球で最も優れたスマートウォッチだ。そのことについては自信がある。しかし、ウェアラブル技術とは我々が本当に求めているものなのだろうか? 5年前にBluetoothヘッドセットを公然と着け、1年前グーグルグラスを着用していた人々にも同じことを問いたいが、スマートウォッチは、人々が本当に心から欲しいと思ったモノなのか? 実際に世に送り出すのはアップルだ。これからじっくりと時間をかけ、テストを実施して来年の発売に間に合わせるだろう。

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“本物の”時計への脅威となるか?

 これは、過去数ヵ月(日、時)間、メディアから数えきれないほど尋ねられた質問だ。誰がランゲのダブルスプリットをApple Watchと交換するというのだ? まずあり得ないだろう。しかし、平均的なランゲのオーナーはApple Watchを購入し、週末着用し、それから、ワークアウトの後、次にビーチで休暇を取るまで外しておき、カジュアルフライデーのオフィスに着けていくかもしれない? それは十分あり得ることだ。アップル製品には、それなしでは生きていけない人間を作り上げる秘訣があり、私は昨日そのOSに完全に没頭することはなかったものの、私が見たものは印象的だった。そのため、現在のところ、高級時計製造に真っ向から挑むものではないが、これは手首の座を賭した競争であり、何年も先のことだが、伝統的な時計は、たとえハイエンドなものであっても問題が生じる可能性がある。これ以上何も必要ないと気付いたとき、さらに別の一本を購入する欲求など湧かないからだ。

 ローエンド層では、Apple Watchはアナログ時計のカジュアルな愛好家にとって深刻な脅威になるだろう。人口の一定割合に、素晴らしい製造技術が投入された時計を身に着けていることを気にも留めない層がいるので、Apple Watchは広告戦略によって、そうした層に訴求できるだろう。Suunto(スント)のようなブランドは憂慮すべきだ。カシオも然り。セイコーですらアストロンシリーズは機能だけで括ればそうしたグループに落ちうる。スイス時計産業全体にとってさえ、トラブルを引き起こす可能性のある別の側面は、アップルが若者にクールだと思われている点だ。16歳ならスウォッチとApple Watchのどちらを選ぶだろう? 20歳になってハミルトンとApple Watch3のどちらを選ぶだろう? 25歳になればオメガとApple Watch Plusのどちらを? これはスイスにとっては現実的な懸念事項である―Apple製品で育った若い世代の購買層へのアピールという点だ。

 繰り返しになるが、Appleはこの新しい手首に巻かれる周辺機器の細部にわたって細心の注意を払い、低価格であっても素晴らしいデザインをもつことが可能であることをスイスの時計産業に見せつけている。私にとってApple Watchが痛快なのはこの点だ。―スイスの時計産業が1000ドル未満の機械式時計のカテゴリに本腰を入れざるを得なくなるからである。

 Apple Watchは2015年初めに出荷される予定であり、我々も入手でき次第記事で取り上げる。また、下のギャラリーにローンチイベントのライブ画像を収めたので、現場の興奮を体験して欲しい。