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HODINKEEのスタッフや友人に、なぜその時計が好きなのかを語ってもらう「Watch of the Week」。今週のコラムニストは、ラグジュアリーウォッチ担当のバイヤー、マイルス・クサバ(Myles Kusaba)にラルフ ローレンのアメリカン ウエスタン クッション ウォッチ ローズゴールドについて語ってもらう。
私の故郷であるカリフォルニア州フォルサムは、刑務所(ジョニー・キャッシュ、ありがとう)、湖、そして毎年開催されるロデオの3つで有名だ。今や人口10万人近い大都市に成長したが、この町の歴史はカリフォルニアのゴールドラッシュに深く根ざしている。私が育った時代には、常に「西部開拓時代」の名残があったわけで、私がカウボーイを愛するのも無理はないだろう。
幼少期、私の故郷はほとんど多様性に乏しい地域だった。私は小学校では数少ないアジア系の子供で(みんな親戚だと思われていた)、異人種間の養子になったことで二重に珍しい存在になっていた。大学まで目立たないようにしていたことは、私の思春期における気まずさと不安の火種を増やすだけだった。私はふるさとに馴染めなかったのだ。
私の最も古い記憶のひとつは、小学校2年生のときで、当時はまだ小さな子供たちがカウボーイになりたがっていた時期だった。カウボーイブーツ、帽子、投げ縄が嫌いな人はいないだろう。私にとって、"ワイルド・ウエスト "ほどアメリカを象徴するものはない。移民(5歳のときにアメリカ市民として宣誓した)である私にとって、このカウボーイ文化への愛を取り入れることは、誰よりもアメリカ人らしくあるための方法だったのだ。しかし、ほかの要因や影響もあったことは確かだ。父が西部劇小説の『Lonesome Dove』を熱心に読んでいたことや、彼が50年代に遊んでいたキャップガン・リボルバーのおもちゃをもらったことなど、幼い頃からの思い出がランダムに出てくる。だから、おそらく、すべては複雑に織り込まれたタペストリーのようなものだろう。
ある日、カブスカウト(注:ボーイスカウトのこと)で、今となっては非常に不愉快な「カウボーイ対インディアン」をまねて遊んでいたとき、ほかの子供から「中国人のカウボーイなんていないよ!」と乱暴に言われたのをはっきりと覚えている。
じゃあ、私の選択肢は中国人の鉄道員役をして遊ぶことだけだったというのか? どうして私はファンタジーの一部になれないのか? ほかの子供たちは何にでもなれるのに、どうして? マイノリティの人たちが共通して経験する不安といえば、自分の存在がひとつのものに絞られることだろう。正直なところ、そのときは、アジア人よりもカウボーイになりたかった。
子供が自分の言っていることの意味を理解せずに残酷なことをするのは認めよう。しかし、そのときのことは今でも耳に残っている。そのときから私は二度とカウボーイ役をしなくなった。西部劇やステットソンハットへの愛着は棚上げにし、投げ縄も何年も掛けずにいた。クラブは私にとって閉鎖的だった。少なくとも数年間は。そして、どういうわけか、それは私の脳の奥底に抑圧された泡のように残った。私にはやり残したことがあり、その欲望はいつかまたときが来れば再び現れるような気がした。
多くの郊外っ子と同じように、私も早くドッジ(西部の言葉)から出たいと思ったものだ。大学卒業後、まずサンフランシスコに移り、今ニューヨークに住んでいる。現在はHODINKEEのニューウォッチバイヤーとして働いているが、テーラードメンズウェア、テクノロジー、写真、そして非営利セクターと、かなり多様な経歴を持つ。年月が経つにつれて、ウエスタンをテーマにしたさまざまなアイテムが私の生活やワードローブに入り込んできた。特に、ヴィンテージのブーツ、ロデオのベルトバックル、質屋で買った古いシルバージュエリーがお気に入りだ。アパレルの仕事をしていた頃は、こういったものを日々のレパートリーにさりげなく取り入れていた。しかし、いくつかのヴィンテージ懐中時計を除けば、2018年にラルフ ローレンが創業50周年記念の一環としてウエスタン・コレクションを発表するまで、私は魅力的な「ウエスタン」タイムピースを見つけたことがなかった。
この小さなシリーズのクッションウォッチは、私が時計の世界で最も好きなもの、すなわち美しいデザイン、魅力的なインスピレーション、そして素晴らしいストーリーテリングを完璧に体現している。時計製造のテクニカルな面を評価しないわけではない。時計の内部にある複雑なパーツにはいつも魅了されてきた。しかし、自分の腕に何をつけるかを考えるとき、本物の美しさと、よく語られるストーリーが常に勝る。そして、ラルフ ローレンほど偉大なアメリカのストーリーテラーはいない。
ブロンクスでユダヤ系移民の子供として生まれたラルフ・ローレンが、アメリカで最も偉大なアパレルブランドを創り上げただけでなく、西部のイメージと理想を受け入れ、単なる外見的なスタイルではない何かに変えるまでに成長したのは、とてもすばらしいことだと思う。ラルフは、広告に有色人種や女性を登場させるという画期的な手法を取り入れたり、幻想的なブティックのコンセプトを通じて、「オールド・ウエスト」が美しく、目指すに値するものであることを常に私たちに教えてくれたのだ。ラルフが創り出した理想郷は、現実というより映画のセットのようなものだが、彼はそれを常に現実的なものとしてきたのだ。
ここで、時計の話に戻る。ラルフ ローレンのウエスタン コレクションの6つのタイムピースには、それぞれ手彫りのケースが使われている。ストラップは手彫りで、文字盤にはアラビア数字とローマ数字のユニークな組み合わせが採用されている。私の特別な時計は、ローズゴールドのクッション型ケースだ。
この時計は私にとって二重の役割を担っている。ラルフ ローレンのウエスタンファンタジーに浸りながら、子供の頃を思い出すことができるのだ。この時計が手首にはめられると、私は思春期の頃の夢を見ることができる。なぜなら、私は西部の出身だから。そして、違和感を感じながら育ったけれど、私は校庭の仲間たちと同じように、カリフォルニアのカウボーイ文化の産物なのだ。
人生という砂時計のなかで、私は今、底の方が上部よりはるかに充実していることを痛感している。この数年、自分の好きなこと、喜びを感じられることに集中する機会がたくさんあったことに感謝している。人生は貴重なものであり、ステットソン・ハットとカウボーイブーツをただしまっておくにはあまりにも短すぎるのだ。
6月はプライド月間ということで、そろそろ2度目のカミングアウトをしようかと思う。この時計を腕にはめて、誇り高きアジアのカウボーイとして、自分の夢を生きていこうと思っている。
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ラルフ ローレンのタイムピースについては、オンラインで詳しく知ることができます。
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